二人の思いとは......。
「舞衣、さっき可奈美達と別れるときに何か渡してたけど、あれ何なの?」
可奈美達を逃してから、私と舞衣は原宿で荒魂を討伐しに行った。現場には既に他の親衛隊の姿もあって、任務に移っていた。それもあって、原宿の荒魂討伐にはそんなに時間がかからないで終えることが出来た。今はその帰りの車内の中だ。
「何って......クッキーだけど?」
「クッキー?」
「そう、逃げてる間にお腹が空いた時にでも食べてってあげたの」
ああ、そういえばずっと舞衣のポケットからガサガサ言ってたけど、クッキーの入った紙袋の音だったんだね。何か渡してるな〜って思ってたけど、それなら問題ないか......。
「......ねえ、紫音ちゃん......」
「ん?なに?」
何か私の顔を伺うようにして聞いて来た舞衣。どうかしたのかな?
「もし......私が可奈美ちゃん達の居場所を知ってるって言ったら......どうする?」
「......?知ってるの?」
「もしもの話。じゃあ質問を変えるね?紫音ちゃんは今、二人の居場所を特定できたとしたら......捕まえに行くの?」
「......」
言いにくいことを......。そりゃ、私だって好き好んで可奈美と十条さんを追いかけてるわけじゃない。何も無ければこちらは何もしないんだ。でも二人は紫様を襲撃した逆賊なんだ。私情で捜索を止めることなんてできない。......だから。
「他に任務がないなら行くかもね?だって、それも任務だから......」
「そっか......そうだよね......」
私の答えを聞いて、舞衣は悲しそうな顔をした。
「舞衣はさ?十条さんが言ったことはどう思ってる?」
「え?......紫様が大荒魂だって話?......私は......信じようと思ってる」
「......そっか。信じるか......」
舞衣の答えは半ば分かっていた。あの時、可奈美達を逃すと決めてた時点でその話を信じ切っていると分かっていたからだ。
「紫音ちゃんは......?」
「私はまだ信じられないかな。情報が少なすぎるし、確たる証拠も無い。可奈美の証言だけじゃまだまだ足らなすぎるよ」
「......じゃあ、もしその証拠があれば、紫音ちゃんは可奈美ちゃん達の味方になってくれる?」
「あればね?私達だって従ってたのが荒魂だって分かって従うほど馬鹿じゃないよ。......でも、それ相応の証拠じゃないと私はともかく他の親衛隊の皆さんは納得してくれないと思う」
「!ありがと!それだけ聞れば十分だよ!」
さっきまでの悲しそうな顔は姿を消し、代わりに満面の笑みを見せた舞衣。
「可奈美ちゃん......お願いね?」
紫音ちゃんと舞衣ちゃんと別れた後、私衛藤可奈美と姫和ちゃんは、舞衣ちゃんから貰ったクッキーの袋の中に入った紙切れに書かれた場所に向かった。そこにいたのは恩田累さんって言う、羽島学長に頼まれて来たって女の人がいた。私達はとりあえずその言葉を信じる事にして、恩田さんの自宅までついていくにしたんだ。
「それでだ、可奈美には聞いておきたいことがある」
「うん。何かな?」
今私たちがいるのは恩田さんの自宅の一室。お風呂を貸してもらってさっぱりした後、姫和ちゃんから話があるとこの部屋に呼び出されたんだ。
「お前が見たと言っている折神紫の後ろの荒魂について教えてくれ」
「あ〜......」
唐突な質問に戸惑いを覚えたけど、私が見たことを素直に話せばいいだけだよね?
