「まだまだっ!!」
「っ......」
私と六角さんの戦いは続いていた。私が六角さんのことを舐めてたって言うならそれまでなんだけど、正直ここまでとは思ってなかったんだ。思いもしなかった強者に私の口角がすっと上がっていた......。
「......面白いね?」
「!?......な、何を......?」
「いや〜、久しぶりに面白い子に会ったって思ってさ?六角さんって結構強いんだね?これならもう少し......力出せそう!」
「え!?......じゃあ、今までのは............!!?」
六角さんが何かを言い切る前に、今まで受け手だった状況を一変させて、攻め手に移った。攻め手に移った瞬間、私は六角さんの剣技を後ろに流すように捌き、六角さんの態勢を崩した。それが予想外だったのか、重心を前に移していた六角さんは、その勢いを殺すことが出来ず、私とすれ違うようにして転んだ。
「少しだけど......本気出すからね?」
「くぅ......」
すぐに立ち上がって態勢を立て直した六角さんだったけどそれだけで、構えは隙だらけだった。その六角さんに向かって、楽しませてくれたお礼として、私は久しぶりにあれを使った......。
「(第二段階【迅移】!)はっ!!」
「............え?」
目の前の六角さんは、何が起こったのかわからないって顔をしてその場に崩れ落ちていった。私は【迅移】を使い、六角さんの間合いに入った後、蒼月を横薙ぎに一閃し六角さんの御刀を弾き飛ばした後、そのまま蒼月の一太刀を六角さんに見舞ったんだ。その間およそ一秒にも満たなかったかも知れない......。
「「「「......」」」」
六角さんを含めたその場にいた人全員が驚愕と共に怪訝な表情をして私のことを見つめていた。無理もないよね......気づいた時には勝負ついちゃってたんだから。私もまさか第二段階【迅移】まで使うとは思ってなかったからなんて反応したら良いかわかんないんだけど......。ってか私の場合、【八幡力】と併用して使ってるから速度も力も倍増してるから当然って言えば当然なんだけどね......。
「......美炎ちゃん」
「ちぃ姉......」
「私たち......あの子に勝てると思う......?」
「......無理かも。紫音は昔から強かったけど、まさかあそこまで強くなってるとは思わなかったよ......。正直言って......勝てない......」
美炎はそう言いながらも、再び立ち上がり私を見据えていた。
「それでも......紫音は......わたしが止めないと!友達のわたしが止めなくちゃいけないんだ!勝てなくても......それでも戦っていればきっと......なせばなるんだから!」
「その使い方どうなのかな〜って思うんだけど......久しぶりに聞いたね。美炎のその口癖。......良いよ。相手してあげる!」
「行くよ!紫音!!」
私と美炎の第二ラウンドが始まった。
「くっ......」
「......」
わたし、木寅ミルヤは芹代紫音を他の四人に任せ、皐月夜見をわたし一人で対応するという判断を下し、今戦っている。こちらの戦いに夢中な為、後ろの状況はわからないが、さすがに四対一であれば負けることは無いはず......そう思っていた。......だが。
「......私一人を抑えれば勝てるとお思いなのであれば......それは間違いですね......むしろ貴女が芹代さんを相手にした方が良かったかも......しれませんよ?」
「......何を言ってい......!?」
皐月夜見のその言葉に一瞬嫌な予感を覚えたわたしは、とっさに後ろを振り返った。そこで見たのは......芹代紫音が瀬戸内智恵の胸元に御刀を突き刺してる光景だった。
「瀬戸内智恵!」
「......貴女の相手は......私です......」
即座に助けに入ろうとしたわたしだったが、皐月夜見に邪魔をされ、それは叶わなかった。
「(助けに入れない以上、一刻も早く皐月夜見を倒さないと......まずい)」
現状、それしか打開する手はなさそうだった。最終手段として、
「あの四人では......芹代さんには敵いませんよ?」
「お前は何もわかっていない。調査隊は、たった一人の親衛隊に打ち崩されるほどやわな刀使は一人もいない!調査隊を舐めないでほしい」
そう言いながら、皐月夜見が操る荒魂を悉く倒していったわたしだったが、倒しても倒しても皐月夜見がまた新たな荒魂を出す為、キリがなかった......。
「......何もわかってないのは貴女達です。芹代さんは......親衛隊の中でも一、二を争うほどの実力者......たとえ調査隊が四人束になってかかったところで......彼女には......勝てない。......見てください。あれを見てまだ同じことが言えますか?」
「何を............!!?」
わたしは......その光景を見て......目を疑った。わたしの目の前で立っているのは、芹代紫音のみでその他の調査隊の四人はそれぞれ膝を落として肩で呼吸している者と、地面を這いつくばって立ち上がるのもきつそうな者とで分かれていたからだ。それを見た途端に、先ほどの皐月夜見の言葉がリフレインした......。
『あの四人では......芹代さんには......敵いませんよ?』
「(あの言葉は決してわたしを惑わす言葉では無かった......ということか?)」
思わず唇を噛んだわたしだった。なぜ今になってそれに気づいたのかと。もしもう少し早く気付いていればそれなりの対応ができたかもしれない事実と、相手の真意を測ることが出来なかった自分の未熟さにだ。
「(こうなってしまった以上......もはや”さっきの手”がうまく行くことを祈るしか......)」
「......隙だらけ......ですよ?」
「!?しまっ......」
雑念が出てしまっていたせいか、構えにも心にも隙ができてしまったらしい。その隙を皐月夜見が見逃してくれるはずもなく、荒魂でわたしの動きを封じながらわたしの元に接近し、胸元を斬り裂いた......。
