凍て刺す零氷の刀使   作:レイ1020

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少しずつですが、面白い場面に近づいて来ましたね。



紫音達に告げられた鎌府の刺客。その正体とは?


沙耶香の本音

 

 

 

「紫音ちゃん......さっき言ってた実験体って......どう言うことなの?しかもノロって......」

 

 

 

「あ〜......」

 

 

 

局長室から出た後、舞衣から当然と言えば当然のことを聞かれた。さすがにあの場で聞くのは躊躇われたのか何も言わなかったけど、さすがに聞かなかったことにはできないよね......。

 

 

 

「さっき学長が言ってたことは事実だよ。親衛隊は今折神家が研究しているノロの人体への影響もとい強化を調べるために被検体になってるの。世間には公表してないけどね?」

 

 

 

「そ、そんな......それってすごく危険なことじゃ......。ってことは、紫音ちゃんも?」

 

 

 

「私はなってないって。さっきも言ったけど、私注射苦手だからさ......」

 

 

 

「......」

 

 

 

私のその答えに何か思い悩んでる様子の舞衣。何か言いたいことでもあるのかな?

 

 

 

「......本当にそれだけが理由なの?」

 

 

 

「......」

 

 

 

「私ね?紫音ちゃんが注射苦手なの初めて知ったけど、だからってそんな理由で紫音ちゃんが断るとは思えないから......」

 

 

 

その言葉に一瞬私の胸がドキッ!っとなった。正直図星だったからだ。前に舞衣に隠し事はできないねって言ったけど、これじゃ私も人のこと言えないね......しょうがない。私は静かに口を開いた。

 

 

 

「うん、当たり。実はさ?結構前に一度どうしてもって言うからノロを体内に入れたことがあったの。そうするとその時の検査の人曰く、何かしら体に変化が現れるはずなんだって。体の体温が上がったり、脈拍が上がったり、身体機能が上がったりとか......。でも、私にはその変化が全く出なかったんだよね」

 

 

 

「......?どう言うこと?」

 

 

 

「私にも検査の人にもわからなかった。なんて言えばいいんだろ?一瞬ノロみたいのが体の中に入っていく感覚みたいなものはあったんだけど、すぐにそれはなくなっちゃったんだよ。何と言うか......私の体の中ですぐに溶けてなくなっちゃったみたいな感じで......」

 

 

 

「拒絶反応みたいのが出たわけじゃなかったんだ?」

 

 

 

「うん全く。そんなわけで結局その原因がわからない以上打っても無駄だって言われたから私は被検体になることを免れたの。分かった?」

 

 

 

そう聞くけど、舞衣はすぐには納得できなそうだった。当たり前な気もするけどね、こんな話理解に苦しむよね......。でも、舞衣はこれだけは言ってくれた。

 

 

 

「理解が追いついてないけど、私は紫音ちゃんがノロの被検体になってなくて良かったと思ってる。これからも、ノロの力には頼らないでもらいたいかな?」

 

 

 

「はは、もちろん!」

 

 

 

私たちはそのまま、それぞれの部屋に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫様襲撃事件から1週間が過ぎた。私達親衛隊は、紫様の命令によって、襲撃犯二人の捜索には参加していなかった。理由は鎌府学院所属の刀使達が捜索に当たると鎌府学長直々に紫様に懇願して来たからだ。紫様もその方が効率が良く、親衛隊を別の任務に移せるメリットがあった為それを承諾し、今に至るってわけ。

 

 

 

親衛隊は現状としては紫様からの新たな指示が出るまでは今まで通り、通常の業務につくようにと言われている。だから私も今は荒魂の討伐や書類の整理、記入とかをして日々を過ごしていた。

 

 

 

そんな時だった、ある屋敷の一室に入っていく鎌府学長と一人の鎌府の刀使と見える私と同じくらいの女の子を目撃したのは。あれ?......あの子って......。

 

 

 

「確か......可奈美と御前試合の一回戦で戦った......糸見沙耶香さん......だっけ?」

 

 

 

少し変わった剣筋をしてたから覚えてたんだけど、覚えてた理由はそれだけじゃなくて昨日のあの一件で私は彼女のことをしっかりと覚えることができたんだ......。任務の失敗で......だけどね......。

 

 

 

さっきも言ったように、今可奈美と十条さんを捜索しているのは鎌府の刀使だ。そして指揮権は鎌府学長が握っている状態。だから最初、私を含めた親衛隊は大量の鎌府の刀使達を使って広範囲にわたって捜索させているのかと思ってたけど、実際には違くて、鎌府学長は何らかの方法で可奈美達の居場所を突き止め、そこに一人の刀使を強行突入させると言う何とも無謀にも近い作戦を実行していたんだ。その突入した刀使って言うのが、糸見さんだったってこと。

 

 

 

「一人で突入なんてして......いくら何でも無謀すぎだよ......」

 

 

 

鎌府学長は糸見さんに絶大な信頼を寄せてたみたいだけど、それでも一対二では分が悪い。それは鎌府学長も承知の上のはずなのに......何でこんな作戦に出たのかいまだに分からなかった。結局その作戦は失敗に終わり、糸見さんは何の成果も上げられないままそのまま帰還して来た。何でも、初めは奇襲を成功して優勢だったんだけど、徐々に二人のペースに飲み込まれていき、最終的には可奈美に一回戦の時のように御刀を手から弾き飛ばされ、戦闘不能になったことが任務失敗の原因だったみたい。......ってことは?

