その前の時間ですね。
「よし!バッチリ!」
ふかふかのベッドで眠った翌朝、起きた私は早速身嗜みを整えて制服に着替えた。とは言っても気が早すぎる気もするけどね......。だって今の時間は朝の5時、昨日の獅童さんの話では7時に執務室に来て欲しいとのことらしいし、時間までまだ2時間もある。
「まぁ......でも早いに越したことはないでしょ」
時間も余ったことだし、暇だったから少し部屋の外に出て屋敷の中を散歩しに出た。執務室、局長室、食堂、訓練場など、いろんな部屋を回ってみたけど、やっぱり広いということを改めて実感した私だった。早朝と言うこともあり滅多に人とはすれ違わなかったけど、すれ違ったときにはすれ違いざまに私のことを目線で追っていたことは何となく分かった。多分私が親衛隊の制服を着ている事に対してだろうけど......。
この折神家には親衛隊の他にも所属している刀使がいる。基本的に折神家に所属する刀使と言うのは選ばれたもの、つまり刀使の中でもエリートな人しか所属することを許されないんだ。そんな中に急遽私のような子供が自分よりも格上の親衛隊の制服を着てたらそれは気になるのも無理ないだろう。
「(なんかやたら注目されてるみたいで恥ずかしいんだけど......)」
自分で勝手に散歩しておいてそんなこと思うのはおかしな話なんだけどね......。そろそろ部屋に戻ろうと、訓練場の横を通って部屋に戻ろうとしたんだけど、その際訓練場にさっきまでは無かった人影が映った為、足を止めた。
「(あれって......此花さん?)」
いたのは此花さんだった。体に汗を流しながら一人黙々と素振りをしていた。
「ふぅ......?」
「あ」
素振りをやめ、一息ついた此花さんが私に気づいた。......邪魔しちゃったかな?
「おはよう紫音。随分と早いですわね?」
「おはようございます此花さん。ええ、普段私はこの時間に起きてますので......」
「そう......それにしても」
ツカツカとこちらにやって来る此花さん。何か顔が笑ってるけど......何だろ?
「制服......よく似合っていますわよ?」
「へ?あ、あ〜......」
なるほど、制服を見て笑ってたんだ......。似合ってる......か。此花さんにそう言われると嬉しいな。
「それにしても何で今制服を着てますの?いくら何でも早すぎるのでは?」
「いや......それは〜......」
私は、初めての親衛隊の仕事というのに興奮が収まらず舞い上がってしまい、待てずに制服を着込んでキャッキャしてましたーー!......とは言わずにある程度は省いて説明した。それを聞いた此花さんは口を手で押さえながら笑っていた。
「いや......笑わないでくださいよ......」
「あら、ごめんなさいね。でも、やっぱりそんなところはまだまだ子供なのねと思ったから......」
「うっ......」
......否定できない。確かに制服であそこまではしゃぎ回れるって事は私もまだまだお子様って事だよね?ってか13なんだからまだまだ子供なんだけど......。
「そ、それよりも此花さんこそ朝早くから精が出ますね?やっぱり親衛隊になっても鍛錬は続けてるんですね?」
「もちろんですわ。私には超えなくてはならない人がいますから。その方を超える為でしたら何でもしますわ」
「なるほど〜」
すごい執念......。相当その人のことを超えたいんだな此花さんって......。一体誰なんだろ?
「そうですわ。紫音もよければ一緒にやりません?まだ時間もあることですし......どうかしら?」
「お、いいですね。ちょうど体動かしたかったとこです。やりましょう!」
こんな誘い断るわけないでしょ。親衛隊の人と一緒に鍛錬だなんて滅多にできることではない。ここはお言葉に甘えて一緒にやらせてもらおう!
「何やりますか?」
「そうですわね......。軽く立ち合いをするのはどうかしら?」
「立ち合い......ですか」
立ち合いという単語に私は苦い顔をした。
「あら......嫌かしら?」
「いえ......別にそれは......」
「ああ......そういえば紫音はあまり人に御刀を向けるのは好きでは無かったんでしたわね。ごめんなさいね。ぶしつけなことを聞いたわ」
「い、いえ......そんな......」
少し罰が悪そうな顔をして謝ってきた此花さん。いや......今のは全面的に私が悪いんだから此花さんが謝る必要はないんだけど......。それにしても私何言ってるんだ?せっかく此花さんから言って来てくれてるんだから受けるのが礼儀でしょ!?全く......今から言っても遅くないよね?とりあえずーーー
「此花さん、変な空気にしちゃってすみません。それで......さっきの立ち会いの話なんですけど......受けさせてもらいます」
「え?でも無理にやらなくても......」
「折角のお誘いですし、受けないと面目が立たないです。なので......お願いします」
ゆっくりと頭を下げ、お願いをした私。それを見た此花さんはまた静かに笑った。
「ふふ、わかりましたわ。では、いきましょう」
「はい!」
それから私たちは時間の許す限り、剣を撃ち合い続けた......。私にとってその時間はとても有意義な時間でとても楽しかったな〜......。
「......っ」
立ち合いをしている際の此花さんの表情が、妙に歪んでいた事にも気づかずに私はこの時間を楽しんでいた......。
次回【親衛隊の任務】
お楽しみに!