"役立たず"の奮闘記   作:緑川翼

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Real intention

 

 

「リーダーに濡れ衣を着せて前科者にしたのが獅童だって? へえ、スゲえ偶然だな」

 

 シドウ・パレス攻略に向けてルブランに集まっていた怪盗団だったが、そんな折にターゲットの獅童が四軒茶屋へ街頭演説のため訪れていた。

 何かパレス攻略に役立つ情報が手に入るかもしれないと蓮が演説を聴きにいった結果、彼に傷害の罪を被せて保護観察の身にした真犯人が明らかになったのだった。

 

「にしても……、一国の総理になろうって男が酔っ払って暴漢騒ぎだと? 事件になっても揉み消せる自信はあったんだろうが、どういうリスク管理してんだ?」

 

 裏から手を回すにしても、騒ぎを聞きつけた誰かに動画を撮られてネット上で拡散されるかもしれないし、やって来た警察官に名前の圧力が通じず現行犯逮捕されるかもしれない。

 

 パッと思い付くだけでもこれだけの危険性がありながらも獅童は暴行に及んだのだ。まだ怪盗団の気付いていない自信の源があるのか、それとも何も考えず酔って暴れるような馬鹿なのか。

 

「確かに、自分の名前が出ないようそれなりの工作が必要だったはず……。いえその前に被害者の女性に嘘の証言の強要も……」

「何だってやりかねん。警察署内で暗殺を企てた男だぞ」

「真正のクソだな!」

 

 一度法廷で罪が確定してしまった以上、その罪を覆すのは難しい。雨宮の前歴を取り消すには、獅童に罪を自白させた上で、更に無実の確固たる証拠を提示しなくてはならない。

 

「ならばやはり、改心させる他ないな」

「だね! リーダーの為にも、ゼッタイ改心させよう!」

 

 改めてそう決意したところで今日はお開きとなった。メンバーが皆ルブランを立ち去ったのを見計らって、一樹はメンバーの使っていたコップを片付けている蓮に話し掛ける。

 

「なあ蓮。ちょっといいか?」

「……どうした?」

「昨日、ちょっとした厄介事に巻き込まれてな。その件で少し2人で話したい事がある」

「ならワガハイは聞かない方がいいのか? なら終わるまで散歩してくるぜ」

「ありがとよモルガナ」

 

 モルガナがルブランを出るのを見送ってから、一樹は昨日のスギモトによる誘拐未遂事件について語った。蓮はいつも通りの無言で一樹の話を聞いているが、その瞳には怒りが浮かんでいる。

 

「威圧したから自分から縁を切るだろうが……、とち狂って春に何かやらかす可能性もある。だから、今日改心させる」

「……1人で行く気か?」

「はは、流石に鋭いな。これ以上、あのゲスに春を関わらせたくない。アイツを無意味に傷付けるだけだ」

 

 それがただのエゴである事は、一樹も分かっている。だから黙ってメメントスへ行かず、怪盗団への最低限の義理を果たすためにも一樹は改心の事を蓮に伝えたのだ。

 

「じゃあ、俺が話したかったのはそれだけだ。もう行く。邪魔したな」

「待て、一樹」

「……止めても無駄だって言わないと伝わらないか? メンバーを集めて全会一致を取る気はねェぞ」

「違う。オレも行く」

「……はあ?」

 

 何を言っているのかと、一樹は蓮の顔を見る。今日は人と会う予定も無いからと屋根裏の自室から装備を持ち出した蓮の意見は変わらない。

 

「元フィアンセを許せない気持ちはオレも同じだ。春と関わらせたくない気持ちも分かる。だから、これはオレと一樹の秘密だ」

「──…ハッ! そうかよ。なら勝手にしろ。以前ストレス解消に潜ったのとは訳が違うんだからな?」

「そっちこそ、モルガナの協力無しでターゲットに予告状は出せるのか?」

「昨日アイツのアドレスを押さえたから問題ねぇよ。今頃、何を盗られるのかとビクビクしてるだろうぜ」

 

 自分と同じだけの意志の固さで話していると理解した一樹は蓮の同行を認め、久しぶりに2人でメメントスに潜入する事となったのだった。

 

 

 

 

「あったぞ。ここだな。で、どうする? もう入るか?」

「……そうしよう」

 

 メメントスをしばらく潜った階層で、DRとジョーカーは空間の歪みを発見した。心に歪んだ欲望を持つターゲットが支配する領域だ。

 領域に飛び込めば、中では見覚えのあるスーツ姿の男が立っていた。スギモトである。

 

「よう。昨日ぶりだなあ?」

「ヒッ?! おっ、お前が怪盗団だったのか?! 僕を改心させに来たのか!?」

「……そうだ」

「何故僕が改心されなくてはならない?! 昨日のだって……、ただ身分の差を教えてやろうとしただけだろう!」

 

