オペラ座の怪人と同じ名を冠したDRのペルソナ、ファントムは、重装鎧を更に分厚くした様な、重圧感ある姿をしていた。
「あれが…、イツキのペルソナ……?」
「なんつうか、割りとシンプル?」
ファントムは、1つの鉄塊をなんとか像にしたような、ゴツゴツとした単純な見た目。しかし、能力までが単純でない事を、DRは知っている。
「さて……。やるか! ファントム!」
DRの掛け声と共に、ファントムがパカリと
「んなッ……!」
「開いたぁ?!」
DRは外野の反応に気分を良くしながら、ファントムに
そう。DRのペルソナたるファントムは『搭乗式』のペルソナである。言わば、パワードスーツ。言わば、アシストアーマー。
全身、頭までをペルソナに被われて、まるでDR自身がペルソナになったようだ。乗り心地は、軽い着ぐるみを着ている様な感覚。どのように動けばいいのか、何となく
搭乗したDRは試しに少しスレッジハンマーを振るう。ペルソナの影響か、ハンマーが異様に軽い。片手で振り回せる軽さだ。
──ファントムの特性:【荒々しき挙動…ペルソナ
「着衣型……?そんなのアリなの……?」
「何がいけないってんだ、クイーン?これが我が心の化身ってやつだ」
腕を大きく広げ、搭乗したペルソナを見せつける。バイクやUFOのペルソナがいるのだから、パワーアーマーのペルソナがいたっておかしくあるまいと、DRは思う。
「と……、こんなことしてる場合じゃねえか」
DRは肩にスレッジハンマーを担ぎながら、シャドウオクムラと対峙する。
「貴様……! 私を裏切って、虫ケラどもにつくつもりか!」
「社長が仰ったんじゃないですか。『損は裏切ってでも取り戻せ』って。だから、失った信頼をアンタボコって取り戻そうかなと」
まあそれにと、DRは続ける。
「一回アイツらにボコられて気付いたんですけどね、仲間がどうとか損得がどうって言う小難しい話以前に、
「一樹君……」
「貴様ッ……!」
シャドウオクムラが睨むが、DRは意に介さない。
「クッ……! 来い課長! コイツに身の程を教えてやれ!」
「っ、下がれイツキ! そいつには疾風と祝福しか効かないぞ!」
呼び出されたのは、平社員型とはまったく形の違う細長いロボット。それが3体。しかも物理に耐性があるときた。ついでに言えば、先ほど散々殴られた体は凄く痛む。
「……いいね。最高のシチュエーションだ」
しかし、そんな事を気にする
「お前らは手を出すな!俺1人で片付ける!」
「なっ──、何を言ってるDR! ここは協力するべきだ!」
「いいや! 俺1人で充分だって話だよ!」
それだけ言って、DRは課長ロボに突っ込んだ。何も出来ないと思っているのか、敵は油断している。
「バカが、粋がりおって……! 返り討ちにしてやれ!」
シャドウオクムラの号令で課長ロボが腕を振り落とす。が、DRはその直前に立ち止まり、課長ロボの腕をやり過ごす。
「ハッ! 誰が突っ込むかってんだ! ──≪メギド≫!」
ペルソナに覚醒し使えるようになった万能属性のスキル。しかしDRもこんなスキルが攻撃になるとは思っていない。故に、これは目眩ましだ。
「まずはテメェからだ! ≪ペイン・トレイン≫!」
DRは腕を振り落とした課長ロボの横に突っ立っていた課長ロボに、屈んだ体勢になり肩から突撃する。所謂、アメフトタックル。もしくは、ただのブチカマシ。
しかしファントムにより強化されたDRがやれば、そのブチカマシによるインパクトは多大なものになる。
グァァッンとペルソナとシャドウのぶつかる鈍い音が響き……、課長ロボが吹き飛んだ。
「なっ、バカな!」
「シャドウを吹き飛ばすなんて、どんなけの馬鹿力だ……」
油断して正面から喰らった間抜けな課長ロボは、錐揉みしながら地面に叩き付けられる羽目になった。ダウンしている。今の内に残りの二体を始末しなくては。
──固有スキル: ≪ペイン・トレイン≫……単体に物理属性の大ダメージ。高確率でダウンさせる。
日頃から鍛えた足腰と肩。それらをファントムによって強化されたことで使える技だが、今はそんな事どうでもいい。
「よそ見してんじゃねぇ! ≪
仲間が吹き飛び、呆然としている課長ロボ二体にDRは両手を向け、手に魔力を籠める。
パーララララッと軽い音と共に、DRの腕より魔力の弾が発射される。
──固有スキル:≪
が……
「チッ! 銃撃はホントに効かねえんだな」
