一方その頃紫音は......。
「失礼します」
折神家の屋敷に戻って来た私は、舞衣と一緒に局長室に入室した。中には既に結芽以外の親衛隊の皆さんと、紫様、そして......鎌府学長の姿があった。
「遅い!紫様を待たせるとは何事か!」
「っ!?」
「......すいません」
入ると同時に鎌府学長からいきなり罵声を浴びせられた。私は慣れてるけど、舞衣に至っては怖がってるみたいだ。この人は普段からこんな調子で、失敗するとそのことをネチネチと咎めてくるから苦手なんだよね......。まぁ......別に今回は任務失敗してるわけじゃ無いけど。
「鎌府学長......良い。その二人は今し方ここに戻って来たばかりなのだ。それに、任務もしっかりこなして来ている。多めに見てやれ?」
「......はっ」
紫様がそう助け舟を出してくれた事によってそれ以上お咎めをくらうことは無かった。てか、お咎めされるのも納得行ってないんだけどね......。
「報告します。東京都台東区、原宿区の荒魂討伐は完了し、住民への被害もありません。ノロの回収は後から来た特別祭祀機動隊に任せましたので後からこちらに送られてくるよう手配しておきました。......報告は以上です」
「そうか、ご苦労......」
「いや、待て!」
突然、鎌府学長が声をあげ、私の方を鋭い視線で睨みつけていた。何かわからないことでもあったかな?
「貴様は確か、紫様を襲撃した逆賊二人の捜索の任に当たっていたはずだ!そっちの捜索はどうなっている!」
「......」
「何を黙っている?さっさと答えろ!」
はぁ〜......せっかちなんだからこの人は......。でも、話そうと思ってたし、この際話しちゃおう。
「そっちの捜索は難航してます。一度足取りが分かって接触しようとしましたが、その際に今回の荒魂討伐の任が飛び込んできてしまった為、今回はそちらを優先しました」
「優先だと......?そんな任務どうだっていいだろう!貴様が優先するべきなのはその逆賊どもをさっさとここに連れ戻すことだろう!貴様らは紫様に危害を加えられて何とも思わないのか!この役立たずどもが!!」
「っ!......」
その鎌府学長の発言には流石の私でもカチンときた。私達だって紫様が襲われて何も思っていないわけじゃない。むしろこれまでに無いほど力を入れて捜索しているほどだ。でも、それと私達親衛隊の使命は関係ない。いくら逆賊の捜索をしていても、人々が危険な目に遭いそうならばどこだろうと荒魂討伐に向かう。それが私たちのもう一つの使命なんだ。今の学長の発言は私たちの使命を侮辱したようなものなんだ。......誰でも頭にくる。......カチンと来たのは真希さんや寿々花さんも同じみたいだけどね......。夜見さんは表情が変わらないからよくわからない。
「じゃあ鎌府学長は......人々が荒魂に襲われていたとしても無視しろと言いたいんですか?」
「っ!?何を......」
「おい、紫音!」
真希さんの制止の声にも私は耳を貸さなかった。
「確かに捜索も大事ですよ?ですが、それ以前に私達は刀使です。人々が荒魂に襲われているならどこだろうと駆けつけて祓う。例えどんな任があろうと......。学長の今の発言は......とても元刀使の言葉とは思えませんね?荒魂討伐を......それも原宿という人々がたくさんいる場所の荒魂討伐の任務を”そんな任務”扱い......。学長......貴女は本当に刀使だったのですか?」
「!!!貴様っ!!誰に向かって口を!!実験体の分際でっ!!!」
「実験体?......ふふ、ご冗談を。私は実験体になった覚えはありませんよ?」
「なっ!?どう言うことだ!!」
激情した学長は、私の言ってる意味がわからなかったのか、隣にいる寿々花さんに尋問した。
「紫音の言ってる事に間違いはありませんわよ?紫音は私たちのようにノロを体内に注入はしていません。これは、本人が決めた事ですわ」
「な、何故だ!親衛隊はノロを体内に入れる事を全員が受け入れていると思っていた。......なのに何故貴様だけ!!」
何故って聞かれてもな〜......。別に変な理由もないんだよね......。強いて言うなら......。
「使う理由がなかったからですよ?」
「なに!?」
「使う理由が私にはないんですよ。別に今の状態でも私は十分やっていけてますし、問題ないんですよ。......それに」
「......まだ他にあるのか?」
「私......注射って苦手ですし?」
「「ぷっ......」」
あ、真希さんと寿々花さんが笑った。って言うかよく見ると、紫様も何故か口角を少し上げて笑みを浮かべてるし、夜見さんまで何故かこっちに来て頭を撫でてくる始末だ。うん......そうなんだよね。その実験に参加しなかったのも、注射があまり得意じゃなかったからなんだよね......。
「ふ...ふざけるなぁ!!!」
「鎌府学長、もういい......下がれ」
「っ!?......ですが!」
「下がれと言っている」
「〜〜〜!......失礼しました」
鎌府学長は去り際、私たち親衛隊に向けて殺意じみた視線を飛ばして来たけど、意にも介さないで無視した。はぁ〜、やっと静かになった......。と言うかあの人はなにしに来てたんだろ?
「はぁ......」
「大丈夫?舞衣?あの人いつもあんなだから、初めて会うと少し怖いよね?」
「もちろんそれもあるけど......それよりも紫音ちゃんがあの人に向かっていろいろ言ってた方が怖かったよ......」
「「全く(ですわ)だ」」
そっち?別に私からしたら今は言いたいこと言えたからスカッとしてるんだけど?
「でもあの人は私たちの悪口言ったんですし、任務のことも酷く言ったし、言ってよかったって今でも思ってますよ?」
「だからってあれは言い過ぎだろう......。はぁ...でも、僕も少し胸が軽くはなってるかな?」
「私も同感ですわ。あの言い分は学長といえど不躾ですわ。私も胸がスッとしてますわ」
「......」
皆さんそれぞれ言いたいことを普通に言っていた。やっぱり皆さんもあの学長の発言には腹を立ててたんだね......。
「そういじめてくれるな。一応私の後輩なんだからな」
「出過ぎた真似をしましたね。すみません」
「まぁ良い。それよりも今後のことなのだが、お前たち親衛隊はしばらくあの二人の捜索には加わらなくて良い」
「?どう言うことでしょうか?」
捜索に加わらなくて良いと言う紫様の発言に意味がわからないと言わんばかりに首を傾げた私達。
「先ほど鎌府学長に頼まれてな......。今後の逆賊の捜索は鎌府の生徒が行うと......」
「鎌府が......ですの?」
「ああ、何か鎌府学長にも考えがあると思い、頼んだのだ。だから、しばらくは捜索には加担しなくて良い。親衛隊は通常の業務に戻るように......」
「「「「はっ!」」」」
「それにしても......芹代さんには驚かされましたね......。学長に向かってあんなことを口走るなんて......」
「そうですわね......。あの子は普段からあまり緊張とかもしてなさそうですから、意外と肝は座っているのかしら?」
「はは、でもそれも紫音らしくて良いじゃないか」
「傑作だったのは、紫音があれだけ頑なに断ってたノロの体内注入の断ってた理由ですわね......」
「ふふ......注射......でしたね?」
「ああ、やっぱり普段は頼もしいくらい親衛隊を背負ってる立派な刀使だけど、そう言うところは......まだまだ子供だね?」
「ええ、何と言うか......可愛らしかったですわ」
「そうだね......」
次回【沙耶香の本音】
お楽しみに!