 犯罪の証拠を握られている認知が影響してか、スギモトのシャドウは青白い顔で虚勢を張っている。だがその内容は社会的階級の差別に塗れた聞くに堪えないものであり、DRもジョーカーも仮面の下で呆れ果てる。

 

「生まれが良けりゃ人を誘拐して監禁して良いってか? 何処の法典にそんな法律が書いてあるってんだ?」

「グウウ……! お前等も、オクムラの娘も! 上に立つ人間の言う事に黙って従っていればいいんだ!! 下賤な連中が逆らおうなんて図々しいんだよォォ!!」

「……お前は人としての程度が低い」

「クハッ! 上手いこと言うなぁオイ」

「ガアアアアッ!!」

 

 ジョーカーの一言でキレたのか、シャドウスギモトは黒い泥を被り化け物の姿へと変身した。

 

 だが──…

 

「これは……」

「流石に気持ち悪ィな……。取り繕ってもこれが本性かよ。ノワールを連れてこなくてマジで良かったぜ」

 

 巨大な摩羅(マラ)が荷車に乗っている。シャドウスギモトが変身したのは、そう形容する他ない姿であった。

 

「直々に、叩き潰してやるよオォォォ!!」

「やってみろよゲス野郎。さァ…、お楽しみの時間だ!!」

 

 こうして、DRとジョーカーによるシャドウスギモト討伐戦が始まった。

 

 

 

 

──≪マハサイダイン≫!!

 

「甘いな」

「おらよっと! ──ッチ、思ったよりも堅えな…!!」

 

 シャドウスギモトによる念動属性の攻撃をジョーカーが華麗に回避する。その隙を突いてDRがスレッジハンマーによる大振りの物理攻撃を命中させるが、効いた様子はない。

 耐性が有ったり無効化されているのではなく、単純にシャドウスギモトの体力が多いのだ。

 

「ならこれだ」

 

 ──ダウンショット!!

 

『グオッ……!?』

「へっ! 流石だなジョーカー!」

 

 BANG!!BANG!!とジョーカーがガンナバウトで習得したという必殺技は見事命中し、シャドウスギモトをダウンさせた。会話の必要は無い。即座に囲み、2人での総攻撃を仕掛ける。

 

「行くぞ!」

「良いねえ!楽しもうぜ!!」

 

 ボコッスカバキッと効果音が聞こえてきそうなほどのタコ殴り。だがやはりシャドウスギモトは堅く、まだ体力は半分ほど残っていそうだ。

 

『下民がァ! 図に乗るな!!』

「へえ。アイツ、どうもようやく本気を出すらしいな。なら……、最ッッ高の時間にしようぜ!!」

 

 思いがけない強敵と戦う興奮のままに、DRはファントムに搭乗する。だが理性までは失っていない。これは自分の為ではなく、ノワールの為の闘いなのだから。

 

 ──≪ブレインバスター≫!!

 

「ハッ! 効かねえなァ!! そんなモンかよテメェの実力は!」

 

 シャドウスギモトの放ったスキルはDRに直撃したが、DRは銃撃にも耐性を持つ。ダウンする事もなく、DRは反撃にと≪メギドラオン≫を発動する。

 

「……チッ。これ(万能属性)でも大したダメージにならねえか。どうする、ジョーカー? アイツか俺たちのどっちかがくたばるまで続ける訳にはいかねぇだろ?」

「……俺が時間を稼ぐ。 一撃デカいのをかませ!」

「俺がか? ……了解、任せろ!!」

「……フッ。──ダーキニー!!」

 

───≪刹那五月雨斬り≫!!

 

『グアァ!!? このクソガキがァッ!!』

 

 ジョーカーが威力の高いスキルでシャドウの視線を引く。当然、2人で凌いでいた攻撃を1人で引き受ける事になるが、ジョーカーは見事に怒濤の攻撃を捌ききってみせた。

 

 そしてそれだけの時間は、ファントムに搭乗したDRが腕部に気力をチャージするには十分であった。

 

「サンキュージョーカー!! さあ没落の時間だぜ!

 

──≪ペルソナァァ・フィストォォッッ≫!!!」

 

 青白く発光するDRの拳が、ジョーカーを追い周囲への注意が疎かになっていたシャドウスギモトに直撃する。

 

──Critical!!

 

『ギヤアアアァッ!!?』

 

 超高確率でクリティカルを発生させる万能属性のオリジナルスキル、《ペルソナ・フィスト》はその効果に違う事なく、シャドウスギモトをダウンさせた。

 

 DRとジョーカーは当然、即座にシャドウスギモトを取り囲んで銃を構える。

 

『まっ、待ってくれ! お前の目的は何だ?! 昨日の示談金か?! ならお前たちじゃ一生拝めない金額をくれてやる! だから……!!』

「だってよ。どうする、ジョーカー?」

「興味ないな」

「ハッ! だよな!! んじゃパレスでも言ったらしいが……、ここは怪盗団らしくこう締めてやるよ」

 

 ハーフガスマスクの下でニヤリと笑い、DRは宣言する。

 

「お前の花嫁は、この俺が頂いた!!」

『まっ、やめ──!?』

 

 


 

 

Enjoy&Exciting!!!(楽しく、刺激的に!!!)

