北上麗花のとある1日   作:蒼石 梢

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書かないと本当に書けなくなるね


私のしたいこと

「それじゃあ簡単な自己紹介からお願いします」

とあるスタジオの応接室で、机を挟んでそう声を掛けられた。

この場には私を入れて4人だけ。

1人は今、声をかけてくれた男の人。その後ろで大きなカメラを持った女の人。もう1人は、私の後ろで少し心配そうにしながら部屋の隅で立っている。

 

私は大きく息を吸うと、わかりましたと返事をして、ようやく言いなれてきた言葉を紡ぐ。

「芸能事務所765プロ所属、北上麗花、20歳です。アイドルとしてみんなをわーいって元気にしますね♪」

そのあと、ニコッと笑って見せる。対面の相手の表情が少し緩みを見せた気がした。

 

今日のお仕事は有名なアイドル雑誌のインタビュー。私たちの先輩である、天海春香ちゃんや萩原雪歩ちゃんが何度か特集組まれてるんですって亜利沙ちゃんが言ってたっけ。

私は新人特集という事で呼ばれたらしいけど、うまく行けばまた使ってくれるかもしれないとプロデューサーさんは言ってました。これは頑張らなきゃいけませんね。

「北上さんは元気がいいですね。それじゃあ早速質問していきますね」

「はい、何でも答えちゃいますよ♪」

インタビュアーさんの質問は事前に事務所で確認済みだしスムーズに進んでいく。劇場のこととかレッスンについてとかそう言ったことを話して、次は私のオフについての話になった。

「特技は肺活量とありますが?」

「そうなんです。私、よく山とか登っていて。上の方は空気も薄いですからそのおかげで鍛えられたのかも」

「へぇ意外とアウトドアなんですね。他にも何かエピソードはありますか?」

「肺活量といえばこないだ、劇場のみんなとバーベキューにいったんです」

「劇場の皆さん、仲がよろしいんですね。でも、それと肺活量に何の繋がりが?」

「はい。それでコンロに火が弱くなっちゃって。私がフーって吹いたらボォーってなったんです♪」

「に、人間ふいごですか。さすがは特技なだけありますね。普通はできませんよ」

「ありがとうございます。でも、ちょっと火が強すぎてお魚さんが真っ黒になっちゃったんです。火加減って難しいですよね」

「はは、えっと、次いきましょうか」

そう言ってインタビュアーさんは慌てて次の質問にいってしまった。

あらら、引かれちゃったみたい。けれど、この感じはもう慣れっこ。昔からですしね。

プロデューサーさん曰く私は少し変わっているらしいですって。言った後にすぐ、それが麗花らしさだからそのままでいてくれって言ってくれましたけど。

私らしいなんて普通なありふれたお返事。それが1番嬉しくてあの時は思わず抱きついちゃったっけ。プロデューサーさんったらすぐ、逃げちゃいました。顔を真っ赤にしてやらないようにって起こられちゃいましたけど、うーん、意地悪ですよね。

そんなこんなでインタビューも最後の質問。

最後の質問の答えはすでに書いて提出済み

でも、本当の正解かは自分でもわからないんですよね。さてさてその質問とはーー。

 

「あなたはどんなアイドルになりたいですか?」

 

新人に聞くならオーソドックスなものだと思う。もちろん質問には答えたけど、しっくりこなかった。

私が答えたのはみんなを笑顔にするアイドル。もちろん嘘じゃないんですけど、なんだか胸の上辺りがもやもやってするんですよね。少し嫌な感じです。

インタビューは無事終わったし、堂々として良かったよってプロデューサーさんはほめてくれたけど、複雑です。

 

ねえ、あなたならその答え知ってるのかな?

アイドルを続けたらわかるのかな?

いつか教えてくれますよね、プロデューサーさん。

 

 

 

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