"役立たず"の奮闘記   作:緑川翼

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難産でした…



Raid

「──おや?」

「……げ」

 

 竜司と祐介の後輩二人をビッグバン・バーガーに連れて行き、三人で期間限定の“スーパーノヴァーガー”を食べた帰り道、最寄り駅を出てすぐの所で、一樹は明智に遭遇した。

 

「こんな所で奇遇だね。今日は怪盗団とは別行動なのかい?」

「……ちょっと、市ヶ谷に釣りをしに来ててな」

「へえ、僕もよくクルージングに誘われてたんだけど、最近はご無沙汰だな。成果はどうだった?」

「いや、別に……」

 

 一樹があからさまに嫌そうな顔をしているのを気にせず、明智は話を振り続ける。会話を終わらせようにも、ぶっきらぼうで口ベタな一樹では明智のコミュ力に太刀打ちできず、ズルズルと会話を引き延ばされてしまう。

  

「そうだ、今から一緒にお茶でもどう?」

「はあ? これからって……。日もおちてるのに、こんな時間からか?」

「ここで会ったのも何かの縁だ。パレスでは協力しなくちゃならないんだし、仲を深めて損はないと思うけど?」

 

 ニコリと何を考えているか分からない営業スマイルを浮かべて、明智が言う。一樹は数瞬考えて、駅前のチェーン喫茶なら、と答えた。その店なら夜遅くまで開いているし、何よりコーヒーが安い。一樹の行きつけであった。

 

「へぇ…じゃあ案内してくれる? 僕は、この辺りの事をあまり知らないから」

「……へいへい」

 

 

 

 

 

 喫茶店にやって来た一樹と明智は、それぞれ自分の飲み物を注文する。誘ったのは明智だったし、明智に奢らせても良かったのだが、それも何となく(しゃく)で一樹は自分で支払った。

 

「君、こんな季節でもアイスコーヒーなんだね」

「……悪いかよ」

「いいや。ただ、変わってるなと思って。ほら君って、いつもアイスだろう?」

「ハッ。探偵ってそんなところまで観察してるんだな」

 

 別に、一樹がアイスコーヒーばかり飲むのには大した理由はない。強いて言うなら、喫茶店のホットコーヒーは量が少ない気がして、あまり頼む気にならないだけだ。ちなみに明智が注文したのはホットのブレンドコーヒーだった。何処となく明智の雰囲気に似合っていて、一樹はイラッとした。

 

「どこに座ろうか?」

「……じゃあ、そこで」

 

 流石にうす暗くなったこの時間帯では店内に人が少ない。一樹はテーブル席を指差し、壁側の席に座る。二人は席に座ると数口、黙ってコーヒーを飲む。

 

「……俺は腹芸なんざできないから率直に言わせて貰うぞ」

「ん、なんだい? 言いたい事があるなら好きに言えばいい。()()()()()()()?」

「──チッ。それだ、それ。俺は口を滑らせねぇ。やるだけ無駄だぞ」

「……なんの話?」

「今更しらばっくれてんじゃねぇよ。さっきから仲間仲間と強調しやがって。そんな俺に()()()()()()()()()()()()()()()()()()?“今日は怪盗団とは~”だの、“パレスでは協力しなくちゃ~” だのと、何度も怪盗団との関係を匂わせやがってよ」

 一樹の明智に対する強みは、一樹が怪盗団である証拠を握られていない事だ。迂闊(うかつ)に怪盗団との関係を肯定してしまえば、酷く面倒な事になるだろうことは、一樹にも分かる。

 

「録音機でも隠し持ってんのか? 回りくどいことしやがって」

「……驚いた。まさか君に気付かれるなんてね」

 

 そう言って明智は、胸ポケットからスマホ大の機械を取り出した。一樹の見たことのない機械だったが、話しの流れからして録音機だろう。

 

「何処から警戒を……いや、警戒は始めからしていたか。いつ、録音に気付いたんだい? これでも探偵として、話術には長けているつもりなんだけど」

「そもそも最初っからおかしいんだよ。テレビやなんだにお呼ばれして毎日忙しい高校生探偵サマが、俺一人が歩いてるトコに()()()()遭遇するもんか」 

 

 大方、誰かに付けられていたのだろう。この数日間、そんな気配はしていた。

 

