時間は変わりまして七日目、つまり最終日である。
ぶっちゃけやることは無いので、暇である。
暇つぶしに龍園探しでも行こうかとも思ったが、伊吹に探さないと言ってしまった手前見つけてしまうのも気が引ける。時間も無いし見つけられるか微妙ってこともあるけど。
俺は特に何をするわけでもなくハンモックでぶらんぶらんと暇つぶしである。もう少しで短い間だったが愛しのマイホーム兼秘密基地ともお別れである。これから待っているのは帰りの豪華客船での優雅なクルーズ…にしたい所である。
時間になったので全てのクラスが点呼場所へと集まる。
目立つのはCクラスの点呼場所にいる唯一の人物…やっぱりいましたね龍なんとかさん。一週間の無人島生活で大分ワイルドな見た目になっていらっしゃいます。
結果が発表となる。
4位、Cクラス0ポイント。3位、Aクラス120ポイント。2位、Bクラス190ポイント。1位、Dクラス225ポイント。
Bクラスの消費ポイントをきちんと把握はしていないが、おそらくスパイの手からはポイントを守れたんじゃないんですかねぇ…知らんけど。後で一之瀬に確認しておこう。
所は変わって船の中、無人島での生活は終わり、うって変わって豪華客船での天国の様な生活の始まりである。
船内の食事を含む全ての施設の利用にはポイントが必要ない。和洋中の料理からジャンクフード、スイーツ含め全て食べ放題。映画や演劇の公演、プール、カラオケ、ゲームセンターまで遊んでも遊び尽くせない程施設が充実していた。
それもあってか、生徒たちは少し遅れた夏休みを各々満喫していた。
で、俺はというと、船内に備え付けてあるトレーニングルームにいた。一般的なジムにある設備は一式揃っているし、公営よりも良いもの揃っているのがパッと見て分かる。何でもあるよねこの豪華客船。
ガララと扉が開き、誰かが中に入ってくる。珍しくお客さんが来たと振り返ると一之瀬である。というか俺がほぼ貸し切りなだけあって俺の部屋ってわけではないけどね!
「あ~赤羽君見つけた!どこにも居ないから無人島に永住するって教師を説得しちゃったのかと思ったよ~」
「…一之瀬でもそういう冗談は言うのね…」
「にゃはは、もしかして暇なときはずっとここにいた?」
「まぁそうだな、身体動かせる所がここ位しか無いのよね。暇な時は殆どここに入り浸ってるねぇ。」
無人島生活からの解放感か、遊びたい盛りの高校生しかこの船にいないからか。この船のトレーニングルームには人の出入りは殆ど無い。実質貸し切りなので快適ではある。
「そうなんだぁ…。で、気づいちゃったんだけどさ、赤羽君は今回の無人島生活で1ポイントも使わなかったよね?テントも使って無かったし、食事も困って無かったし…もしかして意識してたりした?」
「いや、そんな事は無いぞ。トイレは普通に使ってたしな。」
そういえばなぁ、と無人島生活を思い返す。厳密に言うとポイントが必要無かったと言った方が正しいのだが。
「いにゃあ~それは流石にノーカンでも良いんじゃない?赤羽君みたいな人がもっといたら楽だったかなと思っちゃったよ。」
「俺みたいな奴これ以上いたら、それこそ学級崩壊だろ…」
「それは確かに…」
彼女もマズい事を言ってしまったと思ったのか、一瞬の沈黙が流れる。
「…あとさ…もしかして無人島の時、裏で何かしてた?Cクラスの子、いつの間にかいなくなっちゃってたし。」
彼女もCクラスの人間はスパイだと推測していた様だ。クラス内に裏切り者がいたのは想定していない様だったけれど。
クラスをまとめて無人島生活を営むだけでも相当大変だったろうに。聡い女の子である。
「…いや、特に何も。Aクラスとやりあいかけたが、そこはとりあえず切り抜けたよ。」
「え!?何それ!大丈夫?怪我とか無かった?」
「全然問題なし。Aクラスはそこまで手荒な真似が得意な奴はいなかったしね。葛城はやれそうだったが、日和って仕掛けて来なかったし、期待外れというか何というか。」