「一瞬だったから何とも言えないけど......大きな目がギョロってこっちを睨んでて、その周りは何か禍々しい空気見たいのが支配してたみたいな感じだったかな?」
「一瞬?すぐに消えてしまったと言うことか?」
「少し違うかも、正確には隠世に潜ったみたいな感じだったよ?何と言うか......【迅移】でより速い層に潜る時の感覚と似てたかも?それと......隠世から御刀を取り出してるように見えて......」
「隠世に潜った......」
隠世から御刀を取り出すなど聞いたことがないみたいに、姫和ちゃんは思考を回らせていた。私も途中から何言ってるのか分からなくなっちゃってたよ......。
「今からでも......誰かを味方につけることはできないかな?ご当主様の正体を話してさ?」
「味方と言っても、誰をつける気でいるんだ?そんな話簡単に信じてもらえる話じゃないぞ?」
「うん、一番はやっぱり親衛隊なんだけど......望みは薄いかな?」
「だろうな。確かに奴らが味方になるならそれほど心強いことはない。だが......一席の獅童真希や第二席の此花寿々花は折神紫に深い忠誠を誓ってるだろう。並大抵のことではこちらに味方することはないだろうな......」
やっぱりそうなるよね......。親衛隊って折神家の中で一番強い刀使が配属されるところだもんね。忠誠だって普通の刀使とは違うはず。......そんなすごいとこにいるなんて、紫音ちゃんは......。
「......」
「?どうした可奈美?」
私はその時、一つの案を思いついた。でも、これは
「......紫音ちゃんを味方につける事はできないかな?」
「!?あいつをか!?」
私の出した案に姫和ちゃんは思いっきり驚いていた。当たり前だよね......。でも、これが最も可能性があるとは思うんだ。
「正気か?さっきのあいつの反応を見ただろう?私やお前が折神紫の正体を話しても考えが変わらなかった奴なんだぞ?そんな奴を味方につけることなんて出来ないだろう?」
「それは多分、十分な証拠がなかったからだと思う......。私や姫和ちゃんがいくら言っても、それが確実な証拠になるってわけじゃないでしょ?私たちには今、それが必要なんだよ、誰でも納得するような御当主様が大荒魂だって言う証拠が」
「......」
「ちゃんとした証拠を見せれば、きっと紫音ちゃんなら分かってくれる!だから、それも考えてくれると嬉しいかな?」
私たちだけじゃ、御当主様に勝つ事は多分出来ない。だからこそ仲間が欲しいの。そのためにも紫音ちゃんには味方になってもらいたい。
「分からないな。友達とはいえ、自分に対して攻撃をして来た奴をなぜ信用できる?」
「そんなの、友達だからに決まってるでしょ?親衛隊だとか関係ない。紫音ちゃんはきっと信用できるよ!」
「はぁ......もういい。......一応検討はしておく」
「ありがと!」
話が済んだ後、疲れた体を癒すために私達はすぐに床についた。すぐに眠れるかと思ったけど......何故かなかなか寝付けなかった。今日だけでいろいろあったせいで気持ちが追いついてないからかもね。
「......眠れないのか?」
「そう言う姫和ちゃんもね......」
寝れてないのは姫和ちゃんも同じだったみたいだね。
「ねぇ......姫和ちゃん?一つ聞いていい?」
「......何だ?」
「私達って御前試合で決勝まで上がった仲でしょ?」
「それがどうかしたか?」
「て事はさ?五箇伝の中でも一番強い刀使って事になるのかな?」
私はこれだけはどうしても姫和ちゃんに聞いておきたかった。
「まぁ......今所属している中ではそうなるんじゃないのか?」
「......やっぱりそうだよね。はぁ......」
予想通りの答えに私は納得のため息をついた。これを聞きたかったのもあるけど、他にも答えがないかなって聞いて見たんだけど、結局変わらないか。
「何が言いたいんだ......お前は......」
「確かに、五箇伝の中では一番強いかもしれない。だからこの先どんな相手が来ても負けない!......そう思ってたんだけど......今日紫音ちゃんと戦って現実を思い知らされちゃったよね......」
「っ......」
私の言った事に、紫音ちゃんと戦った時に受けた攻撃が疼いたのか、顔をしかめた姫和ちゃん。私はそのまま続けた。
「私達二人掛かりで戦っても紫音ちゃんにはまるで歯が立たなかった......。私にとっては同い年、姫和ちゃんにとっては一つ年下の子にだよ?」
「......そうだな。もしあの時......奴が攻撃を中断してなかったら私達は今頃......鎌倉に連れ戻されてただろうな......」
「うん......そうだね......」
だからこそ、あの時の紫音ちゃんの計らいには感謝しないと......。その為にも......早くこの状況を何とかしなくちゃ!心の中でそう決意を固めていると...今度は姫和ちゃんの方が喋り始めた。
「可奈美......その紫音なんだが......戦ってる時、妙に雰囲気が変わったような気がした......いや、実際変わった」
「え?......どう言う事?」
「その確信が持てたのは奴の御刀を払い除けた時だった。その時見えた奴の目が......正確には右眼が......金色に変わっていたんだ......」
「金色......?」
そんなの聞いたことがない。人の眼の色が勝手に変わるなんて......。
「雰囲気もまた異質で何と言っていいのか分からないんだ......。でも、眼の色が変わっていたのは事実だ。......何か心当たりは無いか?」
「ううん。無いよ......。一年前にもそんなことは無かった......と思う」
「妙な間があったのが気になるが、とにかく奴には何かある。気をつけておけ.....」
「......分かった」
その会話を最後に、私達はそのまま眠りについた。紫音ちゃんのことは気になるけど、今は体を休めないと......。
「(明日から......頑張らないと!)」
次回【学長のお咎め】
お楽しみに!