実力至上主義の学校で平穏を求めてみる   作:さっきのピラニア

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映画館と伊吹と日常と

学校にやって来た不審者を自分が撃退する。街中でひったくり犯を捕まえて表彰される。

多くの人がそんな事を妄想したりするだろう。しかし、そんな妄想が現実になる…なんて事は無く。

万が一、そこに居合わせとしても、巻き込まれないように傍観者・野次馬に徹する。それが一般的な人間の行動である。

もし、その万が一が現実に起こった時、その行動が出来る人間もいる。

そう、私です。(唐突な中二病的自分語り)

 

そんな前置きはさておき、とある日の放課後である。偶には映画でも、という気分だったので俺は一人映画館に足を運んでいた。

特に理由は無い、偶にはダラダラと映画でも鑑賞しながらポップコーンを摘まもう、そんな気分だったからだ。

人が多いのは嫌だったので、人気の無さそうなやつを選び、ポップコーンと飲み物を買う。

館内に入ると読みが当たったのか席の混み具合はあまり無い。

時折入ってくる人をよそに、俺はポップコーンをパリパリと摘まみながら上映開始を待つ。偶に食べるキャラメルポップコーンは何でこんなに美味しいのかしらね?

 

「げ!」

声にふと目を移すと映画の半券を片手に持った伊吹さんご登場である。

 

「あらあら?伊吹じゃないの?偶然ですこと。ポップコーン食べる?」

「いらないわよ。」

「あらそう。美味しいのに。」

 

拒否の言葉と半券に書いてあるのか共に俺の席の隣に座る。

そんな混んでいるわけでも無し、嫌なら離れれば良いのになと思うが、何とも律儀な人間である。

 

「…ちょっとこの後時間ある?」

「映画の後ですよね?まぁ問題ないが。何用?」

「私とアンタの接点と言えば一つしかないでしょ。」

「ははっ、違いない。」

 

映画のオープニングムービーが始まる。盗撮禁止のあのキャラクター結構好きなのよね。憎めないキャラと言うか何というか。盗撮はダメ、ゼッタイ。

あと伊吹に上映中にいらないと言っていたポップコーンを何故か少し横取りされた。なんでや。

 

 

場所は変わってとある場所。

 

「…ここら辺で良いわよね。」

「まぁ良いんでない?」

 

カメラがそこら中にあるこの敷地内だが、完全に無いという訳では無かったりする。この学校も完璧ではない。鍛錬中にちょこちょこそんな場所はある。探せば見つかるものである。

 

「…この前、アンタと綾小路がやり合った後、綾小路と戦ったわ。」

「で、全然歯が立たず返り討ちにされたと。」

「何でそんなことが分かるのよ。」

「俺はどっちともやり合ってるんでそれ位は分かるさ。」

「…っつ!気に入らない!」

 

そう言うと同時に回り蹴り。俺には当たらずその蹴りは空を切る。

「俺と綾小路、対峙してみてどっちが強かった?」

「さぁ?どっちかしらね?」

「遠すぎて差は分からないと。」

「うるさい!」

伊吹はリーチの大きい足技では無く、隙の小さいジャブ中心の攻撃へと切り替える。それも俺は難なく捌いていく。

 

「…理解できないわけでは無いが、どうして俺に何度も挑む?ここでは安全は保証されてるが、外の世界はそうじゃない。その時でもお前はこんな風に戦えるのか?」

「知らない!そんなの私の勝手!」

「…無謀と蛮勇は違う。勝てないなら尻尾をまいて逃げるのも賢い選択だと思うけどねぇ。」

「アンタの説教なんて聞きたくない!」

 

俺は彼女の蹴りを避けなかった。彼女の脚が俺の側頭部に吸い込まれていく。攻撃する場所、威力、共に申し分ない。俺はその攻撃を受け、そして舞った。

「…?!」

当たった筈なのに手応えが無い、彼女はその不思議な感触に戸惑っているようだった。まるで宙を舞うティッシュにカミソリを振り下ろすかのような、心許ない感触を。

その隙を見逃さず勢いそのままに相手の首元に蹴りを放ち、寸前の所で止める。

 

