「試験、ご苦労だった」
アジトにメンバー全員が揃うと、おもむろに双葉が前に出た。今日メンバーを集めたのは彼女だ。何か報告があるらしい。
「前に気になることがあるって言ってたけど、何か分かったの?」
「私がバンしてやったメジエド…本物じゃない」
双葉の言葉に、メンバー全員の頭に疑問符が浮かぶ。
メジエド。一樹がパレスに巻き込まれた時期に、怪盗団が対峙していた敵だ。ハッカー集団か何かで、怪盗団に喧嘩を売った結果、本物のメジエドであった佐倉によって撃退された……、らしい。
「はぁ? 本物はお前だろ?」
「あー…、ええっと……。わたしのあとメジエドを名乗ってたヤツと、この前のは違う」
「ハッカーってのは結局匿名だからな。今回出てきたメジエドは、双葉の次にメジエドを名乗ってた奴とは違う……ってことか?」
「お! 分かってるなイツキ!」
天才ハッカーである双葉が言うには、怪盗団が戦っていたメジエドはコードとやらがどのメジエドの物でもなく、更に痕跡を見れば相手はそもそもハッカーですらなかったらしい。
「少なくとも、正式なメジエドって事は絶対にない」
「メジエドを名乗ってた怪盗団を挑発……? 一体何が目的だったんだ?」
「ひょっとして、愉快犯…? 怪盗団が人気出てきた頃だったし、人気にあやかろうと……」
「……?」
杏の推測に一樹は違和感を覚えたが、それが形を成す前に、真が何かに気がついた。
「逆なんじゃない……?」
「逆?」
「怪盗団を有名にするために、メジエドを名乗った、とか……」
「そう言えば、あの時期からよくテレビでも怪盗団の名を聞くようになった。メジエドが怪盗団を有名にしたのは、確かだ」
斑目画伯にギャングの金城。この2人の改心で徐々に有名になっていた怪盗団の名を全国区に押し広げたのは、メジエドだ。
一樹の言葉に乗る形で、双葉が新事実を付け加えた。曰く、怪盗お願いチャンネルが外部から不正に書き換えられていた、と。
「夏休み前くらいから、アクセス数が実際より大分盛られてた。それにランキングも。特に奥村社長が1位になった時だな」
「大分見えてきたわね……。メジエドの挑発でも、サイトの改竄でも、結果的に怪盗団に注目が集まった」
一樹と春以外の怪盗団が奥村社長を狙ったのは、結局の所世論とランキングによっての部分が大きい。春の政略結婚を防ぐためというのは、狙った後に出てきた目標だ。
「これが全部、仕組まれてたとしたら……」
「……多分。真犯人は奥村社長の事だけじゃなく、今までの廃人化事件すべての罪を
恐らく、真犯人は怪盗団が奥村社長の改心に成功する事まで折り込んだ計画を立てていた。だから『緊急記者会見の直前に精神暴走させた人に奥村社長をひかせる』なんて面倒な事ができたのだろう。
「どこの誰だか知らねぇが、真犯人って奴がいるのは確か。てことはここ2ヶ月、怪盗団はそいつの手の上で踊らされてたワケだ!」
一樹は楽しそうに笑う。そんな用意周到な敵が
「か…、考えすぎだろ……」
「あぁ……?」
情けなく震えた声が、一樹の笑いを遮った。真っ青な顔をした、竜司だ。
「だってお前、メジエドにランキングって! あんな騒がれたモンが、もし全部仕込みだったつんなら……! 俺ら…、一体どんな野郎を、敵に回したんだ……?」
いつも気丈に振る舞っている竜司の弱く震えた声によって、アジトの空気までどんよりとする。結局その後は、『頑張って真犯人を見つけよう』とふんわりとした目標を立てて解散となった。
(──どいつもこいつも、考えがあめぇな……)
あの真でも、ハメられた時は焦るらしい。冷静さを欠いて、一樹でも分かる事を考えれていない。少しはある警察に関する知識、そして怪盗団がハメられだした2ヶ月前にはまだ怪盗団に加入していなかったという余裕から、一樹は1つの予測を立てていた。
(──警察は
この話を一樹はまだメンバーにはしない。ただの予測で、これ以上彼らを混乱させるのは避けるべきだ。仲間なのだから、もしもの時はできるだけ助けないとな。一樹はそう決心して帰路についた。
■
『真) ちょっと厄介な事になったわ』
『真) みんな落ち着いて聞いて』
『春) どうしたの?』
『真) お姉ちゃんが…怪盗団の大きな仕事を任されたって』
『双葉) それつまり』
『真) ええ……、間違いない
特捜が動き出した』
【マジでか】
【特捜動かすとか】
【スゲエな怪盗団】
『真) そんな事言ってる場合じゃないでしょう!』
■
一樹はベッドの上で横になり、チャットを閉じる。真の姉が特捜だとは知らなかった。そもそも一年間は一緒に仕事していたのに、最近まで姉がいるとも知らなかった。
(──まさか、予測を越えてくるとはな。)
集まっていた時に自分の予測を言わなくてよかった、と一樹は一息ついた。予測を外していらない赤っ恥をかく所だった。
一樹がチャットの事を気にしていないのは、いくら特捜と言えども異世界の事までは調べられないだろうと確信があるからだ。
「……」
が、1つ気になる事ができて再びチャットを開く。
■
『真) 早く何か手を打たないと……』
【なあ】
【真犯人と特捜がグルの可能性】
【あんじゃね?】
『竜司) なっ!』
『真) そんな事……』
【真犯人が権力者と組んでるのは確かだし】
【無いとは言いきれないだろ?】
『杏) だとしたら……』
『真) 冤罪どころじゃなく、積極的に罪を偽造してくるかもしれない』
【そーゆう事】
【まあどうこうできることじゃないが】
『蓮) 心構えくらいはしておこう』
【そーゆう事】
■
「どうですかね? 関係無いって事は無いと思いますけど」
次の日。早速警察が学校で聞き取り調査を行っていた。秀尽の全生徒に個別でやるらしく、一樹たち三年生は午前中に呼び出されている。
名前順で先だった春がビクビクしながら出ていき、ビクビクしながら帰ってきた。 一樹も少し緊張していたが、行ってみれば大した事もない。形だけの聞き取りだ。……あるいは、怪盗団にそう
数分だけ話し、最後に「怪盗団はこの学校にいると思うか」と聞かれたのでそう答えた。多分、無難な答えだ。
「みんなそう言うね。ありがとう。参考にさせてもらうよ」
これ位の聞き取りで自分から疑惑の目が逸れたとは思わないが、少なくとも鴨志田と関わっていない自分は大多数の中には紛れた筈だ。ある程度は動き易くなるだろう。
「あぁ、悪いけど、次の人呼んで貰えるかな」
「分かりました」
そう言って、2人の警察がいる居心地の悪い尋問部屋を一樹は部屋を出た。
本作品には恋愛要素が──
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必要
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必要ない
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少しだけ欲しい