実力至上主義の学校で平穏を求めてみる   作:さっきのピラニア

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長らくお待たせしました…


看病

 

次の日。

 

 

携帯の通知には一通のメール。お相手は坂柳さんである。

 

『風邪をひいてしまいました。』

 

メールを開くと短い言葉が一文。彼女は今、体調を崩しているらしい。原因は昨日出かけたせいなんだろうけど、連れ出された側なんだけどなぁ…でも俺が悪いんだろうなぁ…

友達居なさそうだし、お見舞い位行ってあげませう。俺も人の事言えないけどね!

 

スーパーで適当に食材とか飲み物を買って彼女の部屋に向かう。そういえば彼女の部屋に行くの初めてですね。

 

チャイムを鳴らしてちょいと待つと、ゆっくり扉が開く。

 

「はろ~、元気~…ではないわな。適当に食べ物とか買ってきましたよっと。」

「コホ、すみません。手間をかけさせてしまって。」

「そんなこと言うのは、らしくないねぇ。」

「…さっきのは撤回します。小間使い出来そうなのが貴方しかいなさそうだったので。」

しおらしくなったかと思えば、どぎつい言葉のストレートをかますお方ですね。そっちの方が似合ってますよ、バイオレンスマウスお嬢様。

「そっちの方が安心します俺は。ちゃっちゃと料理作ったら退散するんであげてくださいな。」

 

彼女の部屋の内装は俺と違って至って普通。ただ、壁には彼女の為の手すりが付いており、普通の人には分からない、普段の生活の大変さを物語っていた。

「手、貸しますかえ?」

「大丈夫ですよ、慣れてますので。」

「ま、そんな事言わずに。サービスですよサービス。」

「えっちょっ…」

拒否はサッと受け流し彼女を抱き抱える。ちなみに白い布を被って股間を見せつけてはいない。ヘッポコ丸もここにはいない。

「…ありがとうございます。」

こんな事するのは星ノ宮先生に続いて二人目である。一人目が先生って何か罪深いな。

 

と、いうわけで坂柳さんにはベットでお休みいただいて料理の準備を始める。

食材を切り鍋を温めつつ、何か使えそうなもの無いかな~冷蔵庫を開けると…豆乳がぎっしり詰まっていた…俺は上を向き無言でそっと扉を閉じた。

努力で超えられない壁は、きっとある。そう、かの天才、坂柳有栖であってもである…

 

ぼちぼち料理も出来上がりましたんで部屋に持っていく。

坂柳はと言いますと、ベットで相も変わらず具合悪そうにしていた。コホコホと咳をして苦しそうだ。

「さ、料理できましたよ。食べないと体力付かんし、冷めないうちにたんとお食べ。中国四千年の薬膳粥だ、梅干しも添えて栄養バランスもいい。」

何で薬膳粥?中国?とのツッコミが入りそうだがそんなのノリである。消化に良くて身体が温まれば良いじゃないか。

ついでに14キロの果糖入り砂糖水も用意しようかとも思ったが止めておいた。加藤じゃないよ果糖だよ。サンドバックには入ってないよ。

「…ありがとうございます。私としたことが、昨日は想像以上に無理をしていたようですね。」

「ま、誰でも風邪をひくこと位はあるでしょ。」

「貴方が風邪でダウンしてる姿は想像できませんね。」

「バカは風邪をひかないもので。」

 

雑談を交えながら、坂柳はもぐもぐと料理を食べ進める。口に合うかは知らん。

 

「赤羽君は料理も普通にできたのですね。意外です。」

「それは心外なお言葉で。ここで生活してると料理はせざるを得ない人も多いし出来る様になるっしょ。」

「そんなもんですかね。」

「そんなもんですんだ。」

 

雑談もそこそこに彼女の食の手は進み、完食

 

「ごちそうさまでした。美味しかったですよ。」

「お粗末様でした。ん〜他に何かしてほしい事はあるか?病人だから出来る範囲なら答えませう。」

 

坂柳はフム…小さく呟き少し考え込む。この際だからと無茶な要求をしてくる可能性も無きにしもあらず。出来る範囲だからね出来る範囲。

 

「…それでは、私が眠るまで手を握っていてもらえませんか?」

「…まぁそれ位なら、分かりましたおかのした。」

 

坂柳はもぞもぞとベットに入り、ちょい、と覗かせる。握ったその手は正月の時とは違い、ほんのりと暖かかった。

「お前さんでも寂しがることをあるんだな。」

「私も一人の人間なので。」

「さいでっか。」

悪戯なのか、坂柳は手をニギニギと動かしてくる。俺は居心地の悪そうな表情を返してやる。

彼女は何故か満足そうな表情だった。性格悪ぅ、と思ったがそういう人でしたよ彼女は。

 

「…もう少しで休みも終わりですね。」

「そうだな。」

「また特別試験が続くんでしょうね。」

「そうだな。俺は基本モブモブしてるが。」

「身体を使わない試験限定、ですけどね。体育祭での動きは目を見張るものがありましたよ。」

「あれは得意分野なもので。」

「これからの活躍も楽しみにして見させてもらうことにします。」

「敵に塩を送る発言もどうかと思うけどねぇ。」

「私は貴方の得意分野の時はモブモブしてるので。」

「どうなんかねぇ…何か策略巡らされてる気がしてならないねぇ…」

「フフ、どうでしょうね。」

 

しばらく雑談を続けていると隣からすう、すう、と寝息が聞こえてくる。ようやく眠ってくれましたか。

 

手は握られたままだったので、慎重に指を外す。流石に起きるまで居て上げる程、お人好しではありませんよ。

彼女を起こさないように静かに後片付けをして部屋を出た。原因作った俺が言うのもなんだが、早く良くなりますように。




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