「…勝負ありだ。…どうする?まだ続けるか?」

「っつ…!クソっ!」

俺が脚を下ろすと、悔しそうに伊吹は拳を地面に叩きつける。痛そう。

「…悔しいけど、止めておくわ。また完敗。…相変わらず奇妙な技を使うわね。」

「ま、どんな技かはいつもの如く企業秘密ってことで。持っているカードは多い方が良いんでね。」

「…ムカつく奴。一つだけ分かった事があるわ。アンタと違って綾小路は容赦はしなかった。実力を殆ど見せてくれないのは同じだったけど。」

「俺は甘いと言いたいんですかねぇ?」

「ま、そうとも言うわね。」

「俺が本気で伊吹とはやらないとは思うけどねぇ。」

「その余裕ぶった態度がムカつくのよ!」

「敗者が何を言っても響かないのよねぇ…。ま、いつか容赦しないでやり合う日が来ない事を願ってるよ。」

 

雑談はそこそこにし、その場で俺たちは解散した。模擬とは言え本気の相手とやり合わないと面白くないと思うのは俺だけでしょうかね。

 

 

ーーーー

 

 

「あ、赤羽君おかえり~!」

「こんにちは。お邪魔していますよ。」

部屋に帰ると一之瀬と坂柳が普通に部屋で寛いでいた。

 

鍵はかけた筈だが…覚えてねぇな。ここでポンコツ頭発動である。

「…どうして俺の部屋が君達の溜まり場みたいになってるんですかねぇ…」

「いやぁ…ここに来たら既に坂柳さんがいたんだけど…」

にゃはは、誤魔化す様に笑みを浮かべながら一之瀬さんが答える。

「そうですね…この学校にポイントで買えないものは無い、とだけ言っておきましょうか。」

え?何!?ポイントってそんな事にも使えちゃうの?

「…冗談です。鍵を開けっぱなしなのは不用心ではありませんか?」

俺のミスでした!やっちまったZE!冗談キツイぜ坂柳さん!

というかそんなのポイントで買えたら大問題だからね!逆だったら普通に事件だよ!逆じゃなくても事件じゃなイカ?…

 

「あ、あとお土産。普通に食べかけだけど。」

「わ~いありがと~!」

映画館で1/3程食べ残したポップコーンを机に置く。

そんでもって素直に受け取って食べる一之瀬さん。意外と食いしん坊なのよねこの子。

 

「でさ、帰り遅かったけど何処か行ってたの?」

一之瀬がこっちに疑問を投げかけてくる。

「あ~何となく映画見たい気分だったから映画見て来た。そんで偶然そこで伊吹に会って何か流れでそのまま手合わせをしてた訳ですよ。」

「伊吹さんってCクラスの?」

「そーそー。彼女結構武闘派でねぇ。そこいらの男子よりよっぽど強いぞ。」

「だからって男子が女子に手を上げるってのはダメだと思うな…」

一之瀬は渋そうな顔で苦言を呈してくる。

「そこはお互い了承の上だから見逃してクレメンス。」

例外で無人島での一件もあるが、話すと面倒なので黙っておきませうか。

「伊吹さんですか。…意外な伏兵が出てきましたね。」

「一応言っとくが、知り合ったのは坂柳よりよっぽど早かったぞ。」

「むむ…」

「敵対クラスだから仲が良いかと言われれば違うけどな。多分、同じクラスだったとしても剣呑な可能性まである。因みにちゃっかり入り浸っているがお前も敵対クラスだからな坂柳さんよ。」

「あら?そういえばそうでしたね。」

「しらばっくれますねぇ。何故ここに居るか未だに不明だ…」

「それは手駒に加えたいからに決まってますよ。」

「うわぁ直球ストレートで迷惑だ…」

「私も坂柳さんがいなければ、もうちょっとここでまったり出来るかもなのにね~」

「入り浸ってるのは一之瀬もだぞ~。」

「は~い反省してま~す。」

全然反省してませんね彼女。今日は一之瀬さんに俺の緩い空気が伝染してしまっている様な気がする。悪い所が似てしまわなければ良いですね。俺が直せって意見は聞き入れる気はありません!

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