凍て刺す零氷の刀使   作:レイ1020

10 / 26
寿々花の表情が思わしくなかった原因とは......?


親衛隊の任務

 

 

 

此花さんとの朝の鍛錬を終えた後、食堂で朝食をとった私は少し時間に余裕を持って執務室に入った。中には既に獅童さんと此花さん、皐月さんがいた。燕さんの姿は......ないね。

 

 

 

「おはようございます!」

 

 

 

「ああ、おはよう。しっかり時間通りだね」

 

 

 

「初日から遅刻なんてしないですよ。それに朝は此花さんと一緒に鍛錬をしましたから今日は身体も軽いんです」

 

 

 

「そうなのか?寿々花......寿々花?」

 

 

 

さっきから獅童さんが声をかけてるのに此花さんは何処か上の空で気づいていないみたいだった。朝の鍛錬で疲れてるのかな?

 

 

 

「......」

 

 

 

「おい、寿々花!」

 

 

 

「へ!?真希さん?どうかしました?」

 

 

 

「どうしたもこうしたも、さっきからずっと呼んでるんだが?どうかしたのか?」

 

 

 

「い、いえ。なんでもありませんわ。それで、なんの話でしたか?」

 

 

 

此花さんもこんなふうに取り乱すことってあるんだ〜。なんか意外......。

 

 

 

「早朝に紫音と鍛錬をしてやったと聞いたが本当なのかと聞いただけだよ」

 

 

 

「......っ」

 

 

 

それを聞いた此花さんは一瞬複雑な表情を浮かべた。まるであんまり触れて欲しくないみたいな感じで。

 

 

 

「......此花さん?」

 

 

 

皐月さんも何か此花さんの様子がおかしいと察したのか、顔を近づけていた。

 

 

 

「大丈夫ですわ。少し疲れてるだけなので......ええ。今日の朝に私が鍛錬をしているところにちょうど紫音が通りかかりましたので、良ければ一緒にと誘ったのですわ」

 

 

 

「はい。それで一緒にやってもらえることになって、最後には立ち合いもしてくれたんです」

 

 

 

「!?」

 

 

 

立ち合いと私が言った途端に何故か私の方に鋭い視線を此花さんが向けてきた......気がした。でも、こっちに視線を向けてきたのは間違いなかった。なんか変なこと言ったかな?

 

 

 

「立ち合いか。寿々花は随分とサービス精神が強いんだね。入ってきたばかりの紫音と早速手合わせをするなんて......相当紫音の実力を知りたかったってことかな?」

 

 

 

「え、ええ......。同じ親衛隊ですもの。実力を知るにはいい機会だと思いましたので、誘ったまでですわ」

 

 

 

なるほど、私の実力を図るためでもあったわけか。あの立ち合いは。

 

 

 

「それで?君の評価の程はどうなんだい?」

 

 

 

「そ......それは......」

 

 

 

 

此花さんが私の評価を言おうとしたその時、時計の針が7時を指した。親衛隊の仕事の始まりの時刻だ。

 

 

 

「すみませんが時間です。任務に向かいましょう」

 

 

 

「ああ、そうだね。では、紫音は僕たちの後に続いて来てくれ。詳細は後ほど話すから」

 

 

 

「わかりました。あ、でも燕さんは?」

 

 

 

「燕さんはいいのです。今回の任務は燕さんは待機命令が出てるので......」

 

 

 

「ああ、そういうわけなんですね」

 

 

 

なら良いんだけど、それよりもさっきの此花さんの様子が気になってるんだよね......。私と立ち合いをしてから何か様子が変に思える。

 

 

 

「寿々花、行くぞ」

 

 

 

「......ええ」

 

 

 

此花さんはどこか気が入ってないような声で答えた。任務に支障が出ないと良いけど......。そして私達は、任務のため部屋を出た。向かった先は局長室だった。中に入り、紫様に今回の任務の内容を聞かせて貰うためらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の任務は、東京方面に出た荒魂を討伐に向かった部隊の援助だ。作戦指揮は獅童と此花、現場の指揮並びに荒魂の討伐は皐月と芹代に任せる。速やかに行動しろ」

 

 

 

「「「「はっ」」」」

 

 

 

「芹代は初めての任務だが、気負う必要はない。お前のだせる力を出して任務に臨んで来い。良いな?」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

紫様に向かって全力で答えた私。紫様に認めて貰うためにも、ここは頑張らないとね!

 

 

 

「お前達も芹代のことをサポートしろ。初の任務で怪我をされては敵わない......?どうした此花?顔色が悪いようだが?」

 

 

 

「!?い、いえ!決してそのような事は......」

 

 

 

此花さん......やっぱり変だよ......。今朝会った時はいつも通りだったのに......。やっぱり私が何かしちゃった?

