史上最強のRTA ~梁山泊入門禁止縛り~ 作:(´・ω・`)ガンオン修行僧
アンケートにご協力ありがとうございます!
新しいのも追加したので、また回答してくださいオナシャス!
日常短編集の需要多い……多くない?
本編はもうすぐ始まります(始まるとは言っていない)
追記:くっそ長く(10000文字超に)なってしまいましたが私のせいではありません。小説パートが長くなりすぎたため、つまり琳師父のせいです。許してくださいオナシャス!! センセンシャル!!
闇勢力に強化フラグを立てまくる活人拳RTAはーじまーるよー。
前回は琳お姉さんとの同棲(内弟子)生活を始め、淫ファミを結成したホモくんに筋肉モリモリマッチョマンの変態が襲いかかってきたところまででしたね。
バーサーカーの乱入はタイム的にまず味でしたが、それ以上の恩恵がありました。
まず第一に、ネームドボス初回撃破のボーナス経験値が入り、ホモくんの技術面のステータスが底上げされました。いくら修行だけやっていても勝負度胸は付かないので、これだけの経験値はうま味ですね。
そして次に、ラグナレクの結成を遅らせることができました。ラグナレクはスリー・オブ・カードの強さに惹かれて猛者が集まり、そこにさらに雑魚共が集まることで急成長を遂げたグループです。
そういった経緯がある以上、そのスリー・オブ・カードの一枚であり、ラグナレク編最終盤まで無敗を誇ったバーサーカーが敗北したため、原作より成長が遅れるのは必然ですね。
ラグナレクが強大になりすぎると新白連合が壊滅しかねないため、ここで成長を阻害できたことは非常にうま味です。
しかし、そう良いことばかりでもありません。バーサーカーの撃破により、謎の拳法使いとしてホモくんの存在が龍斗に認知されてしまいました。
特に気の運用に関しては、原作開始時点では一段どころか二段階は高いレベルにいます。他のキャラクターが五十三巻前後で気の開放を取得している中(それも極一部の弟子級のみ)、十五巻時点で既に気の開放を習得していますからね、彼。
つまり原作序盤でみんなの実力が拮抗している中、一人だけ物語終盤時点相当の強さを持っているぶっ壊れキャラです。準備ができてないうちは絶対に喧嘩を売ってはいけません(8敗)
今後はそんな龍斗に存在を認知され、付け狙われる可能性があるんですよねぇ……。
ホモくんも現状では龍斗に勝てず、また、名実ともに殺人拳入りした彼に敗北するとそのまま死亡して
とりあえずは戦闘時間をこれまでより更に短くするべく攻撃力を重点的に上げることと、正体を隠すために谷本くんみたくフード付きのマントでも羽織ってみましょうか。
それにしても、走者である私は龍斗対策を知っていますがホモくん達は知らず、修行によって対策を打つことができないので歯痒いんですよねぇ……。
琳お姉さん、せめて対制空圏用の技とか授けてくれませんかねぇ。
制空圏関連の武技修練を開放するには、制空圏の存在を知った弟子側から提案するか、その段階に達したと師匠側が判断するのを待つしかありません。
バーサーカーのような天才ならなんとなくとか勘とか、そんなんで対抗策を導き出したりできるんですがね……。
さて、マントを羽織り、戦闘場所や時間を毎回変えて龍斗に察知されづらくしたら不良狩り続行です。
ここからはまた倍速しつつ不良狩りに精(意味深)を出すだけとなりますので……み~な~さ~ま~の~た~め~に~
ホモくんが琳お姉さんにマントを強請ったときの映像を流して―――あ、等速に戻りましたね。いい加減慣れました。
琳お姉さんと夕食を食べ終え、一息ついてたところで、何やら琳お姉さんに連絡があったようです。
どうやら数ヵ月後の週末に、再び琳お姉さんと横浜へ行くようですね。もしかしてまた雷薙ちゃんとの他流仕合でしょうか。
それまでは不良狩りを続行しつつ、修行に励みましょう。いざ鎌倉!
