嬉しくて3階の窓から5点着地です…
で!何だかんだで始まってしまいました優持者試験。指定時間に集合すると各々のクラスは既に集まっておりました。試験開始と同時にBクラス主導で自己紹介が始まっていく。あれ?何か事前協議してましたっけ?俺、何にも話聞いてないんですけど!?流れとしては議論を進めて行きたいBクラスと静観を貫く方向性のAクラス。騙し合いを前提にすると、少しでもポイントを稼ぎたいBと結果1狙いのAクラスとでは話は平行線になるわな。で、今回の方式ではBクラスの団結力はあまり有効に働かない試験で、Aクラスは能力が高いにも関わらずクラス単位で守りに入られている現状。こりゃあ厳しいっすわ。この時間で情報集めて優持者見抜くって普通に難易度高いっすよね。
特に大きな進展も無く一時間が経過する。改めて思うのは俺が頭の良さを問われる試験に向いて無いって事。とりあえず脳トレの本でも読んでおきますか。たぶん読まないけど。
そして2回目も大きな進展は無く時間は過ぎ去ってします。こりゃ俺には無理だわ。コミュ力が足らん。情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ!そして何よりも ―― 速 さ が 足 り な い !!
…そんな冗談はさておいて今日はとりあえず解放された。今日も今日とて俺はトレーニングルームにいますよ。場所がワンパターンだって?ぼっちは人のいる所は苦手だからね!エネギリッシュ引きこもりよ!分かってくださいコミュ障の気・持・ち!
「やっほ ~!お!今日も頑張ってるね~!」
ふい~と扉に首を向けると一之瀬の姿、俺はランニングマシンを飛び降り、休憩がてらドリンクを片手に彼女の元に向かう。
「はろはろ~。で、今日は何の御用で?って優待者試験の話ですよねやっぱり。」
「うん!大体はその話。でさ、そっちのグループはどんな感じかにゃ?」
特に秘密にする必要も無いので、グループでの現状を正直に話す。ちなみに優待者でも無い。
「にゃはは…私たちのグループも大体そんな感じかな~。Aクラスの防御が固くって。時間内に優待者までたどり着くのは結構難しいかも。」
一之瀬が率いてるグループでも大変なのね。そりゃこっちも厳しいわけだ。
諜報活動(盗み聞き)も出来ないわけではないが、10以上のグループ、かつ全クラスの情報を仕入れて判断するのは物理的に無理だ。エース級が揃っている所に集中しても良いが、試験の禁止事項が細かすぎてノーリスクで出来る保証はない。今回の試験は俺と相性が悪すぎる。
「一応、私が知ってる分だけだけど、Bクラスの優待者の情報、赤羽君は知りたい?」
ぶっちゃけ、同じクラスの優待者の情報は興味が無い。同じクラスとはいえ、俺の場合は漏らす相手が、そして力づく聞き出される可能性が無いっていう方が正しいのだけれど。
「いや、止めとくよ。俺から漏れる可能性もゼロじゃないしな。」
「赤羽君はそんな人じゃないと思うんだけどにゃあ…」
「万が一もあるからな。試験の結果に直接結びつく重要な情報は、ここぞという限りは漏らさない方が良いでしょ。たとえクラスで信頼してる人物だったとしてもさ。信頼も一歩間違うと妄信になる。」
「そうなんだけどさぁ…知ってる事が多いと抱え込んでうがー!ってなっちゃって大変なんだよねぇ…」
グループ内での突破口が見つけられていない現状で、クラスの事も考えないといけない。流石の一之瀬も大変なご様子です。お疲れ様です。
「ここで俺から一つだけ言わせてもらおう…ドンマイ♪」
「…他人事。」
ぶ~いじわる!、と一之瀬がめがっさ不機嫌そうな顔で呟く。彼女としては俺に愚痴を聞いて欲しかったのかもしれない。俺なりの励ましのつもりなんだけど、どうやら伝わらなかったらしい。壊れるほど愛しても1/3も伝わらないのでしょうがないね!ドンマイ!俺!
友達全然いないから、ここで愚痴言っても漏れないだろうしね。ドンマイ!俺!泣きそう!
