「そのカリスマで私を救ってよ、お姉様」   作:小鈴ともえ

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トゥルーとIFを書くと言っていましたがこの小説ではトゥルーだけで終わらせておきます。綺麗に終わらせた後のIFにどうしても蛇足感が否めないというのは数多の作品を読んできたうえで実感してきた事ですし、別にこんなモノ望んでいないという方が多数でしょう
内容だけはできているので、完結後のあとがきと称する活動報告の方にでもその内容をちょっと書こうと思います


魔法少女十字軍

「…………という事だ。残念ながら勝手に迷われてしまってはその場所も分からない。例の吸血鬼は見つけ次第返すと約束しよう」

「そういう事なら致し方まるまい。この七人でも何とかなるだろう。手間をかけたね」

「別に、大したことではない。では説得ができ次第ステラ・スコットにここへ来るよう伝えてくれると有難い。ではな」

 

 

 

 中身のほとんどない会話を終え、満月の照らす空へ飛んで行った八人を見送りながら考える。私はいつからここまで腹黒くなったのだろうか。いったいいつからここまで冷徹になれるようになったのだろうか。

 互いを信じあったはずの()()たちでさえ私は手駒のように扱ってしまう。だからこそ今回は東側の監視を疎かにしてしまっていたとも言える。私はいったい何なのだ。信頼関係とは何だったのだ。

 

 まったく呆れかえってしまう。私の穢さに笑ってしまう。あれだけ信頼と言う物を強調してきながら、一番他人を信じられていないのが私だというのだから。私はどこかで他人を見下しているように思える。

 特別な感情を抱けるのはあくまでも身内にだけ。無意識のうちにそれ以外を自在に動かせる駒のように考えてしまっているように思えてならない。キング兼プレイヤーだと思っていた私は、実はプレイヤーでしかなかったのかもしれない。勝つためならば如何なる駒を取られても動じない。そんな無慈悲なメタ。

 

 

 私はただ少し未来が見えるだけで神ではない。全能ではない。世界を俯瞰的に見る事など許される存在ではない。そうだというのに私は……最低だ。他人の気持ちを踏みにじる事に愉悦を覚えるほど歪んでいるわけではない。

 だが私がしていることはそれと変わらない。自分の都合で他人を振り回し、最終的に使い捨てるようなもの。愉悦こそ覚えなくとも続けている時点で同類だ。

 

 

 もう私には自分が何をしたいのか、何をすればいいのかが分からない。この十年間必死に頑張って来たことも、積み上げてきたモノも、エカルラートの高速手のひら返しで全てが水泡に帰した。

 努力とは何だったのか。報われない努力などしない方が良いのではないか。どうしてもそう考えてしまう。こうなる未来は流石に見えていなかった。私の能力は何処までも自由が効かない不便なものだ。

 

 

「あ、お姉様。エカルラートはもう出て行ったの?」

「えぇ……」

「だって。もう出てきてもいいよ!」

 

 フランが明るく声をかけてくれたがどうにも同じテンションで返事をする気にはなれない。今の私の価値を証明してくれるものなどどこにも……

 

「そう。貴方がレミリア・スカーレットですか。私はパチュリー。パチュリー・ノーレッジ」

「あ、あ、貴方は…………」

 

 まさかあり得ない。まったく知らない誰か。ただ夢の中にいた、夢で見ただけの誰か。それが今目の前に現実のものとして存在している。

 能力の有用性の証明? 都合が良すぎる。落ち込んでいた私にとってはあまりにもタイミングが良すぎる。もはや狙っていやっているのかと言いたくなるが、彼女どころかフランや美鈴にも私の夢の内容は語ってない。本当の偶然。それとも必然? これこそが運命だとでも言うのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝かされていた部屋の主、フランドールに連れられて行った先、そこにいたのはフランドールと大差無い幼い吸血鬼だった。エカルラートのような貫禄があるわけではないが迫力はあいつ以上のものがある。強いのだろうなと漠然と思う。

 

 どうやら私の事は行方不明ということにして、エカルラートとそのお付きの本物の吸血鬼七人で館を出て行かせたらしい。悪くない判断だ。私はもうあいつの下にいる理由も無くなった。ただあの本を手に入れられれば良かったのだから。

 その場所を嗅ぎつけるために情報の集まるエカルラート家にいただけである。場所が分かっても所有者が頑固だから困ったものだが。

 

「あ、あ、貴方は…………」

 

 何故か私の顔を見てひどく驚いた顔をしている。欧州で唯一エカルラート家に逆らえる勢力の長。それがレミリア・スカーレットという吸血鬼。どんな化け物が出てくるのかと緊張していた私にとっても彼女の姿は驚き以外の何物でもなかったが、彼女の驚き様はそれをも上回る勢いだ。

 

