私の名前は一之瀬帆波って言います。
私には最近気になっている人がいます。
その人の名前は赤羽巧くん。
学校での彼の授業態度は至って普通です。先生に指名されたら答えるし、宿題も忘れちゃう様子もありません。見た目は良くも悪くもないです。悪く言っちゃうと、目立たない生徒って感じかな。
でも、入学当初にD組の人といざこざがあって、クラスのみんなとは不良だと思われちゃって距離を取られちゃってます。実は誤解で彼は手を出してないみたい。私も誤解を解こうとしてるんだけど、最初の印象って中々変えられなくて苦労しちゃってます。
そういえば、彼は昔、空手か何かの武道で凄い人だったみたい。生徒会長さんとも知り合いだったみたいで生徒会に勧誘されていた。彼は断ってたんだけどね。
私は断られちゃったのに、羨ましいなぁ。
縁あって彼の戦う姿を見たけど、良く分からなかったけど凄かった!相手はC組の山田アルベルトくん。とても背が高くて筋肉質な人だ。
なんかこう、相手の攻撃を避けてばーんどかーんって感じ。言葉にすると難しいや。…格好良かったなぁ。
彼は普段どんな生活をしているんだろう?
放課後、彼が帰るのにこっそりついて行きます。
彼は特にこちらに気付いた様子もなく移動していきます。
大通りからどんどん路地裏に移動していきます。何処に行くつもりなんだろう?
彼が路地裏の角を曲がったのでついて行く。曲がる時に突風が吹いてきた。前を見ると彼の姿はなかった。さっきまで居たはずなのにどこにいったんだろう?
「俺に何の用だ?」
後ろから心臓を刺すような冷たい声が聞こえる。ゆっくりと振り返ると赤羽くんだった。さっきまで前を歩いていたはずなのにどうやって回り込んだんだろう?
「あら、一之瀬じゃんか。…俺もまだまだだねぇ。」
彼は頭を掻きながらため息をついている。何がまだまだなんだろう?
「今どうやって私の後ろに回り込んだの?全然気づかなかった!」
「それは企業秘密だ。俺のとっておきの一つだからね。…で、何で俺の後を付けてきたのか聞かせてもらっていいかねぇ?」
「ただ赤羽くんがどこに向かうか気になったからついて来ただけだよ。他意は無いよ、本当だよ!」
本当に他意は無い。彼が普段どんな日常を送っているか知りたかっただけだ。
「ま、そういう事にしておくよ。だけど、ストーカー紛いの行動はあんまり良くないんじゃ無いかな?」
「そ、そうだけど…」
「例えば、だ。つける相手が龍園とか危ないやつだったとする。その時危険が及ぶのは確実に一之瀬の方だぞ。俺だったとしても、お前を襲おうと意図して誘い込んでいたらどうする?ここに逃げ場はないぞ。」
「赤羽くんはそんな事しないよ!」
赤羽くんはそんな事はしないと本当に思っている。彼は理由無く相手に暴力は振るってこない。
「まあ俺は面倒事を増やすのは御免だからそんなことはしないが、例えばって話だ。その時は確実にお前は酷い目に合う。たとえクラスの為としても、そういうリスクのある行動は止めておいた方が良い。勇気ある行動は賞賛するが力無き者は蹂躙される。これは肝に命じておいた方が良い。特にこの学校ではな。あまりにも一之瀬にとって危ないやつが多すぎる。」
彼は私に近づいて手首を取ってきます。そして鳩尾に軽く拳へ触れてきた。
「今ここで衝撃を加えられたら、一之瀬は呼吸困難で気絶する。そのままどこかに運ばれて情報を引き出されたり、慰み物にされて今後まともな学校生活を送れなくなるかもしれない。お前はBクラスの代表なんだ。行動には少しは注意した方がいい。現時点だと特にCクラスとかな。」
「…そうだね。」
もし、これがC組の龍園くんとかだったら、危なかったかもしれない。
「ま、荒事の時は俺を頼ってくれて良いよ。クラスの為なら俺も喜んで協力するさ。でも、あまり巻き込まないでくれると助かるけどな。」
「…うん。」
「寮まで送るよ。今こんな事言った手前だしね。」
「…ありがと。」
彼に見つかっちゃったので、彼の話は終わりです。結局彼の普段の生活は分からなかった。今度遊びに誘ってたら分かるかなぁ。
後ろに回り込んだカラクリは、また後日説明?します。察しのいい人はもう気付いているかもしれませんが…
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