坂柳の看病して二日経過し、冬休みも何だかんだで後半戦である。
特に何をしたって訳でも…まぁ一之瀬とかと出かけたりはしたか。
今日は何をしていたかというと、お茶を淹れ、菓子をつまみ、テレビ見ながら站椿をしたりと至って平穏な休日である。朝起きて歯を磨いてあっという間午後十時とか昼夜逆転生活はしていないのでご安心を。
愛すべき暇を持て余していると、ペンポーンと親の声より聞いたチャイムの音が。
さて誰でせうか?ここに訪ねて来る物好きは一之瀬か坂柳しか居ないわけでなんだけども。
ガッチャ! と人差し指と中指で扉を開けると、闇のデュエルの始まりだZE!
でも残念ながらバトルフィールとは目の前に広がっておらず、目の前に映るのはいつもの寮の廊下と小さな鞄を抱えた坂柳さんである。
「こんにちは、赤羽君。」
「Hello, World. 坂柳。風邪はもう良いのん?」
「えぇ。お陰様で。」
坂柳は俺のの流暢な英語を華麗にスルー。メンタルに100のダメージ!
「ま、お外は冷えるんで早よお入んなさいな。」
「えぇ、お邪魔します。」
「で、今日は何しにきたのん?いつものチェス?」
「今日は先日の看病して頂いたお礼をしようかと。」
「お礼ですかぁ…何か特別な事をしたわけではないんだけどなぁ…」
「私なりの感謝の気持ちですよ。」
「で、その心は?」
「借りを作ってしまうのは私のプライドが許しませんので。」
「うわぁ面倒な性格だこと。」
借りだと感じたら病み上がりでも即座に返しに来るとは中々の行動力である。恩を仇で返してくる訳では無さそうなのでありがたく受け取ることにしましょう。
そんでもって早く帰ってもらって休んでもらいましょう。
俺の小言はどこ吹く風か、坂柳はゴソゴソと鞄の中から物を取り出す。耳かきやら綿棒やら、何をするつもりなのん?
「さ、ここに頭を置いてください。」
坂柳はぽんぽん、と自分の太ももを叩く。
「耳かきですかぁ…何とベタな…」
「殿方はこういうのが好きと聞きましたので。」
「まぁ、嫌いではないが…相手が坂柳だとなんか怖いんだよなぁ…」
通常時にされたら違和感ありまくりである。今でもありまくりだけど。鼓膜破られそう、そして頭をクチ…おっと、ポックルさんの話はしないでおこう。
「つべこべ言わずに頭乗せてください。」
「アッハイ」
俺の抗議の声はどこへやら、言葉の圧力で俺の頭は坂柳の膝の上へ。もしかして民主主義は死んでしまった?Democracy ワズ dead.
坂柳さんは民主主義より独裁の方が好きそうですよねぇ…俺の勝手な偏見だけど外れてはいないと思うAクラスの現状を知る限りはね。
「どうです?女子高生の太ももの感触は?」
「女子高生って自分で言っちゃうのかぁ…ん〜苦しゅうない苦しゅうない。良きに計らえ。」
俺は白化粧の某殿様リスペクトのバカ声で答える。
坂柳さんはあんていの無視を決め込み、わしゃわしゃと頭を撫で回してくる。俺、何されてるのん?あと、俺の扱い慣れて来ましたね。悲しいとてす。
「髪、伸びてきましたね。もじゃもじゃです。」
「お前は俺のオカンか。そのうち適当に切りますよ。というか始めるなら早よ始めてくれ。」
「フフ、そうですね。じゃあ始めますね。」
彼女の手が耳殻に添えられ、耳かきが入ってくる。
カリ、カリ、と強すぎず、弱すぎずな丁度良い力加減で中を弄られる。
「どうです?気持ち良いですか?」
「ん〜良きですよ。」
「意外と綺麗にしているんですね。意外です。大事な事なので二回言いました。」
「二回言って遠回しに罵倒強めてくるの止めてもらえますぅ?」
「貴方はこんな軽口で逆撫でされるような人ではないでしょう?」
「まぁそうなんだけどさぁ…」
手玉に取られているような気がしてならないのは俺だけでせうか?