「あともう一つはさ、無人島試験の話。あの時の事いろいろと思い出してたんだけどさ、やっぱり赤羽君はBクラスの為に動いてくれてたんじゃないのかにゃ~って思ってさ。」
「ほ~ん。」
「Cクラスを追い出されてBクラスに来た子の事なんだけどさ、私も最初は疑ってたんだけど、Bクラスに馴染もうって姿勢を見ているうちにさ、情が移っちゃってまぁ大丈夫かな~って思っちゃってたんだよね。でもさ、6日目の夜に居なくなってちゃって。夜になっちゃったし探しにも行けないし、どうしよっかな~って途方に暮れてたんだ~。でさ、赤羽君どうしてるかな~って思って寝床に行ってみたら居なくってさ、もしかしたらって思っちゃったんだよね。」
「…俺が気晴らしに散歩行ってただけだとしたら?」
「それも何か違うかなって。試験の最初の方はさ、結構出かけるな~って思ってたんだけど、Aクラスに行った後位かな?食料調達とか最低限しか動いてなくてどうしてかな?って思ってたんだけど、赤羽君が独自で情報仕入れてCクラスの子がスパイだって判断したと仮定すると納得できるんだよね…どう?当たってる?」
「…まぁ、おおよそは。いや~参ったねぇ。」
流石、我が学級委員長である。腫物扱い気味の筈の俺の事もきちんと見ている。そして頭も切れる。だから、皆が彼女を信頼してクラスを任せられるのだろう。
「…あんまりさ、一人で抱え込み過ぎないで欲しいかなって。私たちは頼りなく見えているのかもしれないけどさ。私もいる。クラスの皆もいる。誰でも良いから相談して欲しいかなって思うな。何かいいアイデアがあるかもしれないし。抱え込み気味の私が言っても説得力無いかもだけどさ。」
「…俺なりに、クラスの事を考えて動いたつもりだったんだけどな。俺の出来る事には限界はあるしな。頭の出来もそうでもないし。本当にヤバそうな時は相談させてもらうよ。」
ふと見やって俺の目に映るのは委員長としての彼女。そしてそんなしがらみから解放された自分を心配してくれる普通の女の子。
「…もうこのクラスになって何か月か経つけどさ、今回の試験で赤羽君の事、実は全然知らなかったんだなって。」
「ま、そんなもんでしょ。相手の事を理解したつもりでも、そうじゃなかったりする。十数年生きてきて人には言えない事くらい、1つや2つも、それ以上できて、それは他人に容易に打ち明けられるもんじゃない。一之瀬もそうなんじゃないのか?俺は一之瀬がAクラスじゃないのが不思議でしょうがないんだけどな。」
「…そうだね…でも、私のはまだ秘密にしておきたいかな。」
そう言う彼女の瞳は俺を映していないように見えた。変えられない過去。彼女の中にある過ちと後悔。もしタイムマシンなんてものがあるんなら、どんな犠牲を払ってでも本当に本当に変えたかった過去が。
その瞳を見て俺も思い出してしまう。俺自身の過去、戻れない時間。何か出来たのではないかという後悔。どんなに努力しようが拭い払えない身体を蝕み、突き落とすどうしようもない毒を。
「で!も!それとこれとは話は別だよ!委員長の私にさえ黙っていたんだから、お詫びとして、今度何か奢ってもらうからね!」
「えぇ…まぁ、それはこっちにも多少非はあるので了解。あるんかなぁ…」
「あ!る!の!約束だからね。」
「…はいよ。」
沈みかけていた俺の気持ちを、強引に今に戻されてしまった。強いな、彼女は。約束を取り付けられてしまったのはしょうがない。
心に残った過去の棘。絶対に抜けないソイツを、いつか見向きをしなくて良い時が来るのだろうか。
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感想・評価もお待ちしています。話の流れ上使えなかった没ネタをポロリと話すかもしれません。
で、ここからは余談になります。
私の過去作をお読みの方は既にご存じかもしれませんが、どちらかというとシリアスな書き口が好みだったりします。
現状この作品では殆ど飄々というか陽気な書き口にしておりますが、
原作の関係上、人の心の中のトラウマ、そういったものに焦点が当てられる事があります。ですので、今後彼の過去、彼女の過去、何故彼がこの行動を取っているのか、そして彼女にどういった言葉を投げかけるのか。まだ私としてはフワッとしておりますが描写していきたいな、と考えております。そんな将来の話にも少し期待していただきながら、私なりに書かせていただきますので、応援していただけると嬉しいです。