実力至上主義の学校で平穏を求めてみる   作:さっきのピラニア

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しおりの最新話の数が100以上になると、作者はめっちゃ焦り出します。


ゲームという名の尋問

軽井沢との一件が終わり、さ〜て帰るかなと、荷物を取りに教室に戻る。

思わぬ訳ではないが一之瀨さんがまだ一人で教室に残って、俺の机の上で脚をブラブラさせていた。気分はトイレから戻ってきたら上位カーストに席を取られていて帰る場所の無いアレである。ま、俺は直ぐ帰るけどね!

 

「あ〜やっと戻ってきた〜!」

「いやぁ何で残ってるんですかねぇ…特に用事も無いでしょうに。」

机の横に引っ掛けていた通学鞄を取る。

 

「いや、まぁいろいろとね。話を聞かせてもらおうと思って。」

「新学期初日位はゆっくりさせてもらえませんかねぇ…久々の学校は疲れるものよ?」

「そう?」

一之瀨ははて、分からん、と小首を傾げている。コミュ力お化けの一之瀨さんには分からないでしょうね!

 

 

ーーー

 

 

で、場所は変わって喫茶店

 

「でさ、さっきどこかに行ってたみたいだけど。」

「ん~ちょっと野暮用で呼び出されておりましたよ。」

「誰に呼び出されてたの?」

「ん~それはちょっと内緒ってことで。ま、部活勧誘の延長位の話ってとこよ。」

「ふ~ん。まぁ良いけど。」

 

個人的にはこの状況は早めに切り上げて、おうちに帰りたい所存でございます。端から見ると、俺何でそこにいるよくるよ感が凄い。メンツがメンツなだけに明らかに俺が悪目立ちしている。一応両手には花。逆恨みされて闇討ちとかされないかしら?全部返り討ちにするけど。学校ではモブでありたい。

 

「偶然お見かけしたので、ご一緒させていただいただけですよ?」

「坂柳の周りの人達全員帰らせてたのは…」

「護衛は貴方一人居れば十分でしょう?」

「勝手にボデーガード扱いするの止めてくだせえょ。」

「何かあれば守ってはくれるでしょう?」

「時と場合による。そしてたまに逃げる。」

「うわぁ…一人で逃げるんだ…それはちょっと引くかも…」

「連れてけと言われれば二人抱えて逃げるけど。」

「それもちょっとヤだな…」

注文が多いですねぇ一之瀬さん。次は目の前のコーヒーシュガー顔に擦り込めとか言わないでせうね?

「私は構いませんよ。一之瀬さんを置いていっていただければ。」

「坂柳さんも地味にヒドい!」

「…さて、話を戻しましょうか。先程、赤羽君が誰に遭っていたか、でしたね。」

「戻さなくて良い話を戻すんじゃありませんよ…」

「フフッ。退屈凌ぎのゲームだと思ってください。幾つか質問を出すので、YesかNoで答えてください。ノーコメントでも構いません。」

「ゲームという名の尋問始まっちゃったよ…帰りたい…釈放されたい…」

と、言うわけで誠に不本意ながら尋問ゲームがスタートです!本当にありがとうございました!帰らせて!でも家まで付いて来て結局同じことになりそう!勘弁!

 

「会っていたのは女性ですか?」

「…ノーコメントで。」

「女性ですね。」「女の子だね。」

坂柳さん、一之瀬さん、早速断定の結論。勘鋭すぎません?ご勘弁を!

「一年生ですか?」

「イエス、マム。」

「Aクラスの人間ですか?」

「Aクラスだったら?」

「粛清します。」

怖えぇよ坂柳さん。民主主義の国にいる人間の発言じゃないよ。

「うへぇ…ノーコメントで。」

「Bクラスですか?」

「ノーコメント。」

「Cクラスですか?」

「ノーコメント。」

「Dクラスですか?」

「ノーコメント。」

何故か同じ様な質問を淡々と続けられる。笑顔のままじっと見られるのが地味に怖い。

「…フム。」

必要な質問は終わったのか。坂柳はキョロキョロとあたりを見回した後、まるで探偵かの如く顎に指を当て考え込み始める。

「貴方が先程会ってたのは、あちらにいる女子生徒…Dクラスの軽井沢さんではありませんか?」

坂柳が軽く指を振った先にはちう~。とドリンクを啜りながら時たまこちらをチラチラ見てくる軽井沢さんの姿が、ていうか居たんですね。ゲームって言ったのさっきなのに、行動が早い。裏を返せば彼女に取って知られたく無い情報って言っている様なものなので分かりやすいっちゃ分かりやすくて助かるが。

