紫音が及ぼす影響とは一体......。
御前試合
「
「ああ、そこの机に置いてもらって構わないよ。後で僕がまとめて片付けておくから」
「はーい。......っしょっ......と!」
私、芹代紫音が親衛隊に配属されてから1年が経った。相変わらず今日も私は......というか親衛隊は忙しい毎日を送っている。
「ふぃ〜〜、いくら御前試合が近いって言っても、こんなに書類を確認しなきゃいけないのはキツすぎますよ......」
「紫音?口を動かしてる暇があるなら手を動かしなさい。大変なのは貴方だけではないのですわよ?」
「......はーい」
忙しい理由がそれで、もうすぐ御前試合が始まるんだ。御前試合では全国各地からいろんな刀使や一般の人たちがここ鎌倉に集まってくるため、混乱を防ぐために注意事項の書類や地図の作成、各学院の刀使の詳細情報などをまとめなくてはならなかったりと、やることが山ほどある。......はぁ、まだまだ終わりが見えないな〜。あ、ちなみに親衛隊の皆さんのことは前から下の名前で呼ぶようにしたんだ〜。前にそろそろ苗字読みはやめてくれって真希さんに言われたことがきっかけだったんだよね。
「つ......疲れた......」
夜になり、ようやく全ての書類の作成とまとめが終わった私たちはとりあえず一息ついた。
「お疲れ様です。紅茶です、どうぞ」
「夜見さん、ありがとうございます............はぁ〜...おいし〜」
疲れた私たちに夜見さんからの紅茶のサービスが届けられた。夜見さんの入れる紅茶は本当に美味しいからすごく好きなんだよね。
「ふぅ......それにしても、この時期は相変わらず忙しいですわね」
「そうだね。でも今回は紫音もいてくれたから去年よりは楽だったんじゃないかな?」
「ふふ......そうですわね。......あら?」
ふと寿々花が視線を紫音の方に向けると、そこには机に突っ伏したまま静かに寝息を立てている紫音の姿があった。
「......寝てしまいましたか?」
「そのようだね。無理もない、朝から今の時間まで僕たちとほとんど同じくらいの書類をまとめてたんだ。それもほとんど休みなしで頑張ってたんだし、もう少し寝かせておいてあげよう......」
「全く......この歳でよくここまで頑張れますわね......」
「ああ、だからこそ年長の僕達は心配もするし、面倒も見たくなるんだけどね......」
「ええ......お疲れ様、紫音」
そう言いながら寿々花は自分の上着をそっと紫音にかけてあげるのだった。
ーーー御前試合当日ーーー
御前試合当日となり、試合会場となる折神家の訓練場とその周りには大勢の人で賑わっていた。今回の私たち親衛隊の役割としては、基本的に二人制で御前試合中の警備につくという役割だ。なんで二人制なのかというと、お前たちも御前試合を見たいだろう?と言った紫様の計らいによってだ。正直これは嬉しかった。だって......
「それにしても......まさかここまで人が入るとは思ってなかったです」
そして今、私は真希さんと一緒に、試合が行われている訓練場まで来ていた。
「そうか、紫音は御前試合を見たのは初めてだったな。珍しいことじゃないさ。この御前試合は年に一度の大きな催し、そして日本の頂点の刀使を決める大会なんだ。このくらい当たり前だよ」
「へ〜、そうなんですね............ん?」
私は次に出て来た一人の刀使に、何か感じるものがあったため注視して見た。あの制服は......平城学館か?
「真希さん。あの刀使は?」
「ん?ああ、彼女は平城学館の......確か、十条姫和だったな。
「ああ、そういえば真希さんは平城学館出身でしたね」
「そうだ。予選でも相手を寄せ付けずにほとんど一撃で勝負を決めていたらしい。もしかすると、彼女が今回の大会の本命かもしれない」
うん......それは私も思ってたことだったんだけど、何か彼女には別の目的があるんじゃないかって思えて仕方がないんだよね?現に今も試合に勝ったのに眉一つ動かさないし、試合中だってどこか別のことを考えてるような様子でやってたし......。
「う〜〜ん......」
「どうかしたか紫音?」
「?ああ、いえ、こっちのことです。気にしないでください。それよりも......あ、来た」
一旦その十条さんのことは置いておき、次の試合で戦うために出て来た刀使のことを私は
可奈美から予選を勝ち上がり、本戦出場の切符を手にしたと聞かされたのは今から十日ほど前だった。嬉しすぎたのか誤字脱字の多くあったひどいメールだったけど、どれだけ嬉しかったのかは良くわかるメールだったことはよく覚えている。舞衣も準優勝で本戦出場を決めて、美炎は準決勝で可奈美に負けて本戦出場はならなかったみたい。それでも準決勝まで行けたのならすごいと思う。
だから私はこう返した。「おめでと!じゃあ、鎌倉で待ってるね!」
「彼女は確か紫音の友達だったな。衛藤......と言ったか?」
「はい、恐らくですけど可奈美も今回の大会の本命になりうるかもしれない存在ですよ?立ち合いをした私が言うんですから間違い無いです」
「紫音にそこまで言わせるなんてね。では、じっくり見させてもらうか......」
真希さんはそれっきり黙り、試合を観戦していた。可奈美の相手は鎌府女学園の刀使だった。物静かそうな雰囲気を出しながら御刀を構え、試合開始を待っていた。試合が始まるとその子は早速可奈美に向かって【迅移】を使い、御刀を振って来た。でもその攻撃を可奈美はステップと【迅移】を使って簡単に躱し、時には攻撃を受け流して自分のペースに持ち込んでいった。そして、勝敗は突然ついた。相手の【迅移】が止まった瞬間を見計らって動いた可奈美が、相手のこの御刀を手から弾き飛ばし、戦闘不能にしたんだ。
「そこまで!勝者、美濃関学院、衛藤可奈美!」
危なげなく、可奈美は勝利を収めた。強くなったね......可奈美。
次回【襲撃の一閃】
お楽しみに!