ーーー現在、荒魂出現地点にてーーー
「これより作戦指揮は、我ら親衛隊が受け持つ!直ちに装備を整え、指示を待て。負傷をしているものは下がって治療を受けろ」
現場についた獅童さんがまず始めに現場の刀使達にそう言った。現場はほとんど東京の街中だったが、避難は完了しているようで人々に被害は出てないようだった。でも、その代わりに刀使達の被害は少なからず出ていたみたいで、負傷している人たちが大勢いた。
私も装備を整えた後、作戦本部とされる場所......獅童さんと此花さんのところに集まった。
「ここから紫音は夜見と一緒に行動して、荒魂の討伐にあたってくれ。細かな情報や位置などは僕か寿々花が先ほど耳につけたイヤホンから伝えるから安心してくれ」
「わかりました」
イヤホンというのはさっき獅童さんから渡された通信機器だった。これを耳につけてると本部から直接私のもとに指示が届くいわゆる無線機みたいな役割を担うことができるみたい。これなら安心して荒魂討伐に専念できるということだ。
「夜見も紫音のことを頼む。紫様もおっしゃっていたが、初任務で怪我をされてはまずい」
「......お任せを」
「よし!では、全員無事で帰ってこよう!作戦開始!」
私は獅童さんと此花さんと別れた後、皐月さんと一緒に戦場となっている場所に移動した。情報によると荒魂の数は約50前後、それも普段の荒魂よりもだいぶ強いらしく、現場の刀使だけでは苦戦を強いられてるらしい。これ以上負傷者を増やさないためにも、私と皐月さんは少し走る速度を上げて戦場に向かった。
『先100mに荒魂がいる。戦闘準備に入れ!』
「了解」「はい!」
イヤホンから獅童さんの指示が飛び、直ちに私達は御刀を抜き、【写シ】を張った。
「いた!」
「あれが今回のターゲットですね。芹代さんは前衛をお願いします。サポートは私が引き受けますので......」
「え?私が前衛でいいんですか?」
「私はサポート主体の刀使ですから。気にせず存分に戦ってください......」
皐月さんはそう言うと、ふっ......と笑いかけてくれた。そっか、刀使の中には荒魂を討伐するよりも刀使をサポートする方が得意な人もいるって聞いたことあったけど、皐月さんはその類だったんだ......。
それなら安心できると思った私は、同じく小さく笑いながら皐月さんに言った。
「わかりました。では、私が最初に斬り込みますので、撃ち漏らしがあったら皐月さんが......と言うことでいいですか?」
「了解です。それでいきましょう」
「よしっ!でぇぇぇやぁぁぁ〜〜〜!!!」
戦法をお互いに確認した後は、ただ荒魂を討伐するだけだった。私が現場にいる荒魂を討伐している間に、皐月さんが私のサポート兼その場にいた刀使達に作戦説明を行う形で実行された。
「グギャァァァーーー!!!」
荒魂の群れの中に突っ込んだ私は、群がる荒魂に向かって力任せに蒼月を横殴りに繰り出した。その一撃を喰らった約5匹の荒魂は叫び声を上げながら活動を停止し、その場に崩れ落ちていった。
「よし!次は......っと?あれ?