全弾直撃していると言うのに、課長ロボがダメージを受けた様には見えない。自分に有効な攻撃ではないと察した課長ロボらは同時に腕を振り、殴りつけた。
「クソが……グッ!」
ハンマーがで片方の攻撃を抑えるも、もう片方は防げずに後ろから喰らう。ファントムのお陰で物理に耐性のあるDRだが、まったくのノーダメージとはいかない。そもそもDRは始めから死にかけている。
危機的状況。しかしDRは、だからこそ笑った。
「いてぇ、いてえなぁ! もっとやろうぜぇ!」
DRはハンマーを力任せに振るい、殴ってきた課長ロボをお返しにと破壊した。
『一体撃破! マジか!』
「ッチ。何をしている! 早く起き上がらんか!」
シャドウオクムラの叱咤で、最初に吹き飛ばされてダウンしていた課長ロボが起き上がった。
「さっさとそいつをぶちのめせぇ!」
「上等だ、その前に、頭捩じ切ってボールにしてやんよぉ!」
有言実行。DRは近くにいた方の課長ロボの頭に飛びかかって力ずくで頭をもぎ取り、適当に投げ捨てた。
『うげげ……。一体撃破。あと一体!』
残った課長ロボはDRの野蛮な戦い方に恐怖し、動けなくなっている。
「アバヨ!」
が、
「クッ……。こい部長! 我が社員の強み、人材層の厚みを見せつけてやれ!」
「おっと……」
DR一人に壊滅させられた課長の次に呼び出された4体のロボットは、ズングリとした巨体だった。流石に、DRが1人で戦うのは厳しそうだ。
「おい怪盗団!」
「よし分かった、共闘しよう!」
「これは任せた! 俺は休む!」
「はぁ?!」
部長ロボを怪盗団に押し付け、DRは休憩する。戦いたい時に戦い、休みたい時に休む。それが
しかし流石は怪盗団。それぞれが協力し合い、助け合って戦闘を有利に進めていく。
「チッ!」
DRは舌打ちした。当然、格好よくて妬ましいからだ。
アシストに見せかけて後ろからロケランぶっ放そうかな。流石に怒られるかな。止めとくか。などとDRが考えている内に、怪盗団は部長ロボ4体を始末していた。
「むっ。社員どもでは
現れたのは、部長ロボと同じ型、しかし部長ロボより遥かに巨大なロボットだった。
「さあ専務。私の右腕としてのつとめを果たせ! オクムラフーズ、永遠の栄光のためにな!」
『あいつ、弱点がない! みんな、物理で攻めて!』
ナビがUFOから助言する。
「よし──」
「おいジョーカー」
「? 休憩はもう良いのか、DR?」
号令をかけようとしたジョーカーを止めて、DRは話しかける。怪盗団も何事かと耳を傾けていた。
「俺がアイツダウンさせたら、
「なっ、無茶だ!」
「無茶どうこうはどうでもいい。不問にするか、しないかを聞いてんだ」
「……わかった。だが、本当に危険だと思ったら無理やりでも助けるからな」
「どんな脅し文句だよ。……よし。聞いてたな怪盗団! 目玉かっぽじってよく見てろよ!」
DRはペルソナの中で笑いながら専務ロボの前へ出る。
「ふん。役立たずな貴様に何ができる」
「……社長。1つ言いたいんですけどね」
DRは力を籠め、構えながら言う。
「役不足ってのは『役目が簡単過ぎること』って意味で、俺には今の状態が役不足なんだよ! 喰らえや、≪ペイン・トレイン≫!」
DRは大砲の弾のようなスピードで専務ロボに突撃する。専務ロボは先程の状況を知ってか知らずか、ガードしようとする。が、
もう遅い。
ガイィィンと鈍い音がなり響き、専務ロボが吹き飛んだ。
「さ、これでチャラだな」
「す、スゴい! ホントにやっちゃった!」
『敵ダウン! 総攻撃チャンスだ!』
DRは怪盗団の面子と共に、ダウンした課長ロボをタコ殴りにする。
──Enjoy & Exciting!!(楽しく刺激的に!!)
思うがまま、狂的に笑いながらDRは自らの頭に手銃を突き付ける。何となく、DRは自分が認知世界に適応した事を自覚した。
(──あぁとても、イイ気分だ。)
ついに壇上へ上がることが、出来たのだから。
【解説】ファントム
ARCANA 狂気
ガストン・ルルーの著作『オペラ座の怪人』に登場する謎の怪人。オペラの天才であるが生まれつきの奇形であり、骸骨のような醜い容貌を仮面で隠している。その顔ゆえに愛を知らず、美しいソプラノ歌手に執着して誘拐する。
ペルソナとしては青く巨大な鉄を削って作られた重鎧のような見た目。『Fallout4』のT-60パワーアーマー的な。