「ふう。これで終わりかな」
明智──クロウが己のペルソナであるロビンフッドでパンイチチーターの弱点である祝福属性のスキルを放ち、パンイチチーターにトドメを刺したことで戦闘が終了する。
「なかなかやるじゃないか」
「まだまだ、こんなものじゃないよ。……さて、彼について教えて貰おうかな」
「ま、やっぱそうなるよな……」
「クイーンやノワールの反応を見るに、偶然遭遇しただけで無関係、ってことは無さそうだ」
クロウはニコリと人の良いようでいて、しかし「逃がさないよ」とでも言いたげな笑みを浮かべる。これは観念するしか無いようだ。
「あー…」
「ちょっと待って」
DRが喋ろうとすると、パンサーに止められた。
「ここで話すと、またシャドウに襲われそうじゃない……?」
「私もそう思う。何にせよ、一旦退却した方がいいと思うわ」
「……わかった。パレスについては先輩の君たちに従うよ」
パンサーとクイーンの提案に、クロウは些か不本意そうでありながらも従った。
「よし、じゃあさっさと脱出するぞ!」
■
「ああ……。メンドくさ……」
一樹は自室のベッドにバタリと倒れる。
怪盗団たちと一緒にパレスから帰還した後、近隣の駐車場にいた一樹は、当然怪盗団とは合流せずにそのまま帰宅した。色々と明智には説明しなくてはならないが、まさか現実で会う訳にはいかない。直で話していいのは証拠の残らないパレスでだけだ。
「えっと、このアドレスで……」
一樹は双葉から渡されたスマホを操作する。
これは佐倉がナントカと言う改造を施したスマホで、チャットから逆探知諸々の捜査がされないように仕組まれいるらしい。 双葉は以前、同じ改造をしたスマホを使ってアリババを名乗って怪盗団と接触していたらしいが、一樹は詳しく聞く気にはならなかった。
何にせよ、チャット相手の画面にはアカウントの存在しない『DR』からのメッセージが届けられる……らしい。
正直な所一樹には仕組みが良く分からないが、真と双葉が太鼓判を押したのだからまあ大丈夫なんだろう、とDRはチャットを起動した。
■
『明智) さて』
『明智) 色々と教えて貰おうかな?』
『明智) 住吉一樹君』
【DR)…… 名前まで知ってるなら、
なにも聞くことは無いんじゃないか?】
『明智)怪盗団に関わりのある人を
調べた時に出てきた名前だから』
『明智)怪盗団のメンバーほど詳しくは
分からないんだよ』
『坂本) チッ』
『坂本) ストーカーかよ!』
【DR)俺はただの保険だ】
『明智) 保険……?』
『新島)私たちが捕まった時、唯一貴方が
捕まえられない私たちの仲間よ』
『明智) ああ、成る程ね』
『明智)なら現実世界で君と会うのは
無理そうかな』
【DR)どうせ住所なんて簡単に調べられる癖に、
よく言うぜ】
『明智) ノーコメント、って事にしておくよ』
『明智)兎に角、今日は驚きの連続だった。
これからよろしく』
『春) こちらこそ』
『喜多川)これからの段取りについて
説明が必要か?』
『明智) それについては……』
■
「ふう……」
スマホを閉じ、ベッドに横になったまま一樹は息を吐く。相手は現役の高校生探偵。下手な事を言って言質を取られては堪らないと一樹は気を張って会話していたが、流石に疲れた。
今の所、パレスに侵入する所を見られなければ問題無い……筈だ。
(──ん? てことは、裁判所付近が監視されてたりするのか?)
ならば、何かしら対策しておいた方が無難か、なんて事を考えながら、一樹は眠りについた。
■
『雨宮) ・生糸の束×3
・植物の香油×2
・コルクの樹皮×2
・植物栄養剤
・懺悔の灰
・紅あずま
よろしく』
【一樹)えぇ……】
【一樹)まあ、良いけどよ。ちょっと待ってろ】
■
明智を含めた怪盗団がニイジマパレスに初侵入した次の日。一樹は久し振りに雨宮からお使いを頼まれた。
一樹がペルソナに目覚めて以来ずっと頼まれていなかったが、本格的にパレス攻略を始めるに当たりまた一樹の手伝いを求めたらしい。
「後は……、全部四軒茶屋で買えるな」
まだ一樹が気の弱かった時期に言い出した雑用だが、怪盗団の為であれば別に断る理由もない。粛々と指定された物を買い集め、神田から四軒茶屋へ電車で向かう。
今日は祖母が車を使っている為、電車だ。
「あら。奇遇ね、一樹君」
「……! 真か」
四軒茶屋の駅で降りた時、一樹が遭遇したのは真だった。
「そっちも蓮になんか用か?」
「いや、私はただの私用よ。もう終わったけれど。そっちは?」
「我らが怪盗団のリーダー殿に託されたパシリだよ。ったく疲れたぜ……」
ああそう、と相づちを打つ真を見て、何か話す事が有った気がする……と一樹は頭を捻る。会ったら話そうと思っていた話題があった気がするのだが。
「ああ、そうだ思い出した。お前に頼みたい事があんだよ」
「私に? 何かしら」
「いやな、文化祭の時にも思ったんだが、やっぱお前って指示出すの得意だろ?」
「え? まあ、生徒会長だからね」
「それで、やっぱ俺としては蓮のよりもしっくりくるんだよ。お前の命令の方が」
一樹にとって生徒会員だった頃の記憶はほぼ黒歴史だ。それでも、真の有能性、指示の的確さは認めざるをえない。
「て事で、こんなのはどうだ?」
一樹は真に、この前布団の中で考えた技を説明する。
「成る程……。それ、確かに良いかもしれないわね」
「だろ? 後は『ホシ』とやら次第か」
「きっと叶えてくれるわよ」
「だと良いな」
「じゃあ、私はこっちだから」
そう言って真はホームへ向かい、一樹はルブランへと向かった。
若干勘違いが有った為、一部書き直しています。ご承知下さい。