"役立たず"の奮闘記   作:緑川翼

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お待たせしました。


Revival

『双葉) と言うわけで』

『双葉) 惣次郎に怪盗団の事をバレた』

『双葉) それも全部』

 

『竜司) はあ!? 全部バレた!?』

『竜司) マジか!?』

 

【一樹)惣次郎って……】

【一樹)ルブランのマスターの名前だったよな?】

 

『春) そうよ』

 

【一樹)そっか。サンキュ】

 

『杏) そんなことより、無事なの!?』

『杏) その、通報とか……』

 

『祐介) 無事でないなら、この連絡もくるまい』

『祐介) マスターはやはりただ者じゃ無かったな……』

 

『春) でも、自首を進められた訳でもないんでしょ?』

 

【一樹)なら素直に、怪盗団の理解者になってくれたと思おうぜ】

 

 

 

 

 

 

「へえ、成る程な……。そこも繋がってたのか」

 

 

 一樹は自室のベッドに横になってチャットを眺めている。マスターへの怪盗団バレから話しは進み、双葉の母親を殺した人間と怪盗団に罪を着せた黒幕は同一人物かもしれない、と推測の話へ内容が変わっていた。

 

 役人だったマスターを脅()()人間……つまりは政府の高官。以前話題に上がった通り、怪盗団の敵は政府にいる。

 

「いい。すごくいい……」

 

 ああ見えて意外と小心者な竜司はビビっているが、一樹の感想は違う。

 

(──どうせ顔も名前も無いモブで終わる筈だったこの身。派手な花火を打ち上げて朽ちるならそれもまた本望だ)

 

 卒業後は誰にも思い出されない影の薄い高校生活を送り、その後は警察にでもなって一生を過ごす。そんな無難な生き方も悪くはない。

 だが一樹は怪盗団という茨の道を選んだ。とっくに極悪人として捕まる覚悟も、道半ばで死ぬ覚悟もできている。

 

 ならばどんな苦難も楽しまなくては損ではないか。

 

 社会の歯車にしか成り得なかった一樹が政府などと言う巨大な組織と敵対()()()()()。その破滅願望にも似た興奮が、一樹の胸を高鳴らせていた。

 

 

 

 

 

 

「おはよ」

 

「ん、おはよ。朝ご飯できてるわよ」

 

 次の日の朝。

 

 一樹が目覚めてリビングへ行くと、母がTVを見ながら朝食を用意してくれていた。トーストとベーコンエッグだ。父は既に出勤している。住吉家のいつもの光景だ。

 

『──についての続報です』

「あ。これアンタの学校の話じゃない?」

「……」

 

 母に言われて椅子に座りつつTVを見ると、確かにニュースキャスターが怪盗団について報道していた。

 

『警察は連続廃人化事件の首謀者とみられる怪盗団を「警視庁指定容疑者特別指名手配」とし、怪盗団に関する有力な情報提供者に対して、報償金を支払うことに……』

 

 それ以降の内容は、一樹の頭に入ってこなかった。

 

 『指名手配』『懸賞金』。

 

(──アァ()()()()()。敵はここまでやるのか。)

 

 敵! 敵! 敵! これで社会も、メディアも、それこそ学校内すらも怪盗団の敵だらけになった訳だ。つい胸が興奮で張り裂けそうになる。

 

「一樹……。一樹!!」

「──…! ……何? 母さん」

「あんた今、面白い顔してボウっとしてたわよ? 寝不足?」

「ああ……、ゴメン」

「確かに三千万円はスゴいけど、あんた怪盗団に心当たりでもあんの?」

「いや? ただうちの学校のコトだったから、面白くてさ」

「ふぅん? 兎に角、ちゃっちゃとご飯食べちゃって」

「はいはい。じゃ、いただきます」

 

 そう言って、一樹は少し焦げているトーストに齧りついた。

 

 

 

 

 

 その日の放課後。『指名手配』について相談するべく、怪盗団はアジトへと集合した。

 

