今日は午前中に抜き打ちで小テストがあった。
教科は5つ。家庭科とか体育とか音楽ってテストが無い学校も多いけどこの学校もそんな感じなのだろうか?
難易度は中学生でも回答できるものから、明らかにまだ勉強していない内容のものまで。何か意図がありそうだけど分からんな。まぁ解ける所は解いていきましょうや。
小テストが終わりみんな大好き昼食のお時間だ。
俺は無料の山菜定食を注文し、席につく。味気無いが食べられないほどでもないし、お金も勿体ないので結構食べていたりする。無料だしね。タダは正義よ。
「…ねぇ、お昼ご飯一緒に食べても良い?」
そう言って一之瀬は前の席に座る。俺、まだ何も言って無いのだけれど…
「人気者の一之瀬さんが、ボッチの私の所にくるのは珍しいねぇ。なんか変なものでも食べた?」
「食べてないよ!失礼しちゃうわね!…赤羽くんってその山菜定食良く食べてるよね。それあんまり美味しく無くない?やっぱりポイントの節約してるってこと?私たちってそこまで困るほどじゃないと思うんだけど…。」
「節約してるってのもあるが、味は悪くないぞ、無料だし野菜もちゃんと取れるしな。普通の定食も食べるし、肉とかは晩飯で食べれば良いしな。ポイントはいざという時の為にあるに越したことは無いしな。」
「へー変わってるね。」
「そんな事聞く一之瀬も量が少ないんじゃないのか?」
「私はダイエットだよ!女の子は皆、体重を気にする生き物なんですぅ。」
「ほーそんなもんかねぇ。ダイエットは気にした事は無いな。」
「赤羽くんは細身だからもうちょっと食べた方が良いんじゃないかな?」
「極端に体重とかは増やしたく無いんだよね。いざっていうときの動きが鈍るからね。」
「ふーんそうなんだ。武道が関係してるってこと?」
「そーゆーこと。まぁもうちょっと食べても良いかなとは思ってるけどさ。」
「…で、ちょっと話は変わるんだけど、今日の小テストどうだった?」
彼女は話題を変えてきた。本題はそっちってわけね。
「…どうだったと聞かれてもなぁ。難易度にばらつきがあるというか…明らかに勉強していない内容が出題されていたな。」
「だよね!私も最後の方の問題は解けなかったもん!」
「そういえば、一之瀬は入学試験で首席だったな。首席で合格しているのにBクラスってのはちょっと引っかかるが…まぁそれは良いとして、中間試験の範囲が授業で習う所だ出るのかちょっと疑問ではあるな…この学校は何かと分からないことが多すぎる気がするなぁ。知らんけど。」
「そっかー、私あとで先生に試験範囲を確認しに行ってみるよ!」
「お、それはすげー助かる。」
「あとさ、この前話をしてた護身術?みたいなの教えてくれない?試験範囲と交換条件ってことで。」
「それは前から約束してたから良いが、じゃあ今日の放課後に屋上で良いか?」
「うん!」
ーー放課後
「はい、さっき先生から試験の範囲聞いてきたから、これメモね!学生の本文は勉強だからお互い頑張ろ~!」
「俺は勉強は至って普通なのだけど…まぁ出来る範囲で頑張るよ。それじゃあ始めますか!」
「よろしくお願いします!師匠!」
ふんす!、と彼女は気合いを入れているみたいだけど、そんな難しいことは教える気はないぞ。
「んじゃぁ、一つ質問だ。一般的に女性が男性に力で勝るにはどうしたら良いと思う?」
「ええと…筋トレする…とか?」
「ある意味では正解だけど、それは現実的じゃない。答えは相手の力の弱い箇所で勝負することだ。で、もう一つ質問。その箇所はどこだと思う?」
彼女は俺を上から下まで見ながら考えこむ。
「…指?」
「イーグザクトリー!そう、指を自分の手で掴めれば力では負けることは殆ど無い。と、いう事で、指を取る練習をしてみようか。あくまで練習だから実戦で同じことが起こるかは分からないけどね。」
「はい!師匠!」
「よろしい。おそらくだけど、相手は一ノ瀬の場合だと、腕か胸に触れようと手を出してくるはずだ。それを弾いて、その指を逆に掴んでやる。できれば一番弱い小指がベストかな。で、あらぬ方向に引っぱってやれば部分的にだけど力で勝つことができる。んじゃ掴む所までやってみようか。」
そう言って俺は何度か彼女に動きを見せた後に実践してもらう。最初はゆっくり、そして徐々に速さを上げながら身体で覚えてもらう。飲み込みが早いようで助かりますねホント。
「で、次が本番だ。結論から言うと怯んだ相手に思いっきり金的を食らわす。それで一人なら無力化できるはずだ。じゃあ実践してみようか。」
「え?赤羽くんに私が…その…金的するの?大丈夫なの?」
「そうそう、遠慮はしなくて良い。んじゃ手を弾くところからやってみようか。練習だけど手加減はしないようにね。本番でできないと寧ろ自分が危ないからね。あと指は曲げないでくれよ、流石に痛いから。」
「…うん…分かった。」
そう言って俺は右手を一之瀬に伸ばす。彼女はその手を弾いて小指を掴む。そして、俺に思い切り金的を食らわせる。中々良い蹴りだ。
「…うん。これくらい蹴れれば大丈夫っしょ。」
「赤羽くんは大丈夫?金的ってすっごい痛いって聞いたことがあるけど…」
「大丈夫大丈夫。空手にコツカケって技術があってね。これが使えれば金的を狙ってくる相手に不意打ちできるんだよね。まぁ使える人って殆どいないんだけどさ。」
「そうなんだ…。」
「それじゃあ今日はこれで終わりかな。これを実際の生活で使わないことを祈るよ。あと試験範囲聞いてくれてありがとう。」
「どういたしまして!こっちこそありがとう!流石にいきなり金的するとは思わなかったけどさ。」
「相手の弱点を突くのが戦いの基本さ。対人のスポーツだって基本的にそうだと思うぞ。」
「そうかにゃ?」
「そうなの。んじゃあ今日はこれで解散で。じゃあの、お節介焼きのスピードワゴンはクールに去るぜ、また明日。」
「アハハ変なの!じゃあね赤羽くん!また明日!」
と、いうわけで今日は解散になった。
俺の平穏っぽくない平穏な日常は続いていく。…試験勉強しなきゃな。面倒くさ。