「アハハ、そんな風に言えるのは赤羽君だけだよ。」
「違いないな。…そ~いえば時間ができたら聞こうと思ってたのだが、Aクラスの坂柳ってどんな奴だ?」
「坂柳さんかぁ。私も詳しい情報は知らないんだけど、葛城君とクラス内で対立してる女の子で、他のクラスに仕掛けてポイント変動させたい坂柳さんと、地力で差をつけていきたい葛城君で対立してるってイメージかにゃぁ。」
あ、女の子だったのね。眼鏡かけた線の細い弱そうな男子だと勝手にイメージしてた。
「ほぇ~、Bクラスとしては坂柳派に気を付けた方が良さそうねぇ。」
俺たちが情報交換兼雑談を交わしていると、扉がガラガラと開かれ、複数人の足音が中に入って来る。
制服に身を包んだ学生とそれに守られるように女子生徒が入って来る。このトレーニングルームに運動には似つかわしくない人間が多数を占めてしまったこの光景は異様ではある。
「逢瀬の所、失礼しますよ。それとも、また時間を改めましょうか?」
「え?この光景が万が一ラブコメに見えているとしたらどんな目してんの?もしかして有名な映画かラノベにそんなシーンあるの?もしあるんだったら教えてクレメンス。」
トレーニングルームというラブコメには程遠い場所である上、ちなみに走り込んでいた為に、俺は上裸で下ジャージである。
「…赤羽君空気読んでよ…」
一之瀬に釘を刺されてしまう。こういう空気をぶち壊したくなってしまうのは俺の悪い癖である。一応小声で謝っておくが、心の中ではデビルマンがスマァ――ン!って言っているので全く反省はしていない。
坂柳が一度咳払いをして話し始める。
「私は坂柳有栖と申します。」
「それはご丁寧に。俺は赤羽巧。で、一之瀬に用か?」
「いえ、今日は貴方に用があってきました。今まではノーマークでしたが、無人島で面白い動きをしていた様なので。興味本位で一目確認しておきたかっただけですよ。」
「ほ~ん。その割に引き連れてる人数を見ると穏便に済ませる気は無さそうだけれど。」
「これはボディガードですよ。敵が多い身のもので。」
「さいですか。今仕掛けて来るなら相手するが。」
「そんな事はしませんよ。この程度の人数で相手になるとは思っていませんし。」
葛城派との無人島での一件は把握しているらしい。
「…それでは、またの機会に。」
そう言って坂柳+ボディガード達はトレーニングルームから出ていく。うわトレーニングルーム使わないのか冷やかしかよ。俺の隣のレックカールが泣いてるよ。
「…ふぅ。びっくりしたね。」
空気化してた一之瀬が息を吹き返す。
「あれが坂柳ねぇ…葛城と対立してるって言うからどんな奴かと思ってたけど、なんか想像と違ったなぁ。でも頭は切れるんだろうなぁ…。」
「…で、さっきの会話で気になったんだけど、無人島でAクラスと喧嘩みたいになったって話だったけど、もしかして結構ヤバかったの?」
一之瀬が心配そうに聞いてくる。あまり掘り返してほしくは無かったが、話を蒸し返されてしまった。
「まぁ10人位はいたかねぇ…ほぼ全員素人同然だったから。威嚇がてら素手で木片割ったら戦意喪失してたけどな。葛城とは一回やってみたかったんだけどねぇ…」
「うわぁ…」
一之瀬さんドン引きである。
「私としては、あまり赤羽君にはあまり無茶しないで欲しいな。怪我してからじゃ遅いんだよ。」
「とは言っても俺はこれしか無いからねぇ…」
この学校生活はどちらかというと頭の良さ、チームワークが重視されている傾向があるように俺は感じている。というわけで俺はこの学校生活ではあまり自由には動きづらいのが中々辛い所だったりする。
「じゃ、私も戻るよ。あまり無茶はしないでね。」
「へいへい。」
というわけで、一之瀬との逢瀬(謎)も終わりである。…坂柳に聞きそびれたな。あまり会いたくはないが、今度聞いておこう。
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