「チッ… アイテムを使うぞ!」
ランダの放つ『電光石火』を避けつつ、DRは『テスラコイル』をランダの足元にぶん投げる。
DRが投げた小型の機械は、地面にぶつかってリング中に電流を放出した。
「─……!!」
電流は全てのランダに流れたが、そもそもアイテムの威力の低く、全体攻撃である分ダメージには期待できない。だが、弱点属性でランダどもをダウンさせるには充分だ。
「シィッ、【メギド】!」
DRはすかさず、万能属性のスキルを発動した。鋭い銀色の閃光が三体のランダを包み込む。
「──!!」
「クソ、やっぱ効かねぇか!」
万能属性の攻撃は、どんな敵にも効かないことは無いが効果的でもない。DRはかれこれ四回程ランダどもにメギドを叩き込んでいるが、今一効いている様子は無かった。
「──ッッ!」
「ふっ!」
──【血祭り】!!
「ッ! グアッ…!」
ダウンから回復した一体目のランダの物理的な攻撃は何とか回避できたものの、ほぼ同時に仕掛けてきた2体目のランダのスキルをDRは避け損ねた。
『血祭り』は威力自体は低いが、喰らえば気を引き締めておかなければ『恐怖』の状態異常となり体が動かなくなってしまう。
そう言う意味では、単純に痛い『電光石火』以上に面倒なスキルだ。
「オッ……クソが!」
DRは近づいてきたランダを蹴り飛ばそうと反射的に足を振り上げたが、ギリギリで思い返し後退する。
「ああクソ、メンドクセェ!」
ランダは物理と銃撃に対する反射能力を持っている。武器やスキルによる攻撃でなくとも、素手や蹴りすら反射するのは先ほど試して分かっていた。
ほぼ物理に特化したDRでは、ランダへの攻撃手段が万能属性の魔法かアイテムしか無い。
せめて物理『耐性』なら力技でどうにかなるんだが、とDRは歯噛みした。
「アイテムだ! からの…メギドォ!」
再び『テスラコイル』を投げ、ランダを纏めてダウンさせる。そこから連続して五度目の『メギド』を浴びせかけた。
「チッ、不味い…!」
DRの
それは
この1対多数戦では暢気にコーヒーを飲む余裕はない。DRはSPの回復を諦めてアイテムを投げた。
「よっし!」
単体用の代わりにそれなりの火力を発揮する『紫電の勾玉』を思いきって投げてみれば、想定以上にダメージが溜まっていたのだろう、見事攻撃を仕掛けんとしていたランダに命中し、消滅させた。
勢いに乗ってもう一度勾玉を投げれば、再びランダに命中して消滅させた。不器用なDRにしてみれば目覚ましい快挙である。
─と、油断したのが不味かったのだろう。
──【血祭り】!!
「しまっ……あ、」
DRは残った一体のランダが放ったスキルをモロに喰らってしまった。ダメージはそれほど受けていない。しかし…
「う、ぐ…」
何処からともなく沸き出てきた恐怖心が、DRの動きを縛る。『恐怖』の状態異常。フォローの効く団体戦なら兎も角、この
──【電光石火】!!
「グアァァッ!!」
「DR!!」
三回、四回と連続で放たれた物理攻撃は、DRの体力を着実に減らした。もしDRに物理の耐性が無ければ、今の攻撃で倒れていたかもしれない。
「DR! 逃げて! 貴方が死んでしまう!」
観客席から耐えられないといった様子でノワールが叫ぶ。確かに、リングの出入口は塞がれていない。逃げようと思えば逃げられるだろう。しかし──
「その、必要は…ねぇなぁ!」
トドメを刺そうと駆け寄るランダを、DRは真っ正面から迎え撃つ。
(わりと咄嗟の思いつきだが、いける!)
DRは、恐怖に震える体を無理矢理動かし、ファントムに搭乗する。
「来いよクソシャドウ、勝負ッ!」
言語を理解しているのかは知らないが、ランダの動きが心なしか早くなる。DRはそれを見ながら、今だ震える足腰に力を籠め、拳を握る。
「え…
怪盗団の誰かが呟いた通り、DRの拳が、銀色に光輝いた。
「──ッッ…!」
「遅え、んだよ!」
「───!!!!」
DRが何かをやろうとしている事を今更察したランダが逃げようとするが、シャドウも急には止まれない。まんまとランダは、DRの拳の射程内まで入り込んだ。
「喰らえやぁ!!」
DRの銀色に輝く拳が振り抜かれ、その瞬間、銀色の光が、爆発した。
「───ッッ゛゛!!」
「ハッハァッー!! 土壇場だが、上手くいったなぁオイ!」
勢い勝って吹き飛び、消滅したランダを見ながら、興奮冷めやらぬといった様子でDRが笑う。
「名付けるなら…ペルソナ神拳…ダセェな。ペルソナ正拳…は、なんか違う。『ペルソナ・フィスト』…これだ。悪くねぇ」
【ペルソナ・フィスト】…敵単体に万能属性で特大ダメージを与え、超高確率でダウンさせる。使用までに1ターンのタメが必要。
「
「そう言うこったクイーン! 相変わらず賢いな!」
「え? まってどういう事?」
DRの
搭乗機能を備えていてペルソナと一体化する為か、魔法スキルと深く関わっている
不器用なDRでは、その事に気がついていながらも、覚醒当初から何となくやり方の分かっていた気力を弾丸に変えて撃つ『PLガン』のみしか使えなかったが、この命ギリギリの状況で、ついに新たな技を身に付けたのだった。
……実の所、火薬を銃の内部で暴発させているに等しい『ペルソナ・フィスト』は、気力も体力をほぼ尽きていたあの状態でなければ、身を巻き込む火力となって惨事を起こしていたのだが、DRは幸か不幸かその事に気がついていない。
「と…、な!
少しふらつきながらも観客席にいるノワールを安心させるべくハーフガスマスクの下から笑えば、ノワールはホッと胸を撫で下ろした。