はい、数ヵ月後になりました。
ホモくんと琳お姉さんがクリスマスソングが流れる横浜の町を歩いています。他流試合かと思っていましたが、どうやら目的が異なるようです。
中華街の一角へ足を進め、入っていったのは何やら胡散臭い漢方屋ですが……あ、どうやらここは黒虎白龍門会の拠点のようですね。
黒虎白龍門会は日本一素晴らしい中国人こと、馬剣星が過去に総帥をしていた鳳凰武侠連盟と中国武術界を二分する勢力であり、梁山泊や一影九拳並みの達人も擁すると言われる組織ですね。
そして黒虎白龍門会は殺人拳を旨としており、活人拳側の鳳凰武侠連盟を梁山泊とするならば、中国武術界版の闇とも言える存在ですね。
そんな黒虎白龍門会に一体何の用でしょうか。
例によって会話パートをスキップしているので、黒虎白龍門会の男と琳お姉さんの会話を後ほど確認した私から説明します。
今回横浜に来たのは、どうやら黒虎白龍門会が引き受けている中国マフィアの用心棒の仕事を手伝うためだそうです。
弟子との生活のため、その身体で稼ぐ(意味深)とは見上げた師匠ですね(ゲス顔
という冗談はさておき、何やら琳お姉さんと黒虎白龍門会の間には過去にひと悶着あったようです。
というのも、琳お姉さんが一影九拳入りを目指してバリバリやっていた頃、名声を高めるべく黒虎白龍門会からの仕事も見境なく受けてしまっていたようです。若気の至りですね。
その当時の伝手で未だに時折仕事の依頼が来るようで、ホモくんに武術家同士の戦いを見せるべく今回は受けたようですね。
要するに、前回来れなかった裏社会科見学です。
仕事内容は中国マフィアと地方マフィアの非合法的な取引を護衛することらしく、横浜港の外れにある倉庫へ行くことになりました。
倉庫内には大量の木箱が並んでいますね。私の勘ですがこれらはおそらくきっと全て違法ホモビ、つまり宝の山ですね間違いない俺は詳しいんだ。
下っ端マフィアの下卑た笑いを向けられつつも、ホモくんと琳お姉さんは倉庫奥の事務所で待機しています。
そして取引も終わり、後は荷の運び出しを待つだけになった頃、表の方がやけに騒がしくなってきました。どうやら鳳凰武侠連盟のカチコミのようですね。
取引現場に乱入してきたのは三人だけのようです。うち二人は白眉の弟子である劉玄孫と諸葛孔暗ですね。
一応ネームドキャラであり、蓮華ちゃんにはそこそこ使えると称されていますが、ラグナレク編中盤の兼一相手に二対一で遅れを取るなど、はっきり言ってそこまでの強敵でもありません。
しかし、もう一人いる男は原作で見覚えがありません。おそらく、原作では鳳凰武侠連盟側の達人が全く描かれていないために、ゲーム化に当たって用意されたオリジナル達人ですね。
鳳凰武侠連盟か黒虎白龍門会に入門すると参加できる横浜抗争編では、原作でお馴染みの蓮華ちゃん達やゲームオリジナルのキャラが入り乱れる熾烈な抗争を味わうことができます。原作で触れられなかった設定が活かされた遊びごたえのあるルートなので、未プレイ兄貴は遊んでみてどうぞ。
ホモくんと琳師父が姿を現すと、乱入者の三人は律儀に名乗りを上げました。あのオリジナル達人は、どうやら魏 延武という名のようですね。反骨の相が出てるぞ。
名乗りを聞いた琳師父が名乗り返すと、三人はその名前に驚いた様子です。どうやら琳師父は有名人のようですね。
そうしてこちらも琳師父に倣って名乗りを上げると、それぞれ向かい合いました。こちらは弟子二人を相手にしましょう。
