"役立たず"の奮闘記   作:緑川翼

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ちょっとこの話は書き直すかもしれません。


Intimidate

 

「よし、4枚目の紹介状ゲット! ハッカーとしちゃ三流もいいところだったけど、一応ちゃんと持ってたな!」

 

 シドウ・パレスである豪華客船の個室に籠もっていたIT企業の社長から、怪盗団は本会議場の鍵となる紹介状を入手した。

 

「それにしても…、ここのVIPは廃人化を使って成り上がる政治家に血統主義丸出しの旧華族……」

「情報操作しまくりのTV局局長と来て、あげくの果てには偽メジエトをやっていたIT企業の社長とはね」

「しかも、最後のVIPはヤクザだろ? 日本の闇のオンパレードって感じだな」

 

 獅童はどれだけ裏社会との関わりが深いのかと、怪盗団が揃って呆れ果てる。

 

「客船の地図にあっためぼしい場所はだいたい回ったけど、最後のVIPの居場所は分からなかったよね。何処にいるんだろう?」

 

 レストラン、プール、カジノ、客室。道中何度かヤクザの下っ端との戦いはあったが、ノワールの言う通り紹介状を持つVIPの居場所は判明していない。

 

「そのVIPってのは『トラブル処理係』なんだろ? テキトーに暴れて誘い出すか?」

「だから、無駄な騒ぎは避けなさいって」

「……いや。スカルのやり方も案外アリかもしれねーな」

「なに?そう言うからには、DRには何か良い策があるのか?」

「ああ。どうせ最後の紹介状を入手すりゃ、後は予告状を出してオタカラを頂くだけだろ?なら、わざわざ警戒度を気にしてやる必要はねえ」

 

 だから……、と1度言葉を区切ったDRはハーフガスマスクの下でニヤリと笑い、思い付いた作戦を語る。

 

「堂々と騒ぎを起こして『トラブル処理係』を呼び寄せようぜ。どんな罠が仕掛けられてるかも分からねぇアジトを探し回るよりは手っ取り早いだろ?」

「その作戦だと、VIPとは問答無用で戦う事になるぞ。どうやって紹介状を手に入れる気だ?」

「良い質問だな、モナ。でもまあちゃんと考えてある。まあ少なくとも、スカルの二の舞にはならねぇよ」

「ギクッ!」

 

 スカルには良い作戦があると騙って怪盗団の女性陣を水着に着替えさせた前科がある。DRとしては、恋人の水着姿は目の保養になったので文句は無いが、まあそれはそれだ。

 

「でもやっぱり、私はVIPの居場所を探してこっちから襲撃するべきだと思うけど……。最後は、ジョーカーに決めてもらいましょう」

 

 DRのおびき寄せる作戦ならば怪盗団に有利な場所で戦えるが、最初から全力の戦闘になるだろう。逆にクイーンの襲撃作戦は確実性は高いが、罠が張ってあったり敵に逃げられたりする可能性もある。

 どちらも同じだけのメリットとリスクがある。ジョーカーは少し考えて、結論を出した。

 

「……今回はDRの案でいく。敵をおびき出そう」

「よし! そう言ってくれると思ったぜ!」

「騒ぎを起こすのは本会議場前の広間がいいよね。5枚目の紹介状が手に入ればすぐに扉の鍵を開けられるしさ!」

「なら、すぐに移動する?」

「……そうしよう」

 

 話はすぐにまとまり、怪盗団はオタカラのある本会議場、そこへ通ずる広間へと移動するのだった。

 

 

 

 

「到着したけど……、ここでどうするの?」

「『トラブル処理係』が来るだけの騒ぎだろ? ここの乗客に片っ端からケンカを売るのはどーよ?」

「俺たちは怪盗団だぞ。騒ぎを起こすにしても、スマートではない手段はな……」

「んじゃ、スマートに手早くいこうぜ。すぐ戦闘に入れるよう準備しとけよ」

 

 そう言ったDRはスレッジハンマーを取り出して、5枚の紹介状がなければ開かない本会議場へ通ずる大扉へと向かう。そして……

 

「出てこいや! シドウマサヨシィィ!! タマ取ったらァ!!!」

 

「はっ? 何やってんの?!」

「ぜんぜんスマートじゃないぞ……」

 

 普段以上に乱雑な言葉遣いで叫びながら、手に持つスレッジハンマーで大扉を何度もぶっ叩く。ガンガンガンッと鈍い音が広間中に響き渡り、その騒乱は周囲の乗客へと伝播する。

