Hobby
「お、見えてきたぞ。あの工事現場か?」
「……多分? あれが競技場の建設地だと思う」
「競技場……、ぽくはねぇな。まだ」
目出度く一樹が怪盗団の一員となった次の日。一樹は後部座席に雨宮を、助手席にモルガナを乗せた車でお台場まで来ていた。
と言うのも、学校にて唐突なイメチェンでクラスメートをざわつかせた(何故か春は得意気だった)後、たまたま廊下で雨宮と出会った一樹は、後輩の落とし物を届けるためだけにお台場まで行くつもりだったらしい雨宮を送ってやる事にしたからだ。一樹はたまたま車で登校していた(校則違反)ので、電車で行くよりは速いだろうと誘ったのだ。
これから競技場になるらしい工事現場周辺をグルッと走らせていると、一樹は秀尽の制服を着た赤髪ポニーテールの女子生徒を見つけた。雨宮の言う特徴と一致している。
「おっ。あの学生じゃ……ね?────は?」
一瞬、一樹の頭がクラリと歪み、目を閉じてしまう。目を開けると、其処に有った筈の工事現場が、摩訶不思議な建築物に変貌していた。しかも、いつの間にか車が消え、一樹、雨宮、モルガナの三人で怪盗姿で地に立っている。つまり──
「ここは……、パレス、なのか?」
「この雰囲気……、間違いねえ。パレスだ。だがワガハイたち、ナビなんて使ってねえぞ。まさか……ヨシザワか?!」
「……彼女もナビを?」
「て事ならよ。なににしても、追いかけないと不味いんじゃねえか? そいつ、ペルソナ使いじゃあねえんだろ?いなくなってるぞ」
「ナニ?まずい、中に入ったのか?! 追いかけて合流するぞ!」
ジョーカーとモナが慌てて入り口を探す中、DRは一人こっそりと喜びにうち震えていた。奥村社長の改心が片付くまで、次の大物探しはできない。メメントスの方も、今はやることが無いと言われていた。
戦いたいDRにとっては不満が溜まる。しばらくは我慢するか……などと思っていた中で、いきなりのパレス探索。まさに棚ぼた。まさかパレスに入って、戦闘にならない無いなんて事は有るまい。
「おい! こっから入れそうだぞ!イツキも早く来い!」
「了解。今行く!」
DRは期待に胸を膨らませながら、二人とともにパレスへ侵入した。
■
奇妙すぎる外見と異なり、パレスに入れば現実世界にもありそうなホールが広がっていた。だが、気味が悪くなる程白く、清潔だった。その異質さは、ここがパレスだと理解させるには充分であった。
「え、誰!?」
「今の声、例の女か?」
「芳澤の声だ、行こう」
「ああ! オマエら、警戒を怠るなよ?」
DRとしては残念ながら、シャドウと遭遇すること無いまま、少女を見つけてしまった。今回の目的はパレスの攻略ではなく少女の救出だ。となれば、この探索はこれで終わり。DRもそこら辺は弁えている。
シャーとよく分からないオブジェクトを滑り台にして、三人は少女の元へと駆けつける。
「なんで……、どうしてここにッ……?!」
「誰だアイツ……、認知存在か?」
赤髪の少女の前には、少女に似た雰囲気を持つレオタード姿の少女が立っていた。
「──! そこだ、 ペルソナァ!」
そのレオタード少女の背後にシャドウの気配を感じ取ったDRがその気配に向けて即座にスキルを撃ち込む。
『───! ぬぅ……。 許されぬぞ…。……主の慈悲を汚す者め!!』
「へぇ……。 やっぱいるじゃねぇかシャドウ! 欲求不満でまま帰る所だったぜ!」
現れたのは、人の形をしてるようにも見えなくもない気持ちの悪い異形の
「いいねぇ!! サアァァァ……、サイッッコーの時間だぁ!!」
DRは興奮のままにファントムを呼び出し、搭乗する。DRが戦闘体勢に入ったのを見て、シャドウも真の姿──なんとも形容し難いカラフルな姿に変身した。
「お前らはそっちの女を任せた! 俺の戦いだ、手ェ出すんじゃねぇぞ!」
「クッ……、気をつけろよ!」
ジョーカーとモナを少女につかせ、DR一人でシャドウに対峙する。胸がドキドキと高鳴る。1つ間違えれば死。その緊張が、DRを何処までも興奮させていく。
「──≪