優秀な諜報員(攻略Wiki)によると、奇しくも、魏延武は詠春拳の使い手のようです。詠春拳は素早い手技だけでなく防御にも重点を置いており、どうやら魏延武はそんな詠春拳の中でもより制空圏に秀でた防御特化の達人のようです。
そして対する我らが琳師父は詠春拳から発展した截拳道の、それも攻撃に特化した達人です。これは非常に面白い対戦カードではないでしょうか。
にらみ合っている我々に見かねて魏延武の背後から黒虎白龍門会の刀剣使いモブが五人同時に仕掛けると、振り返ることすらなく制空圏で攻撃をいなし、目にも止まらぬ連打で瞬く間に全員を沈めました。
やはり、一定の範囲内であれば半自動的に反応できる制空圏は、不意打ちにやたらと強いですね。現状、ホモくんは不意打ちに頼る場面が多いので、制空圏対策は万全にしておかなければなりません。
さて、達人戦がなかなか始まらないので、先にこちらをさっさと片付けてしまいましょう。
劉玄孫は蟷螂拳の使い手で、上下のコンビネーションを得意としています。一方の諸葛孔暗は戳脚と呼ばれる足技の使い手で、こちらは変幻自在の足技を得意としています。
こいつらへの対策ですが、そういう難しいことはぶっ○してから考えるよ!(某ムエタイ使い談)
実際、お互い未熟で不意打ちありきとはいえバーサーカーを下すレベルのホモくんと、制空圏すら習得していないレベルの兼一に勝てないような二人組では、本当に相手になりません。
難しいことは考えず、いつものように全力で狩りにいくのがタイム的にも最善です。
……はい、終わりましたね。
先日お見せしたバーサーカー戦と同じく、まず二歩一撃からの裡門頂肘で諸葛孔暗を沈め、続いて仕掛けてきた劉玄孫と数手打ち合い、直後に琳師父直伝のカウンター技『交叉骨砕』を決めるともう動かなくなりました。
白眉伯父ほどの猛者に師事を受け、蓮華ちゃんからそこそこ評価されているのにも拘わらずこの程度の強さ……恥ずかしくないの?
相手を速攻で撃破したホモくんに気づくと、魏延武と戦闘中の琳師父が一瞬笑みを浮かべましたね。
というか、あちらも決着が着きかけています。
(最近忘れていましたが)殺人拳特有の凶悪な笑みを浮かべながら、瞬く間に強固な制空圏を食い破って懐に飛び込み、超接近戦に持ち込みました。
あそこまで接近されると制空圏を維持するのは不可能ですね。その対制空圏技、ホモくんにも教えてくださいお願いします! なんでもしますから!
しかし、あの距離は詠春拳の得意とする距離でもあります。超接近戦に持ち込んだ琳師父に対し距離を取ることはせず、魏延武が詠春拳特有の手数でもって迎撃しています。
が、如何せん相手が悪いですね。琳師父は詠春拳の流れを汲む截拳道の、それも攻撃特化の達人です。その達人相手に超接近戦での打ち合いを挑んではいけない(戒め
琳師父は魏延武よりもさらに素早い手技でもって、繰り出される拳の機先を制して威力が乗る前に殺し、そのまま魏延武にも拳を叩き込んでいきますね。
防御特化の達人とはいえ、詠春拳の手技を真っ向から上回り打ち破っていくとはたまげたなぁ。
ものの数秒もすると、魏延武は動かなくなりましたね。うわお姉さんつよい。
しかし、あまりにも一方的すぎて少々まずいですね……黒虎白龍門会のモブ達が刀剣を手に、動けない三人に近づいていきます。間違いなく首を獲るつもりでしょう。
モブに過ぎない魏延武はともかく、原作とも少しだけ関わりがある劉玄孫と諸葛孔暗に退場されると、今後どういった影響が出てくるかわかりません。
なので、魏延武には琳師父に負けつつも弟子級二人を抱えて逃げて欲しかったのですが……琳お姉さんが想像以上に強すぎましたね。
どうやってあの二人を生存させ―――げぇっ! 白眉!