っていうか坂柳さん怖!精度高すぎない!?人間アキネーターかよ!ターバン巻いてそっちに就職したらどう?多分儲かる。

「うわぁ…あの情報だけで当てようとする推理力よ…」

「う~ん私もあれだけでは判断しようとは思えないなぁ…」

俺は勿論一之瀬さんもドン引きである。

「偶然、私が持っている情報で判断出来たまでですよ。一之瀬さんでも簡単ですよ。情報があれは、の話ですが。」

あの坂柳さん、突然棘のある言い方になるの止めません?仲良くしましょうよ。ラブ&ピース。

「会っていた理由は断定は出来ませんが推測は出来ます。人も多いですし流石に言わないでおきますが。」

「で、彼女にこうも見られていると目障りですね。泣かせてしまいましょうか?」

「いきなり喧嘩腰で行こうとするのは止めなさいよ…」「それは良くないと思うよ坂柳さん…」

俺と一之瀬両名は坂柳を言葉で制止する。

「フフッ、冗談ですよ。それでは、ゲームを続けましょうか。」

飲み物を一口含み、坂柳さんはまだまだやる気の様である。これ以上何を知りたいのん?

何か聞き出せる可能性も無きしもあらずだが、これ以上情報を抜かれるのは癪である。

「だが断る!と、いうわけでバイビー!」

「あ!ちょっ…ちなさい!」

坂柳の制止は無視し、ササッと店を出る。アスファルト ローファーを切りつけながら 昼下がり 走り抜ける!ついでに急いで店を出て来た軽井沢を振り切っておく。

そういえば一之瀬に呼ばれてあの場所にいた気がしないでは無いが、逃げ出してしまったものは仕方がない。自己保身大事!でも家に帰るだけだから普通に追って来られるけどね!詰んだ詰んだ!

 

 

ーーーーーー

 

「…逃げられてしまいましたね。」

坂柳はストローでドリンクをかき混ぜながら呟く。

「そうだね…」

「追いますか?どうせ彼は寮に戻っただけだと思いますよ?」

「流石に悪いと思うんだけど…」

「それでは止めておきましょう。これ以上は話をする必要はありませんしね。」

「うん。私も知りたい事は知れたしオッケー…かな?」

「そういえば一つ伝え忘れていたことがありました。」

「何かな?」

一之瀬ははて?と、首を傾げて坂柳の言葉を待つ。

「2学期でAクラスはほぼ手中に収めました。…後は言いたい事は分かりますね?」

「…戦線布告って事?」

「戦争とはそういうものなのですよ。国家間でも盤上でも相手に伝えてしまえば嫌でも始めなければいけないのですよ。」

「…負けないから。私たちのクラスがいつかAクラスに上がってみせるからね。」

「私はこの戦争のキーマンは赤羽君になると踏んでいます。彼は否定するでしょうが。」

「そうだね。赤羽君はあまりAクラスに拘ってはいないだから。もっとやる気と言うか、協力的だと助かるんだけどね。」

「彼は戦いは好んではいますが、自分自身を標的にさせて積極的に争い事は起こらないように立ち回っている節があります。そして、彼には純粋な力という武器がある。もし、これが国の争いなら驚異的です。鉄砲で核ミサイルと対峙している様なものですから。」

「彼ってやっぱそんな凄いんだ…」

「私でも彼の本当の力は知りはしませんけどね。推測するに、彼はまだ何枚もカードを隠し持っている。一之瀬さんも私も、彼のカードを使える保証はありませんし、逆にお互いが彼にやられてしまうかもしれません。」

「そんな話をしちゃって良いの?私達に塩を贈る様なものなのに。」

「私達、ですか。いつまで彼は味方でいてくれるのでしょうね?」

「…どういう意味?」

「言葉のままの意味ですよ。彼を利用したい人間は私以外にもいるだろうという事です。利害関係が一致すれば、いつかクラスを裏切る可能性もある。この学校の仕組み上、有能な人材は目を付けられやすいですから。そしてあなたは彼を持て余してしまっている。」

「…」

坂柳は盤上の駒を動かすかの如く、テーブルに指を置き、そして滑らせる。

「彼を傍に置いておけば、物理的な報復はほぼ不可能になります。その優位な状況を手に入れられれば、他のクラスに仕掛け易くなるのは当然の事。あなたはそのチャンスを9ヶ月も使わなかった。Aクラスに上がる機会も、Cクラスに差を付ける機会もみすみす逃した、という事ですよ。」

「私は私なりに出来ることを考えて今までやったつもり。坂柳さんには甘く見えたのかもしれないけど、今まで上手くやってこれたと思ってるよ。」

「仮にですが彼がAクラスに所属していたら今、どうなっていたか推測出来ますか?葛城派に付いていたらまだクラス内の対立は続いていたでしょうね。そして私に付いていたら、既にBクラスは倒し終えていた。まぁ彼はどっちつかずの立場を崩さなかった可能性も否定できませんが。私にとっては今の状態はとても都合が良い、ということです。」

「…」

「…お喋りが過ぎましたね。今日はここまでにしましょう。」

 

坂柳はすっくと立ちあがり、ゆっくりと店を出て行った。

カフェの中は喧騒に溢れていたが、彼女の周りだけはまるで封絶されたかのように、暫く静まり返っていた。

 

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