次の荒魂を討伐しに行こうとした時、
「
私の右目が金色に変わるこの眼のことだ。もちろんこの時の私は眼の色の変化になんて気付いてないから、知らないんだけど、正直これは好都合だった。
「せっかくこの眼が使えるんだし、有効に利用しないとね!」
この眼が出るのは戦いの時が多いけど、必ずしも出る訳じゃないから今回は運が良かったかもね。そう少し嬉しい気持ちになりながら私は、相手の荒魂の動きを先読みし、着実に討伐していった。残る荒魂の数は、半分をきっていた......。
「芹代さん......」
私は元々サポートができる刀使として優秀だったため、親衛隊に所属していました。これまでも獅童さんや此花さん、結芽さんのことを数多くフォローをして来ました。そして今回、私は新たな親衛隊、芹代さんをサポートする事になったのですが、現状私は彼女をサポートをしていなかった。いえ、正確に言えばサポートをする必要がなかったと言えば正解でしょう。事実、今彼女は問題なく一人で対処できてる。すべて討伐するのも時間の問題でしょうね.......。
「す......すごい......」「何あの子......。あんな子、親衛隊にいたかしら?」
その場にいた刀使の皆さんも、初めてみた芹代さんとその実力に驚きを隠せないでいました。それから数十分後、芹代さんはすべての荒魂を討伐し、私に合図を送って来ました。それを確認した後、私は耳に手を当て、作戦本部にいる獅童さんと此花さんに静かに伝えました。
「任務完了。直ちに帰還します」
「そうか、わかった。ご苦労様、現場の刀使達と一緒に戻って来てくれ。それじゃあ、後で......」
夜見の報告を受け、僕たちはとりあえず討伐完了書をまとめた後、夜見と紫音が戻ってくるまで一息ついていた。
「それにしても......初陣で荒魂をすべて一人で討伐するなんて、紫音には本当に驚かされてばかりだね。僕たちはもしかすると本当にすごい拾い物をしたかもしれないね?寿々花」
先ほどの夜見の報告では、夜見のサポート無しで紫音はすべての荒魂を討伐したと聞いた。聞いた時は耳を疑ったけど、夜見が嘘をつく人ではないことはよく知ってたから、納得する事にした。そのことを寿々花にも伝えたのだけど、それを聞いた途端、寿々花はまた少し暗い顔になった。作戦の時は吹っ切れたのかいつもの調子に戻ってたけど......。
「(......もしかして?)」
何か思い当たった僕は、それとなく寿々花に聞いてみる事にした。
「......」
「寿々花......紫音と何かあったのか?」
「!?......へっ!?」
この反応......どうやら図星みたいだな。確信が持てた僕はさらに追求してみる事にした。
「よければ話してくれないかな?......今後にも関わってくる事だし、問題を解決するのに早いに越したことはないから」
「......」
寿々花は顔を伏せて何か考えていたけど、すぐに顔を上げ、僕の方を見た。
「紫音と今日の朝に鍛錬と立ち合いをした事は話しましたわよね?」
「ああ」
「その時にーーー」
寿々花から語られたのは、今朝の紫音との立ち合いの話だった。紫音と立ち合いをして実力を確かめようとしたところ、逆にこちらが本気を出させられる事態となり、おまけに防御では手を抜いた攻撃をされ、攻撃では紫音に一太刀も浴びせることができないまま終わってしまった......と言う事らしい。自分よりも2つも年下の紫音にそこまで圧倒されれば流石の僕でも何かくる物がある......。そこは同情するが......。
「と言う訳ですわ......」
「なるほど......話はわかったよ。でも......それが何だって言うんだい?」
「!!何って、紫音にあそこまで完敗したのですわよ!?私の今までの努力を打ち砕かれるくらいに......それで落ち込まない訳ないじゃないですの!」
そう......落ち込む理由はわかるんだが、寿々花は何か勘違いをしている。僕たち親衛隊の使命を......
「寿々花、何か勘違いをしていないかい?僕たち親衛隊の役割は何だい?」
「はい?そんなの決まってますわ。紫様を一番身近でお守りしつつ、荒魂の討伐を遂行するために私達が......あっ」
「そう言う事だ。僕達は親衛隊内で優劣を争うためにいる訳じゃなく、ちゃんとした使命があるからいるんだ。紫音がすごい事は今回の作戦で証明された訳だが、それはとても喜ばしい事じゃないか?それだけすごい刀使が僕達とともに使命を全うする仲間になったのだから」
親衛隊は折神家の一番の戦力。そして紫様を守る盾でもある。そんな親衛隊の中で優劣なんて不要。必要なのは使命を全うできる仲間がいるかどうかなんだ。
「私ったら......大事なことを......」
「その気持ちはわかるよ......。僕も一度そんな気持ちを味わったことがあるからね......」
その時、僕の脳裏に結芽の姿が思い浮かんだ。結芽は僕よりも三つも年下なのに対して剣の才能は群を抜いていて、その才も実力も僕より上だった。その事実に当時の僕は今の寿々花のように親衛隊としての使命を忘れかけ、荒れていた。もしあの時、紫様に喝を入れられなかったら、今の僕はなかっただろう。
今度は僕が寿々花を助ける番だ。
「これからは紫音は親衛隊の仲間だ。最初は難しいかもしれないが、少しずつでもいいから彼女と仲良くなっていってほしい。僕もそうする」
「ええ、わかりましたわ。ふふ......それにしても真希さんは随分と紫音に肩入れするのですわね?まるで親のようですわ」
「そ、そうかな?でも......そうかもしれないね。何せ、大好物のプリンを食べられたら泣いて任務に支障を出してしまうほどのお子様だからね」
「まぁ......」
「「あははは」」
作戦室内に僕達の笑い声が響き渡った。寿々花がもとに戻ったようで良かった。
次回【認められた力】
お楽しみに!