一之瀬の騒動も過ぎ去った朝、学校の準備をしていると携帯が鳴る。珍しいこともあるもんだ。
送信者は表示されていなかった。ただ本文には一行、こう書かれていた。
『本日の朝、理事長室に来るように。』
呼び出した人物に間違えようは無い。が、理由が分からない。急ぎの用事なのは分かる。もしかしたらイタズラか何かの罠なのかもしれないが、行かなければ結局分からない。真実はいつも一つ。件のコマーシャルの扉みたいだよね。理事長室前の扉って。
「失礼します。」
なんだのかんだのは特に無く放課後。
さて、どんな事件現場何だろうとノックして部屋に入ると、そこには坂柳理事長の死体が……あるはずもなく、理事長が窓の外を向いて立っていた。偉い人って座って正面向いてるか、外眺めてるかのどっちかなのよね。何?偉い人のトレンドなの?
「すまないね。急に呼び出してしまって。」
「いえいえ。それで何用でしょうか?」
「結論だけ単刀直入に言おう。私は理事長を降ろされることになった。詳しい理由は言えないがね。」
「ふむふむ。で、その目的は如何ほどに?」
理事長は顎に手を当て、推測の範囲は出ないが、と前置きして答える。
「恐らく、としか言えないが、綾小路君を退学させることが目的だろう。」
「ほ〜ん。それは多少俺にも都合の悪い案件だ。」
綾小路が退学してしまえば、このまま彼の本気を見れずじまいになってしまう。彼が苦境に立たされた場合、それをダシに交渉も出来るというメリットもあるにはあるのだが。それもアリかもしれない。
「どうしてだい?彼が退学するのはBクラスの君にとっては都合の悪いことでは無いだろう?」
「そこではなくてですねぇ、まだ全力の彼とバトっておりませんので。あの年であのレベルと手合わせ出来る機会は滅多に無いもんで。」
「…あまり荒事は止して欲しいかな。」
「そこんとこは上手くやりますよ。学校としては俺は問題無く振る舞っていると思いますけどね。」
「お願いするよ。私がいない間に状況は変わってしまうのだろうが、念のため君も注意しておいてくれ。流石に君を退学させる事は無いだろうが。万が一があるからね。」
万が一ねぇ…状況によっては綾小路と共闘、という形になるのかもしれないな。
「まぁ気をつけますよ。」
「あと有栖の事も頼むよ。娘は偶に自信過剰な所があるから危険に巻き込まれた時に守ってあげて欲しい。」
「ん〜そこは近くにいれば善処しますよ。そんな立ち回りする事は無さそうですけどね。」
策略家の彼女の事、何も手を打たずに危険な所に顔を出すとは思えなんだが一応気をつけておきましょうか。
「あー、全然関係無い話なんですが、一つ聞いても良いですか?」
「何かな?あまり答えられる情報は無いとは思うけどね。」
「まぁ軽く確認ですよ。二千万ポイントでーーーー」
俺は理事長に一つ確認をした。ポイントは何処までのものが買えるのか。
「……君が何を考えているか分からないが、善処しよう。私が戻って来れたらになるだろうけどね。」
「…ありがとうございます。まぁ、ほぼやる気はありませんが、念のための確認ですよ。」
完全なOKという訳では無いが、不可能では無いらしい。本当にこの学校でポイントで買えないものなんて無いんだなぁ。と
「それじゃぁ、失礼しますね。早めに戻れるのを期待してますよ。」
「あぁ、君もくれぐれも気を付けるようにね。君には力に自信があるかもしれないが、力だけではどうにも出来ない事もある。今の私の様にね。」
「ま、出来る範囲で気をつけますよ。」
大人は考える事が多くて大変だなぁ、なんて思いながら、一礼して俺は理事長室を退場した。さて、とりあえず部屋でくつろぎくつろぎしませうかね。