 

「あのガキ、何をしている?!」

「あの先には獅童様がいらっしゃるのだぞ!警備員に早くとめさせろ!!」

「誰か『トラブル処理係』を呼んで!」

「待て、ここにいては我々にも飛び火するのではないか……!?」

 

 そんな事を騒ぎながら、乗客たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。近場にいたシャドウが護衛として乗客と一緒に退散していったのは、嬉しい誤算だ。

 

 そうして大広間から誰もいなくなるまでDRが暴れていれば、ついに目的の相手が現れる。

 

「まぁたおぬし等か! 2度も見逃してやったちゅうのに……、こりん連中じゃのう!」

「きッ、来た!!」

「ハハァ! 上手くいったな! その首、もらい受けるぜ!!」

「なにィ? オマエら、ワシのタマが狙いか!」

 

 サングラスを掛けた厳つい男が上着を脱げば、そこにはこれ見よがしな刺青が彫られていおり、その威圧感は怪盗団すら怯ませる。

 

「迫力がヤバい……! これがホンモノ……?!」

「本当に、戦って紹介状が手に入るの……?」

「ワシは忙しいんじゃ。オマエら、どこの組のモンじゃ!」

「答える必要はねぇな。これから海の底に沈む奴によォ!」

「良い返事じゃ気に入った! ワシが直々に腹かっ捌いて、その太い肝っ玉拝ませてもらおうか!!」

「何でDRは挑発するんだ?! 来るぞ! オマエら、構えろ!!」

 

 黒い鬼(オンギョウキ)に変身したトラブル処理係と怪盗団の戦いが、始まった。

 

 

 

 

「踊れ、へカーテ!!」

「覚悟の時間だ!」

『鬱陶しいぞシャリガキども!安心せい、心配せんでも皆殺しじゃあ!!』

「良い台詞だ痺れるぜ! だが、まずは俺を始末してから言うんだな!」

 

 トラブル処理係はやはり、警戒していた以上に強かった。本会議場前の大広間で、怪盗団は1人相手に手間取っている。

 体力と攻撃力の高い、単純なスペック差。DRがタンクとなり、連携を用いて何とか怪盗団はトラブル処理係に食らい付いている。

 

『言ったな小僧! 耐えてみせい!!』

  

  ────≪刹那五月雨斬り≫!!

 

 大振りの斬撃が3度、DRを襲う。物理に耐性のあるDRですらふらつく威力。DRが≪扇動≫して攻撃を引き受けていなければ、1人が2人は既にやられていただろう。

 

「嗚呼、良い痛みだ! もっとやろうぜ!!」

『DR、体力ヤバいよ! 1度退いて!!』

「いいや、このまま仕留める方が早い! 行くぜノワール!!」

「うんDR、ショウタイムだね!」

 

 

───【SHOW TIME】───

 

 

 舞台は代わり、何処かの夜の街。

 

 悪人の豪邸の窓を割って現れたのは家宝のダイヤモンドを盗み出したノワール!

 

 ワイヤーアクションを使い華麗に街中を駆ける彼女を何処からともなく出てきたパトカーが追う!

 

 警察の卑劣な罠により、パトカーに囲まれたノワール!

 

 じりじりとノワールに詰め寄る警察たちに突如ミサイルが襲った!

 

 何処からの襲撃かと探し生き残った警察が指差したのは高いビルの屋上、そこに立つ1人の男──DRだった!

 

 目と目だけで会話するノワールとDR!

 

 そしてまったく別の場所から同時に発射されるミサイルとグレネード!同時に直撃したパトカーが爆発する!

 

 爆煙が立ち上ぼり、危機が去ったと安堵するノワールは、ビルから飛び降りたDRと抱き合うのであった……。

 

 

SHOW'S OVER…

 

 

 

「ハハ、強いのう小僧ども!気に入った、ワシの首を持ってけい!!」

 

 人型に戻ったトラブル処理係が上裸でドカリと大広間の床に座り込み、怪盗団へ首を差し出す。その姿からは致死の覚悟が見て取れるが、ここからどう紹介状を貰うのかと、怪盗団は困惑の目で発案者であるDRを見る。

 

「悪いがオッサン。アンタの首が欲しいってのはウソだ。アンタの持ってる、シドウへの紹介状が欲しい」

「何ィ?」

「しょ、正直に言った……!」

「これがDRの作戦なの?」

「フン! キサマら、元よりそれが狙いか。……まあいい、ワシのお墨付きをくれてやる」

 

