戦姫絶唱シンフォギア~First kiss tastes like iron~   作:六界の魔術師

2 / 5
なんか久しぶりにサクサク書けています。



第二楽章 変わり始めた運命

彼女のそれは、意思のある行為ではなく、ただの反応だった。

(……?)

口の中に注がれたなにかが、ゆっくり食道に流れていくと、意識の無い身体は自然と喉を鳴らし、それを少しずつ飲み込んでいく。

(………あ、………れ?)

それが契機だったのか、彼女の意識はゆっくりとだが浮かび上がってきた。

もっともその意識は、寝起き時の半覚醒状態と大差変わりはなく、意識なんてあってない様なものではあったが。

(……なんだろう、これ?

……温かい。)

口の中に注がれ続けているそれを、今度は意思を持って飲み込んでいく。

とはいえ、口の中の液体はそれなりに量があったし、力が入れ辛かったため、飲み込むには少し難儀した。

しかし、それでもなんとかそれを飲み続けていると、彼女の身体に異変が起き始める。

最初は喉、胃の中から熱を感じ始め、それは腸に入ったかと思うと、血液を巡って熱が全身に伝わていくのを感じていた。

ゆっくりと戻ってくる身体の感覚。

それに伴い、意識の方も少しずつ覚醒していく。

(……あたしは、……どうなったんだ?

…それになんだろう、この感触は?)

注がれる物を飲み込む度に身体は回復し、だんだん意識がはっきりしていく中、彼女ー奏は唇に当てられている柔らかい感触が気になり、当てられている物と現状を確認をする為、ゆっくりと目を開けた。

「……ん。」

優しい夕焼けの光に一瞬目が眩むも、直ぐに目が慣れたかと思うと、直ぐ目の前にーー目と鼻の先とか、眼前とかの比喩的表現ではなく、文字通り目を開けて直ぐに、彼の横顔がそこにあった。

「……ん?」

なんで?どうして?っという疑問符が頭の中に浮かぶ奏を他所に、最初は目を閉じながら注ぎ続けていた青年だったが、奏の声が聞こえたのか、片目を開けて奏が目を開けているのを確認すると、注ぐのを止め、ゆっくりと顔を離して残りを飲み込む。

「な!な!?」

「……良かった、助けられた。」

顔を紅くしながら混乱する奏を他所に、青年はそう言って安堵のため息を吐きながら、優しく微笑んだ。

青年の口からは、先ほどまで奏に飲ませていた物の残滓が、赤色に染まりながらつーっと奏の唇まで伸びていて、それを奏は顔を紅くしたまま見つめていた。

(……あの色は血せいか?

まるで、糸のみたいだ。

あれだとまるで………、まるで………。)

混乱する頭でそこまで考え、奏は自分の思ったことで更に顔を紅くしながら、その考えを振り払う様に顔を横に何回も激しく振った。

「……え~と、大丈夫ですか?」

「誰のせいだと思っているんだい!?

というか、あんたはいったいなにをしたのさ!!」

「え、え~と、口うt「いやいい、もういい、言わなくていい!!」…もご。」

顔を今までの中で一番紅くしながら、奏は青年の口を抑えつける。

それに対して青年は特に文句も言わず、ただ頷くだけだった。

「…っ、そうだ!

状況は!?」

そう言いながら周りを見ると、先ほどよりも数を減らしているものの、未だにノイズが歩き回っており、翼が一人奮闘しているのが見える。

「っ!

直ぐ行かな、くっ!」

そう言いながらすぐさま立ち上がった奏だったが、力が上手く入らずに崩折れそうになる。

だが、その身体を青年が素早く支えた。

「死にかけたんだ、無理はしない方がいい。」

「でも、翼一人に負担をかけるわけには!!」

「……あ~、気持ちはわかるけど、今は行かない方が良いと思うぞ?」

「へ?」

そう言われ、奏はもう一度翼の方へ目を向ける。

「逆羅刹!!」

翼はそう叫び、片手で逆立ちしながら両足を広げると、その場で回転を始め、両足に仕込まれた刃と手に持った剣で周りのノイズを切り刻む。

回転を終え、足を着けると同時に無数の青色の刃型のエネルギーを展開すると、

「千ノ落涙!!」

その言葉と共に刃を、周りのノイズに向けて飛ばし、かなりの数を一気に屠り去る。

その戦いぶりは先ほどまでとは雲泥の差で、鬼気迫るものを感じるくらいだった。

「す、凄い。」

「確かに凄い。

凄いけど、あんなの長くは持たないぞ。」

そう言うが早いか、彼は三叉槍を横に水平に構え、光を先ほど同様に刃に変えたかと思うと、

「ふっ!」

気合いと共に刃を伸ばし、横で眠っていた少女を襲おうとしていたノイズを貫き、

「跳べぇぇ!!」

その言葉に翼がその場を跳んだのと同時に、青年は三叉槍を水平に振ってノイズを薙ぎ払い、近場にいた奴を一気に殲滅する。

「……本当にあんた、無茶苦茶するね。」

「いや~~、それほどでも。」

「いやいや、褒めてないから。」

目の前にいたノイズが一気にいなくなり、呆れ顔でため息を吐く奏を他所に、無事着地した翼が、こちらへと猛スピードで駆け寄り、

「奏ぇぇぇぇぇ!!」

「ぐはっ!?」

その勢いのまま青年に突き飛ばし、荒い息のまま奏の肩をガシッと掴んだ。

「大丈夫だった?

