「痛えなぁ! もっとやろうぜぇっ!」
敵の
『キャァアァァ!』
シャドウが悲鳴を上げて消滅するのを見届け、DRは厳ついスレッジハンマーを肩に乗せて振り返る。
「おかわり!……は、もういねぇのか」
前回の侵入からいくらか日が経った今日、怪盗団はニイジマパレスの攻略を開始した。騒ぎにならないよう隠密行動を心がけているが、それでもすべての戦闘は避けられない。
そのたびにDRは時には肉壁、時にはトドメ役として戦った。今回もまた一体のシャドウを引き受けて、無事に始末する。
その頃にはDR以外の戦闘も既に決着はついていた。もっとも、向こうははDRの様な力押しではなく弱点を突いたり連携したりとスマートな戦いだったが。
「三体もいたのに早いモンだな。たまには残してくれてもいいんだぜ?」
「……強いね、君は。敵に回したくないタイプだ」
「そうか? 俺はお前の方が面倒だと思うぞ?」
DRの戦闘を見たクロウにそう評されたが、DRとしては祝福属性に呪怨属性、しかも物理攻撃や万能属性のスキルも扱えるクロウの方が強いと感じる。
本人の万能性が反映されているのだろうか。
「普通、人は殴られそうになれば身構える。君みたいに嬉々として頬を差し出す様な、その……、狂人は一番厄介だ」
「あー、なるほど?」
「それにキミ、殴るのも躊躇してないだろ? 強いよ、それは」
クロウ曰く、その一瞬の躊躇いの差が戦闘では大きいらしい。よくそんな事まで知っているものだと、DRは感心した。
「もういいかしら? 先に進みましょう」
「っと、悪いな」
怪盗団は今、カジノのバックヤードを目指していた。DRには理由も経緯もよく分からなかったが、そこにパレス攻略の糸口があるらしい。考える事は自分の仕事ではない。そう割り切るからこそ、DRは全て仲間に任せられる。
うす暗い通路を進んでいくと、少し開いた場所に着いた。
「ここがバックヤードのようだな」
「よし。じゃあ中を調べてみようか。何か見つかるかもしれない」
「んん…? ああ、そういうこと? やっと分かった」
つまりは、カードやらキーやらを求めてこんな場所まで来たのだ。確かに、バックヤードにならそんな物が有ってもおかしくない、気はする。ナビがいれば、パソコン等から情報を抜き出す事も可能だろう。
「おっ端末あるぞ! でもシャドウがいるな……」
「どうする? 始末するか?」
「……そうしよう」
「そう言ってくれると思ったぜ!」
誰も来ないだろうと油断しているシャドウの仮面をジョーカーがひっぺ剥がし、シャドウが正体を露にした。
「さあ、スゴいことしようぜ!」
敵は
───≪ミラクルパンチ≫!!
──Critical!!
「ク……ッ?!」
「リーダー!?」
『ジョーカー、ダウン! こりゃマズイ!』
何時もなら軽々と
──≪五月雨斬り≫!
「チッ……。なにしてるんだ、ジョーカー!」
『お、やるな、クロウ』
リーダーをダウンさせた事で調子付き、象のシャドウは更に攻撃を繰り出すがそれはクロウが回避した。しかし敵の体力は多そうで、指揮者が倒れている状態で戦闘を長引かせるのは得策ではなさそうだ。
「クイーン! あれをやるぞ!」
「あれね! 了解!」
───【SHOW TIME】───
何処とも知れない荒野にて、敵を前に顎に手を当てて考えるクイーンと指を鳴らすDR。
「決まった、プランβよ!」
「ベータ! 了解した!」
指示を仰いだDRは一目散に敵目掛けて突っ走る。
「最初はラリアット! からの右フック、ラッシュ! フハハハ 命令通りだ!」
周囲の状況、敵の体格、その他諸々を想定に入れた猛攻はすべてクイーンが考え出した物であり、反撃のタイミングすら折り込み済みのこのプランに隙はない。
「フェイントだ! 楽しいなぁっ! 命令を遂行する! グレネード投擲! 前回し! からのぉ……! 」
鋭く重い前回し蹴りから連続して放たれるDRのラリアットが敵を吹き飛ばす!
「ハァアァァ……、ハァッ!」
吹き飛んだ先には作戦通りクイーンが待ち構え、合気道仕込みの正拳突きが再び敵を吹っ飛ばした!
そして──吹き飛んだ先に命令通り投擲されたグレネードがクイーンの思惑通り爆発する!
「そして最後は決めポーズ!」
「計算通りね」
爆煙を背後に二人は勝利のポーズを取り、敵は倒れた。
───【SHOW'S OVER】───
『さっすがクイーン! 見事な指揮だったぞ!』
二人がかりでボコボコにしただけあり、まだ体力に余裕を残していた
「……すまない。油断した」
「気をつけろよ、リーダー」
「……ああ」
まだクラクラするのか、頭をさすりながらジョーカーが答える。ダウンさせられた時の気持ち悪さは、ダウンしてみなければ分からない。少なくとも、単純な風邪なんかよりはよっぽど気持ち悪いのだ。
「ん? 今のシャドウ、何かのカード持ってやがったぜ!」
「お、それが目的のメンバーズカードじゃないか? ……ああ、でも無記名だ。こういうのは、無登録だと使えないかもな……」
「ふふふ、そういうのは任せろ!」
ナビがシャドウの落としたカードを拾い、近くのパソコンでちゃちゃっと登録を完了させた。やはり、こんな場面では特に頼りになる。
「名義は適当に、『タナカ・タロウ』にしといた」
「それだとちょっとシンプルすぎないか? こんなトコでバレたら元も子も無いだろ?」
「んー、それもそうだな」
仲間に指摘され、ナビはもう一度パソコンを操作して『ナカノマツ・シンジ』と、少し凝った偽名名義のカードを作り出す。
これで、パレスの先に進める筈だ。
「いらなくなったさっきのカードは……そうだな、クロウ、ゴミ箱見つけたら捨てとけ」
「えっ、どうして僕が……?」
「こうゆう雑用は新入りの役目だからな」
「……やれやれ」
「おっ! おあつらえ向きに出口があるぜ。さっさとズラかろう」
バックヤードの端っこに通気口を見つけたスカルが、そう言うが否や通気口に入り込んだため、DRもそれに続く。
「お、おお……」
DRはパレス自体は入った事があっても、本格的なパレス攻略は今回が初めてな為、こんな怪盗っぽい事をする度、少しドキドキするのだった。