「どうかしましたか? もしかして私の顔に何かついています?」

「い、いえ。そうではないわ。ただそうね、やって来たのは全員吸血鬼だと思っていたから少しばかり驚いてしまっただけ……。そうそう、貴方さえよければもっと楽に話してくれると助かるわ。そう、もっと気楽にね」

 

 私が無理をして敬っていたのも気づかれていたか。流石は当主と呼ばれる吸血鬼。私が吸血鬼でないという事を見抜けなかった以外は伊達ではない観察眼を備えているようである。

 

「……そう。そういう事ならお言葉に甘えさせてもらうわ」

「パチュリーと言ったかしら。フランが他人に興味を持つなんて珍しいわね」

「うーん。やっぱりお姉様も忘れてるか。ノーレッジといえば例の魔導書の著者の家系でしょ?」

 

 何故かフランドールが『例の魔導書』という言葉を出した直後に警戒態勢に入られた。無意識か否か、いつの間にか彼女の左手に握られている紅い槍と私を睨みつける紅い瞳は今にも私を穿たんとしているようにも見える。

 こんな真似をされれば私も暢気にはいられない。鋼鉄の盾を作り出した私の判断は間違っていないだろう。しかし段々と彼女に収束していく力を見て初めて命の危険を感じた。

 

 間違いなくフランドールやエカルラート以上。あの槍は私の鋼鉄の盾さえも容易に貫くに違いない。冷や汗が止まらない事など生まれて初めてだ。今すぐこの場から逃げ出したいのに、私の足は一歩も動いてくれない。私の身体は一つもいう事を聞いてくれない。

 蛇に睨まれた蛙。ならばいっそのことナメクジでも召喚してやろうかという危ない思考に行きついている。正常で冷静な判断ができないなど魔法使い失格か。

 

 レミリアが私の方へ一歩踏み出す。私の足はまだ満足に動かない。

 いよいよ拙いかと覚悟を決めた私の前に立ちふさがったのは歪な影。フランドールが何故か私を庇うようにして立っていた。

 

「お姉様、冷静になりなよ。この子は確かにノーレッジ家の娘でエカルラート家で過ごしていたけど、あの時の魔導書の件には関わっていないよ。まだ五十歳くらいらしいから」

「そう。私も少し過敏になりすぎていたようね。悪かったわ」

 

 急に敵意を向けられて、今度は不気味なほど急に敵意を仕舞われた。まったく訳が分からない。今日の私は運がいいのか悪いのか。

 しかし他人に謝れる程度の常識はある様でなによりだ。自分の非を認めずに他人のせいにするなんてことも珍しくない。だからといって唐突に敵対心をむき出しにしてきたこの吸血鬼への警戒を解くことはできない。ここであっさり手を引いたのも何か裏があるように見えて仕方がないし。

 

「それで? フランが興味を持ったのは名前だけが理由ではないでしょう?」

「よくわかったね。まあこれが本命なんだけど、パチュリーを紅魔館に住まわせれば良いんじゃないかな~と思ってね」

「はぁ? そんなこと初耳なのだけれど」

「そりゃ初めて言ったもの。で、どうよお姉様」

 

 先ず私の意見を聞けよ。なして私の決定権が放棄されているのだ。

 

「別に良いんじゃない? フランの話し相手にもなってくれるだろうし、何よりもエカルラートの内情を知っていることは大きいわね」

「何? 私を利用しようとしているのかしら? そもそも私がここに住むメリットなんて無いわ」

「例の魔導書、ここに住むならいつでも貸してあげるよ? それに図書館の本も読み放題。私たちは貴方の知識を利用する。貴方は私たちの本も、権力も利用できる。Win-Winでしょう?」

 

 むむむ……本当に他人の足元を見てくる。しかもそれがドンピシャで私の望むものだから余計に揺らぐ。

 

「ここの財力を使えば手に入らない物はほとんどない。それこそ天体観測用の望遠鏡でも魔法薬用の薬草でもね」

「…………良いわ。ここに住みましょう。その代わり貴方たちの事は大いに利用させてもらうわよ?」

「えぇ。望むところよ」

 

 本当に不思議な事にこの姉妹はまったく私を疑おうとしない。後ろに控えている長身の妖魔の方がよほど私を警戒しているのが分かる。確かに私は敗北者であり、既に敵意はないがここまで警戒心を解かれると気持ちが悪くもある。

 それでも一度決めた以上は(しっぺ返しが恐いから)よほどのことが無い限り此処に迷惑をかけようとは思わないしできる限りは協力してやろうと思う。その見返りとして利用できるところは存分にさせてもらうが。




驚きすぎて語尾が普通になってしまったから誤魔化そうとしているお嬢様の図

奴隷商に売り飛ばされた悲しい歴史もある少年十字軍。パチュリーさんは自らの意思で所属を変えていますが
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