「そのカリスマで私を救ってよ、お姉様」   作:小鈴ともえ

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文章雰囲気類似作品って使ったことない機能でしたが精度良すぎて吃驚しました


運命のダークサイド

捕虜のまま日中をあの建物で過ごした後夜になったので再び出発した。もう館は近い。それはすなわちタイムリミットが近づいているかもしれないことを同時に表していると言えるだろう。

 

運命とはこうも容易くひっくり返ってしまうものなのかと自分自身驚いてしまう。昨日までは確かに私の手の中に運命は収まっていたはずだ。

それが今ではどうだ。あいつの、エカルラート家当主の手に渡ってしまっている。あいつの能力はわからない。しかし私から運命を奪い去ったことから少しだけ予想はできる。

 

すなわち私と同じく運命を感じられる(私があいつに運命を感じるのではない。断じてありえない)能力か、それとも相手の能力に干渉できる能力かだ。前者なら練度次第でどうにでもできそうだが後者ならかなり厄介なことになる。

能力の無い者が相手の時には何の効力ももたないが相手が能力持ちになると途端に凶悪になる。相手が強いほど能力への干渉の効果も大きくなる。

 

安心しなよレミリア。あのドニ・エカルラートだっけ? ……あいつはああ(館を崩すと)言ってるけど実際に壊す訳じゃないと思うよ。これからの拠点にしたいのならば館()残すさ

それって私たちの身の安全はどこにも保証されないってことじゃないのよ。今の私たちは何もできない状態なのよ? 分かっているの?

 

人間の使うようなロープなら多少太くても吸血鬼の膂力を以てすれば引きちぎることができる。

しかし今私たちを縛っているロープには何やら私には読めない文字があちこちに刻み込んであり、恐らくその文字が呪術か何かの効果を持っているのだろう。力がかなり制限されている。

 

「そろそろ月も真上に来る頃か……うむ、お前の館ももう近いようだな。して、お前の館の名前は?」

 

館に名前? 考えたことも無かった。しかし無いと答えるのも気が引ける。教会や寺院など有名で大きな建造物には大抵名前がついているものだ。

 

「こ、紅魔館だ。お前のところの間諜から聞いてはいなかったのか? あぁそうか、あんな下っ端に館の名を教えているはずも無し、か」

 

うん、我ながら悪くない名前だろう。名前の由来は勿論紅いから。あれこそまさにスカーレットと言えるだろう。こりゃ誰に名乗っても恥ずかしくない名前になったものだ。

 

「ほう、紅魔館か。我が朱血館には敵わぬがお前の父親も悪くないセンスを持っているようだな」

 

こいつの館の名前を聞いて少し自分のセンスに自信が無くなったのはどうしてくれるのだろうか。朱血館ってネーミングセンス皆無ではないか。そもそも血は朱くない。紅いのだ。

美鈴の方を見ても素知らぬ顔で眼を逸らされるし踏んだり蹴ったりとはまさにこのことか。

 

「見えた。あそこが紅魔館だな。おい、そこのお前! スカーレット(こやつ)の妹君は地下に幽閉状態だそうだ。先に行って話を付けてこい

かしこまりました

 

夢の中では理解できたフランス語と思われる言葉も現実では全く理解できない。やはりあの時は私ではなくワタシだったから理解できたのだ。

というかドニ・エカルラートの奴は随分と前からスカーレット家を潰す気でいたことがよくわかる。あの使用人然り、こいつが私たちの言語を話せること然り。かなり入念に準備してきたのだろう。それでも私たちの館を落とすのはまだ早かったのではないだろうか。

 

 

 

 

 

なんだか外が異様な雰囲気に包まれている気がする。さっき入ってきた奴は追い返してしまったが逃がしたのは不味かっただろうか。蝙蝠に偵察に行かせてみよう。こういう時に窓が少ないこの館は不便なのだ。外を見ようと思ったら扉を開けるかごく一部の窓のある部屋に行くしかないからだ。今回は追い返した奴が出て行く時に開く扉から出してみよう。

 