 DRの作戦通り、トラブル処理役は紹介状を取り出した。

 

「本来ならキサマらのような連中が『処理』の対象じゃが……、まあ必要なかろう。『船長』は良い雇い主じゃったが、心中は御免こうむるわい」

「流石ヤクザ者、引き際を理解してるな。もうすぐこの客船は俺たちが沈ませる。退散はとっとと済ませるんだな」

「ふん! 最後まで大した根性じゃ。達者でな、若いの」

 

 そう言い残して、トラブル処理役は部下を引き連れて大広間から立ち去っていった。それを残心とともに見送ったDRは仲間たちの方に振り返って、得意げに言う。

 

「な? 上手く行っただろ?」

「DRには、こうなる事が分かっていたの?」

「政治家が日陰者と繋がるとしたら金銭だけの関係だ。だから、1度ぶちのめしてやりゃ大人しく引き下がるとは思ってた。リスクに釣り合わないからな」

「スゲッ……。パイセン、意外と戦略とかできんのな」

 

 仲間の惜しみない賞賛にDRはハーフガスマスクの下で鼻高々になるが、「紹介状を渡さなきゃ要求に応じるまでボコボコにするつもりだったんだけどな」とぶっちゃければ、みな漫画のようにずっこける。

 

「と、とにかく。やっと紹介状が5つ揃ったね! これで、『本会議場』に入れるんだよね?」

「そこにオタカラがあるはずよ。紹介状集めで他の場所は回ったから、間違いないと思う」

「うんじゃあ、すぐそこなんだしオタカラとご対面といきますか!」

 

 

 

 

 鍵である5つの『紹介状』を差し込み、扉の先にあったエレベーターを昇っていけば、そこにあったのは巨大なダルマが設置された本会議場であった。

 

「……デッカ! なんだありゃ?!」

「ここが、本会議場?」

「た、多分ね。ダルマ以外は割と本物に忠実だし、ダルマも政治家にとっては選挙活動の定番だわ」

「それにしても、無人なのが妙だな。前に声が聞こえた時は、人が大勢いる風だったが」

 

 フォックスが指摘する通り、テレビの中継で見るようなこの場所に議員が誰一人いないのは妙な雰囲気に感じる。

 だがここに来るまで人々を馬鹿にするような獅童の認知存在を散々に見てきたDRとしては、それに大した理由があるようには思えなかった。

 

「どうせ、獅童の奴が「自分以外はいてもいなくても一緒」だとか、そんな認知をしてるからだろ。気にするだけ無駄だ」

「ありそうな話だな!」

 

 異質なダルマの存在から、ここが歪みの中心部であるのは間違いない。

 

「いよいよオタカラのルートを確保したな。どうする、パレスから帰還するか?」

「……待て」

 

 モナの提案にみんなが頷いて本会議場から出るエレベーターへと歩き出すが、ジョーカーが待ったをかける。

 

「何事……ああ確かに、お前との決着をつけないとな。明智ィィ!!」

 

 本会議場の影から現れたのは、赤いペストマスクに王子のような服装をした、明智吾郎であった。

 

「……まったく、まさか生きていたとはね。僕を騙すとは恐れ入った。君たちを甘く見ていたよ」

 

 本会議場にて、怪盗団はついに明智と対峙する。一対多でありながらも姿を現したのは、実力を過信しているのか何か策があるのか。

 

「ジョーカー、特に君は凄い奴だ。口数は少ないけど、行動力も度胸もある。こんな立場じゃなきゃ、いいライバル同士になれたのかもね……」

「……俺とお前は、すでにライバルだ」

「は? ……アハハ! 君、本当に最高だね! 君は今までの自分とか人間関係とか、そういうのに囚われない」

 

 ジョーカーの言葉にひとしきり大笑いしたあと、明智は悲しそうな目で語る。しかしそれは、メディアに見せる『高校生探偵』の仮面とは違い、明智の本当の素顔であるように、DRには思えた。

 

「ジョーカー、君はいつだって心が『自由』だ。僕とは正反対……、心底羨ましいよ。なんで、僕たちはあと数年早く出会わなかったんだろうね」

 

 明智のその言葉もまた、嘘ではないようだった。怪盗団に沈黙が走る。下劣な殺人犯に見えて、明智にも何か事情があったのかもしれないと、人の良い怪盗団は考えたからだ。

 

(──俺はッ! そんな空気読んでやんねぇけどな!!)

