「そのカリスマで私を救ってよ、お姉様」   作:小鈴ともえ

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原作キャラよりもオリキャラの方がまともな気がしてきた

それよりもまたサブタイトル問題が……


小さな欲望の星空

「では始めようか。食事の時にも言ったが本当に誰か付けなくてもよかったのかい? ……そうか、ならばもう何も言うまい。速やかに済ませてしまおうか」

 

 面倒な話はできるだけ手早く済ませてしまった方が良い。後に後にと残しているうちに考えることすら億劫になってしまうからだ。これは私が少し仕事をこなしている間に分かったことである。

 厄介な相手から潰すのが定石であるように、厄介な件から仕事を潰す方が気持ちも楽になる。

 

「とは言えど契約だけはもう済ませてあるからあとは内容と分配だな。先ずエカルラート家にしてもらうつもりの内容だが……」

 

 大きな家とはできるだけ懇意にしておくのが吉である。スカーレット家もそこそこ有名な家系であるし領地も決して狭いわけではないが、それでもエカルラート家とは比にならないほどである。

 私たちが持っているのは大陸から離れた島の半分程度だ。それに対してエカルラート家が持っているのは私たちの数倍以上の広さである。領地が多ければ当然部下も多く、その広さを奪えるだけの力を持っていることも意味する。

 

 現在人間の経済を握っているのはこの館だが、朱血館が全てを仕切っているように見せた方がこちらとしても都合が良い。余計な火の粉はかからず、利益の分配はこちらが主導できるからだ。

 相手の事を慮れと人間は言うそうだがそんなことをしていては自分が不利になるだけだ。人間だってそんなことをするような愚かな奴らではないだろう。

 

 常に味方であると信用できるのは身内のみ。その他の勢力の長やその配下たちはどうやっても信用するには足りない。身近な友人に殺される事ほど愚かしいことがあるだろうか? 隣人に売られる事ほど馬鹿らしいことがあるだろうか。

 信用するに足りない者は信用しない。これが鉄則である。身内でない者はたとえ隣人であっても、聖人に見えてもすべてが味方ではない。

 

「ふむ、えらく簡単な仕事であるな。それならば何も問題は起こるまい。よろしい、示されたことは全て請け負おう」

「ありがたい。では次に分配の事だ。利益総額の四割でどうだ?」

 

 血の契約を交わしても警戒は怠れない。『見える物全てが敵だと思え』もう随分昔に読んだお父様の遺した物に書いてあったような気がする。

『見えない物を信用するな。見えない物とは人の心である』と続いていたのだったか。

 この遺物でさえもただ遺されただけの物であり、そこに籠められたお父様の気持ちなど分からないのだから既に破綻していると言えばそうなるのだが。

 

 とにかくいくら心の底から信用できない相手であるにしても約束した分配くらいはきちんと渡してやらなければならない。管理してもらう事への感謝は信用の有無にかかわらず必要である。

 

「四割……正気なのか? 私たちはただ簡単な仕事をこなすだけだという事を忘れていないか?」

「まさか、忘れてなどいないさ。私は自分の館を富ませたいなどと言う欲望を持っているわけではない。こうしているのだって勉強の一環に過ぎない」

 

 勢力が大きいという事はその維持にも莫大な費用などがかかるはずである。今まで何とかなっていたのだから大丈夫ではあろうが、それでも今までこなしていなかった仕事をしてもらうのだから少し多めに報酬を出すのは当然の事だろう。

 それにエカルラート家とは一応協力関係である。多かれ少なかれ互いに支援をしていく関係にしておいた方が後々都合が良い。

 

 

 

 

 正気とは思えない額を提示された。いや、実際には直接的な額を示されたわけではないのだが、交易利益の四割ともなれば随分な額になる事は間違いない。

 今まで私たちが横からかすめ取っていた額よりもさらに多くなることは間違いない。

 

 まだまだ若いと侮っていたが、レミリア嬢はしばしば大人の吸血鬼もかくやと言うほどの思考をしてくるときがある。今回に関してもその意図があまりにも理解しがたいものである。