そんな雑談を交えながら俺の耳はほりほりされていた。
片耳が終わり、反対側を向いてもう片耳。坂柳にされるがまま耳をほりほりされる。
「さあ、そろそろ終わりですよ。」
彼女は顔を近づけ、
「ふ〜」
「おうおうおうおuおuおuおuおー」
「面白い反応をしますね。」
「びっくりしたのよ。こーゆーの慣れないもんで。」
「さ、終わりですよ。お疲れさまでした。」
むっくりと俺は起き上がり、膝を叩く。
「ん〜じゃあ選手交代で。」
「え?それでは私がやった意味が無くなりません?」
「まぁまぁ良いじゃないですか。人の好意は受け取っておくものですよ。」
おずおずと彼女は俺の太ももの上に頭を乗せる。
彼女の耳殻に手を添え、耳かきを入れる。
傷つけない様慎重に中をカリカリと弄っていく。
「ツッ…!んっ…」
恥ずかしいのか顔を見せたくないのか、やたら下を向こうとするのでやり辛い事この上無い。あと変な声を出さないで欲しい。
「はい!片側おわり〜!」
最後に耳に息をフ〜ッ、と吹きかけて耳かき終了である。ビクッ、ビクッ、と身体を震わせていたが気にしない事にする。俺もされましたしね。
ふらぁ…と坂柳が下を向きながら膝立ちになる。危機感を感じたのでガシィッ、と頭を掴む。
フーッフーッと何故か興奮している様子。あとお目目がぐるぐるしている。危険信号ですね。レッドです。
「ど〜うど〜うセイセイセイ、急に襲い掛かりなすんなさいよ。」
「貴方のせいですよ!体調悪くて発散出来なかったから溜まってるんですよ!」
「あなたの下半身事情なんて教えなくて良いから!いつもの冷静さを取り戻して!キャラ崩壊してるから!スマホウの前の皆さんも見てるから!」
「そんなメタネタで茶化しても無駄ですよ!先っちょだけ!先っちょだけですから!」
どこでそんなハシタナイ言葉をお覚えになったのかしらぁ!?意外とムッツリなのかしかね、むっつり。
ゴーゴー アラソイハストップイッ、と若干的外れな危険信号が頭の中で鳴り響いている。
坂柳さん理性がトランスフォームしちゃってますね…
こちらの腕をむんずと来る掴み引き剥がそうとしてくる。運動もしておらず細っこい腕の割に結構力が強い。火事場のクソ力ってやつでしょうか?個人的には修羅場穴場女子浮遊の一歩手前って所でせうか。憧れのPARADISE★、にはならんよ。つーかPARADISEは何処よ?やっぱ今修羅場っしょ。
ドッタンバッタン大騒ぎしてしまうのは近所迷惑になりかねないのでうつ伏せに押さえつけて冷静さを取り戻すのを待つ…のだが坂柳はジタバタをやめずに抵抗を続けてくる。
「あの~そろそろ収まってくれませんかねぇ…こっちも疲れるんですわ。」
「…勢いでいけるかと思ってましたが、上手くいかないものですね。」
「勢いで上手くいってたまるか!」
「そういえば、一つお願いがあるのですが。」
「この状況で変なお願いは聞かんぞ。」
「変なお願いではなくて、私の父…理事長が貴方に会いたいと言っておりまして。」
「これまた変なお願いだが…この学校のトップがお呼びなら流石に行かないとマズいよなぁ…急に退学とか言われるのは勘弁だが。ま、呼ばれたなら行きますよ。」
個人的に全く心辺りが無いのだが呼ばれたのなら行かなきゃ後でどんなペナルティ食らうかは分からないしね。学生の身分はつらいよ。風雲の巧次郎でございます。
「分かりました。理事長の予定次第になりますが、日にちは後日に伝えますね。」
「分かりましたおかのした。」
「貴方が何やらかしたのかは存じあげませんが、気を付ける様忠告だけはしておきます。」
「平穏に学校j生活送ってるだけなんだけどなぁ…」
「時々やってる問題行動のせいじゃありませんか?」
「監視カメラには気を付けてるが何も言い返せねぇ…」
「後、そろそろ退いてもらえません?」
そういえば坂柳を抑えつけたままでした。この体勢で全く関係ない話を始めた彼女も彼女だが。
「油断しましたね!隙あり!」
「甘いわ!鍛え方が違うんだよ鍛え方が!」
その後もわちゃわちゃ不毛な禅問答を繰り返し、全て返り討ちにして坂柳さんには帰ってもらいましたよ。油断も隙も夢もキボーもあったもんじゃない。
さて、そのうち会う理事長にはナインを言われる事やら。
何故か志村けんとバカ殿は別人と錯覚してて、またテレビでやらないかなと思い耽る時があります。