倉庫に新たな殺戮者がエントリーです。あれは横浜を仕切る鳳凰武侠連盟の白眉伯父こと、馬 良ですね。
あの梁山泊の馬剣星の実の叔父であり、そこいらの達人なら軽く相手できると豪語する特A級の達人です。横浜に常駐している中では最強の男ではないでしょうか。
こ、今度はこっちがまずいですよ!
本当なら今すぐにでも仕事を放り投げて逃げ出したいところですが、琳師父は荷物の運び出し完了までの少しの間、時間を稼ぐつもりのようですね。
この時点で琳お姉さんを再起不能にされると、チャート崩壊により再走確定になるので絶対に負けないよう祈りましょう。
弟子二人と魏延武の生存を確認した白眉が、猛然と襲いかかってきますね。
本作のほとんど達人の間には「弟子の戦いに師匠は出ない」という暗黙の了解があり、これは殺人拳側でも例外でなく、極一部の外道とカスを除いてみんな遵守します。
達人級と弟子級がまともにタイマンなんてしようものなら、弟子級はミンチになる以外の未来がありませんからね。
つまりホモくんが白眉に狙われることはないため、あとは放置してお煎餅でもかじりながら見ていましょう。
……やはり、特A級の達人である白眉の強さは尋常ではありませんね。先ほど魏延武を圧倒した琳師父ですが、白眉伯父を攻めあぐねています。
この戦いを見るに、琳師父は達人上位から特A級の達人下位ほどの実力があることが窺えますね。
しかし、しばらく経つと琳師父の動きが若干鈍り始め、白眉伯父に押しに押されています。ホモくんのように、戦闘時間が長引くにつれデバフを受ける特徴でも持っているのでしょうか。あとちょっとで運び出しも終わるから根性見せてどうぞ。
攻防の最中、捌き切れなかった白眉の手刀が琳師父を掠めました。手傷は負っていませんが、衣服の前部が引き裂かれていますね。
おい、(ホモ英才教育をしているホモくんの目の前で)何すんじゃゴルァ!!
琳師父はすぐさま羽織っていたコートで胸元を隠しますが、首元から腹部にかけての大きな傷跡が一瞬見えましたね。
あーなるほど。だからあれを隠すために、夏場でもノースリーブのタートルネックをずっと着ていたんですね。てっきり
もしかしなくても、一影九拳入りを諦めることになった原因の傷跡ではないでしょうか。今度、師弟関係のイベントで何かあるかもしれませんので、頭の片隅にでも入れておきましょう。
そしてこれまで、何らかのデバフを受けつつもどうにか凌いでいた琳師父に、ついに限界が訪れたようです。
未だ直撃を避け続けているにも拘らず琳師父は膝を突き、咳こみながら喀血しました。ヤバすぎィ!
そして、そんな琳師父に迫る白眉伯父の目の前に、ホモくんが飛び出しました。ってホモくん!?