…………あらら、これは不味いね。さっき逃した奴は相手のなんちゃら家当主から直々に言われてやって来た奴だったみたいだ。

仕方ない。今は真夜中だからこっそり出れば見つからないかな。お姉様も美鈴も捕まっているみたいだし相手もわざわざここまで来たという事は本気で潰すつもりのようだ。

 

「再開したばかりだけど今日の勉強は終わりだね。お姉様を助けないといけないし」

 

普段のお姉様ならあんな奴に簡単に捕まるはずが無い。美鈴も同様だ。となるとこの状況は相手の策が上手くはまったということなのだろう。お姉様や美鈴に傷が無いところを見ても戦闘になった線は薄い。睡眠導入剤か何かだろうか。吸血鬼に効くのかは知らないけど。

 

「来てやったよ。あんたのお望み通りかは知らないケドネ」

 

 

 

 

 

どうして……どうしてフランは来てしまったのだ。あいつの手下は何やら説得に失敗した様だった。それは言葉がわからなくてもあいつの雰囲気から分かった。

だからフランは来ないと思っていたのに。

 

「囚われの姉を救いに来たのかね? なんとまあ涙の出る家族愛よ。だがお前の姉が敵わぬ相手に敵うとでも思っているのかね?」

「これだから自分の世界でしか生きていない高慢な馬鹿は嫌いなの。鬼が出るか蛇が出るか。残念ながら藪をつついて出てきたのは吸血鬼でした。でも折角だから遊んであげるヨ。()が」

 

あぁ、こうなったフランは私の言葉でも止まらないだろう。肉親や館の住人が傷つけられた時、一番感情をあらわにするのはフランだ。そして感情が昂ると会話にならないこともある。

今だって会話をしているようでしていない。すべての話が彼女の中で完結し相当に意訳しなければすぐさま理解するのは困難だ。

 

だから他の使用人たちにはあまり関わらせないようにしているし、フランもそれが分かっているから地下から滅多に出てこようとしない。例外が今回や数年前のように館が危機に陥っているときだ。そういう時には使用人の目を気にせずに地上に出てくる。*1

何故かこういう時のフランの瞳はいつもの紅からさらに濃い真紅に変わる。禍々しく、またどこか安心できそうな狂気に満ちた深紅色。

 

「へぇ! 私の能力を知ってたかのような動きだね。じゃあ次は……こっち。行くヨ、お姉様!」

 

フランの能力の前には結界も封印も意味をなさない。呪文のびっしり書かれたロープもあの子から見れば刺繍糸よりも脆い物。私を縛っていたロープはいつの間にか引きちぎられたように地面に落ちている。ちなみに美鈴の方は解かれていない。何故かしらん。

 

そしてやはりあいつの能力は相手の能力に干渉できる物だったようだ。並みの妖怪ではフランの能力が分かったところで対処は不可能。ましてやあのエカルラートは弱くはないものの最強格というわけでもない。普通に戦えば美鈴の方が圧倒的な勝利を収められるくらいだろう。

私たち姉妹には少し分が悪いものの二人で挑めば負ける気はしない。

 

これは今分かったことだが他人の能力に干渉できると言っても万能ではないようだ。干渉できる能力は一つのみ。今フランの能力に対処しているおかげで私の運命は戻ってきた。

 

「運命は汝と共にある。神槍、グングニル」

 

運命の伴わない槍に必中の効果は付かない。必ず当たるという運命に従ってこの槍は私の手から放たれるのだ。

 

「わが運命、一瞬でも手放した己を呪うんだな。さらばだ」

 

直後にバンッ! という音。その音の方を見て私は硬直せざるを得なかった。

必中であるはずの槍が奴に到達する直前で無残にも破壊されていたからだ。我が目を疑い、そして同時に我が耳を疑った。

 

「そんなことをしても無駄無駄無駄。駄目だよお姉様」

 

気絶している奴の横で右手を握りながらそう言ったのはほかでもないフランだったからだ。

*1
実際は気にしているがレミリアは知らないだけ




一応フランス語で話しているところはフォント変えておきましたがそのままでも良かったでしょうか
今後ほとんど出てこないと思いますが念のためにアンケートを置いておきますのでお答えいただければ幸いです
因みにフォントは固定では無いので(どれを使ったか忘れてしまうから)悪しからず
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