 

 

 

「体調に問題があって任務に支障が出ては元の子もないんだぞ?......本当に大丈夫なのか?」

 

 

 

「大丈夫です。任務にも支障は出しませんので行かせてください」

 

 

 

「そうか、分かった。では各自、任務に移れ!」

 

 

 

「「「「はっ」」」」

 

 

 

こうして私の初任務が始まった。此花さんのことは気になるけど、今は任務に集中しないとね。私達は局長室を出た後、屋敷の外に留めてあった車に乗り込んだけど、車と言っても自衛隊の人が乗るような大型車だった。そのまま車は私たちを乗せて目的地に向けて出発した。その間に今回の任務の内容等を頭に叩き込んでおき、現場でヘマをするという事態を回避するのに尽力した。私の初陣が今......始まろうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......」

 

 

 

私、此花寿々花は、今、生きてた中で2度目の屈辱を味わっていますわ......。一つめの屈辱を与えてくれたのは真希さん。私が何度努力して剣技を鍛え、挑んでも......勝てずに屈辱を与え続けられた私のライバル。いつかは真希さんを超えて見せる!そう決めてたのだけれど......今はそんなことを考えられるほど心に余裕がありませんの。それだけの屈辱を私は今目の前にいる少女に味合わされたのですわ......。

 

 

 

そう......その2度目の屈辱を与えてくれたのは......紫音ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー早朝、立ち合いの時ーーー

 

 

 

 

「いきます!」

 

 

 

「ええ、掛かっていらっしゃい」

 

 

 

私が最初に立ち合いに彼女を誘ったのは単に彼女の実力を知りたかったから。親衛隊としての実力があるのかを身定めるためでもありましたの。だからこちらは力を抜いて様子を見ようとしたのですが......。

 

 

 

「ふっ!」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

あろうことか、彼女はいきなり【迅移】を2段階まで上げて攻撃を仕掛けて来たのです。しかもその速さは私がやっと目で追えるレベルの速さだった。彼女の攻撃は何とか凌ぐことは出来ましたが、その一撃はかなり重く、受けた手が痺れてしまっていた。

 

 

 

「くっ......何て速く......そして重い攻撃を......」

 

 

 

「まだまだ行きます!やぁっ!!」

 

 

 

「うっ......」

 

 

 

そんなまさか......と思えた一瞬でしたわ。彼女は【迅移】を連発できるだけでなく、【八幡力】を使って脚力と腕力を強化してたのですわ。本来であれば、【迅移】も【八幡力】も、ただでできるわけでは無く、何かしらの代償がついてくる。両方とも使い過ぎれば、身体を壊したり精神を破壊したりするほどの諸刃の剣となる。一つだけならまだしも、2つ同時に使いなんてしたら紫音の体が保たないはず..........なのにーーー

 

 

 

「(何故ですの!?何故ここまで【迅移】と【八幡力】を使っていても平気なのですの!?)」

 

 

 

紫音は動きが遅くなるどころか.......さらに加速して私に攻撃を浴びせに来ていた。でも、その攻撃全てが何故か【写シ】を傷つける程度の攻撃で、【写シ】を剥がすほどの攻撃は一度も飛んで来なかった。つまりーーー

 

 

 

「私を甘く見ているようですわね!はぁっ!!」

 

 

 

「うわっと!」

 

 

 

私は攻撃して来た紫音をそのまま弾き飛ばした。飛ばされた紫音は空中で態勢を立て直し、着地した。つまりそういうことですわね。彼女は私のことを甘く見ていたのでしょう。私では怪我をさせてしまうかもしれない。だから【写シ】を剥がさないようにしよう。そう考えていたのでしょうけど......。......上から目線みたいでムカつきますわね。

 

 

 

「今度はこちらから!【迅移】!」

 

 

 

私は今度は自分と言わんばかりに【迅移】を2段階にあげた。そして一気に距離を詰めて下段から攻撃を繰り出した。まさかこっちまで使わされる事になるとは思っても見ませんでしたけど、これもまた面白いですわね。

 

 

 

「はぁ!これで勝負あ......り?」

 

 

 

勝負を決めると思っていた私の一撃は、すんでのところで紫音の御刀に防がれていた。もちろん加減はしていたが、速度は加減したつもりはない。つまり彼女は私のあの速い動きを見切れたという事になる。

 

 

 

「......まだ終わりませんよ!」

 

 

 

紫音はそういうとそのまま私の攻撃を受け流し、無防備となった私の腹部に蹴りを入れて来た。

 

 

 

「ぐっ......」

 

 

 

とは言ってもそこまで強い一撃ではなく、少し飛ばされた程度で済んだ。

 

 

 

「はぁっ!!!やぁ!!せいっ!!とうっ!!」

 

 

 

私はその後も何度も【迅移】と【八幡力】を駆使して使い、紫音に対して攻撃をしていったが、紫音はその全ての攻撃を軽快な動きで捌き、隙があればカウンターを入れてくるなどして凌いでいた。この時の私には、紫音に一太刀を入れるイメージが湧かなかった。それだけ紫音の攻撃と守りには隙が無かった......。結局私の剣は、彼女には届かずに時間切れとなってしまった。

 

 

 

「此花さん!ありがとうございました。私とても楽しかったです。たまには立ち合いをするのも悪くないですね〜......えへへ。それじゃあ、私はこの辺で。執務室で会いましょうね〜」

 

 

 

立ち合いが終わった後、紫音はご機嫌のまま訓練場を後にした。一方の私は全く逆で......。

 

 

 

「(防御では手を抜かれ......攻撃では一太刀も浴びせることができなかったですわ......)」

 

 

 

私は失意に満ちていた。自分のこれまでして来た努力を紫音にすべて打ち砕かれたように感じていたからだ。......こんなことは真希さんの時以来ですわね......。

 

 

 

「それに相手がまだ子供だということも余計にショックですわね......」

 

 

 

こんな状態で今日の任務は大丈夫なのでしょうか?でも、私は親衛隊。休むわけにはいかないですわ。まだ心の整理がついてない状態ですが、私は任務に向かうことを決めたのですわ。




次回【紫音の実力】



お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。