 

「なんで獅童に協力してんだとか……、お前にどんな事情があるのかとか! 一切合切興味ねえんだ俺はよッ!!」

 

 しんみりとした空気を無視して、DRは突撃とともにスレッジハンマーを振るう。ファントムに搭乗こそしていないが、並みのシャドウであればし容易に消滅させられる威力。

 だがその必殺たり得る奇襲攻撃を、クロウはレーザーサーベルで受け止める。

 

「そろそろ……、君が会話に飽きる頃だと思ってたよ。DR!!」

「流石だよく分かってるなエセ探偵! まどろっこしい話は終わりだ戦おうぜ! どうせオマエも、そのつもりで出てきたんだろ?!」

 

 DRのスレッジハンマーを弾き飛ばし、明智は不敵に笑う。その横には2体のシャドウ……、魔槍操る猛将(クー・フーリン)冥府の番犬(ケルベロス)が表れた。

 

「そうさ。ここでお前等の首を取れば、出し抜かれた失態を挽回できる。さあ……、見せてやるよ。俺の本当の力を!!」

 

 ───≪暴走のいざない≫!!

 

 一瞬、明智がロビンフッドとは異なるペルソナを召喚したかと思えば、2体のシャドウが黒いオーラを纏い、戦闘力を急上昇させる。

 

「な、なんだ今のペルソナは?!」

「明智が廃人化や精神暴走事件の単独犯なら、お姉ちゃんのパレスで見せた能力だけじゃ辻褄が合わない。何か力を隠しているとは思っていたけど……」

「ハッ! 心を暴走させる力ってことかよ! クダンネー力だな!」

「……ちっぽけな存在でも、心の枷が外れると桁違いの力を得る事が有る。どこかの狂人みたいにさ」

 

 せいぜい気を付けなよ、DRを見ながらそう言って明智は引き下がり、暴走状態のシャドウを倒さなければ届かない位地で高みの見物を決め込んだ。

 元々強力なシャドウが強化されている。しかも、後ろには明智が控えている。明らかにピンチだ。だが、怪盗団の誰ひとりの目にも諦めの色はない。

 

「リーダー。開戦の合図は任せるぜ」

「……ここで、決着を着けるぞ!!」

 

 

 

 

「“どうした? 俺はまだ倒れてないぞ!!”」

 

 DRの≪扇動≫により、凶暴化したクー・フーリンの意識がDRに向けられる。クー・フーリンによって放たれた≪ワンショットキル≫はしかし、銃撃に耐性のあるDRに大したダメージを与えない。

 クー・フーリンが物理スキルを多用するようだと見極めてから、DRはあえての大振りで回避を誘い、クー・フーリンとケルベロスが連携をとれないだけの距離を取る。

 

「こっちは俺が抑える! その間にその白いヤツ(ケルベロス)を仕留めろ!!」

「了解! 任せたぞ、DR!」

「なら、こっちも早く片付けないとね! 」

 

 お互いを信頼しているがための、時間稼ぎ。DRは強敵との戦いに頬を緩ませ、スレッジハンマーを握る。

 

「さァ……、アッチが終わるまで、お前は俺とあそぼうぜ!」

 

 凶暴化したクー・フーリンと物理スキルに耐性のあるDRの戦いはお互い一歩も退かず、場は膠着する。となれば凶暴化している分、敵がやや有利か。

 

「暴れろファントム! ──≪メガトンレイド≫!!」

 

 クー・フーリンの攻撃が効かないとは言え、DRの攻撃もまた、致命傷となりえない。つまりこの戦いの決着は、もう1つの勝負に勝った方が勝利となるという事。

 であればこそ、怪盗団を信じたDRの判断は間違っていなかったのだと言える。

 

『足止め助かった! こっちは終わったぞ、DR!』

「ハッ、思ったよりも早かったじゃねえか。この勝負、俺たちの勝ちだぜ」

 

 DRの元へ仲間達が駆け付ける。凶暴化したクー・フーリンはなお攻撃を続けるが、その後の勝負は語る間でもない。




ちなみに5人目のVIP前の選択では
一樹ルート:トラブル処理係戦→明智戦の間でセーブできる
真ルート:原作通りだが機関室にちょっといい宝箱が出現する
みたいなイメージです
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