実力至上主義の学校で平穏を求めてみる   作:さっきのピラニア

33 / 60
お久しぶりです。クオリティは相変わらずですが、お楽しみいただければ幸いです。


クリスマス

時は幕末、じゃなくてクリスマス。玄関を出ると、顔面に感じる沁み込む様な肌寒さと自分と外界の境界を感じさせられる。今は冬です。ベリーコールドなう。

集合場所に向かう道すがらは如何にもクリスマスっ、ていう飾りつけで街は埋め尽くされている。クリスマス気分に浮かれてここの学生達は使わなくても良いポイントを吐き出してしまうんですね。俺もその一人ですね見事に罠に嵌っております。

一応、マナーってことで早めには到着している。寒い!でも俺には站椿がある!あったかい!むしろ熱い!調整が難しい!

 

と、一人葛藤しているとパタパタ、と足音を慣らし、一之瀬さんがご到着である。

「お待たせ~!寒いのにゴメンね~!」

「全然、とぼかぁは定番の返し文句を言わせていただきますよ。」

「それを言っちゃったら台無しだよ…」

一之瀬さん呆れ顔である。

「どう?」

一之瀬がくるりとターンしする。服の感想を聞きたいとのご所望である。

コートを羽織り、制服と同じく短めのスカートである。今回は長めのブーツで対策はしている様ではあるが、冬に露出するのは寒そうである。

あと、普段はしないシトラス系の香りが鼻をつく。一ノ瀬さん香水付け始めたんですね。年頃の少女ですもんね。

「寒そう。特に脚あたり。」

「似合ってるかの感想じゃないんだね…」

「わざとでございます。」

「もうっ!」

バシッ、と抗議の意味を込めてか肩を叩かれる。悪いのは俺だけど痛いです一之瀬さん。

 

「ん~ぶらぶらとモールを回って~な感じにしようと思ってたんだけどどうでせう?」

「それもあり!あとさ、映画館に行きたいんだけど良いかな?話題の映画があって観てみたいんだよね~!」

「おーきーどーきー。んじゃ、映画館に行って見ませうか。」

「うん!」

 

と、いうわけで俺たちは映画館へ向かう。

 

他の人から見たらカップルに見えるのだろう。

これ絶対誰かに見られていて、冬休み明けに話題になって居心地悪くなるんだろうなぁ、思わず唇をもにょもにょさせてしまっていた。

 

「どしたの?唇もにょっとしちゃってるけど?」

「いやぁ…冬休み明け面倒な事になりそうだなぁ、と思っていただけでございますよ。」

「にゃはは、そうかもね。知ってる?この前の試験で仲良くなった人達で結構カップル出来てるって話?」

「知らないねぇ…そういう情報には疎いもんで。」

「特にBクラスはマンツーマンで勉強会したからそうなった人も多かったみたいでさ。私達もそう見られるのかもね。」

ふむんふむん、と言う事はですよ。今日出かけてるのが知れ渡ると本人達は兎も角、周りからはそういった目で見られる様になる、って事でせうね。ますます学校行きたくなくなったな…

「グモモモ…」

「そういう感じで他の人に見られるのは嫌?というか独特な唸り声だね…」

「こういう風に出かけるのは良いんだけど、付き合ってる様に見られるのはちょっとね…男心は複雑怪奇なのよ。」

「複雑怪奇なのは赤羽君の行動とか思考回路の方だと思うんだけどね…」

「それは自覚している。反省はしていない。」

「反省はしてほしいかな…」

 

取り留めない会話をぼちぼち繰り広げながら、映画館にご到着である。上映時間はもうすぐだったので、急ぎ目でポップコーンとドリンクを買い込み席へと向かう。

ポップコーンって定番だけど、音が出るからマナー的には良くないと僕は思います!食べるけどね!

映画の内容としては身分違いの男女のベタな恋愛って感じでございまする。

最後の方のキスシーンで一之瀬がゴクリと唾を飲んでまじまじと画面を見つめていた。女の子ってこういうシーンに憧れるんですかね?年頃だからなんですかね?

 

ぼちぼち 映画も終わりまして当初の予定のケヤキモール内の ウィンドウショッピングなうでございます。多少の居心地の悪さも感じますが、まあそんな気持ちは胸に秘めておきまして服とか小物とかを見ておりますよ。

「赤羽君は何か買いたい物とかある?」

「いんや~特には。そちらさんは?」

「部屋に置く小物とか買おうかなって感じかな~何買うかは決めてないけどさ。」

 

お洒落女子の一之瀬さんは部屋に置く小物をご所望のご様子。一之瀬は時折可愛い~、と言って小物を手に取ったりしているが、ぼかぁには可愛い物のセンスは分からず終いですよ。女子の基準がさっぱり分からなんだ。

部屋に置けそうな物は無さそうやなぁ、と思案している傍ら、良さそうなブランケットがあったのかう~んう〜んと悩んでいた。寒そうな格好してるから欲しいのでせうか?というわけで、ブランケットを手に取り会計に向かう。一之瀬は?な表情をしていたが気にしない気にしない。一休み一休み。

店員さんに包んでもらい、一之瀬に手渡す。

「折角のクリスマスだしな。一応プレゼントって事で。メリ〜ィクリスマァ~ス(ねっとり声)」

「…大事な所で茶化しちゃうんだ…でも、ありがとう。」

一之瀬は大事そうにそのプレゼントを胸に抱えていた。そんな大したもんでもないですけどね。

 