「付けられた気配って……、まさか野生の勘ってヤツ?」

()()()帰りは感覚がピリピリすんだよ。で、今度はコッチから質問。誰が付けてたんだ?」

「警察の人だよ。……近くに迫った強制捜査に向けて、第一容疑者の彼と親しい人物はマークされている。もちろん、プライバシーを守った範囲でね」

 

 指揮官である新島冴と仲が良い明智は、そこから一樹の情報を流してもらったらしい。

 

「……なんで今更、こんな言質取りを?」

「……保険、かな。今回の件は、万全を期して挑みたかったから」

「はっ! 俺が逃げるかよ」

 

 それは正しく杞憂と言うものだ。一樹が、こんな()()()機会を逃す訳がない。一樹はまた一口コーヒーを飲み、文句を言う。

 

「つーかそもそも、お前はアイツらを侮りすぎだ。お前から見て、アイツらは直前でビビって逃げ出すタマか?」

「……いいや。彼らはそんな事をしない。……僕も少し気弱になってたみたいだ。まさか、君に気付かされるなんてね。18日、一緒に頑張ろう」

「……明日の夜、渋谷の()()()()に来い。それで()()()()、許してやんよ」

 

 コーヒーを飲み干した明智は笑顔で一樹に握手を求める。しかし明智の握手に答えず、一樹は残りのコーヒーを一気飲みして席を立つ。そして明智の返事を待たずに、一樹は喫茶店を出て行った。

 

 

 

 

 

「……まいったな。こっちにも気づかれるなんて」 

 

 一人残された明智はそう言って、鞄からもう一つの録音機を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「よお、来たな」

 

 次の日の夜、DRとクロウはメメントスの入り口である駅の搭乗口で合流した。昨日一樹が先に帰って以降二人はSNSを通じても話しておらず、何故ここに呼ばれたのかとクロウは困惑気味だ。

 

「何か直接話したい事でもあるのかい? 君には別名義のチャットも有るのに」

 

 普通に喋っている様に見えて、サーベルに手をやり自然に腰を落とすなど、クロウがDRを警戒している様子が見て取れる。

 

「そうピリピリすんなって。別に昨日の件でキレて殺そうってワケじゃねーんだから」

 

 しかしDRはあくまで気軽そうに言うので、クロウも剣から手を離す。殺気は感じられないと判断したらしい。

 

 

「それで、態々メメントスにまで呼んで、何の用だい?」

「ん、そうだな──

 

 ──殺し合いしよーぜ!!

 

「……はぁ?」

 

 マスク越しで見えないが、唐突に脈絡のないとち狂った事をほざいたDRの顔は、明らかに笑顔だった。

 

「えっと……、やっぱり昨日の事で怒ってる?」

「あ? 言っただろ? 俺は腹芸が苦手だって。裏の意味なんざねーんだから読み取ろうとすんな」

 

 そう言ってDRは、懐から紙袋を取り出し、クロウに見せる。クロウは警戒しつつ、その中身を確認する。

 

「……“タケミエール”、“アルギニドリンク”に“フキカエース”。“怪盗ウエハースチョコ”まで」

「お互い回復スキル持ってねーし、どっちかが動けなく(戦闘不能)なったら終わり。それで回復して帰る。アイテムの使用は禁止。公平だろ?」

 

 ちなみにウエハースチョコは怪盗団の不祥事の前に買って食べ忘れていた物だ。数か月前の物だが、お菓子だし、賞味期限は大丈夫だろう。

  

「何が目的?」

「言ったろ? 殴り合いたいんだよ、(ちまた)で有名な高校生探偵と! こんな機会を逃すワケにゃいかないだろ?」

「……イカレてるね」

「いまさらだろ?」

 

 ハァ…とクロウはため息を一度つき、剣を構える。

 

「君には借りがあるしね……。いいよ、やろうか」

「おっ、いいねぇ話が早くて。それじゃァ……

 

──ヤろうか!!