「ぐっ......」
「......これまでですね?」
膝をついたわたしを見下しながらそう言ってくる皐月夜見。【写シ】が剥がれ、もう一度張れるほどの体力ももう無かった。......万事休すか。そう思った時だった......。
皐月夜見の携帯が......鳴ったのは。
「はぁっ!!」
美炎と改めて対峙した私は、美炎の攻撃を捌いたり躱したりしながら戦っていた。美炎の実力は、普通の刀使の中では強い部類に入るのかもしれない。実際、校内予選でも準決勝まで行くぐらいだったみたいだしね。でも......。
「まだまだ甘いよ?」
「うっ......」
またも自分の攻撃が簡単に捌かれた事実に美炎は苦渋の顔をしていた。私はほとんど攻撃をしてない為全く疲れてないのに対して、美炎に至ってはすでに息を切らしていていつ【写シ】が使えなくなってもおかしく無い状態だった。
「......まだ続ける?私はこれ以上戦いたくないんだけど?」
「戦うよっ!紫音が可奈美を追いかけるっていうなら......わたしはいくらでも相手になる!......絶対に負けられない......可奈美やみんなを守るんだから......」
「......?」
息を整えてそう言った美炎だったけど......なんだろう?雰囲気が少し変わったような気が......。
「わたしは......負けない!!絶対にみんなを......守って見せる!!!」
「!!?」
目の前の美炎の変化に私は驚きを隠せなかった。それは他の調査隊の人たちも同じだった。美炎がそう叫ぶのと同時に美炎の身体の中から赤い炎のような闘気が溢れ出してきて、その闘気が美炎の身体中を守るようなベールへと変化を遂げ、美炎の周りを覆っていた。まとってる空気も妙に熱く、近づいただけで焼けてしまいそうなほどの熱量を持ってそうだった。......美炎に一体何が起こってるの?
「やぁっ!!!」
「っ!!」
いきなり攻撃を仕掛けてきた美炎。その速さと攻撃の重さは、さっきとは比較にならないほどの物だった。なんとか受け流すことはできたけど、それでも御刀を受け止めた時に走った痺れはいまだに取れていない。この痺れは、さっきの六角さんの時以上だった。
「(くっ......パワーは結芽と同じかそれ以上かも......)【迅移】!」
「はぁっ!」
「!?......まさか、ここまでとはね......?」
私は二段階【迅移】を使った。さっきまでの美炎だったら、何も出来ずに斬られて終わってたかもしれなかったけど、今の美炎は、そんな私の攻撃を自身の御刀を一閃して相殺して喰い止めた。......これは正直予想外だった......でも。
「......面白い。こんな戦い久しぶりだよ」
純粋にそれだった。最近はこんな息をつかせないほどの戦いは全くと言っていいほど無く、正直つまらなかった。だから、今は美炎には感謝してる。私の胸を踊らせてくれて......。
『ーーーほう?余と同質の者が現れるとはな?ーーー』
「......え?」
私は不意に周りを見渡してみる。さっき聞こえた
「(っ!?......さ、寒っ!何これ!?さっきまで美炎のおかげで少し暑いくらいだったのに......。何が......起こってるわけ?)」
急な寒気に思わず私は顔をしかめた。周りの様子も変化がないことから、気温が変化したわけでは無さそうだった。それに寒気の仕方も......なんだか、自分の体の中だけ、妙に冷気を纏った感じで留まっていて、私の体が氷みたいに冷たくなっている......そんな感じがした。
「(......それに、さっきから眼がおかしい......。前とは違って使っても無いのに勝手に【未来視】が起こる......。見たくも無いのに......)」
以前から度々出てきていた眼もなぜか出て来ていたけど、今回はいつもとは違った。普段であれば、眼をなんとかコントロールできているんだけど、今回はそのコントロールが出来なかった。抑えようとしてもどんどん情報が入って来て、不必要な未来をどんどん見せて来ていた。美炎の次の攻撃、太刀筋、速度、姿勢周りの状況それら全ての情報が一気に私の頭の中に雪崩れ込んできた。......次第にその情報量に私の頭が耐え切れなくなり、ひどい頭痛が私を襲った。
「うっ!!」
「......紫音?」
思わず私は膝をつき、気持ちを落ち着けさせた。美炎も私の異変に気がついたのか、心配そうな顔をして私の方を覗いていた。......心配かけちゃったね。
「だ......大丈夫。ちょっと頭痛がしただけだから......それよりも、攻撃しなくていいの?今の私......隙だらけだよ?」
「馬鹿言わないでよ!そんな状態の紫音を斬ることなんて出来ないよ!......っ!」
そう言った美炎は、御刀をしまって膝をついてる私のところに走って来た。それと同時にさっきまでの熱い闘気は消え去り、いつもの状態の美炎に戻った。
「ほら、掴まって......」
「全く......せっかくのチャンス逃しちゃって......。私を倒して可奈美達を守るんじゃ無かったの〜?」
「だからって......そんな無防備の状態の紫音を......友達を斬るほど私は修羅じゃ無いよ」
「......ありがとね」
その美炎の優しさに、身体中に熱がこみ上げてくるのがわかった。そして、さっきまであった身体の妙な冷たさと寒気、そして未来視はようやく治まった。頭の痛さは今もまだあるけど......どうやら......なんとかなったみたいだね。
「......芹代さん」
「夜見さん......」
私が呼ばれた方を振り返ってみると、そこには何故か御刀を納めた夜見さんと木寅さんの姿があった。
「すみません夜見さん......私......」
「......問題ありません。では、芹代さん」
「はい?」
次の夜見さんの口から出た言葉はあまりにも意外な言葉だった。
「私たちは撤退しましょう......」
次回【激戦のその後】
お楽しみに!