"役立たず"の奮闘記   作:緑川翼

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 総攻撃により、もともと体力を失っていたシャドウは消滅した。それを見届けてから各々力を抜くが、闘いに介入されたDRは不満を露わにする。

 

「つまらん……。つまらん幕引きだった! 多対一で勝ってもちっとも面白くないぞ!」

 

 初っぱなから飛ばし過ぎた少女が倒れそうになったり耐えたりしているが、それは命懸けの闘いにドップリとハマったDRには関係無い。

 

「助けられたのは感謝するが、俺の戦いに手を出したのは不満だぞ」

「どなたか知りませんけど、またそんな事言ってるんですか!」

 

 少女がつっかかってくる。頬すれすれでミサイルを放たれたのが相当嫌だったようだ。まあ、もしDRが同じ事をやられていたのなら問答無用で撃った奴に殴りかかる自信がある。ならば文句を言われても仕方ない。

 

 しかし仕方ないのと我慢できるのは別。少しの間少女とDRは無言で睨み合っていたが、この争いは不毛だった為どちらともなく終わった。

 

 少女がジョーカーの方を見ながら恐る恐る尋ねる。

 

「えっと、それで……雨宮先輩、です…ね?」

「………なぜバレた?」

「声と雰囲気で分かりますよ。……ところで、私たち、何でこんな格好に?」

「……話すと長い」

「いやいや、気にすんなってのは無茶あ──」

 

 DRがツッコんでいると、何処からかグルルルと獣の唸り声がした。

 

「ここのシャドウどもに感づかれたようだな。早く出た方がいい。詳しい話は出た後だ」

「分かった。……芳澤も一緒に出るぞ。DRもだ」

「はい!」

「チッ。 シャドウが出たらヤらせろよ!」

 

 モナとジョーカーの決定に従って、DRも殿を務めてパレスを脱出した。

 

 

 

 

 

 パレスから出ると、一樹ら三人は車の中にいた。取り敢えず車を端に止めて、赤髪の少女と合流する。少女はまだ状況が掴めていないらしく、周りや自分の体をキョロキョロと見回していた。

 

「あれ、服も戻ってる」

「オマエが異世界に行く前にいた場所だ。戻ってきたんだよ」

「戻って……? 私たち、どこかへ行ってたんですか?」

 

 少女は喋る猫に驚くかと思いきや、モルガナの話す内容に食い付いてきた。

 

「あー、それはだな……」

 

 不用意に触れ回っていい話ではない為、モルガナが言葉に詰まる。この少女は押しが強そうだ。詰めの甘いモルガナではすぐにボロが出るだろう。

 

「おい、嬢ちゃん」

「はい? ……誰、ですか?」

 

 一樹が話しかけると少女は少し警戒しながら答えた。そう言えば、この少女……芳澤に一樹は顔を見せていない。

 

「俺だよ俺。嬢ちゃんの耳元にミサイル飛ばした男」

「あ! 何の用ですか!」

「そう険悪にするなって。真面目な話だ。俺は誤魔化すのは好きじゃねえから、先に警告しとく。──お前の知りたがってる話は、わりとヤバい事柄だ。それでも知りたいか?」

「……はい。知ってるなら教えて下さい。自分に何が起きたのか、ちゃんと知っておきたいんです」

 

 しっかりと目を見て返事をされてしまった。これで隠したり誤魔化すのは不義理だろう。

 

「……だってよ、リーダー。あとの判断はお前に任せるぜ 」

「……話そう」

「まあ、2人がそう言うなら……。じゃあワガハイが1から話してやるよ」

 

 口下手な一樹や無口の雨宮に代わり、一番話の上手いモルガナがパレスやペルソナについてを少女に教えた。

 

「普通なら、信じられませんけど……、実際に見ちゃいましたからね……」

「理解力が高くて助かるよ。て言うか、お前はモルガナに驚かないんだな」

 

 一樹の言葉に、芳澤はえっ?と呟いてモルガナをマジマジと見つめる。

 

「猫がしゃべってる!?」

「おせーよ! てか猫じゃねーし! ワガハイはモルガナだ!」

 

 その言い方だと、「モルガナ」と言う種族になるがいいんだろうか。一樹は少し考えていいたが、段々どうでもよくなって思考を切り上げた。

 

 一樹が下らない事を考えている間に芳澤がモルガナを先輩と呼んだり、雨宮が芳澤に落としたお守りを返したりしていたが、一樹にとってはそれもどうでもいい。

 

