キチガイ兄弟。
ジオン軍ではそう裏で呼ばれていたらしい。
自らをジオンの騎士だと名乗り、二人して命令を聞かずに戦い、敵を殺しまくった。
とはいえ、テストパイロットだったニムバスと最初からジオン軍の部隊にいたヘグタスとは経験の差が違う。
いや、あろうとなかろうとどちらにせよ、互角の技量を持っていた。
それは認められていたが、人格に問題ありとされ勲章などは貰っていない。
それを不思議がる様子もなく、きっと戦争が終われば……と考えたのかさらに戦闘に身を入れていた。
ニムバスは別行動なので別だが、ヘグタスはそうである。
むしろ、戦闘の影響でさらに酷くなった面もあるかもしれない。
そんなことを言われていた血潮の死神こと、ヘグタス・シュターゼンは今俺の目の前に、イフリート改を模したかのような姿のイフリートで現れた。
いや、もしかしたらあのイフリートこそがイフリート改の原型だったのでは?と、考えた。
イフリートを素体に、グレネードランチャー、ミサイルポッドを腕と脚に付け、腰には二刀の剣状のヒートサーベル。
両方のマニピュレーターに持たせているのはザク・マシンガン………ではあるが、銃身の下部にグレネードランチャーを付けてある。
「………エースだぜ」
「……戦力的にもこちらが不利だ。ここは撤退するしかない」
アラン隊長は撤退を決め、俺は目の前のイフリートに恐怖を抱く。
何故なら、その気配は禍々しいのだ。
そして、どこからか微かに誰かを怨む声が聞こえる。
しかし、ゆっくり聞く暇はなかった。
「逃げるわよ!」
「撤退って言っておけよ」
「こんな時にまで茶化さないで下さい!」
リル少尉が叫び、デニスさんがそれにツッコム。
そして、俺はそれを批判する。
ホアさんとは既にミノフスキー粒子がまかれたのか、通信は不可能である。
「我が名はヘグタス・シュターゼンッ!そこのガンダムッ!我が血の贄となれ!」
と、外部スピーカーで俺達に言い放つと俺を狙ってきた。
シュターゼン?どこかで聞いたことがある。
だがしかし、今はそんなことを考えている暇はない。
逃げなければ、死ぬ。
「死んでッ!たまるかぁ!」
「皆!クガヤ機を全力で守るぞ!」
『了解!!』
撤退に移行しながらも、後ろの陸ジムは100㎜マシンガンで追い掛けてくるイフリートを撃つ。
だが、それは見切られて避けられた。
アムロにも匹敵するのではないだろうか?
俺では……勝てない。
勝てるという気持ちが……出ない。
だけど、生きなければ。
生きなければならない!
「死んでぇぇッ!たまるかぁぁぁッ!」
俺はアベンジャーの胸部にあるマルチバルカンと100㎜マシンガンで同時射撃する。
短時間だが弾幕を張ったのだ。
「ええい!小細工を!」
時間は少しでも稼げた。
後は…………!
「全力で逃げる!」
「ジャンプを使うんだ!」
「くぅっ!」
俺は脚部にあるホバーユニットを起動させて、地面を流れるように進む。
それを追い掛けるイフリートは、まるでボス級のゾンビのようだった。
「来るなぁァァー!!」
アベンジャーには有線ミサイルはない。
しかし、その代わりにマルチバルカンは多種多様な弾丸を扱える。
目の前までに近寄ってきたイフリートに、俺は残っている弾、散弾をぶちかます。
「くらえっ!」
「何っ!?」
ヒートサーベルを振りかぶっていた所に、イフリートが持つ、ショットガンより威力は低いとはいえよろけを取れる散弾は相手のイフリートの関節部や排気口に入り込み、内部を破損させた。
「ええい!貴様ァァ!」
それでも、無理矢理振り下ろしてきた。
俺は咄嗟に右腕に付いているガトリング砲を展開して、イフリートを狙うが反応がない。
「ッ!?弾詰まり!?」
マニュアルにも、後付けでアベンジャーのガトリング砲は整備性が極悪だとあったが、本当にそのようだ。
一発、イフリートの血のように赤い肩のアーマーに当たり、跳弾する。
それを見たヘグタスは直ぐ様、脚に付いているミサイルポッドをアベンジャーに照準を合わせた。
「死ねい!」
「間に合えっ!?」
一発目がアベンジャーの頭のすぐ横を通り、俺は操縦桿を引いてシールドを胴体に寄せながら後ろにスラスターで下がる。
「チィッ!運の良い奴め!」
ミサイルポッドから放たれたミサイルは、全てアベンジャーの斜め上に飛んでいき、上空で爆発した。
それと同時に霧から抜けて、視界が良好になる。
が、どうやらまだ逃がさないようだ。
バズーカの弾なのか、それとも………いや、解らないものは解らない。
