一之瀬とのお出かけも終わり、帰路について夜である。いやぁ本日は楽しくも大変な一日でしたね。まぁ、屋上の後の帰路は何故か無言で帰った。気まずかったZE!
そろそろお休みしましょうかねと、ベットメイキングを決め込んでいると、来客を知らせるチャイムが鳴る。さぁてこんな時間に誰かしらん?
ガッチャ!と扉を開けると、そこにおはしましたのは坂柳さんである。しかも格好は何故かパジャマである。ついでにナイトキャップも被っている。うん、呼んでもいない嵐がやってきました。
「新聞の勧誘ならお断りでーす。」
俺はそう言って扉を閉めようとするが、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに扉に身体を挟みブロック。
「ちょ!どうして閉めようとするんですか!痛いですから一旦入れてください!説明はその後にしますから!」
「おーおーそー言って中に入っちまえばこっちのもんだとか考えてんのはお見通しなんでございまするよ。あんたらのやり口は分かってますのよいつでも答えはノーセンキュー!」
怪我しない程度に拒絶してみるが、本日の坂柳さん一歩も引かないご様子。どうしたの一日営業部長の役職でも貰ったのん?まぁここで押し合いへし合いして何事かと隣人が出てくるのも、それはそれで揉め事になりそうではあるので、いったん玄関まで招き入れる。まんまとやられた口である。
「ふぅ…もう強引ですね。巧君は。」
一息ついた坂柳が口を開く。追い出そうとしたのに逆の意味に取れる発言をしてくる坂柳さんの思考回路は摩訶不思議アドベンチャー研。
「で、何の用ですかねぇ…俺はもうお休みモード突入なんですがねぇ…」
「えぇ。ですので御覧の通り、私も就寝の準備をしてきました。」
「ちょっと何言ってるか分かんないです。」
パジャマでおじゃまな姿で、さも当然と言わんばかりにあっけからんと言い放つ坂柳さん。
「言ったはずですよ?『当日は楽しみにしていますよ』と。」
先日強引に約束を取り付けられた記憶を思い返す。言っていた様な気がするが言われて無いような気もする。一之瀬と出かける時に邪魔してくる事かと思っていたので、坂柳にミスリードさせられたことになる。坂柳はこの時間に来る計画で言っていたのだろうが分かんないよねそんなの。
「お返し返すから本日はお帰り頂いてよろしくて。」
「よろしくなくてよ、巧君。キチンとバレンタインデーにチョコを渡した私と後日渡した一之瀬さん。ホワイトデー当日に貴方と二人でデートした一之瀬さん。私が正当な対価を要求する事は間違ってはいないですよね?勿論三倍返しで、ですよ♪」
「うわぁ…無茶苦茶だよこの小娘……」
俺が頭を抱えている隙に坂柳は俺の横をすり抜け部屋の中へ侵入する。あぁ入られてしまいましたか。納得は勿論していないが諦観はしている。重い心持ちで俺もケツだけ歩きで部屋に戻る。
「また貴方は変なことを……」
「良いのだよ。誰が見てるわけでも無し。」
「私が見てるのですが……」
坂柳は呆れているのか憐れんだ目線を俺に送る。ペースをそちらに握らせるのは私とて看過出来るものではございませんのよオホホホホ。
テーブルの前で座っている坂柳の周りを、三周ケツだけ歩きで移動し、彼女に対面へどっかりとケツを落とす。さてどうどうしようか。とはいえ出来る事は二択。力技で追い出すか、諦めて大人しく夜を過ごすか。
「一つ忠告しておきますね。もし、私を強引に気絶させるなりして追い出した場合。明日から貴方の噂をある事無い事流布させて頂きますからご注意を。一之瀬さんに助けを求めた場合も同様です。」
「え?俺心読まれてます?」
追い出す選択肢が今消えてしまった。さす柳さん、考えがえげつねぇな。あと一之瀬呼んでどうにかしてもらう案までは俺の頭は回っておりませんことよ。
「折角の二人きりの時間ですから、どうしましょうね。……いつものマッサージをして頂きましょうか。ホワイトデーですので念入りにお願いしますね。」
坂柳さんは一番良いのをご所望だそうだ。カップラーメンあげるから帰って欲しい。
「うへぇ……」
「嫌そうな顔しないでください。可愛い女子にご奉仕できるのですよ。むしろご褒美ではありませんか。」
「それを言う女子は悪女と決まっているのですよセニョリータ。」
「あら?聡明な淑女の言い間違いではなくて?」
売り言葉に買い言葉して坂柳を言い負かせられるとは思わないので一旦観念しておこう。その内逆恨みの闇討ちはするがな。絶対多分おそらくメイビー。
「ま~ソレハ ソレ ト シテ。やりますんで横になってくださいな。」
