実力至上主義の学校で平穏を求めてみる   作:さっきのピラニア

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お久しぶりです。生きてます。
スプラトゥ〇ンとポ〇モンにドハマリして放置しておりました…


噂の終わりと、戻る日常。

次の日、一之瀬は学校に登校していた。

 

んで昼休みにAクラス登場。案の定一悶着である。今日はパンを買っていたのでモグつきながら経過を見守る。他のクラスも騒ぎを聞きつけたのか野次馬にやって来る。

柴田が坂柳に問い詰めたりしている。まぁ気持ちも分からなくは無いが落ち着きなさいよ。

坂柳曰く、Bクラスを救いに来たとの事。

一之瀬と坂柳が何言か交わしていたが、一之瀬を守る様に何人かの生徒が間に入っている。一触即発の状況で動じない坂柳さんメンタルヘラクレス。

坂柳が突いてきた話はBクラスのポイントを一之瀬が溜め込んでいる件についてである。そしてそのポイントを一之瀬に預けている事は危険だ、との弁。

 

クラスの生徒を制し、教壇の前に立つ。

「……ごめんみんな!」

そう言って一之瀬は頭を下げる。動揺し、言葉を遮る生徒もいたが、止めずに一之瀬は続ける。

 

「私は今までの一年間……ずっと隠してきたことがあるんだ……この数週間であった噂の事。その中に一つだけ嘘じゃない本当の事があるの。それは……私が犯罪者だって事。」

喧噪の中、ザワ……ザワ……ついていた教室が静寂に包まれていく。

 

「みんなに黙っていたことを、今から告白します。」

 

そうして、一之瀬は万引きをした事、何故万引きに至ったかの経緯を説明した。それが原因で引きこもってしまったことを。

坂柳は茶番劇だと一蹴して指摘する。クラスのプライベートポイントを盗み取ってAクラスに上がってしまうのではないか、と。今回の様に身の上話をして、同情を誘って上がっていくのではないのかと。クラスの皆にポイントを返すべきだと。

確かにそれは一理ある意見ではある。ただBクラスの過半数以上が返してもらいたい場合に限るけれど。

 

そして、神崎が問いかける。一之瀬はどうしたいのか、と。

判断は一之瀬に委ねられた。

「話が良すぎますね。悪人だと疑われてその事実を認めて、なおリーダーに居続ける。恥ずかしいとは思いませんか?」

「そうかもしれないね。その罪は認めるし、絶対に忘れられない。だからこそ、この過去は大切にしたい。私はみんなの思う一之瀬帆波であることは変わらないから。恥ずかしながらこんな私だけど、このままクラスのみんなに最後までついて来てくれないかな?そして今まで通り、みんなで頑張って、Aクラスで卒業する!それが私の目標!」

 

一瞬の沈黙。

 

「ついて行くに決まってるよなぁ!?」

柴田が問いかける。クラス内がドッと沸き立つ。皆がエールを送る。俺もまばらに拍手を送る。流石の演説力ですねぇ。ぼかぁには真似できないやつですよ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

--綾小路視点

 

一之瀬は登校していた。俺の計画より一日早く。

かつ、考えたストーリーとは違う形で、だ。そして事態は収束した。

 

俺の想像以上に早く壊れて立ち直ったのか?違う。じゃあそれは誰か?Bクラスで部屋の前で話しかけていた女子らか?違う。その程度だったらもっと早く立ち直っている。神崎か?違う。彼は秘密は教えていない様子だった。南雲か?違う。可能性はゼロでは無いがアイツはそんな時に手を差し伸べるタイプの人間では無い。

 

じゃあ誰か?残りの思い当たる人物、赤羽巧。俺は彼をあまり知らない。

 

彼はBクラスの中心人物の一人という訳では無い、が一之瀬に信頼はされている様子。彼が彼女の秘密を聞き。何か話をした。おそらく俺が考えていたやり方に近い方法で。

 

偶然か?偶然にしては出来過ぎてはいないか?

