「そのカリスマで私を救ってよ、お姉様」   作:小鈴ともえ

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会話文のところだけ少し変えてみました。アンケートにご協力いただければ幸いです


ティアオイエツォン

「ふんふふーんふんふんふん……」

「珍しいわね、貴方が鼻歌を歌っているなんて。何か良いことでもあったのかしら?」

 

美鈴がこの館に来てからもう五年にもなるだろうか。彼女の人柄のおかげか美鈴はすぐに使用人たちと打ち解けて気持ち良く働いてくれている…と思う。当の美鈴がどう思っているかなど私にはわからない事だから断言はできないけど。

もう五年も見てきたが彼女が鼻歌を歌っていることはほとんどない。何処か寂しそうな旋律は家族と離れて長途に就く商人を想起させる。

 

「良いことかい? そう言われると迷うけど悪いことじゃあないのは確かさ。レミリアもフランちゃんの部屋で待っておきなよ。私もすぐ行くからさ」

 

おい待て、どういう事だ。

 

「職務放棄かしら? 今の貴方の仕事は門番だと思っているのだけれど」

 

今日は珍しく起きていたかと思えばまさか今日の門番放棄の宣言である。流石の私でも看過できないことはある。確かにほとんど人も妖怪も来ない門を護る必要があるのかと問われると返答に迷ってしまうが一応彼女に与えた仕事なのだ。毎日寝ているから変わらないような気もするが。

 

「確かに私は門番だよ。でもこれはフラン()のお願いだからねぇ。それにレミリアが起きる時間だという事はどのみちもうすぐ終わりじゃないか」

「まったく都合の良い妖怪だよ。でももしフランに確認して『そんなお願いしてない』と言われたら…わかっているでしょうね?」

 

美鈴にフラン直属の従者としても働いてもらうよう頼んだのは私だ。今まで館にいた使用人たちは流石にフランとの精神的距離が遠すぎたし、もしフランが暴れてしまうようなことがあった時に止められるような者はいない。

そこで私が目を付けたのが美鈴だったわけだ。ここに来てすぐにフランと打ち解けてくれたのを見て決心がついた。強さも申し分ないほどに備えているので万が一の時にも対応できるはずだ。

 

「大丈夫大丈夫。これは昨日……いや今朝だったかな、に頼まれた事だからあの子も覚えているはずさ。ついでにレミリアの夕食も持って行くから先に行ってな」

 

そのせいで都合の良い時だけフランを様付けで呼ぶようになってしまった。それにフランのことになると私が断りにくくなることを学んだのだろう。質の悪い妖怪である。

まあそろそろ夜になって門番の仕事も必要なくなるので良しとするか。それにしても私はいつからこんなにも甘くなってしまったのだろうか。

 

 

 

結局美鈴に言われた通り先にフランの部屋に来ることになってしまった。ちなみにフランの部屋の扉が勝手に開くようになっているのはやはり新しい魔法だったらしい。地下迷宮と同様登録してある魔力に反応して開く仕組みだとか。

今は私と美鈴とフランの三人分の魔力が登録してあるらしい。一応登録されていない魔力の持ち主であっても運が良ければこの部屋にたどり着けるしフランの部屋の扉も力ずくで開けられないことも無い。かなり大変だと思うけど。

 

「あ、お姉様が先に来たのね。という事はもうすぐ美鈴も来るのかな?」

「えぇそういう事よ。それでフランは美鈴に何を頼んだの?」

 

美鈴の言っていたことは嘘ではなかったらしい。彼女が嘘を吐いているところを見たことが無いから大して疑ってもいなかったが彼女を解雇するという選択肢は消えたことになる。…もともと無いだろうと言われそうだがそんな言葉は無視だ無視。

 

「あ~まあ大したことじゃないんだけどね。ほらこの部屋って冬は寒いでしょ? だから少しでもあったまろうと思ってね。で、美鈴と色々考えてみたのよ」

 

私が地上に帰った後だろう。美鈴は一晩中この部屋に、というかフランと一緒にいてもらうようにしているし私の知らない二人の秘密があってもおかしくはない。別に暴く気も無い。

 

「お待たせ。レミリアはスープにトリュフをかけるのかい?」

「当たり前よ。トリュフの風味あってこそのスープ。そう思わないかしら?」

 