 

 言うや否や、DRはファントムに搭乗しクロウに飛びかかる。クロウはDRの苦手としている万能属性のスキルが使える。速攻で先手を奪うべきと、DRは決めていた。

 

「楽しもうぜェ!」

「ッ! 舐めるなよ!」

「チィッ!やっぱやるなァ!!」

 

 勢いよく振り落とされた戦鎚を(かわ)しつつ、クロウは剣を振るう。DRは咄嗟に避けてしまい、折角詰めた距離をまた離されてしまう。

 

「射殺せ、ロビンフッド!!」

「ハッハァッ!! 《 ペイン・トレイン 》!」

「なにっ!──このッ! よくも……」

 

 案の定、離れてすぐにスキル(メギドラ)を放たれたが、DRは敢えて突撃する事で不意をついてスキルを避け、尚かつ素早く攻撃に転じてダメージを与える。

 

「これが俺だぁ!!」

「クッ……。僕はッ、この程度では……」

 

 追撃としてDRは《メギドラオン》を喰らわせるが、まだクロウは倒れる気配はない。

 

「いいねぇ。そうこなくっちゃ!!」

「今度は僕から行くぞ!」

「はっ! つまんねぇ痛みだなぁ!」

 

 素早く距離を取り直し、レーザー銃で狙撃するクロウ。しかしDRには銃撃耐性があり、喰らってもほぼダメージはない。故にDRは銃撃を受け止めつつ、腕に力を溜める。

 

「《ペルソナァ……」

「──そうくると思ってたよ!」

 

 《ペルソナ・フィスト》は発動までに時間がかかる。クロウは自分が隙を晒せば、DRは大掛かりなチャージ技を発動しようと逆に隙を晒すだろうと読んでいた。

 

「フィ──!! ヤベッ」

「射殺せ、ロビンフッド!!」

 

 結果、クロウの予想通りにDRは隙を作って万能属性のスキルを喰らい、ピンチに追い込まれた。

 

「もう一度だ、ロビンフッド!!」

「ガァァッ!!」

 

 ダウンした所に連続で《メギドラ》を放たれ、クロウの気力が尽きる頃には、DRは満身創痍になっていた。

 

「どうする? もう終わりにするかい?」

「なんで?! 今がサイコーに気持ちいいーんだろうが! 俺はもうビンビンのカチカチだぜ!?」

「下品だな……。まあいいさ。トドメを刺してあげあげよう!」

 

 強気に振る舞うクロウだが、そこまで彼に余裕が無い事を、DRは理解していた。ひたすら≪メギドラ≫を使い続けたクロウにはもう気力は残っていない。DRの得意とする肉弾戦で闘うしかない上に、体力もDRが何発か喰らわせた為にそこまで残っていない。

 

 つまり、体力が無くなる前に殴り倒せばいい。

 

 

「サァ……、最後のゴングを鳴らそうか!」

 

 体力がもう残っていない為、DRは《ペイン・トレイン》ではなくただ突っ込み、愚直に戦鎚を振るう。

 

「クッ、……しまっ!」

 

 クロウは華麗に避け、DRに銃を向けた。しかし、先ほどの乱射でほぼ弾を撃ち切っていたらしく、撃たれたのは数発だけだった。

 

「オラァッッ!!」

「ッ! よくも……」

 

 その程度では物ともしないDRの再び振るった戦鎚は、クロウにクリーンヒットした。

 

「僕は……、この程度では……」

「ハハハ……。勝った!!」

 

 今の攻撃で、クロウの体力はほぼ尽きた。後一撃当てれば、それでクロウは倒れる。

 

(──勝った、明智に、あの高校生探偵に!!)

 

「これで終わりだぁっ!!」

 

 興奮のままに、DRは戦鎚を振りかぶった。

 

「クッ…最後の賭けだ…!」

「あぁ……? ガッ!」

 

 DRの戦鎚がクロウに命中する直前、スキルで生じた黒い(もや)がDRを包み、僅かに残っていたDRの体力を刈り取った。

 

「ここに来て……、即死技(ムドオン)かよ! つか、気力……」

「1発分だけ、残しておいた。僕の……作戦勝ち、だね」

「あー、クソが……」

 

 悪態をつきながら、DRは気絶した。

 

 

 




色々と納得いっていないので、書き直すかもしれません。

DRのスキルで残りの1枠は何がいい?(五月雨斬りは止めました)

  • 万能ブースター系
  • 万能見切り系
  • 心得系
  • カウンター系
  • オリジナルスキル
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