"役立たず"の奮闘記   作:緑川翼

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住吉 一樹の武器が一部スカルと重複しております。
ご承知願います


Summon

「うーん……。ペルソナが現れない理由がイマイチわかんねーんだよなぁ」

 

 猫モドキ……、モルガナが不思議そうに眉をひそめ首を傾げる。

 

「多分、心持ちの問題だとは思うんだが……」

「心持ち……? それってどーゆう?」

 

 レオタード姿の、金髪のツインテール女子が一樹の気になった事を代弁してくれた。モルガナが答える。

 

「こう……、まだ自分の心全てと向き合えてない、のか、それとも自分で気付いてない一面があるのか……」

「よく分からないな」

「だな。結局何が悪いんだよ?」

 

 今度はマジシャン風衣装を着たメガネの黒髪店員と暴走族風な金髪のチンピラが一樹の思いを代弁した。考える事は同じらしい。

 

 モルガナはさっきまでの様にハキハキ堂々とは喋らない。一樹のこれは、割りと珍しい事態なのかもしれない。

 

 顎に手を当てて考えこんでいた新島が発言した。

 

「服装が変わった、って事は一応ペルソナ使いとしては目覚めてるのよね。なら、スキルはどうなってるのかしら?」

「スキル……ってあの、魔法みたいなヤツだっけ?」

 

 火炎だの補助だの核熱だの、まるでゲームの様だと話半分で聞いていた内容を一樹は思い出す。 

 

「えっと。どうやって確かめればいいんだ。スキルってのは」

 

 ペルソナを召還出来ずに幾らか気落ちはしたが、それでも尚、服装が変わり魔法が使えるかも知れないとなれば、一樹も何時もよりかは積極的だ。

 

「こう…胸の奥に集中すると、何となく分からない?」

「……? なんだって?」

「取り敢えずやってみてちょうだい」

 

 ゲームの様な魔法は有っても、都合よくステータス画面的な物まではないらしい。

 

 軍用戦闘服にプロテクターを装着した一樹は先ほどペルソナを呼び出そうとしたのと同じ要領で、胸の奥に意識を向ける。

 

 体感で一分ほどそうしていたが、何も分からない。一樹は諦めて目を開けた。

 

「──すまん。何も……」

「そう……。やっぱり、しっかり覚醒しないと駄目みたいね」

 

(──ナチュラルに失敗を抉るの止めてくれないかな。)

 

 一樹は上がっていたテンションが急激に下がっていくのを感じた。一樹は何時もの癖で口を抑えそうになり、いつの間にか自分の口元が何かに被われている事に気が付いた。

 

「──ん? これ……、ガスマスク、か?」

 

 ペタペタと口元に張り付いている物を触り、その独特な凹凸から一樹はそう推測する。目元をカバーしない、口周辺だけを被ったタイプのガスマスクらしい。

 

「気付いてなかったの? さっきから被ってたわよ」

「……全然違和感無かったな」

「まあ、認知世界では身体能力とかも上がってるし、慣れるまでは感覚がずれるかもしれないわね」

「へぇ……」

 

 一樹は試しに、グッパーと(これまた何時の間にかしていた黒く厚い手袋越しに)手を動かしてみる。確かに何となく、普段と違う感じがする。

 

 それが面白く、手を動かして遊んでいると、腰に掛けられた何かに腕がぶつかった。

 

「何だこれ……。ハンマー?」

「……ハンマーね。釘抜き付きの」

 

 一樹の腰にぶら下がっていたのは、わざわざ柄まで黒く塗られた釘抜きハンマーだった。

 

「何でこんな物が……?」

 

 一樹はまじまじとそのハンマーを観察するが、真っ黒に塗装されてる他は普通のハンマーにしか見えない。

 

「ああ、それは──」

「あっ、いや。ゴメン、思い出した」

 

 怪盗衣装と同じく"反逆の心"が具現化した武具がウンタラカンタラ……と新島が説明していたのを一樹は思い出す。その時一樹は、スキルの話に意識が片寄っていた為にあまり聞いていなかったのだ。

 

「なら、俺の武器はハンマーなのか?」

「まあ、そうなるわね」

「ハンマーなんて、使った記憶はないんだけど……」

 

 せいぜいが、生徒会時代に備品整理で触った程度だ。そもそも、釘抜きハンマーなんて武器になるのだろうか。一樹は何度かハンマーを振ってみる。思いの外、そのハンマーは手に馴染んだ。

 

「服装には似合ってるわよ。こう……、特殊工作員みたいで」

 

 確かに軍服にアーマー、ガスマスクに工具となれば、怪盗と言うより極秘任務を負った兵士っぽく見えるのは否定しない。

 

 が、その格好にメリケンサックとか言う"いかにも"な格好をした新島には一樹も言われたくはなかった。

 

