調査隊と二人のやりとりを影から見てた私と夜見さんだったけど、さすがに”二人を逃す”と言う単語が聞こえてきてしまった以上、出ないわけにはいかなかった。だから私は夜見さんに合図を出して、みんなの前に姿を現した。
「美炎〜?私たち置いてくなんてひどいじゃん?」
「し...紫音......」
私がそう言うと美炎は肩をビクッと震わせた。そんな怖がらなくても良いのに......。でも、確かに今の私は笑ってるけど......本心では怒ってるから無理ないかもしれないね。
「紫音ちゃん......」
「久しぶりだね可奈美。あの時以来かな?」
「ちっ......。面倒な奴に会った......」
すぐさま臨戦態勢に入った十条さんだけど......そんな焦らなくても......。
「調査隊......。先程、その二人を逃すと聞こえましたが......気のせいですか?」
「気のせいでは無い。そもそも私たちはお前達親衛隊の手先では無い。独立した隊である以上、親衛隊の指示に従う義理はない」
「......反逆行為ですよ?そうなれば......実力行使に移るのみ......ですが」
「それも......致し方ないですね......」
そう言い放ち、夜見さんも木寅さんも御刀を抜き始めた。あ〜......やっぱりこうなるのね......。
「一応聞くけど......大人しく来てもらう気は無い?」
「何度も言わせるな!無い!」
「......相変わらず強情なこと。......可奈美は?」
「......ごめん。無い...かな?」
この反応はわかってたことだけど......やっぱりちょっと......悲しい。でも......しょうがないよね?私も、ゆっくりと蒼月を抜き、穂先を二人に向け【写シ】を張った。
「夜見さん、木寅さんをお願いします。後は私が引き受けます......」
「......わかりました。ご武運を......」
夜見さんを木寅さんに任せておけば、後は私が残りを対処すれば問題ない。後少しもすれば真希さんと寿々花さんも来るしね。
「さて......それで?他の皆さんはどうします?私と......事を構えますか?構えないのであれば退いてください。二人を捕らえないといけないので......」
「紫音!可奈美は紫音の友達でしょ!それなのに何でそんなひどいこと言うの!?さっき親衛隊の人に聞いたよ!親衛隊は可奈美達を駆除するって!紫音もそんなことするの!?」
声を荒げて私に訴えかける美炎。駆除......そんなつもり全く無いし指令も受けてないよ?って事は真希さん達......勢いに任せて言っちゃったな〜?......はぁ、全く。
「駆除する気は無いよ。もちろん連れて帰ってもそうするつもりは無い。だから安心して?」
「......で、でも!それでも捕らえるなんて!そんなのおかしいよ!」
「おかしいって思うんだったら......友達として言うよ。美炎が私を止めなよ?もちろん調査隊の人たちと協力しても良いよ?」
「そ、そんな......」
「それで?どうするの?」
畳み掛けるように調査隊の人たちに問いかけた。でも、どうやら答えは出てるようで......。
「二人は......私たちが守る!」
「やらせ......ません」
「私も同感よ......」
「ったく......めんどくせ......」
「......こう言うわけです。わたし達の気持ちは変わりませんよ?」
調査隊全員御刀を抜いて【写シ】を張った。まぁ......わかってはいたよ......。また友達と争うのか......嫌だなぁ......。
「わかりました。なら......容赦は......しませんよ!!」
「っ!!」
もう吹っ切れた私は、容赦無く攻撃の標的にした瀬戸内さんの懐に【迅移】で入り込み、蒼月を腹部に向かって思いっきり突き刺した。突き刺された瀬戸内さんは、【写シ】が剥がれ、そのまま膝をついていた。
「え............!?ちぃ姉!!」
「反応が遅いよ美炎......。悠長にしてると一瞬で勝負ついちゃうよ?」
「っ!瀬戸内智恵!大丈夫ーーー」
「......貴女の相手は......私です」
「ぐっ......」
木寅さんが一瞬私の方に気を取られた隙に、夜見さんは自分の腕を斬り、荒魂を発生させ攻撃を始めた。夜見さんの荒魂はただの荒魂では無く、夜見さんの手足のように自在に動くため、対処が難しいんだ。だから、木寅さんでも攻略するには時間がかかる。......だからこそ、私はこっちに集中できるんだ。
「木寅さん!!」
「衛藤可奈美!十条姫和!二人は先に行け!ここは私たちが何とか食い止める!」
「でもっ!!」
「いいから行け!!」
「......ごめんなさい。行くよ!姫和ちゃん!!」
「......ああ」
木寅さんが言うと同時に、二人はこの場から逃げようとした。......そんな事、させると思ってんの?