「はい、お願いします。」
俺の言葉に素直に従い坂柳は横になる。さて、どう料理してやりましょうかね。どうもしませんけど。
彼女の体躯は高校生にしては小さい。ギリ小学生と言っても通用しそうな気もするが、口に出したらどんな反応されるかは目に見えているのでお口はミッフィーにしておこう。
あと、時々んっ…て艶めかしい声あげるの止めてもらっていいですか。とか思考を明後日の方向に飛ばしていると意外と時間が経つのは早いもの。
「ふぅ……ありがとうございます。」
「ドウイタシマシテ」
「どうして片言なんですかね?ん、よいしょっと。」
坂柳は俺のカタコトに文句を言いながら杖無しで立ち上がる。
「やっぱり、マッサージして頂いた後は調子が良いですね。」
そう言いながら彼女は部屋をテクテクと歩き回る。
「あんま調子乗りなさんなよ。あ~見ててヒヤヒヤしますね。」
「もし私が危なかったら、貴方が助けてくれるでしょう?」
「さぁ?どうだか。」
部屋の中を数周した後、さも当然かの如く我が愛しのオフトゥンに横たわる。
ぽんぽん、と何かを要求するか仕草で枕元を軽く叩く。
「添い寝するなら腕まくらが定番でしょう?」
この淑女、我が儘放題である。流石の俺もため息&しかみFaceだぜ。
侵入された段階でこのパターンになるんだろうなとは思っていたけどねぇ、人によっては役得なのかもしれないけどねぇ。
ええいままよと横になり腕を出すとトスンと小さな頭が乗る。
せめてもの抵抗として腕に力を入れておく。たぶんピャネルの5番の使いどころ、ここですね(謎推理)
「腕に力入れるの止めてくれません?石みたい固いのですが?」
「嫌です。せめてもの抵抗ですたい。臥薪嘗胆的なやつですよこれは。」
「意味が分かりませんよ…そもそも呉王夫差が私だとすると誰の敵討ちするんですか…」
「俺?」
俺⁉️俺❗️俺❗️俺❗️俺❗️俺‼️ Ah~↑↑↑真夏のJamboree〜〜‼️‼️レゲエ砂浜Big Wave!!、なんて寝るのに全く相応しくない音楽が頭の中を駆け巡る。
「ほらほら、年頃の男女が同じ布団の中、据え膳食わぬは男の恥ではありませんか?」
そう言う坂柳は身体を更に寄せる。
「毒饅頭に手を付けるのはちょっと勘弁でごわす。」
「あらあら?私に魅了されて襲いたいと、劣情が沸々湧き上がってきませんか?」
「残念ながら・・・残念でございますね・・・」
「何か言いました?」
「ナンデモナイデゴザアマス」
そう言って俺は口を紡ぐ。何故正直に伝えようとした側がたしなめられているんですかね。
「私の魅力は貴方には伝わらない様で残念です。」
彼女は心なしかシュンとしてる風に見えなくもない、見えないわけでも無く無く無く無い。
「まぁ何だ、今までこの状態になった中で一番鯖折りしやすい相手だな、とは思う。片手でいけるやで。」
坂柳の腰に腕を回す。
「全くフォローになってませんし、物騒な発言止めてもらえませんか?」
「やるつもりはありませぬよ。たぶん。」
「断定しないの止めてくれません?」
「物事に絶対はありゃしませんので。」
「意外と臆病者ですわね。」
彼女は隣でクスクスと笑う。今日はこれ位で簡便化してあげますと一言付け加えて。
「今日の一之瀬さんとのデートは楽しかったですか?」
聞かれたのは今日のこと。唐突というワケでも無いが彼女から聞かれるのは不気味ではある。
「映画見に行ったりスポーツしたりご飯食べたりで良くあるおデートでしたわよ。」
「私はあまり長くは動き回れませんので、そんな良くあるおデートでも大変だったりするのですよ。」
会話をしてると忘れてしまうが、ハンディキャップがある身だとふだんも苦労するのだろう。確かに彼女の前ではこの言い方は浅慮だったのかもしれない。これはこれは罪悪感。
「ん~まぁ何だ、もしもmaybe仮に万が一お互いに暇を持て余してたらお付き合い位はしますよ。」
「随分と回りくどい誘い方ですね。折角のお誘いですし、乗ってあげましょう。」
「その前に退学にならなきゃ良いけどねぇ。俺、荒事大好きクラブ会員なもんで、どっかでやらかしてしまいそうですぜ。」
「その時は笑顔で見送らせて貰いますよ。」
「引き止める素振りも無いのひでぇや。」
意味のあるような無いような会話のキャッチボールを繰り返して、今日は普段より長い夜。以前より時間の流れは早く感じている様なそうでも無い様な。他よりも少し波乱の多い学校生活を、楽しませてもらいましょうかね。
久々に投稿しようとしたら前書きに本文書いちまったZE!