この館もかなり裕福になってきたので食にもこだわるべきなのだ。別にトリュフだけではない。高級食材というその響きが重要なのだ。

 

「ごめんお姉様。私トリュフそんなに好きじゃないんだよね」

「ま、まあ好みは人それぞれだもの。む、無理に食べる必要はないのよ……こちらの方こそごめんなさいね」

 

勝手な価値観の押し付けだったらしい。確かに高級食材が必ずしも美味しいわけではない。それは生きてきた中で嫌というほど経験してきた事だ。

好んで食べる者の気がしれない料理や食材もかなりの数を見てきた。それでもなお価値観を押し付ける発言をしてしまうとは私もまだまだなようだ。

 

 

 

「それにしても美鈴は他にも何か持って来たみたいだけど何を持って来たの?」

 

夕食も終わって一段落付いたところで美鈴が持って来た物が気になった。美鈴は軽々片手で持っていたが重そうな見た目の箱のような物だ。

 

「おっ気になるかい? これこそフランちゃんに頼まれていたものだと思うよ。ほらっ」

「……枯れ葉?」

 

珍しく起きていたのはこれを集めていたからなのか。ただ門番としての仕事の一環として門の前の掃除をしているだけだと思っていたが…道理で機嫌が良かったわけだ。

しかし枯れ葉など集めて何をするというのだろうか。使い道など全く思いつかないが。

 

「そう、ただの枯れ葉だよ。これで良かったんだろう? フランちゃん」

「さっすが美鈴だよ! 具体的な物までは言ってなかったのに。ちゃんと欲しいものを持ってきてくれるなんて。これがあるってことは勿論…?」

「……これかな?」

 

本当にただの枯れ葉らしい。特に何か細工がされているわけでもないようだ。そして次に美鈴が取り出したのは野菜と魚。これで何をするのか。枯れ葉に隠れて野菜や魚で攻撃し合う人間の戦の真似でもするつもりだろうか。流石の人間でもその程度じゃただの喧嘩としてしか見られないだろうけど。

 

「当たり! やっぱり私が前に読んでいた本美鈴にも見えていたの?」

「あら、気づいちゃった? まあいいか。早速始めようじゃないか」

「一つ聞いてもいいかしら。それらでいったい何を始めようと言うの?」

 

私の頭が固いのだろうか。それとも二人の頭がぶっ飛んでいるのだろうか。正常な頭の持ち主がどちらなのかがわからなくなってきた。

 

「うーん、やっぱりお姉様は難しい本ばかりを読みすぎなんだよ。もっと庶民の感覚を養わないと」

 

そうか、庶民の感覚が無ければ人間と協定を結ぶときにも支障が出るかもしれない。人間すべてが私たちのように裕福ではない。むしろその逆、貧しい者のほうが圧倒的に多いのが現実だ。

支配するには先ず基盤から埋めていかねばならないという事をフランは遠回しに教えてくれようとしているのだ。

 

「ありがとうフラン。おかげで重要な事に気づけたわ」

「?」

「……レミリアは何か盛大に勘違いしていそうだがまあいいか。とにかく今から私たちがするのはだな………」

 

 

枯れ葉に火をつけて暖を取るついでに魚やら野菜やらを蒸したり焼いたりするらしい。今は館の中なので鍋やらを使っているが、本来は枯れていない葉などを使うべきらしい。そんなことが書いてあるわけの分からない本がここの図書館にもあったというのだから驚きだ。

魔導書に埋もれて気づかなかったのかもしれない……そうか、フランはきっと広い視野で物事を見る事の重要性をこれまた遠回しに教えようとしてくれているのだ。

近隣の町を支配するだけでなく世界の交易を支配する方が効率的だったのだと思い出させようとしてくれているに違いない。

 

 

そんな風にしてできた蒸し焼き魚は少し生臭かったが思いのほか美味しかった。これが庶民の味なのだろうか。今のうちに舌に刻み込んでおこう。覚えておいて損はないはずだ。




思考の空回りがひどすぎるレミリアさん20歳

会話文に関して

  • 前回まで同様基本的には一行空ける
  • 今回のように行を空けずに続ける
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