舞衣達と別れた翌日、私というか親衛隊が急遽執務室に呼び出された。呼び出された理由は、今日の未明に正体不明の戦闘機がS装備......ストームアーマーを積んで伊豆方面に飛んで行くのが目撃されたからだ。今私たちはその戦闘機というのをオペレーターにモニター越しで見させて貰っていて、これの動向を探っていた。
「普通、ストームアーマーというのは許可なく持ち運んだり、使ったりはしてはいけないはずだ。管理を任されていて、所持をしているのは折神家か刀剣類管理局のみのはず......」
「折神家でも、刀剣類管理局でもストームアーマーの排出は許可してないと先ほど連絡がありました......。となると......この戦闘機は......」
「舞草......しか考えられませんわね?」
寿々花さんのその一言に私たちは同時に頷いた。触れてこなかったけど、舞草っていうのは折神家に反旗を翻すレジスタンスのことだ。でもその素性は謎に包まれていて、基地の場所もわからなければ隊員の詳細な情報もわからないのが現状だ。少ない情報でわかるのは、舞草は何らかの理由でストームアーマーを所持することに成功していることと、舞草には長船女学園所属の刀使が多くいるということだけだ。
「伊豆方面ってことは、そっちに舞草の基地があるってことじゃないんですか?」
「その可能性も考えて調べてみたが、それらしい建物は見つからなかったみたいだよ」
「そうですか......」
もしかしたらって思ったけど、そんな簡単に分かったら苦労しないよね......。でも、じゃあ何でこの戦闘機はストームアーマーを乗せて伊豆に?
「先ほどの知らせでは、どうやら襲撃犯の二人がその伊豆に向かって移動を開始しているそうですわ。恐らく、伊豆でそのストームアーマーを受け取るために向かった舞草の刀使と合流するためでしょうね」
「舞草に匿ってもらおうとしてるってことですね?」
「そうなる。そうなっては面倒だということもあって、今回僕たちはここに呼ばれたんだ。伊豆に向かっている逆賊どもの捜索に向かわせるためにね」
そっか、可奈美達伊豆に向かってるんだ。糸見さんとの騒動の後、音沙汰なかったけど無事ではあったみたいだね。
「どんな作戦で捜索にあたりますか?」
「まず私と真希さんで逆賊の捜索にあたりますわ。その間、夜見さんと紫音には舞草の方の捜索に当たって欲しいのだけど......」
「承りました」「わかりました!」
「それと......今回は場合によってはノロの力を使うかもしれない。相手は子供とは言え、御前試合決勝まで勝ち進んできた手練れだ。最悪の場合は使わせてもらう。紫音は関係ないが、二人はくれぐれも無理に使って体に負担をかけるのは控えてくれ」
「ええ、もちろんですわ。ですが、それは真希さんもですわよ?」
「同感です。獅童さんも気をつけてください」
「もちろん、僕も体を壊したくはないからね」
ノロの力を使うのは精神や身体的にも負担が大きいっていうけど、皆さんがここまで言うってことはそうなんだろう。皆さんが気をつけて使うなら問題はないでしょ。心の中でそう私は決めつけていた。
「あ、ちなみに聞きますけど......結芽は?」
「「待機(だ)ですわ」」
「ですよね〜」
そんないつもの調子の無駄話をしつつ、私たちは捜索に向かうため、準備に取り掛かるのだった。
「では、これより別行動とする。僕と寿々花は襲撃犯達の捜索、夜見と紫音は舞草の捜索。各自何かあったらすぐに知らせることを忘れないようにしてくれ。じゃあ......行こう!」
数時間後、目撃があったとされる伊豆某所の山の中についた私たちは、すぐさま任務に移った。真希さんと寿々花さんは可奈美と十条さんの捜索、私と夜見さんで舞草の人の捜索をする。もちろん早く終われば片方に加勢するつもりだよ?その方が早く終わるし。それを決め込み、私たちはその場で別れた。さて......早いとこ見つけますか!
「芹代さん、これから
「わかりました」
真希さん達と別れた後、私は夜見さんの力を使って舞草の刀使の捜索を行っていた。夜見さんが、自身の御刀で自分の腕をすっと斬ると、そこから黒に近い色の血が流れ出てそれが地面に落ちるとともに小さな蝙蝠のような荒魂が数多く出て来た。この荒魂は目と鼻に長け、感覚も鋭いため捜索にはうってつけの荒魂なのだとか。そして、対象の居場所がわかると主人である夜見さんの元に情報が届くというシステムにもなっている。私の役割は、夜見さんが見つけた舞草の刀使を拘束する事だ。もちろん穏便には済ませたいとは思ってるけど、抵抗して来たら......しょうがないよね?
