「まずは、お見事」
本会議場にて。凶暴化した2体のシャドウを怪盗団が倒した所で、奥に控えていた明智が前に出た。その態度は相変わらず余裕綽々としていて、追い詰められているようには見えない。
「まあ流石に、今ので倒せるとは思ってない。何しろ、1度は騙されて仕留め損なった相手だ……。直接この手で、ブチ殺すに決まってんだろ!!」
「……来るぞ!!」
ついに始まった、明智との直接対決。だが1度は共闘した仲同士。手の内が分かっていれば、いかに明智が強かろうと人数差で押し切れる戦いであった。
「これで終わりだ!!」
「クソ……ッ。やるじゃ、ないか……!!」
ロビンフッドの攻撃を受け止め、時には回避して、怪盗団が明智の体力を徐々に奪っていき、ジョーカーがトドメを刺した。
明智は膝を着き、息も絶え絶えの様子。奥の手があるのでなければ、もう武器を振るう事もスキルを発動する事も出来ないだろう。
「クソッ! 殺すんだ…、殺して、やるッ……!!」
「もうやめて! 私たち、なんで戦う必要があるの?!」
「シドウの奴がクソなのはここを見りゃ分かんだろ! なんであんな奴にしたがってんだ!?」
「……獅童は、俺の親父だよ」
「「「───!!?」」」
そこから語られるのは、自分の母が獅童の愛人であったこと。父である獅童に捨てられ、母も早くに亡くした自分が施設で育ったこと。
獅童を恨み抜いた末に認知世界の存在を知り、ペルソナ使いとしての力を得た。明智はその力を使って、獅童の敵を始末してきた。
全ては、父親である獅童正義に復讐するために。
「ホントは、アイツが権力の頂点を極めて、俺を有能な右腕だと認めた時に、そっと囁いてやるつもりだったんた。俺が、『誰だった』のかをさァ!」
「……歪んでいるな。哀れなほどに」
「ああ。でもな、道を間違えたって分かっていても、止まれなくなる事はあるんだよ。意地とか後悔とか、そんなメンドクセーモンのせいでな。その気持ちは、まァ分かる」
精根尽き果てながらも剣を振るおうとする明智を、DRは同情の目で見る。その姿は、オクムラ・パレスで怪盗団と争った自分の姿にどこか似ていたからだ 。それにモナが続く。
「オマエ…、ジョーカーの事は気に入ってんだろ。戦う前に笑ってたの……、あれ本心だろ?」
「………ッ!!」
「本当の気持ちに従えよ! 嫌われたって、望まれなくたって、そんなの……」
「黙れ黙れ黙れッ!!!」
モナの言葉に動揺した事を誤魔化すように、明智は叫ぶ。その目線はジョーカーを貫いており、明智の隠された嫉妬と憎悪が覗える。
「俺の何処がッ! お前に劣ってんだ?! 俺は名探偵で……、カリスマだ! それが前歴持ちで、屋根裏に住んでるゴミに! どうして俺が……?!」
「明智君……」
「なんでお前なんかが……、俺にないモン持ってんだよ!? なんで俺より、ゴミのお前が『特別』なんだよォォォ!!?」
明智の慟哭に、誰も何も言えなかった。怪盗団はキラキラとした『探偵王子』の仮面の下に秘められたコンプレックスに、気圧されてしまっていた。
……DRを除いて。
「明智。お前も……、俺の同類だったんだな。自分には何にもないように思えて、でも逆に自分以外の誰もが特別に見える。そのせいでちょっとずつ、胸の中に嫉妬や憎悪の泥がたまっていく」
DRはその憎しみを自分に向けた。明智は、世界に向けた。ただそれだけの違いで、でも明智は本当に世界を害せる力を持ってしまった。
「お前に何があったのかなんてどうでも良いし、こうすりゃ良かったなんて今更に語る気もねぇ。ただ、もしあの時の俺が『世界を滅ぼせる力』なんて物を手にしてたら……、きっと俺も使ってた」
これは同情でも説得でもない、ただの共感。事実、ペルソナ使いとなったDRであれば、明智と同じように気に入らない人間を廃人化させることだって容易く出来たのだ。
「でも俺には、そんな狂気に落ちきる前に止めてくれる仲間がいた。お前にはいなかった。だから……、まぁ、なんだ。今からでもぶん殴って、お前を止めてやるよ。明智」
「……もうやめよう。俺のライバル」
「ああ……、そうだな。やめようか、こんなクソなやり取り」
フラリと、明智が立ち上がる。言葉は諦めたようであるが、表情はその真逆。身体からシャドウを凶暴化させた黒いオーラを漏らし、一瞬、黒い仮面を幻視させる。
「ああ、でもイイな…。コレやったら、どこまでヤレるんだ……?」
「へえ。やっぱり、なにか隠し球があったんだな。良いぜ、見せてみろ!」
「だから、なんで煽るだよ!」
「ハハッ! そうさせてもらうよ。本当は、お前らだって物足りなかったんだろ? こうしたかったんだろ?! 」
興奮のまま、王子を思わせるタキシードには似 付かわしくない狂気に染まった笑みを、明智は浮かべる。
「いいぜ……、見せてやるよ。ホントの俺をさァ! 来い、ロキィィ!!!」