 結局世の中金が全てを解決してくれるのが現実だ。勉強の一環だからと言えども富を大幅に増やさない理由にはなり得ないはずである。

 とすれば何かしらの考えがあっての行動なのだろう。どこまで考えている? 何を考えている? 私は何処まで深く読み解かねばならないのだろうか。

 

「条件に納得できなければもう少し取り分を増やしても構わないのだが」

 

 レミリア嬢の発言全てが悪魔のささやきのようで、私にとっては甘美な毒の誘惑としか思えない。受けようにも条件が良すぎ、断るにも条件が良すぎる。

 何とも困ったことである。だがそこに如何なる意図があろうとも私が見つめるべきは今だ。困った時は今を見る。私にはレミリア嬢が見ているような未来は見えない。なれば未来を予想することすら満足にはできないのだ。

 

「いや、四割で受けよう。だがこちらとしてもただそれだけをしてこれだけ貰うのも気が引けるというものだ。何か困ったことがあれば何でも言ってくれればいい」

「それはそれは……とてもありがたいな。では今日の話はこれで終わりだ。そちらも早く帰らねばならないだろう? あぁ、そういえばあのサキュバスは朱血館で働かせなさい」

 

 元々私の部下だったというのもあるだろう。しかし一番レミリア嬢が懸念しているであろうことは、あのサキュバスが朱血館及び紅魔館の機密事項を全て知っているということだ。

 野に放つのは不味い。かといって紅魔館で働かせるわけにもいかない。それならば我が館で、ということだろう。大して役に立つわけではないが雇わざるを得ない。こうなった原因が私側にあるのは事実である。

 

「分かった。ではまた何かあれば呼ぶと良い。蝙蝠を一匹飛ばしてくれればいいだろう」

 

 私の場合は蝙蝠とも意思疎通できるのでこういう時には便利だ。私の能力の本来の使い方はこっちである。『蝙蝠と会話できる程度の能力』昔は全く使い道が思いつかなかったために兄にも散々馬鹿にされた能力だが、できることはそれだけではなかったらしい。

 蝙蝠が使う不思議な術によって他人の能力にも干渉できるということが分かったからだ。他の者からすれば自分の能力を無効化されているように感じるらしいが、実際にはそんなことは無い。

 ただ相手の能力の発動を鈍らせる程度の力しかないのだ。だからこそ一人の能力にしか干渉できない。力不足でも何でもなく能力がそれに追いつけないのだ。

 

「そうか。では明日から早速頼む。さあ、玄関まではお送りしよう」

 

 結局レミリア嬢の意図は分からぬままであるが、聞いても答えてはくれないだろうしこれ以上深く考えるのも馬鹿馬鹿しい。

 

「大人である私がレディに先導されるなど恥ずかしいな。そういえばフランドール嬢はどうしているんだね?」

「別に……部外者が口を出すことではない。それ以上の詮索をするならば二度と口のきけないようにしてやるが」

 

 おお恐ろしい。普段ならば負けないだろうが、怒りがあれば人間であっても想像できない程の力を出すことがある。吸血鬼がそうなれば間違いなく厄介なことになるのでここは大人しく引いておいた方が良いだろう。

 それにしてもそこまで触れられたくない秘密があるのだろうか。……流石に探らないが。

 

「いやまさか、そんなことはしないね。私だって命が惜しくないわけではないからな」

 

 命を捨てる覚悟をしてまで探る馬鹿が何処にいる。死なない者などいやしない。他の魔物などと比べてもかなり丈夫な吸血鬼ではあるが、それでも弱点を突かれれば簡単に死んでしまうのだから。神でさえ死ぬ。死なない者がいるならば見てみたいくらいである。




前回の後書きに書き忘れていたので少しばかり補足を。エカルラート卿が美鈴の事を『妖怪』ではなく『魔物』と呼んでいますが、これは彼が東洋をあまり知らないからです
『妖怪』はあくまでも中国や日本での超常的生物の総称なのではなかろうか、という個人的な偏見から来ております。間違っている可能性は否定しません
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