「逃さないよ.............!?」
「紫音!!」
【迅移】を使って二人を追いかけようとした時、横から美炎が御刀を振り下ろしてきたため、それを中止して体をずらしてそれを躱した。
「(二人は......もう行っちゃったか。でも良いか。後は真希さんや寿々花さんに任せよう。だから今は......)」
「よそ見してる場合なの!!」
「......っと」
美炎が私に隙ができたのかと思って斬りかかってきたけど......別によそ見してても対応はできる。むしろ逆に、攻撃してきた美炎の方にわずかな隙が出来ちゃってた。
「甘いよ?......美炎」
「!!?」
美炎はないが起こったのかわかってないみたいだった。気づいた時には仰向けになって地面を転がってたんだから。簡単に言えば、私が美炎の剣技を躱した後、その勢いを利用してそのまま上手投げをしたんだ。あまりにもその過程が早かったのか、美炎には投げられら感覚すらなかったみたいだった。
「一年前よりは確かに強くなってるみたいだけど......まだまだだね?」
「くっ......」
「さて......七之里さん、六角さん。貴女達も早くかかって来てはどうですか?このままだと......全滅しますよ?」
美炎を尻目に、ふと私は残りの二人、七之里さん、六角さんに視線を向けた。
「ちっ......あたしは刀使とやり合う趣味はないってのに......」
「それは同感ですね?私だって本当なら荒魂以外の人に御刀は向けたくないですよ」
「......今向けてるじゃねぇか」
「それは貴女達が悪いんですからね?さっき言いましたよね?私と事を構えますかって?それで貴女達は首を縦に振ったんですから私も御刀を抜くしか無いじゃないですか?」
「「「......」」」
美炎も含めた三人が口をつぐんでいた。自分で言うのも何だけど、私は無意味に人に御刀は向けない。いわゆる人畜無害ってやつ。向けるとすれば任務の時、自分の身を守る時立ち合いの時、そして......私と敵対している時のみだ。敵対してても、相手が何も抵抗しないのであれば別に私は何もしない。前に真希さんにそのやり方は甘いって言われたことがあったけど、こればっかりは妥協できなかった。さすがに無抵抗の人を斬るほど私は鬼じゃないからね......。
「美炎?確かに私は可奈美とは友達だよ?でもね......だからって何でもかんでも許せると思ってたら大間違いだからね?あの二人は紫様を襲ったの。それを看過できるほど私たちは甘くは無いからね?」
「紫音ちゃん......」
「......六角さんはどうする?何もしないんだったら私も六角さんには危害は加えないけど?」
「わたしは......」
六角さんは、すでに泣きそうな顔になってたけど、少しして何か決心がついたのかさっきまでの顔とは違って一人の立派な刀使の顔になっていた。
「わたしも......貴女と......芹代さんと戦う!」
「ふぅ......わかった。......できれば戦いたくはなかったけどね......」
「行くぜぇ!!」
六角さんが御刀を抜くと同時に七之里さんが仕掛けて来た。両手に持った二刀の御刀を巧みに利用し、私にいくつもの斬撃を浴びせて来た。動きだけでもかなり速く、攻撃も正確さがある。少なくとも、今の美炎よりも強いかも知れない。二刀流の刀使と戦った経験はあまりなかったけど......なかなか楽しめそうじゃん!
「はぁっ!!」
「わっ!と......」
そんな事に夢中になってると、今度は六角さんが私に向かって攻撃をして来ていた。七之里さんの攻撃を捌きながら六角さんの攻撃を何とか躱した私だったけど、さすがに二対一だと分が悪い。......ここは、あんまり時間かけない方が良さそうだ......。それにしても......六角さんも結構強いな......。
「(使おう......【迅移】!)」
「なっ......消えた?」「何処に......?」
「......ここだよ?」
「「!!」」
【迅移】を使って、私は七之里さんの背中越しにぼそっと囁くようにそう言った。そして......そのまま容赦無く七之里さんの【写シ】を剥がした。
「ぐあっ!!」
「七之里さん!!」
【写シ】を剥がされた七之里さんは、瀬戸内さんのように片膝をついて肩を上下させていた。でも、しばらくは立てないでしょ?
「はぁぁっ!!!」
「っ......」
七之里さんを尻目に、今度は六角さんが私の間合いに入って来て、攻撃を浴びせて来た。それを難なく受け止めた私だったけど、その際少しだけ表情が歪んだ。
「(重っ!華奢な体してなんて重い一撃してるの!?)」
六角さんのその予想外の重い一撃に私の手は少し痺れていた。やっぱり......この子は強い。
「はぁっ!やぁっ!せいっ!」
「......」
嵐のように迫ってくる斬撃を私は蒼月を繰り出して相殺していった。でも......その一撃がやはり重いため、いつもよりも力を使っていることが自分でもわかっていた。
「(一番頼りなさそうだと思ってた子だったけど......もしかすると、調査隊の中で一番強いかもねこの子)」
「まだまだ......!」
私と六角さんとの戦いは、まだまだ続きそうだった。
次回【奇策の一手】
お楽しみに!