あれから私たちは鎌倉へ戻り、私たち親衛隊は折神家の屋敷へ、美炎たち調査隊は寮へと戻って行った。いまだに体調が優れない私はすぐに部屋へと戻り、床についた。
翌日になりある程度は体調が優れた私は、いつものように着替えと身嗜みを整えた後、鍛錬のため訓練場まで赴いていた。だけど、そこにはちょうど先客がいた。
「・・・・・・真希さん?」
いたのは真希さんだった。真希さんの鍛錬の様子を見るのはあまり無かったけど、どうにも様子がおかしかった。いつものような冷静な状態ではなく、どこか投げやりというか怒りに任せて御刀を振っている感じで、このままやっていてはどこか体を痛めるのではないかと思えるほどにひどいものだった。・・・・・・流石にそれを見逃すほど私は鬼じゃ無かった。
「そんな闇雲に鍛錬していてもただいたずらに体を痛めつけるだけですよ?無理はしないでください。怪我人なんですから・・・・・・」
「・・・・・・紫音か」
私の声に気がついた真希さんは手を止めこちらを振り向いた。やっぱりと言うか真希さんの顔からは焦りと怒りの混じったような表情が浮き出ていた。昨日の任務の失敗を気にしているみたいだね・・・・・・。
「真希さん・・・・・・いくらやっても昨日の任務の失敗は取り消すことはできないんですよ?それはもう過ぎ去ったことです。ですから、今は次に備えて体を・・・・・・」
「それが許せないんだ!僕は紫様から授かった大切な任務を一席という立場でありながら失敗をしたんだ!しかもこんな怪我までして・・・・・・これでは紫様に申し訳が立たない!だからこうして鍛え抜いて次の任務に備えているんだ!」
「はぁ〜・・・・・・」
それはわかるけどそれで怪我が悪化したら元の子もないでしょう真希さん・・・・・・。
「それで怪我が悪化すればこの後の任務にも支障をきたします。お願いですからこれ以上はやめてください」
「断る。怪我が悪化しようと知ったことか!僕は強くならなければならないんだ!」
「・・・・・・はっきりいますけど、今の状態の真希さんでは紫様の護衛と親衛隊のことを任せられませんね?」
「っ!!なんだと!?」
激昂した真希さんが声を荒げて私に詰め寄ってくる。私は怯みもしないでそのまま話を続けた。
「そんな任務の失敗に囚われていて、先のことと今のことを見れていない真希さんなんかに任務は任せられないって言ったんですよ」
「紫音・・・・・・今の言葉・・・・・・取り消せ」
声に威圧感を乗せて真希さんは言葉を発した。
「取り消しませんよ?それにそんな怖い顔したって全然怖くありませんよ?だって今の真希さん・・・・・・前より弱いですから?」
「!!紫音・・・・・・お前ぇ!!」
ついに我慢の限界が来たのか、真希さんが私に向かって斬りかかって来た。全く・・・・・・いつもの真希さんならこんな挑発に乗らないのに・・・・・・。・・・・・・しょうがない。私は静かに蒼月を抜くと横なぎに一閃した。
「・・・・・・そんな剣じゃ、私には届きませんよ?」
「なっ・・・・・・ばかな・・・・・・」
一瞬にして自分の御刀がはじき飛ばされた事実に、真希さんは困惑を隠し切れていなかった。・・・・・・やっぱり今の真希さんは・・・・・・弱い。
「言ったでしょう?弱くなってるって。まず第一に真希さんがさっきの私の挑発に乗ったことこそ間違いです。親衛隊はいついかなる時も心を静め、冷静沈着で任務遂行にあたる・・・・・・。それが決まりのはずです。そして臨機応変な対応や判断、行動をすることを紫様にも言われて来たのに・・・・・・今の真希さんは、紫様のその言っていたことを踏みにじっていたんですよ?それをわかっていますか?」
「っ!!!」
私の言っている意味が分かったのか・・・・・・真希さんはすっと肩と膝の力が抜け、その場に膝をついた。・・・・・・少しは落ち着いたかな?
「だから私は今の真希さんには任務ではなく体を治すことを優先して欲しいって言ったんです。無理をしてまた怪我をされてはたまりませんから。それに、それを紫様が望んでいるとも私には思えませんしね」
「僕は・・・・・・また・・・・・・」
「失敗は誰にでもあることです。とにかくしばらくは任務に出なくていいです。他の皆さんには私の方から話しておきますから・・・・・・。今はとにかく、怪我を治すことに集中してください」
「ああ・・・・・・わかったよ」
ようやく納得してくれた真希さんは、御刀を鞘にしまうと訓練場を後にしようとした。・・・・・・だけど出る前に真希さんが私の方へ振り向いた。・・・・・・何かあるのかな?
「紫音・・・・・・ありがとう・・・・・・それと、すまなかった。いつ復帰できるかわからないが、必ず戻ってくる。多分寿々花も同じだ。だから・・・・・・しばらくの間は紫音。君が親衛隊を引っ張って行ってくれ。・・・・・・頼む」
「ふふ・・・・・・私のこと過大評価しすぎですよ。でも真希さんにそこまで言わせたらやらないわけにはいかないですね!はい!お任せください!」
私の返答に満足したのか、真希さんは今度こそ訓練場を後にした。・・・・・・私もあそこまで言っちゃったんだから頑張んないとね!訓練場の中で一人、拳を握る私だった・・・・・・。
次回【舞草の追跡】
お楽しみに!