 怖いので、当然口には出さないが。

 

「そう、いえばさ。武器って他にも銃が有るんだっけ?」

 

  このままだと要らない事を口走るな、と察した一樹は話を変えた。

 

「そうね。自分の武器を想像して。さっきの要領で取り出せる筈よ」

 

 新島は何も無かった腰元から鉄砲を取り出してみせた。理屈は分かっていても、一樹にはイリュージョンか何かにしか見えなかった。

 

「よし。やってみ──ってこれどうやって仕舞うんだろう?」

 

 無造作に取り外したハンマーの戻し方が分からない。多分、ベルトに引っ掻けるんだろうが、胸のプロテクターが邪魔でそれが見えない。

 

「こう…じゃねえな。これ、でもねえのか。……ああ、もう」

 

 手先が不器用な一樹はハンマーを元に戻すのも一悶着だ。

 

「こうじゃない?」

「ああ、……ゴメン」

 

 見かねた新島がサッとハンマーを取り、元の場所に戻して見せた。

 

 一樹は気恥ずかしさと勝手に敵視している新島に助けられた不甲斐なさでテンションが更に駄々下がりした。

 

 フゥ、と一息吐き、一樹は気を入れ直す。ペルソナも失敗、スキルも失敗と来たが、折角の機会なのだ。せめて1つは成功させたい。

 

 と、ペルソナ使いに覚醒出来たと言う成果が有ることを忘れた一樹は決心して行動を起こす。

 

 勝手が分からないので、一樹は試しに目を瞑り、「武器よ、来い!」と念じてみる。

 

 何も起こらなかったが、一樹は取り敢えず二度、三度念じてみた。

 

「うおっ?! あっ、フギャ!?」

 

 不意に背中が重くなり、一樹はバランスを崩して尻を打ってしまう。

 

「な、なんだぁ? 成功したのか?」

 

 背に手を回してみると、一樹は何かを背負っていた事が分かった。何なのか調べるべく、それを取り外そうとベタベタ触ると、それは思いの外簡単に外れた。

 

「それ……って」

「ロケットランチャー、か?」

「に、見えるわね」

 

 黒く太い筒から飛び出た物騒なロケット。粉う事なきロケットランチャーだった。

 

 ハンマーと違って、それは一樹には身に覚えが有る物だった。と言っても、様々なゲームで好んで使う程度だが。一樹はそのロケットランチャーを観察する。重いのは確かだが、想像よりは軽かった。

 

「おお! スゲー武器じゃねースか。パイセン」

 

 金髪ヤンキーが幾らか興奮した様子で寄ってきた。曰く、怪盗団の重火器は小さい物ばかりらしい。

 

 怪盗団のメンバーに誉められ、一樹の自尊心は幾らか高まった。

 

「確かに、重い一撃を撃てるのは心強いわね。後はペルソナが使えれば良かったんだけど」

「……ああ。うん。そう、だな」

 

 高まった一樹の自尊心を新島が一瞬で叩き落とした。どうせ無自覚なのだろうが、まるで狙ってるようだと、一樹はため息を吐く

 

 一樹がランチャーを仕舞おうとすると、金髪ヤンキーが楽しそうに提案してきた。

 

「なあ。それ一発撃ってみてくんねぇ?!」

 

「えっ? ……大丈夫、なのか? いや、俺としては別にいいんだけど……」

「まぁ、別にいいんじゃない? それ、こっちに向けないでね」

「お、おう」

 

 新島の許可が下りたので、一樹はランチャーを肩に乗せて、適当に遠くを狙う。幸い、面倒な操作は必要無くただ引き金を引くだけで撃てそうだ。

 

「えっ?! ちょっと待って、そんな体勢じゃ反動を殺せな──」

 

 別世界とは言え、初めての発砲にテンションの上がった一樹は躊躇無く引き金を引き、後悔する。

 

「ゲッ?! フベッ!!」

「アギャァ!」

 

 ミサイルは問題なく発射された。

 

 その反動はすべて一樹の肩にかかり、一樹は何の抵抗も出来ず後ろに飛ばされ、丁度向かい正面に居た金髪ヤンキーに激突した。

 

「スカル?! 住吉君!?」

 

 鍛えているのか、ペルソナの恩地か、金髪ヤンキーは無事そうだが、一樹はそうもいかない。金髪ヤンキーに衝突して受け身も取れずに頭から床に激突。

 

 この日、一樹は生まれて初めて気絶を体験した。




住吉一樹の武器
近接武器:ハンマー系統
特に高威力だが、極端に命中率が低い。
遠距離武器:ミサイルランチャー
弾数は1発で全体攻撃。近接武器と同じく高威力だが、極端に命中率が低い。
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