"役立たず"の奮闘記   作:緑川翼

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いくつか文章を変更いたしました。2020 12/26
【変更点】
1)ルビ・特殊タグを使用。
2)地の文における怪盗団メンバーの呼び方を統一。
3)7話「awakening」のペルソナとの問答の内容を変更
4)その他細々とした部分の書き足し


PERSNA

『ふん。やはり役立たずは役立たずか』

『貴様……!』

『今度は違うぞ。来い。我が社の精鋭たちよ!』

 

 ぼんやりと、一樹の意識残っていた。指先1つ動きそうにないが、少しの思考はできる程度の意識が。

 

(──アイツら。結局手を抜いてやがったのか。)

 

 一樹は恨みがましく思うが、その思いを口にできる程の力もない。それだったら、いっそのこと始末してくれれば良かったものを。

 

『先輩は……?!』

『取り敢えず、安全な所に運んで!』

『パイセンはオレが運ぶ! あのヤロウは任せたぜ!!』

 

 誰かが乱暴に体を動かしている感覚がする。一樹は目も見えていないが、おそらく自分を動かしているのは金髪ヤンキー(スカル)だろう。

 

 一樹が何処かに置かれた後、少し離れた所で騒音が響く。怪盗団とシャドウオクムラの戦いが始まったのだろう。

 

(──ああ、クソ。……何やってんかな、 俺。)

 

 向こうで、敵として、味方として、怪盗団といたかったのに。一樹は前哨戦にしかなれなかった。死に際にいる一樹の思考力は、そこまで深く考えれる程に冴えていない。ただ漠然と、悔しいなぁ……とのみ感じていた。

 

 体は動きそうにない。しかし、一樹の耳は聞こえ周囲の音を拾っている。轟音、時に怒号。それらの音は、戦闘の激しさを物語っていた。

 

(──そこに、俺もいたかったのに。せめて、俺にもペルソナがあれば……)

 

 そう考えて、ふと一樹の思考が横にずれた。何故、結局自分はペルソナを出せなかったのか、と。

 

 モルガナは「自分と向き合うのがカギ」だと言っていた。

 

 一樹は、自分の事を()()()()()。曰く「卑屈かつネガティブ。コミュ症の癖に調子に乗りやすく変にプライドの高い面倒な男」それが一樹が自分に下した評価である。

 

 間違ってはない筈だ。その程度が妥当だろうと()()もしている。

 

 では、何故?

 

『危ない! ──クッ?!』

 

 いきなり近くで声がした。多分、クイーンだ。被弾でもしたのだろうか。

 

『テメ……ッ、パイセンを狙いやがったな!』

『卑怯な……!!』

 

(──ああ、なるほどね。……クソが。)

 

 今、一樹はクイーンに庇われたらしい。それはとても……、ムカつく事だ。

 

 怪盗団の連中は動けない一樹を攻撃したシャドウオクムラに怒りを覚えたようだが、一樹は庇ったクイーンに腹を立てた。

 

 何処に相手に守られる『敵』がいるか。何処にただ守られるだけで背中を預けれない『仲間』がいるのか。

 

 一樹は、ただただ守られ、庇われるだけの『モブ』でいたくなかった。それならば、命をかけて戦い最後には殺される『敵』の方がまだマシだった。

 

 しかし一樹は、それにすらなり損ねた。

 

『まったく……意識を失ってでも我が社に貢献するとは。役立たずにしてはいい仕事をするじゃないか。ンナハハハ!』

『クッ……!≪ラクカジャ≫!』

 

 防御力を高めるスキルだったかを、クイーンが使った。どうしたって、怪盗団は一樹を助けるつもりらしい。そんなそつない所が、一樹は嫌いだというのに。

 

『ふん。役立たずを身内に抱えるのは大変だなぁ怪盗団? その無能が無謀にもここへ来なければ、もっと善戦できたかもしれんのになぁ?』

 

  役立たず…

 

  無能…

 

(──ああ。そうだよ。そんな事、俺が一番わかってんだ。)

 

 今更、一樹はそんな言葉に傷付いたりしない。幼い頃よりずっと、影で言われ続けた事だ。

 

『───ええースミヨシいんのかよー。じゃあこの試合負けたわー

 

『───アイツと同じ給料なの腹立ちません? アイツの1日の仕事、普通3時間もありゃ終わりますよね

 

『──あのさ……、正直住吉君って、いらないよね。最近雑用しかしてないじゃん?

 

 散々言われ続けた言葉。だが一樹は、言った彼らを恨めない。すべて本当の事だから。

 

(──あっ。そうか。)

 

 1つ、分かった。一樹が、向き合わなくてはならない事実。

 

 

(──俺は…()()()()()()()()。)

 

 一樹は怪盗団の奴等は嫌いだ。輝く才を持ち、この舞台の上で存分に活躍しているから。しかしなにより、一樹はその無才な自分が、ただの傍観者でしかない自分が一番嫌いだったのだ。

 

 

(──なんだ…、分かりゃ簡単な事じゃん)

 

 

 どうしようもなく愉快だ。胸の奥に溜まっていた黒い感情を突き破って、笑いが込み上げてくる。

 

「クフッ! フフフ……ハーハッハッ!!」

「一樹君?!」

 

 一樹は立ち上がる。指一本動かないと思っていたが、意外とどうにかなるものだ。身体中に激痛が走るが、今はどうでもいい。

 

ほぉ……。よォやくお気付きか?

 

 声が、聞こえる。いつぞやにも聞こえた声だ。頭をかち割るような激痛が走るが、どうせ全身が痛むのだ。一樹は無視して立ち続ける。

 

「 俺は……、俺なんて嫌いだ、大っ嫌いだ。それを治す気はねぇ。だが、()()()()()。俺自身を!」

 

クッ カッカッカ!

  それでいい!知る事と認める事は似て異なるモノ。……で? 気付いたお前は何を望む?

 

「舞台を、この舞台をひっくり返す力だ。ここに俺の役目はねぇ!」

 

素晴らしい。我は汝、汝は我……

  ああ……ようやく壇上に上がる時を得た

 

 突如立ち上がりぶつぶつ呟く一樹に、恐怖したシャドウオクムラが叫ぶ。

 

「役立たずが……。どうした、気でも狂ったか!?」

「気狂い…か。……それもいいなぁ」

 

 自分が嫌いなら、理想の自分を演じればいい。何時(なんどき)も笑い、万物を力で解決する。そんな、狂った自分を。

 

 ハーフガスマスクを、再び剥ぎ取りながら叫ぶ。

 

「出てこいよぉ! ──ファントム!!!」

 

 蒼い炎に包まれ現れたるは、鉄塊の巨人。

 

 ガスマスクの外れた顔を手で被いながら、DRは言う。

 

「愚かな傍観者の役はもう終わり。これから演じるは狂気に満ちた戦士の役。狂人演じきればそれ即ち狂人也。

 

 ──テメェら。ここからは俺の独壇場だ」

 

 

 

 

 

  【Rank Up

 

ARCANA 『傍観者』

          ─→『狂気』

 

 

 ★★★★★★☆☆☆☆ RANK6

 

【役立たずの仕事】消費アイテムを買ってきてくれる

【役立たずの貢献】買ってくるアイテムの種類が増える

【役立たずの使命】車での送迎をしてくれる

 

NEW!!【 狂人の暴勇 】体力が低い程攻撃力上昇

 

 




ツッコミ所は数多あると思いますが、何卒ご容赦を…
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