「そのカリスマで私を救ってよ、お姉様」   作:小鈴ともえ

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たまに封印されし神々とごっちゃになります

台本形式一歩手前な気がしてならない


封じられた妖怪

「駄目だよお姉様。こいつは今殺さない方が良い」

 

 ドニ・エカルラートがどうして気絶しているのかはわからないが、少なくとも私の槍が命中したからではない。フランは私の槍を破壊していたのだからフランの仕業であるとも考えにくい。

 となると恐怖から来る気絶か体力の限界によるものか。先ほどまでは元気だったことを考えればその線は薄そうだが。

 

「そうかしら? この館から富を奪い、あまつさえ私たちの館を我が物にしようとした奴なのよ? 死んで当然、殺して然るべき存在だとそう思っているのだけれど」

 

 ここで殺しておかないと次またどこで牙を剥かれるか分かったものではない。そもそも持っている能力が危険すぎるで、できれば早めに処理しておきたいのだ。

 今殺さない理由などないように見えるのだがどうしてフランは止めようとするのだろうか。既に瞳の色は真紅から紅に戻っているからそれが原因なのかもしれないけど。

 

「お姉様ならそれだけで殺そうとするかもしれないなぁ、と思って出てきたの。今少し熱くなって冷静に考えられなくなっているだけだと思うけど……はい、これで大丈夫?」

 

 魔法を使ったのだろうか。頭に冷水を浴びせられるような感覚(そもそも冷水なんて浴びたらどうなるか分かったものではないが)とともに熱くなった脳が急激に冷やされていく。冷静になって考えてみれば先ほどまでの思考が如何に幼稚であったかがわかる。

 確かにフランの言う通り、ここで殺してしまえば後々面倒な事になるのは目に見えている。それに残るこいつの配下たちの処遇も考えねばならなくなる。

 

「えぇ、ごめんなさいね。まずは美鈴のロープを解いて頂戴。あれは私たちの手では直接解けないでしょうから」

 

 触れる分には問題なさそうだがあれに触れると力が抜けるので解けないのだ。フランの能力で破壊してしまうのが最も簡単で正しい対処法だと思う。

 それにしてもフランの能力制御もかなりうまくなったようだ。お父様がいたならばもう地上で暮らしていたかもしれない。今でも館の使用人を全員解雇すれば地上に出てきてはくれるんだろうけど。でもそれをしてしまうと生活できなくなるのでできない。非常に残念だけど。

 

「こいつどうするの? どうせ館には入れないんだし放っておいても良い気がするけど……流水か銀の檻にでも入れておこうか?」

 

 吸血鬼は招かれでもしない限り他人の家の敷居を超えることは不可能だ。つまりここに放置しておいても大して困ることは無い。館ごと破壊されたらどうしようもないが、美鈴曰くその心配は無いだろうとのことなので本当に困らないのである。

 でも邪魔であることは変わらない。それにオハナシをするつもりなのでここでずっと寝かせているわけにもいかないのだ。

 

「それならば水の檻ね。銀だと隙間から抜けられてしまうかもしれないし。美鈴は大丈夫なの?」

「あぁ大丈夫だよ。それにしてもあの縄の呪いがあんなに強固だとは思ってなかったよ。これからこいつをどう調理するつもりなんだい? 殺しはしないようだけど」

 

 殺そうとはしたけどね。まああの時は冷静ではなかったし考えなくても良いのかな。

 

「勿論いいように使ってやるわ。こいつがしたことは許される事ではないもの。変に用意周到だったし先見の明だけは期待できる気がするわ。それにこいつがいなくなれば西欧の勢力関係は複雑化しそうだからね。こいつが気絶している理由は未だに不明だけれど」

 

 攻撃は当たらなかったはず。私の攻撃は勿論、フランの攻撃も干渉して躱していたはず。精神的な衰弱も見られなかったし持病があるわけでもなさそうだ。

 そもそも吸血鬼に持病があるなんて話は聞いたことも無いが。

 

「それは多分こいつの脳が処理できる容量を超えたからだと思うよ。多分他人の能力をどうこうするんだと思うけど、私の能力って自分で言うのも何だけど強力でしょ? だからきっと耐えられなかったんじゃないかなーって。きっと一度目の私の攻撃でかなり消耗してたんだと思うよ。その後お姉様も参戦したから参っちゃったんじゃない?」

 

