やっと話に入れる......。
「うわぁ......」
鎌倉駅に着き、鎌倉の街並みを見た私から出たのは感嘆の溜息だった。私は今まで鎌倉に来たことが無かったため、私がいた岐阜よりもはるかに多くの建物やビルなどが建っている光景にそれしか出てこなかったんだ。
「どうだい?初めて見る鎌倉は?」
「何というか......いろんな意味で凄いですね。車もたくさん通ってるし人もたくさん......。建物も全部大きい......。親衛隊ってすごいとこで活動してるんですね?」
「僕たちにとってはすでに見慣れた光景だからそうは感じないけど、地方から来た刀使はみんな同じ反応だよ。だから何も不思議がること無いよ?」
「はい。わかりました」
感想もほどほどに、私は獅童さんに連れられ折神家本部に向かった。
「さて......ここがこれから君の働く場所だよ」
数十分後、無事に私たちは折神家本部に到着した。日本全部の刀使の纏めどころと、荒魂討伐作戦の本部ということもあってすっごく大きかった。外観は何というか......一つの大きなお寺みたいな感じで中も相当広そうだった。
「初めて見ましたけど......ここも相当大きいですね」
「それはそうだよ。何せ折神家は古くから伝わる名家だからね。かつて出現した大荒魂を討伐したことで英雄に成り上がったことが名家に上り詰めた要因らしい」
「なるほど〜」
「っと、長話も何だし早いところ中に入ろうか」
そう言った獅童さんは屋敷の中に入っていった。私もそれに続くように中に入った。案の定、中も相当広かった。
「失礼します」
中に入り、荷物を預けた後、私は御当主様もとい紫様に挨拶をしに局長室に向かっていた。その間、中にいた刀使の人たちからやたらと視線を向けられたため、気恥ずかしかったな......。
そして、本部長室に到着した獅童さんが一声かけてから私は中に通された。
中にいたのは、親衛隊と思われる人たち3人と、私は初めてみるけど,その3人を侍るようにして座って居る紫様だった。紫様は私が部屋に入ったことを確認すると、スッと立ち上がって私のところに来た。
「よく来たな、芹代。私がこの折神家当主並びに刀剣類管理局局長の折神紫だ。よろしく」
そう言いながら紫様は私に手を差し伸べてきた。
「この度親衛隊に配属となりました、芹代紫音です。よろしくお願いします」
私も自己紹介をし、同じく手を差し伸ばし、握手をした。
「遠路遥々ご苦労だったな獅童。下がって良いぞ」
「はっ」
獅童さんはそっと私から離れ、同じ親衛隊の人たちの元に戻った。
「さて、芹代。お前はこれより親衛隊として私の元働いて貰うのだが、その前に一つ......お前に問いたいことがある」
「......?はい、何でしょう?」
聞きたいこと?紫様が私に何を聞きたいんだろ?
「お前のその刀使としての”力”とは......何だ?」
「”力”?」
紫様の質問の意図がわからなかった。急にそんなこと言われても......”力”か。
「私の”力”は人々を荒魂の手から守るためにあります」
「ほう......?」
「そして、私の信念。”今存在している荒魂すべてを討伐し日本を平和にしてみせる”ことを果たす術だと心得ています」
「なるほどな......」
何か納得したような顔を浮かべた紫様。それは後ろの親衛隊の人たちも同じだった。むしろどこか品定めしているふうにすら見えた。どうだろ?言ってること理解してもらえたかな?
「刀使の中にはその力に溺れ、崩れていく者もいる。私はそんな刀使を山ほど見てきたが、どうやらお前はその類では無いようだな」
「......?」
え〜っと?つまり?
「それならば私は安心してお前のことを信用することができる。今日を持ってお前を正式に親衛隊第五席に任命する。これからは私の元でその信念とやらを果たすために頑張るんだ。良いな?」
「は、はい!」
よ。よかった〜。とりあえず認めてもらえたみたいで......。それにしても第五席か〜......。なんか実感ないや。
「よし、では次に芹代、お前の同僚となる者たちを紹介しよう。お前たち、前へ」
「「「「はっ!(はぁ〜い)」」」」
ここでようやく私の仲間となる親衛隊の人たちの紹介となるみたいだった。とは言っても獅童さんと此花さんはすでに知ってるから紹介はいらない気もするけどね......。
そうこうしている間に親衛隊の自己紹介が始まった。
「自己紹介はいらないかもしれないけど、僕は獅童真希。親衛隊第一席だ。よろしく、
あ〜、やっぱり獅童さんもそう思ってたのね......。獅童さんが第一席か〜......って事は親衛隊の中で一番強いのかな?
「
会ったこと覚えててくれたんだ此花さん。なんか話し方とか聞いてると何だかお嬢様みたいな人だな〜。
「......初めまして。皐月夜見です。親衛隊第三席になってます。芹代さんでしたね......。よろしくお願いします」
この人とは初めてだったね。皐月さんか〜......なんか物静かそうな人って感じがするかな?
さて......最後の一人は......と皐月さんの横を見たけど、なぜかそこには誰もいなかった。いや......正確にはさっきまでいた。皐月さんが自己紹介してる時までは......。
「!?結芽!やめろ!!」
「......きひっ!」
声がしたのは私の真横。慌ててそちらに視線を向けるとそこには何故か御刀を持って私に向かってくる少女がいた。見る限り、私よりも年下だ。多分彼女が残った親衛隊の人なんだろうけど......何で御刀向けてきてんの!?