睨み会いの末、先に行動を起こしたのはDRだった。前につき出された両手から大量の気力の弾が発射される。
『ふん。他愛も無い。──≪ヒートライザ≫!』
シャドウがスキルを発動すると、シャドウは凄まじいスピードで弾を回避した。使ったのは回避力を高めるスキルだったようだ。
「チィ……、つまんねェなあァッ!!」
『そんなものか? 次はこちらからいくぞ! ≪テラークロウ≫!!」
「ハッハァッ!! 良い痛みだ!」
DRは笑いながらシャドウの攻撃を受け止める。ファントムの防御力も相まって、ダメージはほぼない。しかし、攻撃と共に恐怖心が流れ込んできた。話には聞いていた状態異常付与の攻撃らしい。
「効かねぇ……んだよ!」
『──!グハッ、キサマァァ!』
DRは恐怖心を無理矢理抑え込んでシャドウの懐まで突撃し、スレッジハンマーを振るう。回避上昇のスキルを使われていようと、隣合わせ程まで近付いていれば意味は無い。DRの一撃はシャドウに直撃した。
しかし、まだ足りない。シャドウの体力はまだまだ残っている様に見える。
『楽に死ねると思うな! ≪アギダイン≫!』
シャドウにより生み出された業火がDRを襲う。まず、当たればただでは済まない一撃。
しかし、DRは敢えてそれに突っ込んだ。
『なに!』
「ガアァッ!──≪ペイン・トレイン≫!!」
『グオォォ!』
シャドウはDRが炎に対して避ける、もしくは守るだろうと予測を立てていたのだろう。それを裏切り、突撃したDRの動きが読めずシャドウは吹き飛ばされる。
「ははは殴ってる……!殴ってるッ!! 」
吹き飛びダウンしたシャドウをDRはスレッジハンマーで思いっきりぶん殴る。しかし、まだ心を満たすには足りない。
『なめるなぁ! ──≪テラークロウ≫!』
「アァ? ……何だッ、これ……?!」
一度は抑え込めた恐怖心が、DRの体を支配する。興奮は冷め、気を抜けば今にも背を向けて逃げ出しそうだ。形成逆転。動けないDRにシャドウが一撃を与える──その直前。
「させない」
「DR! だから無茶するなと言ったんだ!」
「……チッ。悪ぃな」
ジョーカーがシャドウの攻撃を受け止め、その隙にモナがDRを後ろへ撤退させた。
「ほら、これ食っとけ」
「怪盗ウエハースチョコか……。 甘ったるいから好きじゃねぇんだよな……」
渡されたのは、怪盗団ブームに乗じて発売されたチョコレート。安っぽい甘さを我慢してチョコを食べると、不思議と恐怖心が消えていった。
「サンキュ、モナ。……そういや、あの女は何処行った? もう一人の認知存在は?」
「ああ、それは……」
モナの視線を追ってシャドウの方を見ると、ジョーカーと共に戦うジョーカーの黒いマジシャン服と似た、黒いレオタードを着た赤髪の少女が見えた。
「あん? まさか……」
「そう! ヨシザワもペルソナに目覚めたんだよ!」
DRが戦っている後ろで、そんなことが起こっていたとは。
「て、ボケっとしてる場合じゃねぇ!」
少女──ヨシザワの使う祝福属性がシャドウの弱点らしく、シャドウがみるみる弱っていく。さっさと戦闘に戻らなければ勝手に倒してしまうかもしれない。
「ジョーカー! 女!そこどけ!」
「え? キャ!」
DRは言うや否やランチャーをぶっぱなした。放たれたミサイルはヨシザワのすれすれを通り、シャドウに直撃した。
「なにするんですか!」
「俺の敵だ! 邪魔すんな!」
「なに言って──」
「……≪ブフーラ≫!」
「あ、テメ」
DRとヨシザワが言い争っている間に、ジョーカーが凍結属性のスキルを放ってしまった。しかも、丁度弱点の属性だったらしく、シャドウがダウンした。
「総攻撃だ!」
「チッ……」
楽しみを邪魔されたからと戦闘を下手に長引かせる程DRは愚かではない。大人しくリーダーにあわせて総攻撃に参加する。
──THE SHOW’S OVER
シャドウが総攻撃に耐えきれずに消滅する。こうして、DR的に不満の残る形で戦闘が終了したのだった。
本作品には恋愛要素が──
-
必要
-
必要ない
-
少しだけ欲しい