ただ、ミサイルのようなものがリル機の手前で着弾し、驚いた。
「何よ!?」
「デニス!スモークを!」
「了解ッ!」
と、デニスさんが答えるのと同時に一機のグフが、俺に飛びかかってきた。
その手にはヒートサーベル。
赤熱化してるので、シールドで受け止めても腕を破損していたかもしれない。
「当たれっ!」
俺はトリガーを引いてグフを倒す。
しかし、さらに横っ腹から砲弾。
今度はマゼラ・アタックとザク・タンクの砲撃戦特化が、こちらにブッパしてくる。
「畜生め!」
俺はマシンガンで応戦するが、前に出てきた新しいグフとグフのシールドとドムのバズーカを持ったザクⅠが現れて、マシンガンの弾を弾いてしまう。
「クガヤ准尉!撤退だ!早く!」
「クッ!相手が離してくれませんっ!」
通信は届いている。
俺も逃げたいのは山々だが、バズーカで逃げ道を妨害される。
「ちょっと!それくらい早く切り抜けなさいよ!」
「無茶言わないのリルちゃん……」
と、向こう側では楽しげだが俺は最早必死である。
迫り来る砲弾を避けながら反撃するが、たまにマゼラ・アタックに当たるだけで大抵は外れるか相手のモビルスーツが防御してしまう。
そのくせ、逃げさせないのだからいやらしい。
「くっ!埒が明かないッ!」
俺はマシンガンをスカートアーマーに懸架して、ビームサーベルを抜刀する。
ビームライフルがあれば、あの盾を貫通できるが無い物ねだりだから、意味はない。
しかし、ビームならまだある。
「うらあぁぁぁーー!!」
ビームサーベルを振りかぶり、下ろす。
「な、何だ!?」
相手としては射撃戦で翻弄して撃破するつもりのようだったが、それは俺の知らぬ所。
どちらにせよ、その判断は間違っており、彼らは不運だった。
それだけだ。
乗っているパイロットが経験的には新兵、という要因もあったんだろうが。
「ビーム!?がっ!!」
ビームサーベルがグフの盾ごと、グフを切り裂く。
切った先にはコクピットが運よくあり、それごと斬ったが後ろに回ったザクⅠがバズーカを撃つ。
目標は勿論俺だ。
「シールドっ!」
シールドでバズーカを受け止める。
爆発でシールドは吹き飛ぶ。
かなり近い距離だった。
だが、ビームサーベルをコクピットにブッ指す時間は生まれた。
「てぇやぁ!!」
「ワア゛ア゛ア゛ァァァァァーーッッ!?」
ピンクの光刃が、コクピットを貫く。
ザクⅠのモノアイが、力を失うように消え、機体が停止してアベンジャーに寄りかかってくる。
それを跳ね除けてマゼラ・アタックがいる方へと蹴飛ばす。
「た、たい」
ズシャッ、と潰されたマゼラ・アタックの小隊長の最後の
「……情報の提供をありがとう。しかし、
目の前の彼はSTR-1とそれに連なるモビルスーツ試験部隊を任されている、中隊長ネマァク・ヨーゼンルフ中佐だ。
彼は根っからの現場主義で、基本的に後方を担当するが前線の状況を理解してくれる数少ない高官である。
連邦にはこういう人物は中々いないので、本当に運が良い。
もう一年戦争分の運は使い果たしたんじゃないだろうかってくらい。
「エースらしき機体が、血潮の死神と名乗っていましたが………」
と、アラン隊長は言う。
すると、ヨーゼンルフ中佐は目を丸くする。
「まさか、あの異常者と会敵したのかね!?」
どうやらアイツが何者か知っているようだ。
そして、説明されたがどう見ても異常者でキチガイだ。
ジオンの騎士って………
「あっ……!!」
「ん?どうかしたのかい?」
名字になんか聞き覚えがあると思っていたが、今になってようやく思い出した。
が、ちょっと声が出てたようだ。
アラン隊長が不思議そうに此方を見ている。
「あ、いえ。特に意味深な事じゃないので」
「それを言われたら気になるではないか」
え、ちょっ!?
ヨーゼンルフ中佐!?
「いや、本当に何もないです!!」(焦)
大変だ……………
数日後、原作から大きくかけ離れた出来事に出会った。
「今日から君達は
どうやら試験部隊として、普通の戦闘部隊として名を上げたからかペガサス級で独立艦隊に配属されることになった。
え、マジ?(;`・ω・)?
ヘグタスの呆気ないやられ方でしたが、運がついてなかったのと撤退戦な上に、特にミサイル系統の節約をしているのでどうしても近接戦に持ち来なければいけない訳で。
オデッサの戦いの後を鑑みてそんな表現になりました。
今思い返しても、08のトップ小隊のマトモだった二人に悲哀の涙が………マジで
………一人二人位だけで感想来なくて寂しいなぁ………なくても書き続けるけども。