えー、自動操作に任せていたことが仇になりましたね。
しかし、そこはやはり活人拳側にいる白眉伯父です。ホモくんに攻撃を仕掛けることはなく、一瞬動きが止まりました。
その隙にホモくんの道着の帯を掴んで担ぎ上げると、目にも止まらぬ速さで琳師父が離脱していきました。いつの間にか、取引現場にいたマフィアの幹部はみんな脱出に成功していますね。
いくらかの荷物と下っ端は犠牲になりますが、裏社会に犠牲はつきものデース。
逃走の最中、ホモくんが傷跡のことを尋ねると、琳師父が絶え絶えに答えてくれますね。タイムに影響あるから早く話してどうぞ。
どうやら、あの傷はアメリカで裏の仕事をこなしていた最中、サバット使いのフランス人と発勁使いのイギリス人、そして空手家の日本人の三人と同時に戦い、負ったもののようですね。
それにより肺や心臓に損傷を負い、長時間戦えない身体になってしまったとのことです。そら(こんな大怪我と後遺症を負ったら)そう(一影九拳入りを諦めることに)なるよ。
そうして到着したのは、薙ちゃんと仕合をしたいつぞやの廃ビルですね。その一角にホモくんを下ろすと、琳お姉さんは倒れて動かなくなってしまいました。
……どうしよう。
今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。
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「まあまあやるじゃないか、アタシの弟子も」
魏延武と名乗った強面の達人と向き合いながら、視界の端で基樹の姿を捉える。
数年前に闇人である李天門の娘と仕合をさせた時に教えてやった二歩一撃から、その繋げ技として教えた裡門頂肘までをしっかりと決め、戳脚を使う方の相手を一撃で沈めて見せた。
そして蟷螂拳を使う方の相手と数合打ち合い、その最中、襲ってきた左拳に対してボクシングのスウェーに近い独特の体捌きで相手の左側面に回り込みつつ、右肘と左掌で拳を押し出して受け流す。
これはアメリカ西海岸で截拳道を学んでいた時のこと、来る日も来る日も
その密着状態で、あいつが弟子入り当初から何年にも渡って練り続けた寸勁を脇腹に叩き込む。名付けて『交叉骨砕』、どうやって懐に飛び込むか苦心した結果として他武術の動きを取り入れ、若かりし頃のアタシが編み出した始めての技だ。
あんなもんを食らって立っていられる弟子級は、そうはいないだろう。
その一撃を受けた蟷螂拳男は床に転がり、動かなくなった。どうやら気を失ったらしい。
基樹は感情的でムラっ気が強く、長引くと集中力を欠くため長期戦を苦手とする傾向がある。だからこそ、こんな身体でも戦えるよう密かに磨いていたアタシの技とあいつは相性が良く、先手必殺にかけてはそこらの弟子に負けないだけの子に育ててきた自負がある。
そうわかってはいたが、やはりこの目で見ると感動もひとしおだ。アタシの弟子なんだからこのくらいできて当然という気持ちと、他の武術家の弟子に引けを取らない我が弟子の成長を喜ぶ気持ちが混ざり合い、気が付けばアタシは笑みを浮かべていた。
さて、愛弟子の前だ。こちらも無様なところを見せるわけにはいかない。
相手はそれなりに使える制空圏の達人らしいがご生憎様、アタシみたいな攻めしかない女の天敵である制空圏対策は練りに練っており、それなりに使える程度では問題にならない。
それこそ、アタシを止めたいならば特A級の達人を連れてくるか、音に聞く無敵超人の流水制空圏でも用意してくるがいい。
どうせ長くは戦えない身体なんだ。初手を最初で最後の打ち込みにすると胸に決め、両腕を体の前で密着させて構え、小さく強固な制空圏を張る。
制空圏のぶつかり合いはシンプルだ。
双方の制空圏が重なった瞬間、より強く、より固い制空圏が勝ち、そうでない方がねじ伏せられるだけだ。
そして、アタシ達のような戦い方をする者に、自身を守るための大きな制空圏などいらない。相手の制空圏に飛び込んでいくための、小さく強固な制空圏だけあれば事足りるのだ。
制空圏のぶつかり合いは、やはり一瞬で決着がついた。