明智の言葉とともに吹き出す黒いオーラと、ロビンフッドとは違うペルソナ。そのどちらも、正常でない禍禍しさを含んでいる。
「まただ! あのペルソナ!!」
「まさか、ジョーカーと同じ……?!」
「2つの力を使い分けるだと?! なんて奴だ……、姿さえ、嘘だったってのか!?」
明智の召喚したペルソナによって生み出されるドス黒いオーラが、明智の怪盗服である白いタキシードを黒く浸食していく。
「くだらねえ……。くだらねえなぁ! 正義だの、仲間だの! 目障りなんだよ…、どいつもこいつも! ぶっ壊してやるよ…、ぶっ壊れちまえよ! 俺と一緒にサ!」
「ウソ……」
「野郎、テメェを暴走させやがった!」
スカルの推測が当たっているのだろう。ロキのオーラは赤く鋭い仮面にまで影響を及ぼし、真っ黒な仮面へと変質させる。
「さあ! 仲間の目の前でひとりひとり死んでいけよ!」
「止めてやるっていたからには、口約束でも守らねえとな。さァ……、来るぞ!」
「死ネェェッ!!!」
本性を現した明智との戦いが、始まった。
■
「殺す! 壊す! ねじ伏せる! 仲間なんて……、カスの集まりなんだよォォ!!」
『アイツの新しいペルソナの能力は不明……。みんな、警戒して!』
「不明! いい響きだなぁ! さァ、楽しも──ッ?!!」
明智との、本気の殺し合い。その興奮を胸にDRがファントムに搭乗する───その直前、明智がDRに斬りかかった。
DRはファントムに乗ることなくスレッジハンマーで明智の剣を受け止め、撃退する。
「お前が厄介だってのは分かってんだよ! 黙って乗せるワケ……ねェだろ!!」
「ハッ! いいね、お前が俺を警戒してるわけだ。なら、期待には応えてやんないとなぁ! ペルソナァ!!」
「こんのッ! 離れろっての!」
DRが改めて召喚したファントムによって放たれた物理スキルと、ほぼ同時に振るわれたパンサーの鞭を、暴走した事で強化された明智は容易く回避する。
「そんなモンかよ……ッ!! 仲間の力ってのはさァ!!」
───≪ネガティブパイル≫!!
「ヤバ……! 怖くて、身体が動かないッ……!!」
『パンサー恐怖状態! お願い、動いてー!!』
「チッ! 正気にィ……、戻れ!」
反撃にとパンサーに放たれた物理スキルの効果によって、パンサーは湧き上がる恐怖に身体が動かなくなる。
しかし、明智が追撃するよりも早く、DRが≪ハリセンリカバリー≫によってパンサーの状態異常を解除した。
「あ、ありがとうDR! ホントに助かった!」
「ハッ! マジでハリセンでひっぱたくと治るのか。実際にやってみると笑えるな」
DRと怪盗団の親交度が深まった事で、DRもまた怪盗団が常日頃から用いていたハリセンリカバリーが使えるようになっていた。
とは言っても感覚的にはハリセンでツッコミを入れているだけなのだが、これで異常が治るのだから認知世界は不思議ばかりである。
「そんなことはいいから戦闘に集中して! 多対一でようやく対等……。やっぱり、強い!」
「分かってるぜクイーン! さァ明智! もっと俺と死合おうぜ!!」
「私もやるかんね!」
多種多様なスキルや銃弾が飛び交い、剣とナイフが交差する。しかし尚、怪盗団は明智を押し切れない。
「この程度で……、仲間が何だとか、ほざいてたのかァ!? 俺はァ! ずっと独りで、勝ってきたんだよ!」
「そうかよ! “仲間なしじゃ、どうりでいまだに俺1人すら倒せねえ訳だ”! そろそろ決着を着けようぜ、明智ィィ!! ≪ペルソナァァ──…」
タンク役として明智を≪扇動≫しながら、DRはこれみよがしに大技の構えを取る。≪ペルソナ・フィスト≫は万能属性であり、≪
《扇動》の効果と≪ペルソナ・フィスト≫への警戒から、明智の注意が僅か一瞬、DRのみに注がれる。その隙を、怪盗団は見逃さない。
「私の怒りを思い知れ!アナト!!」
「ぶっ込め、セイテンタイセイ!」
「グッ……!! 身体が、痺れて……!! ここに来てッ、感電しただと……ッ?!」
怪盗団の集中砲火により、明智の動きはついに鈍る。その時を、ジョーカーは集中砲火に参加せず≪チャージ≫して待ち構えていた。
『隙ができた! 行って、ジョーカー!!』
「ブチかましてれよッ! ジョーカー!!」
「来い、セト! ───≪ワンショットキル≫!!」
≪チャージ≫込みで放たれた、単体に特大ダメージを与える銃撃スキルにより、明智はついに膝を着く。
「グアアッ……! クソッ、が! 傷、舐めあうだけ…の! カス、どもがァ…!『仲間』って言っとけば、なんでも…セーリツする、もんなァ……!」
「……哀れだぜ明智。ここで止めてやるよ。一時は組んだ…、仲間だからな」
「……『仲間』なんて、いるもんかよ……。いるもんか……」
ファントムに搭乗したDRが、気力を溜めた右手で動かなくなった明智をぶん殴る。
───≪ペルソナ・フィスト≫!!!
