さてさて無人島生活も序盤も序盤。まだ二日目である。
我がBクラスは特に大きな混乱もなかった言い方悪いけどこの環境はちょっと不便なキャンプ位だしね、とは思っていたりする。
とはいえ、クラス全員から大きな不満も出させず回してのける一之瀬さん流石っス。さす之瀬さんマジパないっス。
そんなことはさておき、やはり直面するのは食糧事情。僕たち私たちは押しも押されぬ高校生、そう食欲旺盛な若い男女なのである。果物だけじゃぁ満足できない身体に、この甘ったれた豊かな現代社会でみっちりもっちり鍛えられあげてしまっている。ヘルシーな食事もお肌にゃ良いが、タンパク質たっぷりの食事にもありつきたい所存でございまする。
と、いうわけで、俺はロンギヌスの槍(尖った棒)を握り締め、川の中の様子を伺っていた。気分は川の濱〇優である。…この伏字の位置だと全然隠れてないなコレ。
ちょっと離れた場所でも同クラスの男子が川魚達を取ろうと躍起になっているけれども…戯れているようにしか見えないな、うん。あと魚が逃げるから波を立てるのは止めていただきたい。
俺は気を取り直して川の中を眺める。水源が良いためか川魚達はそこそこいる。
こんな所でも学校側が配慮しているのかと思うと、その苦労に涙がちょちょぎれる思いではあるが、食料が欲しいのでこの魚達には塩焼きになっていただきます。ちょちょぎれるって日本語、今日日聞かねぇな、久々に使ったわ。
川魚達は悠々と川の中を泳いでいるが勿論油断などしていない。俺達みたいな人間を、それより自然では狡猾な動物たちに常に注意を払い、警戒し、子孫を残すために懸命に生きている。
今回は俺とその魚たちの生存競争。ロンギヌスの槍(棒)を逆手に構え、神経を研ぎ澄まし、魚達の動向を伺う。魚の位置、水の入射角を思い出しながら、狙いを定める。野生の魚とて常に警戒できるわけではない。自分が相手から感じ取れるほんの僅かな隙を、外から殺意を持って付き込まれる槍に気付くことの出来ないが必ずある。俺は槍をすっく、と突き刺す。その手応えは勿論魚のもの。俺は彼らとの勝負に勝った。まずは一勝。心の中ではおっさんが取ったどー!と叫んでいるが恥ずかしいので表には出さない、というか出したら「何だあのイタイやつ…って」さらにクラスで浮くことになる。捕まえた魚は水の張った容器に放り入れ、次の獲物へと向かう。…一人分は兎も角、クラスの分の魚取るってめがっさ大変やんけ。
さくーっと魚を取って戻る。と、別クラスの知らん奴が増えていた。
話を聞くと、他の探索班がCクラスを追い出された男子生徒を発見し拠点に連れて来たとの事。彼のビジュアルは大分ボロボロである。Cクラスは浜辺で大いに海水浴を楽しんでいたし、それに異を唱えて龍園に懲罰を食らって追い出されたのだろう。暴れドラゴンこと龍なんとかさんがトップだと苦労しますねCクラスは。
Cクラスの男子によって、食いぶちは増えたが一番の問題だった食糧確保もも徐々に解決しつつある。Cクラスは論外としてAクラスも同等かそれ以上の速さで解決。Dクラスもぼちぼち終わると想定すると、何か仕掛けてきてもおかしくはない。リーダーを他クラスに当てられると50ポイント失う以上、最大でここから±約150程度の増減はある。仕掛けてきそうなのは準備万端の可能性の高いAクラス。俺が無暗に動いても徒労に終わるだけなので取りあえずは拠点で様子でも見てましょうかね。
三日目、ぶっちゃけると他クラスが攻めてくるとかの面白イベントは無し。DクラスがBクラスの現状把握に来たという点と、Cクラスがリタイアして船に戻ったという話、そしてDクラスにも龍なんとかさんに楯突いた人間が追い出されてCクラスの生徒を匿っている、という話だった。俺はというと食料調達ノルマ(魚)を終えて自家製ハンモックの上で休憩中。多少蒸し暑いが川のせせらぎと風通しも良いので、ほとんど普通のキャンプを楽しんでいる状況。平和だけど退屈しちゃうね全く。
今ある数少ない違和感のある情報と言えば、B・DクラスにCクラスの生徒がいることである。Cクラスはもう船に戻っている状況で戻らないのは居心地が悪いのもあるだろうけど、こんな現代人には過酷な場所に残り続けているのが不思議でならない。あくまで仮定の話だけれど、Cクラスがリーダーを見抜くためのスパイと仮定すると多少は納得できるのだが、真意は不明である。と、なるとスパイ(仮)は龍なんとかさんの忠実な部下、という話になるが、それを決定づける証拠が現状何もない。…情報収集のために多少動く必要がありそうですねぇ。赤羽、動きます。とか考えていたら下から声が。
「お~い赤羽く~ん。ちょっと良い~?」
下を覗くと我が学級委員長である一之瀬大先生である。ひょいっと俺はハンモックから降りる。
「え!マジ!…!大丈夫なの赤羽君!?…怪我とかしてない!?」
一之瀬がこっちに駆け寄ってくる。
俺の寝床は地上から5メートル位の所でプラプラしているハンモック。普通は。落ちたら怪我じゃ済まないからね。
「大丈夫だ、問題ない。」
一之瀬さん心配から一転、マジでドン引きのご様子。俺も俺にドン引きである。
「えぇ…降りるのはまぁ良いとして、どうやって登ってるの?」
「そりゃあ駆け上がれば良いだけだけど。」
「…それ出来るの赤羽君だけだよ…そうじゃなくて!ゴメンなんだけど、明日から魚もうちょっと取ってもらえないかなって。果物だけだと不満が出ちゃってさ。お願いします!」
「それくらいならお安い御用で。」
「どこか行くの?」
「ちょっとお散歩でも。じっとしているのも暇だしねぇ。」
「にゃはは、多少クラスは落ち着いては来たけど、ここまで余裕あるんのは赤羽君だけだと思うよ。完全にサバイバル楽しんじゃってるもん。」
「こーゆーの全然嫌いじゃないんでね。んじゃ、ちょっとしたら戻るよ。」
「はーい、いってらっしゃい。気を付けてね。」
そう言って俺は拠点を後にする。さて情報収集の始めますかっと。