「だから、俺は言ったんだ! 迂闊に飛び込むなと……」

「なんだよ! 俺のせいか!? 最後はテメエも同意しただろ!」

「止めなさい二人とも! 敵が強大なのは分かっていた事でしょう!?」

 

 今更怖じけついたらしいメンバーが少しパニックになっている。真の一喝で少しは落ち着いたが、いつ爆発するか分かったモノではない。

 

「……春。少なくてもお前のせいじゃねえ。そう気を揉むな」

「……うん。ありがとう、一樹君」

 

 春は自分が父親をターゲットに依頼したせいでこうなったのかもしれないと責任を感じている。相変わらずの悪い癖だ。双葉の精神状態はよく分からない。先程から黙々とパソコンを弄くっている。

 

 そんな事を、定位置となった壁に寄り掛かりながら一樹は観察していた。怪盗団の中でも特に客観的な視点から現状を俯瞰している自覚のある一樹は、パニックが全体に広がるようであれば柄にもなく鎮めるために動くつもりだったが、その必要はなさそうだった。

 

「兎に角、ここまで手の上で踊らされていた以上、じっとしていられないわ。対策を練りましょう」

「……でも、まだ間に合うのかな。こんな事になったんじゃ……」

「パレスの事は一般人には分からない。こっちで証拠を残さなきゃ、まだ安全なはずだ」

「……ああ。俺たちはまだ負けていない」

「だな。全員がこうしてアジトに集まれているんだ。まだやりようはあるだろう」

「ああ……。こで尻尾巻いて逃げたしたら、余計に思うツボだろうよ……」

「うん。こんな所じゃ、絶対終われない……!」

 

 流石はリーダーと言うべきか、蓮の一言でパニクっていた連中に落ち着きを戻しつつ更に気力を湧き上がらせた。これは一樹には絶対に真似できない。

 

「『どうしたいか』は決まったな。あとは『どうするか』だが……」

「私に案がある」

「──!」

 

 屋根裏部屋に集まってから一度も口を開いていなかった双葉が不意に喋りだす。

 

「盛られてた『怪チャン』のアンケート。もっかい徹底的に洗い直した。結構レベル高いフェイクも混ざってるけど、多分やったヤツをを割り出せる」

「本当?!」

「つまり……、黒幕が誰か分かるのね!?」

 

 双葉の言葉に皆が沸き立つが、しかし双葉の表情は晴れない。

 

「でも今はまだムリ。大分ガードが固い。もう少し判定に時間がかかると思う」

「つか、黒幕を叩くにしても、そもそも先に俺たちに精神暴走事件の濡れ衣を着せようとする警察の暴走を止めないとなんねーしな」

「なんだよ……、クソ……」

 

 竜司は露骨にガッカリしたが、怪盗団にとっては喜ばしい情報だ。無いと思われていた解決の手がかりが有ったのだから。

 

「となると、重要なのはどうやって警察を止めるかだが……」

「……ハァ。やっぱり、彼の提案を飲むしか無いわね……」

「明智のヤロウの提案をか?! そんな事したら……」

「怪盗団の解散については、また後日でも交渉できるわ。いま警察の追及を逃れるにはこの手しか無い」

 

 警察を止める代わりに怪盗団を解散しろ。明智の出したという提案はそれだった。

 

「……明日の放課後、彼をルブランに呼んで詳しい話しをしましょう。皆いいわね?」

「……ああ」

「うん。大丈夫」

 

 真の意見にメンバーは皆賛成するが、一樹がふと思い出して質問を挟む。

 

「俺はどうすりゃいい? 探偵には俺が俺が怪盗団のメンバーだってばれてないんだよな? 来ない方がいいのか?」

「一樹には……」

 

 真がアゴに手を当てて思考をまとめる。

 

「1つ、怪盗団にとって重要な仕事を任せるわ」

 

 

 






アンケートの結果、今回のSSは『もし覚醒一樹が最初からいたら…if』に決定しました。
皆様投票ありがとうございました。その他のSS候補に関しても、是非何処かの機会にやりたいと思っています。

本作品には恋愛要素が──

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