赤羽の方が同じクラスなので、一之瀬には勿論近い、信頼されてもいる。表舞台には積極的とは言えないが、活躍している場面もあった。

 

頭を過るのは屋上の一件。

赤羽は純粋に勝負することだけが目的に見えた。俺がやる気を無くすと残念そうに去っていった。龍園の件で対峙はした。対峙して分かったのは純粋な力の底が見えない事。本気で戦って勝てる相手かは分からなかった。まだ手札を持っている事は十分に考えられる。あの時俺に打ってきた純粋な連打、目潰しの空気砲、並大抵の身体能力の人間が出来る技ではない。膂力は相手が上、スピードも上だろう。とはいえ、今はその件はさほど重要ではない。

 

万が一を考えて行動はしていた。想定外が起こらない様に考えてはいた。ただ、赤羽巧への対策は唯一手詰まりだった。俺と彼との接点がほぼ無い事、彼と交流のある人物が俺が付き合っている人間の中にいない事。情報を集めた限りでは一之瀬とは仲は良さそうだがその手段は論外。計画そのものが破綻してしまう。坂柳とも交流があるらしいがこれも論外。今回の騒動の渦中の人物二人からわざわざ接点を作るにはメリットが無さ過ぎた。

 

彼について考えられるのは、一つは坂柳レベルの切れ者の可能性があるということ。以前の屋上の一件にピンポイントで現れたのも不可解だった。その割にはほぼ何もせず立ち去った点も不気味さを感じさせる。もしかすると坂柳から情報を得て、なおかつ出し抜いた可能性も考えられる。坂柳も自分の計画を失敗させる情報は出すはずが無いだろうが、結果だけ見ると何かしらの情報を得て、俺が動いているのを承知の上で一番都合の良いタイミングで行動した、とするのが、一番納得出来る。屋上の件はともかく、今回はBクラス最大の事件だ。一之瀬退学を防ぐために本腰を入れて動いたのだろう。

 

一之瀬の信頼を完全に得る機会だったが、終わってしまったものはしょうがない。

俺達がAクラスに行く際の障害に彼はなっていくだろう。警戒レベルは上げないといけないか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーー坂柳視点

 

噂の騒動が終わった夜。

園芸部の管理する庭園、彼と初めて1対1で対峙した場所にいる。

 

 

「待たせたな。」

 

彼はいつの間にか音も無く私の前に現れていた。

いつもとは明らかに違う雰囲気。あの時、彼が現れて警戒を解く直前を思い出される。

 

「貴方から呼び出されるなんて、珍しいこともあるものですね。」

「まぁな。」

ジャリ、と彼の靴と小石が擦れる音が立つ。

「私が呼び出されたのは一之瀬さんの件の話ですよね?」

「まぁ、そんな所だ。」

 

「あの件の直後、綾小路君と話しました。結果的には彼にしてやられかけて、貴方に横槍を入れられた、という形になるのでしょうね。」

「綾小路が裏にいたのね。俺は全く分からんかったよ。…ま、それは結果論で偶然だ。俺は運とタイミングが良かった。それだけだ。」

「私が仕掛けた事と彼の行動は認識していない、と?」

「…まぁ、知らんね。」

「それで、一之瀬さんの件に対する報復でしょうか?」

「ん〜、まぁ、二対八くらいででそんなもんかねぇ。」

う〜ん、と悩ましげに彼は答える。彼の話の本題はどこだろうか?一つ話題を変えてみる。

「割合は存じ上げませんが、以前の様に何か面白い事を見せてくれるんでしょうか?」

「ん~どうだろうねぇ。それは坂柳の感じ方次第だ。ま、大事な事は差し置いてご希望の余興に興じるとしませうか。」

 

ザッ、ザッとわざとらしく音を立てて庭の中央に立ち、構える。

私は近くの椅子に座り、彼の一挙手一投足を見守っていた。

 

「…何が見える?」

「!…巨大な…螳螂が見えます…」

「俺は何を持ってる?」

「…日本刀、でしょうか?…」

「OK。」

 

彼は短くそう言った。彼の前には彼の2メートル近くある半透明の螳螂が対峙していた。

…勿論実体では無い。しかしイメージ、想像の力だけで、自分だけでなく他人にもこうも錯覚を見せる事が出来るのだろうか?