 ああなるほど。体力的に辛くなっていたところで精神的にやられたと。確かに力がとても強いわけではなかったが本当にそのようなことが起こり得るのだろうか。案外ありそうだ。

 私たち人外は肉体よりも精神に重きを置く存在。肉体が重要な人間とは真逆の性質を持っている。だから精神的に参ってすぐに倒れてしまったのかもしれない。私はそんな状態になったことがないのでよくわからない。

 

「確かにそれだと倒れてもおかしくはないかもね。私も昔はそんなことがあったし。その時の私でも今のこいつよりは若かったと思うけどね。

 それにしてもフランちゃんは物以外も壊せるんじゃないの? 一館の当主を精神的に壊してしまうなんてさ。はっはっは」

 

 なにわろてんねん。美鈴の体験談を話してくれるのは構わないがその後の冗談は不要だったのではないだろうか。フランもどう反応して良いかわからずに苦笑いしてしまっているし、私も何が面白かったのか全くもって理解できない。長く生きてきた美鈴の洗練された冗談だったのだろうか。

 残念ながら私たちは二十年程度しか生きていないのでわかるようになるのはまだまだ先のようだ。

 

 困ったような顔をしながらもドニ・エカルラートをきっちりと水の檻で覆うフラン。

 何気なく見ていたがよくよく考えればこれは恐ろしい事である。片手間に出せるような檻で私たちは身動きが取れなくなってしまうのだ。この事実はフランが私から当主の座を奪おうと思えばすぐにでも奪えるという事に他ならない。

 今のフランにその気が無さそうなのが唯一の救いだろうか。しかしこれでは姉としての面目が立たない。魔法の勉強ももう少し強化する必要がありそうだ。

 

「うん? お姉様どうしたの? ……あぁ分かった。美鈴の冗談が全く面白くなかったから困っていたんだね」

「えぇぇ? そんなに言われるほど面白くなかったかい? フラン様はお厳しいですなぁ」

 

 確かにそれでも困ってはいたが今フランの方を見ていた理由はそれではない。誤解してくれていた方が都合が良いし、何故か美鈴と遊び始めたので何も言わなくていいだろう。

 因みに他の配下たちも当主同様水の檻に入れられているが、こちらに関してはあまり意味が無いと思う。出ようとしても精々着ている物が濡れて不快になるくらい。まあただの抑止目的だろう。

 

「…………ぅ」

「……お? ようやく起きたか」

 

 ようやくと言ってもそれほど経ったわけではないが。まだ夜は明けていないし閉じ込めたのもつい先ほどだ。こういったのはいわば空気づくりだ。それっぽい雰囲気を作っていた方が相手に威圧を与えられるというものだ……と思う。

 

「なんか声でもしたのかい? レミリアは耳が良いんだね」

「私だって聞こえたよ。吸血鬼は地獄耳なんだから」

 

 美鈴が私を褒めているのに対してフランが反論している。こういうところを見ると普段とは違って子供っぽい部分もまだあると分かって可愛らしい。

 直接本人に言っても反応を楽しめるが、弄りすぎると後が怖いので言わないようにしている。姉が妹の反撃を恐れるというのもおかしな話である気がするが。

 

 地獄耳が何なのかは知らないが恐らく耳が良いという意味なのだろう。私たち吸血鬼にとっては普通に聞こえる音も他の妖怪や人間にとってはそうでもないらしい。

 これは初めて知った。もしかしたら見えている物も私たちと美鈴では違うのかもしれない。これに関しては確かめる方法がわからないけれど。

 

「これは……ちっ。お前は私をどうするつもりなのだ」

「お前はここに攻めてきて、そして敗北した。勝者が敗者にすることなど決まっているだろう? 何、殺すわけではない。もしそうしたかったならば今頃お前は細切れで灰すら残ってはいまい」

 

 実際には死よりも尚苦しい事を強いるのだがそれはまだ知らなくてもいい事だ。

 誰かの下で命令されて働かされることはきっとこいつにとって苦痛でしかないに違いない。私もされたことが無いのでどのような苦痛なのかは知らないが、こいつの精神を苛められるのならば何だって良い。気絶してでも働いてもらおうじゃないか。




この小説ではしていなかったと思い出したのでもう20話ですが今更アンケートをしたいと思います。最近アンケートが多くて申し訳ないですが、少しでも読みやすくしたいのでお答えいただければ幸いです

文頭は一文字空けるべきか否か

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