 

 


 

 

 

『うぅ……。わ、分かった……。春にはもう関わらない。婚約の契約書も破棄する……』

「警察署への出頭もだ。エリートってのは誘拐やら脅迫をしていい理由にはならねぇぞ」

「……わ、分かった。全部言うとおりにする」

 

 そう言って、シャドウスギモトは黒い煙となって消えていった。ジョーカーがその煙から、オタカラの種である『宝玉輪*1』を回収する。

 

 それを見て、DRは肩の力を抜いた。

 

「無事に改心できたらしいな。……正直、助かったぜジョーカー。俺1人じゃ、多分アイツは倒せなかった。倒せたとしても、かなりの負傷をしてた筈だ」

 

 戦闘が終わり、正気に返ったDRはそう分析する。体力が多く攻撃力も高いシャドウスギモトとDRが1対1で戦えば泥仕合は確実で、そうなれば勝敗は分からなかった。

 

 ジョーカーが引き付けてくれたからこそ、チャージに時間の掛かる決め手を喰らわせる事が出来たのだ。

 

「だから……、ありがとな」

「……仲間だからな。助けるのは当然だ」

「ハッ! そうかよ。……良いモンだな、仲間ってのは」

 

 それは、DRの本心からの言葉である。何も今回改心を手伝ってもらったからそう思ったのではない。怪盗団に加入し、共にパレスやメメントスを攻略する内に、DRはそう考えるようになっていた。

 

「……変わったな、DR。自分の為でなく、仲間のために動くようになった」

 

 DRの言葉を受けて、感慨深そうにジョーカーはそう言った。

 

 戦闘中に理性を保ち続けて共に戦うジョーカーに気を配り、戦闘が長引く事を察知すればジョーカーに指示を仰ぐ。

 

 死狂いで興奮すれば独断専行の目立ったDRが、一体どんな心変わりなんだとジョーカーは視線で問う。

 

「……俺はずっと孤独だったんだ。誰かと仲を深める勇気が無かったし、自分をさらけ出す決意も出来なかった。羨望の目で劇場を見つめる、哀れな傍観者が俺だった」

 

 DRの唐突な独白を、ジョーカーは茶化す事をせず静かに聞く。

 

「だから俺は、狂気に身を任せて壇上に上がる事にした。役者でもない癖に、台本の端に俺の名を無理やり書き込んだ」

 

 その選択に後悔はない。

 

 コンプレックスに押し潰されたままに一生を過ごす顔のない脇役でなく、見えた崖に笑顔で突っ込むような狂人の役を選んだのは自分自身だ。

 

 狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり。

 

 協調性や暴力への忌避感を一切持たない。そんな生き様を、DRは演じている。故に彼にとって怪盗団とは、戦場に赴くための理由であり、万が一が有った時の保険でしかなかった……筈だった。

 

「それがいつの間にか、お前たちの存在も同じくらいの幸福になっていた。……チョロいって笑うか?」

「まさか。笑うわけがない」

「そうかよ。……やっぱ、仲間がいるってのは良いモンだな。まっ! 俺も協力ってのを覚えたからな。これからの闘いは期待しとけよ?」

 

 


 

 Rank Up!!

 

ARCANA 『狂気』

 ★★★★★★★★☆ Rank9

【役立たずの仕事】消費アイテムを買ってきてくれる

【役立たずの貢献】買ってくるアイテムの種類が増える

【役立たずの使命】車での送迎をしてくれる

【狂人の暴勇 】体力が低い程攻撃力上昇

【狂人の蛮勇】 敵の数が多い程攻撃力上昇

 

NEW!!【追い撃ち】【ハリセンリカバー】【かばう】

 


 

 

 そろそろこのエリアから退却しようぜ、とDRが提案した時、それにしても……と、ジョーカーは面白いモノを見た、と笑う。

 

「花嫁は()()()()頂いた、か。それはもう春には伝えたのか?」

「ゲッ。聞こえてたのかよ……」

 

 先ほどまでのシリアスな雰囲気とは打って変わってニヤリと笑うジョーカーに、DRは恥ずかしそうに頭を掻く。

 

「アイツにはまだ何も言えてねえ。まァ近々自分から言うさ。だから…、お前から言わないでくれよ?」

 

 何をとは恥ずかしいので言わないが、ジョーカーはそれで満足したらしい。それならいい、とだけ言って歩き出す。

 

「頼むぜ、オイ。……オ~イ?」

 

 ジョーカーは聞こえないフリをして答えない。そうしてそそくさと去って行くジョーカーの背中をDRは追い掛ける。

 こうして()()()()()()雰囲気の中、ジョーカーとDRによるシャドウスギモトの討伐クエストは完了したのだった。

*1
味方全体のHPを全回復する消費アイテム

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