 

そして彼は剣を構える仕草をする。

構えた彼の手には何も握られてはいない。しかし、透き通る真剣が彼の手には握られていた。波紋までも目に映る程はっきりと。

 

「本来は長物の扱いは得意では無いんだがね!」

 

彼はそう言って前へと踏み出す。

 

鎌の先端は私の目では全く捉えることの出来ない速さだった。

臆することも無く振り下ろされた鎌を避け、返す刀で逆袈裟に切り上げる。相手もそれを受け止め、お互いに距離を取る。螳螂は彼を威嚇しながら次の出方を窺う。言葉を紡ぐ雰囲気も余裕すらも、全く感じさせ無い、雰囲気だった。

 

両者は幾度となく切り結ぶ。少しずつ、趨勢が彼に傾いていく。

右の鎌先が切り飛び、左の鎌先が飛び、根元の節が飛ばされても相手は怯む事は無い。鎌が無くなった後も傷を受けながら一矢報いようと噛み付かんとする。野生とは、戦いとは、何処までも真剣で、勇敢で、そして、敗者に残酷だった。

 

最後の大刀が相手の首を撥ね飛ばす。流麗な剣捌きだった。

 

「ふぅ…こんなもんですかね。」

「…お見事でした…。」

私は胸の前で小さく拍手をした。彼の持つ自信への裏付けへの確信がそこにあった。化け物と退治しても動じない胆力、そして単純な強さ。彼から暴力での勝利をもぎ取るのはどれ程の犠牲を払えば良いのだろうか?今、私の持ち駒で結論を出すのは時間がかかりそうだ。

 

 

「で、本題はこれからだ。ま、本来はこんなお節介をする必要は無いんだけど。」

 

そう言い放った直後、彼は私の前に現れ、その透き通る存在しない刃を私の前で真横に振った。

存在しないはずの刃が、私の皮膚、筋肉、骨を通り過ぎていく。感じるのは身体を通る刀身の冷たさと、過ぎた後の熱さだけだった。

私の上半身は両断され、両腕が落ち、地面へ崩れ落ちていく様子がありありと、そして何故か他人事かの様に感じられた。

 

 

「?!…っーー!」

 

私は自分の両手を見つめる。実際には身体は切られていない。今も立っているし、痛みも出血も、ましてや身体には傷一つさえも付いていない。頭でも否定出来ている。しかし、肉体が切られた、という事実をどうしようもなく伝えてくる。

 

「これは知らせだ。また事は起こしても良い、が、それなりの覚悟を持って、今後は攻めて来ることだな。」

「…」

「さて、今日はこれ位にしておきますか。それではバイナラ〜♪」

 

そう言い残し、彼は去っていった。

姿が見えなくなった後、私は椅子に腰を下ろして考える。

彼はこれは知らせ、だと言っていた。その言葉は何を意味するか?

先程、私は明確な死を感じた。冷たい水の中に引き込まれて目の前が暗くなって存在が消滅していく感覚。私はあの感覚に何度も耐えられるのだろうか?誰も普通は味わう事のない確実な死という感覚。

剣術は彼の得意分野ではない。と、いうことは私が行動を起こしたとき、彼はそれ以外の方法で更なる牽制の手段に出てくるのだろうか?

 

あの手段でなら私にも他人にも容易に牽制する手段として使用することが出来る。あの手段で私の知らない所で協力者の引き込みをしていても何らおかしくない。あの手札があるなら、とっくに学年を、全生徒を支配下に置くことも可能だろうに。

何よりも恐ろしいのは、彼が持っている手札はこれだけでは無い可能性が非常に高い、ということ。私がどんなに被害を訴えても見た目上の被害は無い為、学校側への抗議は無意味だ。まず空想の刀で切られましたと言った所で狂人扱いされて相手にされないだろう。そしてあれは私が近くに要ればいつでも出来、そして防ぐ手段が無いということ。もしこれが彼の切り札だとしても余りにも強すぎる。今後も彼らに攻撃を仕掛ける事は出来る。しかしその報復のリスクを考えると対抗手段が無い現状。現実にあるとは思えない、しかし確かに存在する防御不可能の矛であり強固な盾でもある 。攻撃は最大の防御、とは言うが、まさかこんな形で私が攻撃されるとは全く想像していなかった。

彼がこれから行動を起こすかは不明だが、Bクラスが今後自滅するのを待つのも性分に合わない。彼を倒すか、引き入れるか、取り入るか、もしくは屈するのか。どこかで決断を迫られる事になるのは間違いない。

 

それでも今は彼の傍にいようという気持ちは変わらない。これは打算か憧れか、それとも別の何かだろうか。

 

 




使いたい刃牙ネタを、惜しげもなく使っている。次はどう使いましょうか。
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