「私も何かプレゼントしたいな〜!」

お返しする気満々の一之瀬さん、中々に張り切っているご様子である。そんなに張り切らなくても良いのよ。

「あれとかどう?」

一之瀬さんが指差したのはファッション系も扱う眼鏡屋さんである。お世話になったこと無いお店ではある。

「伊達メガネねぇ…買おうなんて考えたことも無かったですねぇ…」

「意外と似合うかもしれないよ!」

一之瀬に引き連れられ、わちゃわちゃと眼鏡選びがスタートする。

手渡された眼鏡を幾つかかけてみる。時折笑いを堪えてる様子の一之瀬さん…流石にハリーポッター眼鏡は似合う人限られるんじゃないですかねぇ…

一之瀬チョイスで眼鏡は決定する。こういうのは人任せの方が良いのよね。意外と自分に似合うモノって分からないものです。

 

「と、いうわけで!赤羽君!メリークリスマス!」

一之瀬からのプレゼントを受け取る。いつかければ良いのかしらね。取りあえず今はかけときますか。

「って直ぐ付けちゃうんだ!」

「今かけとかないと。あんま付ける機会無さそうですしおすし。」

「まぁ赤羽君そういうのお洒落で付ける印象ないもんね。」

「次いつ使いましょうかね…」

「そこ私に聞いちゃうんだ…赤羽君の気が向いた時で良いんじゃないかな?」

「そうよね~。ま、こんな感じで出かける時には忘れない様にはしますよ。」

 

ウィンドウショッピングやら何故か贈られたプレゼントやらで想像した以上に時間は早く過ぎていく。

特別試験に振り回された一年だったが、こうして今日も一之瀬に振り回されている。振り回される日常も悪くない。退屈過ぎる日常よりかは…ね。

 

「買い物も終わったしそろそろご飯にしたいね!どっか寄って食べてく?それとも何か買ってく?」

「ん~適当に買い物して家で食べましょうや。ケーキを店で食べるのも面倒だし。」

「そうだね!そうしよっか!」

と、言うわけで、ケヤキモールでチキンとかケーキとかとかを買い込む。

で、俺の家に戻ってきますた。愛しのマイホーム、最近とある二人に入り浸られている気がするけど。もう気にしたら負けである。

 

購入した食料達をテーブル広げ食べる準備は万端。普段とは違う食事ってテンション上がりますよね?上がりません?

「「乾~杯!」」

というわけでカチャン、とコップを合わせ乾杯。かんぱ~い、君に会えて良かった、なんつって。

各々に買い込んだ食べ物を楽しんでいく。チキンやらケーキやらシャンメリーやら。そういえばこんな風にパーティーをやるのはここに入ってから何だかんだで初めてですなぁ。

 

「…すぅ…すぅ…」

食事を終え、お互いまったりしていると、気づけば一之瀬は穏やかに寝息を立てていた。遊び疲れたんでしょうかね。

「…寝ちまいましたねぇ。」

ふぅ、と一つ溜息を吐く。流石に今日一日過ごした相手を叩き起こして自分の部屋に追い出すのも野暮ですかね。

俺は布団を敷き。彼女を横にして布団をかける。さて俺はどうしませう、しょうがないので床で寝ますかね。

壁へ背中を付け、腰を降ろす。この体勢で寝るの久しぶりですなぁ、とか思いながら俺は瞼を閉じた。

 

 

 

◇◇ 一之瀬視点

 

食事が終わってしばらくしてから私は寝たふりをした。彼はどんな行動を起こすのだろうか?

彼は一つ溜息を付き、私を抱きかかえた。そして彼の普段使っているであろう布団へと横たえさせられる。

布団から感じる彼の匂いが、普段使用している事を私に実感させる。彼に包まれている様で少しドキドキする。

 

坂柳さん程ではないけれど、私も美少女だとは思っている。体型は彼女より魅力的だとは思っているけれど、彼の好みは分からない。

今日はクリスマス当日。坂柳さんは上手くいかなかったみたいだけど、もしかしたら、ってこともある。男子生徒のその手の話は時折耳にしているし、高校生で興味が無い、って事は無いと思っている。でも赤羽君だからなぁ…

 

彼は私に布団をかけた後、特に何もせず壁に腰掛け、寝息を立て始めた。やっぱり何もなかったか。ちょっと期待した自分とちょっと残念な気持ちが私の中に渦巻く。

 

「…寝ちゃった?」

彼から返事は無い。私は彼の前に音を立てない様に移動し、彼の頬に触れる。

私はズルい女の子だ。今日、踏み出せただろうに何も出来なかった。坂柳さんが動いているのを知らされているのにも関わらず。

でも、これで良い気もした。何故かは分からないけれど、そんな事をしてしまったら、彼が私の前から居なくなってしまう様な気がした。消えてしまう様な気がしたのだ。

彼は何にも執着している風には感じられなかった。この学校にも、坂柳さんにも…そして私にも。そしていつかふっと私の前から居なくなってしまう。だから今はこのままなんだ。

「ごめんね、もうちょっと待っててね。私は赤羽君の隣に立てるように、頑張るから。」

この判断が正しいのかは分からない。けれど、もうちょっとだけ、この時間を、二人だけの時間を過ごすんだ。

彼の気持ちが変わったら私は一歩踏み出せるのかな?私が変われたら、彼は私の隣に立ってくれるのだろうか?

彼は何も答えない。静寂と沈黙。今はそれで良いのかなって思った。私は布団に戻り、彼の匂いに包まれながら深い眠りについたーーー




お久しぶりです。投稿の期間開けちゃてスイマセン…
体調とか出張とかモチベの低下とか文の間が埋まらないとかとかで久々になっちゃいました…書きたい気持ちと出来ている部分もあるのですが、これからもぼちぼち書いていきますよ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。