「ここが……」
バックヤードで偽造したカードを使って、怪盗団はスロットが並び、天井からトランプの降り注ぐきらびやかな『メンバーズフロア』に侵入していた。
「まずは、よくここまで来れた……、とでも言うべきかしら?」
「──っ! お姉ちゃん……!」
フロアの奥からボディガードを伴って現れたのは、ここの主、アイメイクと刺激的な衣装を纏ったシャドウニイジマだった。
──ダンッ!!
「DRッ?!」
「あら危ない。そんなつまらない方法で勝てると、本気で思ったのかしら?」
「……チッ」
シャドウニイジマを確認した途端、DRは先手必勝とスレッジハンマーを振り下ろした。が、ホログラムか瞬間移動か、DRのスレッジハンマーが直撃する寸前に、シャドウニイジマの姿はパレスの奥へ向かうエレベーターの中に移動していた。
「私はこのカジノの総支配人でありナンバーワンプレイヤー。貴方たちごときが私と戦えるだなんて、思って欲しくないものね」
「見下されたものだな」
「どうしても、お手合わせ願いたいといったら?」
「ナンバーワンになるために、私は勝ち続けてきたの。相手して欲しいなら、貴方たちも勝ち続けてみせなさい」
ここはカジノであり、勝ち続けろ。つまり、ギャンブルで大当てしてみせろと、シャドウニイジマそう言っているらしい。
「油断してると足元すくうよ。お姉ちゃん」
「期待しないで待っててあげる。……そうね、まずはそいつらに勝ってみせなさい」
そう言い残してシャドウニイジマがエレベーターで昇っていけば、残されていたシャドウニイジマのボディガードがどろどろに溶けて真の姿を表した。
「ここで敗れるようならそこまで……、ってことかな」
「へっ。こっちの方が話が早ええ!」
「やっぱパレスはこうなくちゃな!」
それぞれが武器を構え、戦闘が始まった。
■
いくら強敵と言えど、万全な状態の怪盗団に敵う筈もなく、DR的には少し物足りないほど呆気なく勝利する。
また苦労するかと思われたイカサマまみれのギャンブルも、クロウの策によりイカサマをかけ返したことで、ダイスゲームに巨大スロットによって、次のフロアへ行く為に必要なだけのコインを得る事ができた。
そして……
「次のフロアに行く前に、エレベーター前でお出迎えか? 歓迎って雰囲気じゃねーな」
「十中八九、冴さんの差し金だろう。戦う覚悟をした方がよさそうだ」
「準備はいいな? ……進むぞ」
ジョーカーの掛け声で、先に進むエレベーター前に陣取るシャドウを怪盗団が取り囲んだ。すると、何処からともなくニイジマの声が聞こえる。どうやら、イカサマで大勝ちしたことに腹を立てているらしい。
『随分と小賢しい真似をしてくれたわね』
「お姉ちゃん……」
「一応、
クロウの言う通り、このカジノはイカサマが前提だ。
カジノ側もあからさまな程にイカサマをしているし、そもそも次のフロアに行く為に必要なコインもイカサマでもしない限り到底集められない量なのだから。
『私が勝つことがここのルール! 刑事裁判は、絶対に勝てるギャンブル。賭場を用意するのは私たち検事だもの。負けは許されない! 例え、冤罪であってもね!』
「……現役検事の言葉とは思えねーな」
「冗談でしょ…? 否定してよ、姉ちゃん!」
歪んでしまっていると分かっていても、姉からはこんな台詞を言ってほしくはなかっただろう。しかし、シャドウにはこの程度の
『お客様がお帰りみたい。お相手してあげて』
シャドウニイジマの一声により、エレベーターの前で待ち構えていたシャドウが真の姿を表した。
「お帰りはテメエだ、
■
Enjoy&Exciting!!
ノルンは弱点が無く雷と風のスキルを使いこなしたが、物理に耐性が無く単体ならそこまでの問題は無い。まずファントムに搭乗したDRが≪ペイン・トレイン≫をかまし、ダウンした所を怪盗団全員で総攻撃。戦いはそれだけで終わった。
『……負け犬め。この程度で私に勝ったと思わないことね。まあ、支配人フロアまでこれたら多少は認めてあげる。精々、努力することね』
それで、シャドウニイジマの声は聞こえなくなった。
「人の生涯を左右する裁判をギャンブルだなんて……、冴さんの口から聞きたくなかったな……」
「ええ……」
「兎に角、こんな所でくっちゃべってないで今は先に行こうぜ」
ここで落ち込んでいるクイーンを慰めない辺りがDRである。そのままDRに連れられて、怪盗団は次のフロアへ進むエレベーター乗り込んだ。
「ここが……?」
怪盗団は『メンバーズフロア』から上の階に昇ったが、エレベーターの回りを一体のシャドウと背の高い柵に囲われて先に進めそうにない。
「オイ、どけよ」
「この先はハイレートフロアでございます。アポはございますか?」
「どけっつってんだろうが!」
「アポはございますか?」
スカルがシャドウを脅すが、まったく堪えていないようだ。
「どうする? またぶちのめすか?」
「いや、多分これは冴さんの認知に関係している。シャドウを倒した所で意味はない」
「お姉ちゃんの認知………、法廷、とかかしら」
「それだね」
確かに、法廷であれば無関係者の立ち入りは禁止だ。
「てことは、真のアネキに、俺たちが法廷に入っている所を見せなきゃなんねぇのか?」
「でも法廷になんて、どうやって入るの……?」
「スカル、何かやらかせ」
「やんねーよっ!」
一瞬、DRは本気で「それだっ!」と思ってしまった。
「……傍聴人になればいい」
「成る程。一番手堅いが、こんな時に裁判なんてやってるのか?」
「それについては、心当たりがある。調べがついたら、皆に連絡入れるね」
これ以上は先に進めない為、真の言葉を信じて今日はここで解散となった。
■
「ここが、法廷……」
「まさかパレスに入って次の日に裁判が有るとはな」
「本当、ギリギリだったよ。冴さんの完璧主義に救われたね」
今日、怪盗団は真の姉が出席する裁判に来ていた。今回の裁判は真の姉が怪盗団捜査の前に請け負っていた案件らしく、これが終われば怪盗団捜査に集中するらしいので危機一髪間に合ったことになる。
「自然と、身が引き締まってしまうな」
「よく新島さん。こんな厳格な雰囲気をカジノになんて思えるね……」
「つか、この裁判ってなにやんの?」
「ある議員の、政治活動費の使い込み」
「それ雑誌で見た! 愛人と温泉旅行!」
高二以下の若い組がはしゃぐ。悪目立ちしているので、もう少し静かにしてほしい。
「てか、どうやって新島さんに気づいてもらうの? 連絡とか、した?」
「メッセージ読んでくれてないみたい」
「……作戦はあるのか?」
「別に? その内、気付いてくれるでしょう。……ほら」
資料に目を向けていた真の姉が、こちらに気が付いた。しかし、一瞬驚いた表情をしただけですぐに資料に目を戻してしまう。
「そろそろ始まる頃だね」
「よし。ニージマにワガハイらが裁判所の立ち入りが許された事が伝わったな。これでハイレートなんちゃらに入れる筈だ。裁判が終わったら、パレスに直行するぞ!」
「興奮し過ぎだ! 出てくんなっつの……!」
「ほら。始まるぞ」
カバンから出たモルガナの頭をリーダーが押し込みつつ、裁判が始まった。