直撃した拳から白い閃光がほとばしり、それが止んだときには、明智は地に伏していた。
■
「もう、いいだろ?」
「分かってる…。懲りたよ……」
武器を下ろしたスカルがそう問い掛ければ、黒い仮面の割れた明智はようやく降参した。その表情に先ほどまでの狂気はなく、だまし討ちを狙っているようには見えない。
「……いいよな、お前らは。仲間がいて、認め合っててさ……。しかも獅童が改心して罪を自白したら、怪盗団は英雄だ」
明智は膝を着いたままポツリポツリと口を動かすが、その言葉は本当に自身の心情を語っているらしかった。
「対して俺は、過去の推理が自作自演とバレて、名声も信用も全部なくなる」
「……なるほどな。自分で暴走させたターゲットの事件を、自分で解決してたってことか。それも、シドーと手を組んでな」
「ハハハ……。結局、俺は特別な存在になんて、なれなかった。羨ましいよ、本当に」
明智はそう失意に暮れるが、DRはそう思わない。
「まあ、自分がどれだけ優れてるかなんて、自分自身じゃ分からねえもんだ。けどな明智。お前はスゲー奴だよ。ペルソナ能力を除いてもな」
「悔しいけど…、貴方は知恵も力も私たちの誰よりも優れてる。私たちが勝てたのも、全員で挑んだから……」
「つーか、1人で複数のペルソナとか、オマエ多分、ジョーカーと同じ才能も、あったんじゃね? なのに人生ソロプレイだったから、目覚めた力は自前の『嘘』と『恨み』の2個だけ……」
「そいつが多分、全てで勝るお前に、唯一なかったものだ」
DRの言葉に続き、クイーンやナビ、フォックスも明智に言葉を掛ける。みな明智の行った罪を憎めど、同じだけ彼に思う所はあるのだ。
「よし、戻って予告状だな! ……俺たちは獅童をブッ倒す。お前、これからどうすんの?」
「邪魔されんのは困るし、いっそのこと一緒にケジメつけにいく?」
「……ハァ? 馬鹿なのか? 邪魔が嫌なら、俺を始末するべきだろ」
パンサーの言葉に明智は絶句するが、怪盗団はパンサーの提案を誰も否定しない。怪盗団は人を殺さないのだと誰かが言えば、明智は呆れて笑う。
「……まったく、理解を超えてるよ。お前らは。だから……、俺は負けたんだろうな」
「で? どうす───ッ?!」
DRが明智の返答を求めたその時、5枚の紹介状が無ければ開かぬ筈の扉を越えてエレベーターが突如開いた。そこから表れたのは……、制服姿の明智であった。
「明智がもう1人だと!? まさかこいつは……!」
「シドーの、認知上のアケチか!」
認知の明智はその通りだと答えるように笑い、無言で明智へ銃を向ける。
「獅童『船長』の命令だ。敗者には用が無いってさ。まあ……、ちょっと予定が早まっただけだ。どのみち選挙が済んだら、始末する予定だったんだし」
認知明智の言葉に、怪盗団だけでなく明智すら唖然とする。認知上の存在は基本的に嘘をつかない。つまり、今の言葉は明智の雇い主である獅童の本心であるからだ。
「さんざん殺しを請け負ったくせに、自分だけは大丈夫だと思ってたのか?」
「クク、なるほどな…。前からずっと疑問だったんだ…。もしこのパレスで、俺が本気で暴れたら…、どう防ぐ気なのかってな」
明智を人質に取られて怪盗団が動けない中、皮肉げに笑いながら、明智が言う。
「お前がそれを防ぐ係で…、俺と同じ顔をした人形に殺させるって訳だ。……あの男らしい」
「そうとも。俺は人形さ。獅童船長のためなら何だってするし、いくらでも罪を被って死ぬ人形だよ」
「これが獅童の考えている、明智吾郎…。人殺しを手伝わせた上にこんな風に思ってるなんて……! ひどい…、ひどすぎるよ……!」
「外野がごちゃごちゃうるさいな…。先にお前らから殺してやろうか?!」
認知の明智が顔を歪めてそう言えば、警備員姿のシャドウが何体も出現して、明智を囲む。その手には銃器が握られており、ますます明智が危機的状況に陥っていく。