「っ......反応ありです。芹代さん、南南東に刀使と思わしき反応が出ました。直ちに向かってください。私もすぐに後を追いますので......」
「了解です!何かあったら連絡しますので!」
夜見さんにそう言い残して、私は早速その場所まで向かった。しばらくして、木々の間から一人の刀使が出てくるのを私は捉えた。それを確認した私は、その刀使の元へ行き、話を聞いてみることにした。
「っ!?だ......誰!?」
「どうも〜、こんばんは」
「えっ......?その服......親衛隊?」
「そ!親衛隊第五席、芹代紫音、よろしく。貴方は?」
「私は、調査隊の六角清香です」
六角さんと名乗ったその刀使は、平城学館の制服を着ていた。舞草の刀使は長船の生徒が多いって聞いてたけど......。彼女は違うのかな?でも......それなら何でこんな山の中にいたのかも気になるし......。しかも......。
「調査隊?確か赤羽刀の回収とか調査をメインに活動している隊のこと?その調査隊が何でこんな山の中にいるの?」
「隊長のミルヤさんによると、ここら辺に赤羽刀が大量に発見されたと聞いたらしいので回収しに来たんですけど......私、みんなと逸れちゃって......」
「あ〜......なるほど......」
いわゆる迷子ってやつね。でもとりあえず、舞草で無いことは確かみたいだね。でも、困ったな......。
「でも、ここまで来るまで誰も見かけなかったし......他の調査隊がどこにいるかは私にも......」
「......そうですよね。......?そう言えば芹代さんは何でここにーーー」
「あ〜〜!やっと見つけたよ清香〜!も〜、急に逸れないでよ!」
「っ?」
急に聞こえた私たち以外の声に私はすぐに蒼月に手を掛けた。そして声のした方をゆっくりと見てみると、そこにいたのは......。
「美炎さん!よかった......。逸れた時はどうしようかと思ったけど......」
「ほんとだよも〜。それで清香は............え?」
「......美炎?」
草木をかき分けて来たせいか、制服の所々に葉っぱや枝がついた状態でいたけど、一年前よりも一際身長が伸びて体も引き締まって成長が感じられる美炎がそこにはいた。
「もしかして......紫音?」
「久しぶり、美炎。元気にしてた?」
「うん......元気にはしてたかな?」
そう言う美炎だけど、見た感じ今はそんな風には見えなかった。なんて言うか、妙に疲れ切ってる様子に見えた。
「ん?どうかした、美炎。なんか疲れてない?」
「うん......実はさ?」
美炎が聞かせてくれたのは、ついさっきのことだった。調査隊が、赤羽刀の調査のためにこの山の中に入って、赤羽刀を探していた時、偶然にもそこで真希さんと寿々花さんと遭遇したみたい。それだけなら問題ないんだけど、何故か真希さんが調査隊を逆賊の仲間と勘違いをしていきなり斬りかかって来たみたい。寿々花さんは調査隊のことは知っていた為、加勢しなかったけど、真希さんを止める術がなかったみたいで、真希さんが満足するまで見守っていたらしい。結局調査隊の隊長の木寅ミルヤさんが説得するまでずっと真希さんの攻撃を受けてたみたい。
そりゃ......疲れるのもわかるね。私だって疲れそうだもん。
「なんか......ごめんね?」
「いえ......芹代さんが謝らなくても......」
「そうだよ!紫音は悪いことないよ。悪いのはこっちは逆賊じゃない!って言っても聞く耳持ってくれなかったあの人だよ!それに勘違いだって分かっても謝りもしないし、妙に上から目線だし、本当に腹が立ったよ!」
「あ〜......」
美炎は相当ご立腹みたいだね。普段は真希さんすごく優しくていい人なんだけど、寿々花さんによればそれは親衛隊だけにする態度なんだって。他の人たちには基本的に冷たい態度をとることが多く、妙に上から来ることもあってあまり刀使からもいい評判を聞いてなかった。真希さんも私たち以外の人にもいつものように接してくれたら評価変わると思うのにな〜。
「あれ?紫音、後ろから誰か来るけど?」
「え?......あぁやっと来た。夜見さーん!」
後から合流すると言って先に私を行かせた夜見さんがようやく追いつき、私と合流して来た。
「芹代さん......反応があった刀使と言うのはその方達ですか?」
「そうみたいです。彼女達は調査隊でここに赤羽刀の調査にきたらしいです」
それを聞いた夜見さんはゆっくりと視線を美炎達に向けた。視線を向けられた美炎達は少し肩を強張らせながら、緊張していた。
「そうですか......。では......あなた方の隊長の元に案内して頂けませんか?舞草の情報を......集めたいので」
「舞草......?よくわかんないですけど、わかりました。こっちです」
理解し切れてないみたいだけど、美炎は承諾して自分が来た道を戻って行った。その後を六角さんと夜見さん、私の順で追っていった。
次回【伊豆での再会②】
お楽しみに!