あいつに汚されてない?

穢れてない?

犯されてない?」

「失礼な奴だな、お前は!!」

「うるさい!

黙れ、この強姦魔!!」

「ごぉ!?」

「女性の、それも奏の唇を勝手に奪うなんて、なんてうらy…、酷いことをするの!

そもそも、あなた何者なの?

名を名乗れ!」

「…………悪いが、俺にはお前みたいな礼儀知らずに名乗る名はない。」

「礼儀知らずなのは、むしろあなたでしょ!

そんなあなたを、これ以上奏に近づかせないんだから!

もし近づく様なら、この天羽々斬の錆びにしてやる!」

剣の切っ先を青年に向け、そう言いながら犬が唸る様に歯を剥き出しにして、翼は睨めつけていた。

それに対して青年は、ムスッとした表情をしなが翼を睨んでいたのだが、

 

ーベシッー

 

「あうっ!?」

と音と共に、奏のチョップが翼の後頭部に突き刺さる。

「翼。

あんた、ちょっといい加減にしな。

それに、今はそんなことでいがみ合っている暇は無いんじゃないか?」

そう言いながら横へ視線を向ける奏に釣られて、二人も横を見ると、奥の方からぞろぞろとノイズの大群がこちらへ向かってきていた。

「……なるほど、確かにのんびりしている余裕はなさそうだな。」

それを見ながら青年はそう呟くと、前に数歩出ながら三叉槍を構え直す。

「……?

あんた、なにをしているんだい?」

「俺が殿を務めておくから、その間に二人は、その娘を連れてスタジアムの外へ行け。」

「な!?

馬鹿を言わないでよ!

見知らぬ一般人に、そんなこと任せられるわけないでしょ!!」

「それに関しては、あたしも同意見だね。

あたし達だって、まだ戦えるよ。」

そう言って青年を睨む二人に、青年はため息を吐いて、指を三本立てる。

「俺が殿を務める理由は三つ。

一つ、俺の得物はこの三叉槍で、両手で扱う物だから、少女を抱えたら、マトモに戦えん。

その点、お前さんは足にも武器があるんだから、問題ないだろ?」

「む、それはそうだけど。」

肩越しに真っ直ぐ見られながら青年に言われた言葉に、翼は不承不承ながら頷く。

「二つ、単純に今この場で全力で戦える奴が、俺しかいないこと。」

『っ!』

「天羽さん、あんたはさっき死にかけたんだ。

無理したら、また死ぬぞ?

それと、お前はそろそろ体力の限界が近いだろ?

そんな奴に、殿は任せられるか。」

「なにを言っているんだ!

私はまだ戦「寝言は寝て言え。」っ!」

「さっきまで息を荒げていた奴が、偉そうに言うな。

そんな元気があるなら、二人を守ることに使え。」

「ぐっ!」

「なにより俺は、礼儀知らずのお前が信用できん。

そんな奴に、背中を任せられか。」

振り返らずそう言い切る青年の言葉に、翼はなにも言い返せず、ただ口を強く噛み締めるだけだった。

「…………つは?」

「ん?」

「最後の一つは?と聞いたんだ。

あんた、理由言っただろ?

それはなんだい?」

「…………三つ目は、自分の信条だ。

俺の目の前で、女は誰も死なせん。

今この場で俺が戦わなきゃ、三人の中の一人は確実に死ぬ。

だから、俺が戦う。

ただそれだけだ。」

そう言うが早いか、青年は四百メートル先まで近づいてきたノイズに向かって駆け出し、次々と薙ぎ払っていく。

「あ、待「待ちな、翼。」っ、でも!」

「……悔しいけど、あいつが言っていることは、あながち間違っていない。

あたし達がここにいても、足手まといになるだけだ。

それよりも、あたし達がやれることをやるべきだよ。」

奏の言葉に、翼はなにかを言い返そうと口を開くが言葉が見つからず、再び口を閉じて数秒間歯を食い縛る。

「…………わかった。」

そう言いながら頷いた翼は、少女の元へと歩み寄ると、優しく抱き上げた後、一度だけ青年の方を見て、奏の方へ向き直った。

「……一人で動けそう?」

「ああ、大丈夫だよ。

翼の方は行けるかい?」

「うん、大丈夫。」

「よし。

なら、行くよ!」

「ええ。」

後ろ髪引かれる思いを振り切る様に、二人は奏の言葉と共に走り出した。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。