制空圏に飛び込んできたアタシに反応して繰り出される拳を弾き、捌き、一秒とかからず打ち破って見せた。
自慢の制空圏を一瞬で打ち破られたにも拘らず、魏延武は驚いた様子すら見せず、そのまま詠春拳お得意の手数で迎撃に移ってきた。可愛げのないやつめ。
その程度の攻撃で、アタシの攻撃を上回れるわけがないのは判っているだろうに。
截拳道の創始者であるブルース・リー大師父の「実戦は六秒以内で終わらせる」という思想や、ワン・インチ・パンチの逸話が有名になるにつれ勘違いされているが、その本懐は攻撃だけにあるのではない。
その「相手の拳を
つまり、制空圏を打ち破られて苦し紛れに放たれる拳など、アタシが磨き上げてきた截拳道の敵ではない。
魏延武の拳を打ち、払い、その一撃一撃へのカウンターとしてこちらの打突や掌打を叩き込んでいく。
六打も打ち込めば次第に魏延武の手数が減ってきて、十も打ち込む頃には主導権は完全にアタシのものとなっていた。
そして最後に八極拳の一手、鉄山靠で大柄な身体を吹っ飛ばすと、固いコンクリートの上を転がり、そのまま動かなくなった。
大した相手ではなかったが、こちらも消耗させられてしまった。
基樹に気づかれぬようゆっくりと大きく息を吐き出すと、喉の奥から鉄臭い匂いと味が上ってきた。やはり、激しい動きは控えた方が良さそうだ。
倒れている三人の首を刈り取るべく、黒虎白龍門会の雑魚共が刀剣を片手に近寄っていく。
基樹はそんな光景を目の当たりにして身体を強ばらせている。そうか、こいつはまだ目の前で人が殺されたことなどないんだった。
一影九拳を目指す以上、人の死には慣れていた方が良い。それが残酷なものなら尚更だ。他の闇人に比べ、基樹の歳では遅すぎるくらいかもしれない。
だというのに、アタシは一瞬だけ、この子の前に身体を滑り込ませ、その視界を奪うように頭を抱き抱えようとした。
一影九拳を目指す以上、これを見せて学ばせることが最良であると理解しているはずなのに。
―――どういうわけか、こんなものをこの子に見せたくなかった。
その時だ。天井付近にあった窓が突然割れ、白い眉の老人が飛び込んできた。
あれは間違いない。横浜武術界の主にして、梁山泊や一影九拳に引けを取らない特A級の達人、馬 良こと白眉だ。
以前なら思わぬ強敵の登場に心も踊っただろうが、今はそんな感情は全くない。アタシの敗北は、即ち基樹の窮地でもある。活人拳相手によもや命までは取られないだろうが、この子がどんな目に遭うのかわかったものではない。
目の前の強敵の存在に、否が応でもその事実を実感させられる。アタシの胸中は、これまで感じたこともない部類のプレッシャーで埋め尽くされていた。
年齢を感じさせない俊敏さで白眉が襲いかかってくる。
守りに回って、あの達人に勝てるわけはない。こちらも飛び出し、拳と拳を重ねるがやはりこの老人、半端な功夫ではない。
押し切るどころか、押し切られないようにするので精一杯だった。
打ち合いの最中、蟷螂拳の鋭い動きで手刀が放たれる。目では捉えきれていたそれに、しかし身体が付いてこなかった。
捌き切れなかった手刀が身体を掠める。どうにか直撃こそ受けなかったが、ニット生地のタートルネックセーターが引き裂かれ、胸元が露わになってしまった。
こちとら武の世界で生きると決めたときから、女など捨てている。しかし、この身体に残る醜い傷跡は、あの子に見せたくなかった。
羽織っていたコートで身体を隠し、なおも拳を交える。
しかし、アタシの身体は限界を迎えた。いや、あの手刀を捌ききれなかった時点で、とうに限界を迎えていたのかもしれない。
突如強烈な胸部の痛みに襲われ、思わず膝を付いてしまう。そして喉の奥から真っ赤な血が溢れ出し、咳き込みながらコンクリートの床にぶちまける。
……アタシも焼きが回ったものだ。よりにもよって、弟子の前でこんな醜態を晒すとは。
膝を突いたアタシを再起不能にするべく、白眉が踏み込んでくる。
「琳姉ちゃん!!!」
覚悟を決め、目を閉じようとしたその時だ。アタシの名を叫びながら、白眉との間に基樹が割って入る。
達人級が弟子級を手にかけることを、恥と考える武術家は少なくない。それが年端もいかない子供なら尚更だ。