 

 

 

「また鎌府学長のお叱りを受けるのかな〜?......やれやれ、そもそも学長がそんな作戦立てなければこうはならなかったと思うのに......。理不尽すぎる気がする......」

 

 

 

糸見さんのことを案じると同時に、妙に話の内容が気になった為、私は気づかれないようにそっと扉に近づき、扉を少し開けて中を覗いた。

 

 

 

「沙耶香......今回の任務、何故失敗した?」

 

 

 

「それは......私の力が足りなかったからです......」

 

 

 

「違う。今回の任務の失敗、それは【無念夢想】がまだ未完成だったからだ!」

 

 

 

「未完成......?」

 

 

 

その学長の言葉に私は首を傾げた。未完成ってどう言うこと?【無念夢想】は余計な思考、邪念、感情などを廃して自分の身体能力を高める技だけど、未完成ってことはないはず。既にその技はそれ以上の芸当ができない技だと本にも載っていた。それに、【無念夢想】には身体能力の強化と引き換えに思考力と判断力が下がると言うデメリットもある為、無闇に使うのは危険とされているのに......糸見さんはどうして......?

 

 

 

「そうだ!未完成だ。まだお前には......感情があり、”人間らしさ”が残っているのだからな」

 

 

 

......はい?この人今とんでもないこと言った気がするけど......気のせい?

 

 

 

「人間らしさ......」

 

 

 

「これを投与すれば、お前は紫様のために生き、紫様のために死ぬ人形となれる。沙耶香、お前は私の希望なのだ。お前ならばきっと、紫様のためになる道具になれる。そして未完成だった【無念夢想】も完成し、あんな失敗作どもなど手が届かないような刀使になれるのだ!さぁ、沙耶香!」

 

 

 

「っ!いい加減にーーー」

 

 

 

流石に我慢の限界だった私は、部屋に入って止めようとしたが、その後の糸見さんの行動によってそれはせずにすんだ。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

「なっ......さ、沙耶香?」

 

 

 

「え......?私......何で?」

 

 

 

糸見さんは、学長が打とうとしたもの......ノロのアンプルをペイッと手で弾いた。それによって溢れたノロのアンプルは床にコロコロと落ち、私の足元まで来た。......バレてないみたいだし、一応回収しておくかと私はアンプルを拾い上げ、ポケットの中に入れた。

 

 

 

「どうした沙耶香?怖がることはないぞ?少しの辛抱だ。すぐにお前は感情というものが無くなり、なににも動揺することのなくなる人形となれる。怖がることなどないのだぞ?」

 

 

 

「......や」

 

 

 

「......?」

 

 

 

「いやっ!私、人形になんてなりたくない!感情を失って人じゃなくなるなんて嫌っ!!」

 

 

 

「!!待て沙耶香!どこに行くの!戻って来なさい!」

 

 

 

そう叫んだ糸見さんは、そのままこっちに向かって走って来た。どうやら、糸見さんは本心で学長に付き従ってたわけじゃなかったみたいだね......。

 

 

 

「っと、ここじゃ邪魔かな?」

 

 

 

私は糸見さんの邪魔になるかもと思い、そっと扉から離れ、扉の向かい側の部屋の中に入って様子を見る事にした。糸見さんは部屋から出てくると、そのまま何処かに行ってしまった。続いて学長が出てくると、糸見さんを探す為こちらもまたどこかに走っていってしまった。

 

 

 

「糸見さん......逃げ切れると良いけどな〜......」




次回【月光下でのやり取り】



お楽しみに!






【ノロのアンプル】
ノロを少し改良し、人の体内に入れる事で人体を強化できるようにしたものが入ったアンプル。現在もその研究が行われている。始めの被検体として親衛隊の真希と寿々花、夜見に投与された。結芽も投与されたが、他の三人とは違い、不治の病の進行を遅らせ、克服すると言う目的があった為、その力に頼ることは一度もしてない。紫音に至っては、そもそも注射が苦手な為、投与する以前の問題だった為見送られる事になった......とされているが、実際は紫音の身体にノロを入れてもなぜか何も変化が現れてこなかったため、被検体に適してないと判断されて見送られた。
紫音はノロの力を得ることは否定的に見てるが、他の四人がノロを投与した事に関しては認めている。紫音曰く、親衛隊の皆さんはちゃんとした理由があってその力を受け入れたんだから私がとやかく言う資格はない、とのことらしい。
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