始まりの章はもう少しだけ続きます。
「え〜と?あなた達は?」
後ろを振り返った時にその場にいた2人の人に私は声をかけた。
「あ、ああすまないね。ボーッとしてしまって......僕は獅童真希。折神家親衛隊だ」
「......同じく親衛隊の此花寿々花ですわ」
「親衛隊......ああ!あなた達が今回助力に来てくれた親衛隊でしたか。遠くからわざわざありがとうございます」
「それは構わないんだが......どうやら僕たちの出番はなさそうだね......」
獅童さんはそういうと私の後ろの荒魂を指さした。ああ.......確かにもう私が倒しちゃったから親衛隊の人たちは必要ないよね......。
「その荒魂は......あなたが?」
「え?あ〜......はい。その......まずかったですか?」
何がまずいかというと、せっかく鎌倉から遥々来てもらった親衛隊の2人に何もさせないまま解決してしまったことがだ。なんか......気まずい。
「いや......結果として荒魂は討伐出来たのだからまずくはないんだが......僕も寿々花も少々驚いていてね」
「ん?何がですか?」
なんとなく想像できるけど一応聞き返してみることにした。
「貴方の今回の”行動”と”強さ”にですわ」
「......」
ああ、やっぱりね。行動も強さも驚かれる理由はなんとなくわかる。行動に関しては私一人陽動に立ってその間にみんなを逃したこと。強さに至っては一人でこのバカでかい荒魂を討伐したこと......だと思う。
「現場の刀使だけでは対応が難しいと思われたから僕たちが派遣されたんだけど、どうやら情報不足だったみたいだ。君のような刀使がいるなんて......」
「買いかぶりすぎですよ。私は言うほどすごい刀使じゃありません。現に私は御前試合では全く成績は残していません」
「貴方の名前は?」
「芹代紫音です」
「芹代......確かに本選にはそんな名前はありませんでしたわね。では、予選での成績は?」
「一回戦敗退です」
「「はぁ!?」」
獅童さんと此花さんが同時に声をあげ、信じられないとでも言いたげなくらいすごい表情をした。私は嘘ついてないんだけどな〜。御前試合の予選は棄権したんだから当然私は一回戦負けになる。何も嘘はついてないよ?
「嘘は言ってないですよ?帰ったらでも良いので試合結果のとこ見てください。そう書いてありますから」
「あ、ああ......そうするよ。とにかく、先に荒魂を討伐してくれたことに関しては礼を言わせてもらうよ。ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
どうにか納得した感じの獅童さんと、未だ少し納得できてない此花さんは、”ノロ”の回収に向かった。ノロっていうのは荒魂の元になっている物質のことで、主に珠鋼を精製する際に出る不純物のことを表している。これがたくさん集まることで荒魂が生まれるってこと。それでなんで回収するのかっていうと、なんでもほとんどのノロを折神家が管理しているらしくて、そうすることで荒魂の発生を防いでるんだって。だから討伐した荒魂はすぐにノロを回収するということも刀使の役目となっているんだ。
「さて......ノロの回収は親衛隊のお二人に任せて、私は......お?」
可奈美達と合流しよう!そう思ったんだけど、それはどうやら省かれそうだった。なぜならーーー
「紫音ーー!!無事ーー!?」
「紫音ちゃん大丈夫!?怪我してない!?」
「紫音ちゃん!!」
向こうからこっちに来てくれたからだ。なぜか先頭切ってこっちに近づいてくるのが美炎なんだけど、この際気にしないことにした。
「無事無事!傷一つないよ!」
「よかった〜......紫音ちゃんに何かあったら私泣いちゃうとこだったよ......」
「そう言いながら可奈美少し泣いてるじゃん......」
「うぅ......泣いてないよ〜......」
隠そうとしてるけど全然泣いてるのを隠し切れてない可奈美を美炎と舞衣が慰めた。慰めてる二人もどこか疲れた表情をしていた。それだけ今回の任務は大変で辛く、怖かったんだろうな。みんなまだ子供だし......私もだけど。
「とりあえず帰ろっか!早くお風呂入って寝たいし......」
荒魂討伐に夢中で気がつかなかったけど結構良い時間帯になっていた。私たち子供はそろそろ寝るべき時間だ。そのまま私たちはなぜか私まで可奈美の慰めに参加させられたまま、帰路につく事になった。
「そういえば紫音ちゃん?」
「ん?どうかした?」
美濃関学院に戻っている道中、舞衣が唐突に聞いて来た。
「本当にさっきの荒魂、紫音ちゃんが討伐したの?」
「うん。あれ?もしかして信じてない?」
「ううん。信じてないわけじゃなくて......すごいなーって思っちゃって......」
「そうかな〜?......でも、舞衣がそう言うんならすごいのかもね」
「うんそうだよ。ほんと......御前試合出れば良かったのに......」
舞衣がポツリとそう言った。そして、それに反応した可奈美と美炎も同じようなことを口走った。
「紫音はこんなに凄いのに誰にも知られないなんて勿体無いよ?」
「来年は出てみてよ!きっと本選にだって残れるよ!」
「いや......別に目立つために御刀振ってるわけじゃないし、そう言うのあんまり興味ないんだよね〜......」
そうは言われても私の答えは変わらない。日本一の刀使になったからって荒魂に勝てるわけではない。そんな肩書を持ったところで荒魂から人々を守れると言う保証があるわけでもない。そんななんのメリットも無い催しに出たって時間の無駄だよ。だったらひたすら鍛錬してた方がマシ。というか......これは話題を変えた方が良さそうだ。そう思った私はそういえばと2人と交わした約束のことを思い出し、2人に聞いてみた。
「そういえば忘れてたけど、約束は守ってもらうよ?可奈美、舞衣?」
「え!?......え〜っと、何のことだっけ?」
「しらばっくれても無駄だよ〜?約束したでしょ?私が無傷で帰ってきたら2人から何か奢ってもらうって!」
「ふふ、そうだったね。わかった、私と可奈美ちゃんで何か買ってあげるね。それで良いよね、可奈美ちゃん?」
「うぅ〜〜......わかった」
よっし!奢り決定!心の中でそうガッツポーズをした私は、後日絶対に大好物のプリンを大量に奢ってもらう!と心に決めたのだった。
次回【久々の立ち会い】
お楽しみに!