 話を横から聞き流していると、どうやら芳澤が新体操の特待生らしい事を知った。

 

「……しかしヨシザワは、なんでパレスに入ったんだ? 」

 

 話題が一樹の興味ある方へと進んだ為、一樹は会話に加わる。

 

「携帯見りゃわかんじゃねーか? ナビがあれば、履歴からパレスの事もわかんだろ?」

「やっぱそうだよな。なあ、スマホ見せてくれないか」

「は、はい。スマホなら……」

 

 芳澤はポケットから取り出したスマホを雨宮に渡そうとして、手を止める。

 

「すいません……。ダメかもです」

「なんだって?」

「電源、切れちゃいました。元々、調子悪かったんですけど……」

 

 残念ながら、今は一樹も雨宮も予備のバッテリーを持っていない。スマホの確認は諦めるしかないようだ。

 

「まあ元々狙いのパレスでも無いんだし、問題ねーか……。 全会一致じゃなきゃ怪盗団のターゲットにもならねーしな」

「ん? そんなルールだったか?」

「おいおい大丈夫かよ? 怪盗団の決まりゴトは前に説明しただろ?」

「あー、そうだった思い出した。わりーな。……つか──」

 怪盗団以外がいる時にこんな話をしていいのかと一樹が確認を取る前に……

 

「あの……先輩たちが、『怪盗団』なんですか?」

 

 芳澤に感づかれてしまった。しっかり確信を持っている。言い訳はできまい。

 

「ああ。そうだぞ。俺たちが、心の怪盗団だ」

「あっ、おい!」

「やっぱり……」

 

 勝手に答えた事をモルガナに責められるが、一樹は話を誤魔化すのが嫌いなのだ。それに認知世界のを知られた時点で、関連付けられるのは目に見えている。なら話してしまった方が、口止めもやりやすい。

 

「……まあイツキもちゃんと考えがあるなら、まあいい。で、どうするんだ? 蓮」

「……かすみのこと?」

「その通りだ。あれだけ戦えるなら──」

「やめとけ」

 

 モルガナが芳澤の勧誘を雨宮に進めたが、一樹はそれを止めた。

 

「戦えるからって、誰でも彼でも仲間にしよーとすんじゃねえ。俺が入ったばっかだってのに、俺じゃ力不足か?」

「そう言うわけじゃねーよ! 戦力ってのは有れば有る程──」

「折角ですけど、遠慮しておきます。新体操に集中したくて……」

「ほらヨシザワもこう言……て、ええ!?」

 

 勧誘を受けると思っていた芳澤の断りに、モルガナが驚きで面白い顔になる。一樹はヨシザワが真面目に話している横で笑ってしまい、また彼女にギリッと睨まれた。

 

 雨宮に対しては良き後輩なのに、一樹には厳しめだ。一体何の違いだろうか。耳元にミサイルをぶっぱなしたかぶっぱなさなかったかの差だろうか。

 

 再び一樹が下らない事を考えている間に、話が終盤にまで進んでいた。

 

「散々助けていただいたのに、断ってしまって本当にごめんなさい!」

「まあ気にすんなって。偶然居合わせただけだしな」

「あ、いえ。アナタじゃないです」

「んだとぅ?!」

 

 今さっきまでの申し訳無さそうな顔が嘘の様に、芳澤がスッと無表情になる。耳元ミサイルがそんなに嫌われる行為だったとは……と一樹は驚く。まあ当然、冗談だが。

 

 一樹がイジケていても気にせず雨宮と芳澤は話していたが、その話も終わった。怪盗団の事を内緒にするようしっかりと釘も刺せたらしい。

 

「あ。なあ、帰るんだったら送ろうか? 席は1つ空いてるぞ?」

「……いえ。遠慮しておきます。では」

「あっそ」

 

 まあ断るだろうと思っていた一樹も気にせず、ヨシザワを見送った。

 

「あーあ。フラれちまった」

「……御愁傷様」

「お前らはまだ付き合ってくれる約束だよな? そろそろランチャーも新しくしたいんだ」

「……御愁傷様」

「うおーい!?」

 

 スッと逃げる様に車とは逆方向に行ってしまった雨宮の肩を掴むと、雨宮は「冗談だ」と言って車に乗る。またからかわれたらしい。一樹は肩をすぼめながら、車に乗った。

本作品には恋愛要素が──

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