「わっと!?」
私は咄嗟に蒼月を抜き、峰に手を添える形で防御をした。
「へ〜?今のを防げるってことは......おねーさんかなり強いね〜?」
「いや......いきなりなにするの!?なんか私した!?」
「別に〜?ただおねーさんが強いかどうか確かめたかっただけ〜」
「いや......そんな理由で斬りかかって来ないでよ......。というかまだ名前も聞いてないのに、こんな状態じゃ聞けないでしょ?わかったら早く御刀を......」
「私は燕結芽。親衛隊第四席。よろしく〜!これで良いでしょ?さぁ、早く続きやろ〜よ!」
はぁ〜......この子あれだ。異常なくらいの戦闘狂だ。全く聞く耳持ちそうになかった。
「あ〜〜もう!!とにかく一旦お・ち・つ・け〜〜!!!」
「っ!!」
仕方なく、私は防御してた蒼月をそのまま燕さんに向けて押し返し、力任せに燕さんを吹き飛ばした。
「ぎゃん!」
「結芽!?」
吹き飛ばされた燕さんは、そのまま床に叩きつけられた。
「はぁ〜〜もう......全く......」
「はは!おねーさん良いじゃん!もっとやろーーー」
「そこまでだ結芽」
さらに私に向かおうとしてきた燕さんを紫様が止めた。その声を聞いた途端、燕さんの動きがピタリと止まった。あ〜、さすがに紫様の言うことは聞くのね。
「え〜、もっとこのおねーさんと遊びた〜い」
「それは後にでもできるだろう?今は控えろ?良いな?」
「むぅ......。はぁ〜い」
納得してない顔をしながらも燕さんは御刀を収めてくれた。とりあえず終わったかな?そう判断した私は蒼月を収めた。はぁ〜......無駄な体力を使った。
「結芽が迷惑をかけたな。あんな奴だが、単に戦う事が好きなだけなんだ。仲良くしてやってくれ」
「はぁ......わかりました?」
仲良くか......。また襲われないと良いけどな......。
「質問などはあるか?」
「いえ、特には」
「ならばこれにて入隊式は終了とする。各自戻って構わない。芹代の部屋の案内は任せるぞ?」
「はっ」
獅童さんは静かに答えた。部屋か........どんな部屋だろ?
「芹代は明日から任務に入ってもらう。今日は身体を休めて明日に備えろ。以上だ」
そう紫様が言った後、親衛隊に人たちと一緒に局長室を出た。そして、そのまま私の部屋に向かった。その間、親衛隊のみんなからは質問攻めにあっていた。それに私が答え、また質問の繰り返しとなっていた。
「芹代......お前の方からわざわざ我が管理下に来ようとはな......。これは好都合だが、しばらくは様子を見るとするか......その力が満ち溢れるその時まで......」
「
「そっか!じゃあこれからは紫音おねーさんって呼ぶね!」
「......」
......なんかおねーさんって呼ばれるの慣れてないからむず痒くなってきた。でも......こうして話してみると燕さんってただの女の子にしか思えないんだよね。これであんな戦闘狂じゃなかったらもっと良いんだけどな〜。
「それにしても、燕さんには驚かされたよ......。急に私に斬りかかってくるんだもん」
「ああ、僕もそれには驚いたけど、それよりもその結芽の攻撃を凌ぎ切って力で押し切った紫音の方に驚いたよ」
「そうですね......。燕さんの剣技は並大抵では太刀打ちできませんからね。......改めて芹代さんが親衛隊に配属された理由が分かった気がします」
「へ〜?そうなんですか〜?」
なんか人事みたいに言っちゃったけど、さっきの時は本当にとっさのことだったから正直あんまり覚えてないんだよね。それに燕さんは第四席なんでしょ?親衛隊の中でも一番弱いはずじゃ......。
私のその判断が間違っていると気づいたのは翌日だった......。
「ここが私の部屋......」
部屋に案内され、親衛隊のみんなと別れた後、改めて部屋の中を見渡してみた。とりあえず言えることはーーー
「......広すぎない?」
そう......一重にそれだった。少なくとも美濃関にいた時に使っていた寮の部屋の倍以上はあった。
「こんな広い部屋......私一人だと持て余す気しかしないんだけど......」
普段私はあまり物を置く人では無い。必要最低限のものがあれば良い。そんな感じなんだ。だから美濃関の時くらいの広さでよかったんだけど......。
「でも親衛隊はみんなこの大きさだって言ってたし......しょうがないか」
この際吹っ切れた方がいいと思ったから、部屋のことは忘れた。荷物を置いた後、私はすでに置かれていた机の上に置いてある一つの箱を手にとった。
「この中に入ってるってことだよね?”制服”」
そう言いながら私は箱の中身を取り出した。中から出てきたのは茶色をベースとした特徴の親衛隊の制服で、親衛隊はこれを着るのが義務となっている。
「まさか私がこれを着る事になるなんてな〜......」
数日前まで考えられなかった事だし、憧れの親衛隊で紫様の元で任務に当たれるなんて夢のようだ。興奮した私は制服を抱きしめたままベッドの上にダイブした。
「明日から任務......。頑張ろ!」
ベッドの上で私はそう気合いをいれるのだった。
次回【早朝の邂逅】
お楽しみに!
「そういえば、紫音って......何ですか?」
「君はこれからは僕達と共に任務をこなす仲だからね。呼び方も変えようと話し合ったんだ」
「へ〜、なんか嬉しいですねそれ!」
「これからはよろしく。紫音」
「はい!」