「そうだ。最後のチャンスをやるよ。お前がヤツらを撃て。さっきまで殺し合ってたんだし……、簡単だろ?」
認知の明智が手に持つピストルを見せつけるようにそう言えば、明智は少し考えた末に、ジョーカーへ向けて銃を構える。
「そう、それでいい。それが獅童船長の望む……、人形のお前だ」
「……勘違いするなよ。消えるのは、お前だッ!!」
「ッ!? お前ッ!!」
明智はジョーカーに向けていた銃口を突如認知の明智へ向け、発砲する。そして周囲のシャドウが反応するよりも早く、本会議場の壁に設置された警報器も撃ち抜く。
『警報装置が作動しました。特別警護のため本会議場を封鎖します。周囲のお客様は警備員の指示に従い、直ちに避難してください』
そんなアナウンスとともに、明智と怪盗団を隔てるようにシャッターが下ろされ、エレベーターが開く。明智に助けられたのだと、殴ってもびくともしないであろうシャッターを前に理解する。
「明智!!」
「とっとと……、行け! コイツら相手に……、今の俺を抱えてちゃ、全滅だろうが……」
「馬鹿な、死ぬ気か!? 」
「待って……、DRもいなくなってる!」
「なにッ?!」
そう、明智が警報器に狙いを定めた時、DRは明智の意図を察し、シャッターが閉じるよりも早く明智の横まで駆け込んでいたのだ。
「……DR。何の、つもりだ?」
「別にィ? 死ぬつもりに見えたモンでな、助けてやろうかと思ってな。……止めてやったのに、死なれちゃ本末転倒だろうよ」
「……本当、お前らは馬鹿だよ。殺すどころか、助けようとするなんてさ」
膝を着いていた明智はフラリと立ち上がり、スレッジハンマーを肩で担ぐDRの横で武器を構える。DRはそんな明智を見て笑い、シャッターの向こうにいる怪盗団へ告げる。
「そういうこった! 俺は明智と逃げる! そっちはそっちで脱出しておけ!」
「待って! 2人だけで、あんな数のシャドウと戦うつもり?! 連戦で疲弊しているのに!」
「ま、俺と明智なら余裕だろ。信用しとけって」
怪盗団はシャッターを開けようと試行錯誤しているようだが、本会議場を守るためのシャッターがそう簡単に開くとは思えない。開くより先に、警報を聞いたシャドウに囲まれてしまうだろう。
「だから、先にパレスから脱出してろ。こっちはまあ……、大丈夫だろ」
「……分かった。先に行く」
「ちょっと、ジョーカー?! 」
「DRが大丈夫だと言ったから、信用する。……仲間だからな」
「……ハハッ! 本当にウチのリーダーは、言って欲しいことを言ってくれるな!」
それを本心から言えるからこそ、怪盗団のリーダーなんて色物を務められるのだろうか。DRは笑い、ジョーカーの言葉を反芻する。
(──ジョーカーとの確かな絆を感じる……)
我は汝…汝は我…
汝ここに、契りを血盟の絆へと転生せしめたり
絆は反逆の翼となりて
魂のくびきを打ち破らん
今こそ汝、「狂気」の究極なる秘奥にめざめたり
無尽の力を汝に与えん…
Rank Up
ARCANA 『狂気』
★★★★★★★★★★ Rank10 MAX
【超覚醒】
所持ペルソナが進化し、神話上のトリックスターとして誕生する。
───『狂気』コープのランクがMAXになった!
──『狂気』属性のペルソナを合体で生み出すさいに、アルカナバーストで得られる経験値が増加した!
───『狂気』属性の最強ペルソナであるネロの合体が解禁されました。
「ああ、感じるぜ。ペルソナが強くなったって事を!!」
──一樹のペルソナがファントムからトウコツに進化した!
【解説】トウコツ
ARCANA 狂気
中国神話に登場する邪神。戦闘狂で手のつけられない神であったが、聖人に捕らえられた後は守り神としての役割を果たしたとされる。
ペルソナ的には、ファントムよりも更に巨大で更に粗野になったパワーアーマーのような見た目。『ボーダーランズ3』のアイアンベアのイメージ。