活人拳たる白眉もそのうちの一人のようで、突然の乱入に一瞬動きを止めた。
その隙に飛び出し、基樹の帯を掴んで引っ張り上げると肩に担ぎ、白眉が割って入ってきた窓から倉庫を飛び出していく。
最中、白眉の方へ視線を向けると、サングラスの隙間から視線が合った。『その師匠思いの純粋な弟子に免じ、今回は見逃してやる』と、そうあいつの目が物語っていた。
「り、琳姉ちゃん……その傷は……?」
「琳師父、だ。これは、まぁ……昔負けた時に……もらったもん、だよ」
正直話すのもきついが、この子に余計な心配を掛けたくはない。
建物の屋根から屋根へと飛び移り、夜の街を駆けながら、この傷を負った時のことを少しだけ話してやる。
あれは今から七年前、基樹と出会う前年のことだ。
当時、一影九拳を目指して闇からの仕事を受けていたアタシは、その日もターゲット殺害のために相棒と共にアメリカ国内の現場へ赴いた。
そこで戦ったのがサバット使いのフランス人と発勁使いのイギリス人、そして空手使いの日本人だった。
アタシ達もかなりの使い手だったと自負していたが、その日の相手、とりわけあの空手家の日本人はアタシ達の予想を遥かに上回る腕前をしていた。
人数の不利もあって次第に押され、結局アタシ達はその三人組に負けてしまった。
これは後で知ったことだが、あの空手家はケンカ百段と呼ばれ、人越拳神と空手最強を二分する男、逆鬼至緒。そして殺人サバット使いのクリストファー・エクレールと、ニトログリセリンの異名を持つ発勁使いのマイクロフトだ。
そう、あのマイクロフトに、だ。相手の体に触れさえすれば、あらゆる体勢からでも寸勁を相手の体に流し込み人体を爆破できるというあの男が、戦闘不能だったアタシの胸部に寸勁を流し込んだ。
どういう訳か、すんでのところで逆鬼という空手家がマイクロフトの手を弾いたため、アタシの身体が弾け飛ぶことはなかったが、それでも威力は絶大だった。
消化器系や心臓、とりわけ肺に大きな損傷を負い、アタシの肺は健常時の半分ほどしか残っていない。
この影響でアタシは長時間満足に戦えない身体となり、一影九拳になるという夢を諦めることとなったのだ。
ちょうど話し終える頃、いつぞやの組手に使った廃ビルに到着する。上のフロアにあった打ち捨てられた事務所に入るなり基樹を下ろし、限界をとうに迎えていた身体が冷たい床に崩れ落ちた。
「情けない、師匠で……ごめん、ね……基、樹―――」
どこまで言葉になったかもわからない言葉を言い残し、意識を手放す。
最後に目にしたのは、今にも泣き出しそうな、不安げな顔でこちらを見つめる愛弟子の顔だった。
なんて顔してるんだか……まったく―――
逆鬼師匠がクリストファー・エクレールやマイクロフトと組んでいた時期や世界ケンカ旅行の時期ですが、原作では(たぶん)明確になっていません。
本郷や鈴木と死合ったのが本編から約10年ほど前とのことですが、DオブD編でのジェニファー・グレーの回想を見る限り、10歳前後のロリジェニーと今と変わらない見た目の逆鬼師匠の姿があります。
仮に本編のジェニファーを20歳前後とした場合、逆鬼師匠は本郷と鈴木と死合った直後に日本を出て、世界ケンカ旅行を始めた計算になりますね。
本作において、逆鬼師匠が上記2人と組んでいた時期は世界ケンカ旅行中と解釈しています。
そしてケンカ旅行を始め、2人と組み始めた直後の逆鬼師匠達と戦い、琳師父は後遺症を負ったんですね~。
師弟日常編のような番外短編集の需要は……
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ありますあります!
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あれば読む
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(需要は)ないです
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そんなもん書いてる暇があったら本編を書け